企業事例
「その人らしさ」を人事として尊重する ファイブグループ
“楽しい”が満載で縦横斜めの関係が濃厚な職場とは
- 公開日:2025/12/08
- 更新日:2025/12/08
Great Place to Work® Institute Japan(GPTW)が主催する2025年版「働きがいのある会社(従業員100〜999人部門)」ランキングにて7位を受賞、同ランキングの常連となっているのが、東京都武蔵野市に本社のあるファイブグループである。その「働きがい」はどのように担保、醸成されているのだろうか。人事部部長の渡邉大地氏と、経営企画室室長である浅川めぐみ氏に詳しく伺った。
ミッションは「“楽しい”でつながる世界をつくる」
初対面のお客様に堂々と自己紹介する、会計時、レシートの裏にお客様と自分の名前を書き、次回、このレシート持参で500円以下のメニューが1つ無料になると告げる……。来店客が思わず笑顔になってしまうこのサービス、個人経営の店の従業員がやるのなら分かる。だがしかし、ここは、ファイブグループ傘下のれっきとしたチェーン店の居酒屋なのだ。
都内に本社をもち、国内外に27ブランド、約140店舗の居酒屋、ダイニングを展開する同社は「“楽しい”でつながる世界をつくる」をミッションとして掲げる。
なぜ「“楽しい”」なのか。それには、創業者でもある現社長の坂本憲史氏の原体験があった。経営企画室室長の浅川めぐみ氏が話す。「学生時代にバックパッカーとしてインド旅行に行ったところ、期待したような価値観の変化がなかったそうです。ところが帰国後、東京駅を行き交う人たちの顔がインドの人々とは違って笑顔とはほど遠いものだったと。そこで価値観が初めて変わり、経済の豊かさイコール幸せではない、楽しむことや笑顔が大切であり、そのために、それらを創り出す飲食業を立ち上げようと考えたそうです」
坂本氏が同社を立ち上げ、吉祥寺で居酒屋を始めたのが2003年のことだ。以来、「関わる全ての人が楽しくなれる環境をつくる」を理念として掲げていたが、2020年、組織の拡大に合わせ前述のミッションに作り替えたという。
同社には社員が約400名であるのに対し、アルバイトは約2000名いる。人事部部長の渡邉大地氏が話す。「彼らには、目の前のお客様に『楽しい』と思っていただき、次もまた来てもらう、その『また来たい』を作ることがあなたたちの仕事なんです、と伝えています。マニュアルはなく、次に『お客様にそう思ってもらうにはどうしたらいい?』と聞くと、声かけや自己紹介など、自分なりの方策を考え始めるんです。それがやりがいになって、仕事自体が楽しくなってきます」
浅川氏が付け加える。「仕事を苦痛と感じない、人生まるっと楽しめる人になってほしい。単なるお金稼ぎの場ではなく、生涯の友だちを作ったり、なかなかできない体験をしたりする場として、うちでの仕事を楽しんでほしいのです」
アルバイトを含め、全社員が“楽しい”を創り出す場も設けられている。毎年夏、店を休む形で行われる5IVE FES(ファイブフェス)という社内イベントだ。キャンプ場を貸し切り、自分たちで屋台を出し飲食を楽しむ。有志によるバンド演奏があり、事業部対抗の綱引きもある。社員、アルバイト、社員の家族、店の常連など、約1500名が集まる。「会社の理念をしっかり体感してもらう場といえるでしょう。参加しても給料は支払われませんが、新卒1年目の社員は例外で、仕事として来てもらいます。最初の年に、この会社で働くのは楽しいと感じてもらう。2年目、3年目になると、トレーナーという形で新卒の面倒を見る役割が与えられる。そうすると、楽しいから参加しようと本気で言えるようになるんです」(渡邉氏)
ビジョンを形にするための行動指針5IVE WAYS
同社のビジョンは「21世紀を代表する飲食カンパニーになる」というもの。それを形にするための行動指針が5IVE WAYSである。①“インテグリティ”を持ち行動せよ、②まずは笑顔で“楽しめ”、③ダサくなるな、“モテる人”であれ、④仲間に“リスペクト”を持ち“承認・称賛”せよ、⑤毎日の出会いに“感謝”しコミュニティに“貢献”せよ、の5つだ。
冒頭にインテグリティという言葉が来ている。「誠実に約束を守り、言い訳をせず、自分にごまかしがないこと。これをインテグリティと定義しています。信頼を作り、成果や成長、発展を生み出すための、人と関わる土台だと捉えています」(浅川氏)
モテる人という言葉も興味深い。「行動力でも思考力でも、自分の強みをしっかり認識し、それを10倍にも100倍にもしていける人がモテる人です。『自分はこういうことができる』としっかり周囲にアピールし、モテてモテてモテまくり、自分を成長させてください、という意図も込められています」(渡邉氏)
同社のユニークな点は、こうした守るべき理念やルールをアルバイトの評価にまで組み込んでいることだ。
それはStep Up Program(ステップ・アップ・プログラム。略称SUP〈サップ〉)と呼ばれ、ルーキー(新人)からキャプテンまでの6段階に応じ、基本給の他に能力給として給料に加算され、それぞれのバッジも支給される。月次で専用の面談が行われ、仕事の本質的な意味を再確認する。階層に応じたSUPが存在し、一般社員はもちろん、エリアマネジャー、部長、役員に至るまで適用される。
渡邉氏は組織のなかに縦横斜めの関係を作りたいと考えている。
「縦は事業の成長にじかにつながるもの。具体的なスキルを培うOJTがそうです。上司・部下の関係もそうですね。具体的には1on1の研修やSUPに関する面談が相当します。
横とは成長実感に関わるものです。うちには複数の事業があり、どこに配属されるかで、例えば、店長になれる時期が異なってきます。そこで必須になるのが階層別研修です。一緒に学ぶことで、自分の優れた点や足りない点が分かり、ギャップという意味で成長実感につながっていく。
斜めというのは、5IVE FESに代表されるイベントです。その他にも、花見やバーベキューなど盛りだくさんのイベントがあり、そこでは上司でも部下でもない、斜めの関係が形成されます」
社内公募も活発だ。「新規事業をやりたい人、ハワイの店舗で挑戦したい人、採用担当を希望する人、すべて公募で解決します。職種という縛りは弱く、やる気と能力が認められれば比較的簡単に異動ができます。こうした施策の背景にあるのは『その人らしさ』だと考えており、人事として非常に尊重しています。『らしさ』を見つけられるような会社でありたいです」(渡邉氏)
アルバイトも回答するGPTWアンケートにおいて「仕事に行くことが楽しみである」が非常に高いスコアであるという。「らしさ」を尊重し“楽しい”でつながった職場は働きがいを高めるのだ。
【text:荻野進介 photo:伊藤 誠】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.80 特集1「尊厳ある職場を考える」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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