- 公開日:2025/06/09
- 更新日:2025/06/09

PwCコンサルティング合同会社は社内外で、「やさしさが生む、強さがある。」というコンセプトを打ち出している。同社は、リスペクトとコラボレーションを大切にする「やさしさ」と、貪欲に結果を求める「強さ」とのバランスをどのようにとっているのだろうか。常務執行役 CHROパートナーの片山紀生氏に詳しく伺った。
目指すのは人と組織で勝つファーム
「やさしさが生む、強さがある。」という言葉をめぐっては社内で相当な議論があったと、CHROの片山紀生氏は語る。
「結果を求められるコンサルティングファームが『やさしさ』という言葉を使うのはいかがなものか、当社にはぬるま湯的な体質があると見られてしまうのではないかという意見も出ました。しかしわれわれは、強さだけでなく温かさやぬくもりを両立させたファームを目指そうと考え、あえてこうした方針にしています」
この方向の延長線上にあるのが、片山氏がCHRO就任時に打ち出した「人と組織で勝つファームになろう」というメッセージだ。自社の最大の資産で、競争力の源泉となるのは人だと、全社員に向け明確に伝えたのである。「『勝つ』とはナンバーワンのコンサルティングファームになるという意味ですが、それは売上だけではありません。クライアントに対し最も価値あるサービスを提供する。そして社外の方から、PwCコンサルティングの社員はさすがだと言われるように、人材の面でもナンバーワンを目指しています。それらを具体的に記せば、
(1)重要な課題を解決することで、社会にポジティブで永続的なインパクトを与える
(2)プロフェッショナルとしての誇りとやりがいを感じられる
(3)変化に適応しつつ未来を創造する
(4)成長を実感し、想像以上の自分に出会える
(5)多様な人材が共創し化学反応を起こす
という5点にまとめられるでしょう」
複雑化する課題の解決にはコラボレーションが不可欠
コンサルティングファームは一般的に、データとロジックを駆使して結果を出すという印象が強い。そうしたなか、PwCコンサルティングがあえて「やさしさ」を前面に押し出したのは、解決すべき課題の難度が上がったことが一因だった。
「成果を上げるため、当社のコンサルタントには個人としての成長が求められます。ただしビジネスが複雑化する現代では、個の力だけで大きな価値を出すことには限界があります。例えば、私が担当している電力・ガス業界で、海外トレーディングのために子会社を設立する支援を行うとします。この場合、現地の理解が必須となるため、海外オフィスとの連携は欠かせません。また、会社設立に向けた制度面では、監査法人や税理士法人、さらには燃料のトレーディング業務やITの知見をもった専門家も巻き込む必要があります。つまり、われわれは多様な専門性や価値観をもったメンバーをお互いリスペクトしてコラボレーションする『やさしさ』がなければ、クライアントに価値となる『強さ』を提供できないのです」
そこで同社は、コラボレーションを促進するために工夫を凝らしている。まず社内文化の面では、社員に求める行動規範を「PwCプロフェッショナル(プロとして求められる行動)」として再定義。これは、「トラステッド(信頼し信頼される)・リーダーシップ」3項目と、「ディスティンクティブ・アウトカムズ(比類なき成果)」3項目とに分かれる。トラステッド・リーダーシップのうち2項目は「インスパイア(惹きつける)」と「エンパワー(力づける)」で、どちらも他者への働きかけを前提にしており、コラボレーションを重視する企業の姿勢が伝わってくる。
また、同社はコラボレーションを促進する仕組みも次々と作り出しているところだ。
「『コラボレーション・クレジット』という制度はその1つで、複数チームが共同提案して得られた受注金額を2~3倍にし、KPIに算入する仕組みです。メッセージを出して社内文化を変えつつ、制度も整える。その両輪を回すことで、コラボレーションの活性化を図っています」
ワークショップや社会活動で他者への想像力を養う
PwCコンサルティングでは近年、ユニークな取り組みを2つ行っている。1つ目は、キャリアに関する自己認識力の向上を目指す「キャリア・デザイン・ワークショップ」。
「コンサルタントは戦略構築の専門家ですが、自らのキャリア戦略についてはあやふやなままにしているケースが珍しくありません。そこで社員一人ひとりに、自分はなぜ働くのか、どんな仕事をするときにワクワクするかなどの『内発的動機』を発掘してもらう。あるいは、自らに潜むバイアスや強み・弱みに気づかせる『セルフアウェアネス』によって成長を促すのがこのワークショップです。1回当たり4時間ほどと長いのですが、受講者から好評を博しています」
もう1つのユニークな取り組みが、NPOや地方自治体などと連携して社会課題を体感する「フィールド・スタディ」だ。2018年から東日本大震災の被災地である福島県南相馬市や宮城県女川町などに出向き、社会課題の現場を体感すると共に、困難な課題に立ち向かうリーダーの志や情熱から刺激を受けるリーダーシップ育成プログラムである。
「当社はビジネスを成長させるだけのファームではありません。社会に貢献し大きなインパクトを与えることも、当社の重要な役割だと考えています。そのためには、今後もフィールド・スタディのような活動は続けていく方針です」
なお、キャリア・デザイン・ワークショップでは己の内面を掘り下げるため、チームメンバーとの話し合いも行う。また、フィールド・スタディでは非日常的な場に身を置くことで、社員に気づきを与えたり、他者への想像力を磨かせたりする効果がある。つまり、これらの取り組みには、コラボレーションを加速させる効果もあるわけだ。
PwCコンサルティングは今後も、カルチャーと制度の双方を整備しつづける方針だ。
「成長するために難しい仕事にチャレンジしたいと考える社員もいれば、ライフステージに応じて柔軟でバランスのとれた働き方をしたいと考える社員もいます。そうした事情に合わせ、カルチャーと制度の両面でキャリアを応援できる企業にしたいと考えています」
【text:白谷輝英 photo:平山 諭】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.78 特集1「職場におけるマッチョイズムの功罪」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
おすすめコラム
Column
関連する
無料セミナー
Online seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- お役立ち情報
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ・資料請求
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)