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人事制度とは? 目的や設計の基本と注意点を解説
- 公開日:2026/01/30
- 更新日:2026/01/30
人事制度は、企業が人材の活用や育成を通じて持続的に成長するための基盤となる仕組みです。制度設計では、等級・評価・報酬の整備にとどまらず、経営方針との連動や従業員への周知といった広い視点が求められます。
本記事では、人事制度の仕組みや目的を整理しながら、設計の手順、押さえておきたいトレンドや実務上の注意点まで解説します。
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- 目次
- 人事制度の役割と目的について
- 人事制度の骨格となる3つの制度
- 人事制度のアクセルとなる育成制度
- 人事制度設計を進める5つのステップとポイント
- 人事制度におけるトレンド
- まとめ:人事制度の設計で押さえるべき最重要ポイントのおさらい
人事制度の役割と目的について
人事制度とは、単に従業員の処遇を決める枠組ではありません。企業の経営目標を達成するために、従業員に期待される行動やスキルを明確に示し、公正な評価と処遇を通じて成長を促すことで、組織が目指す方向へと導く羅針盤の役割を果たします。
さらには、従業員の納得感を醸成し組織全体の活力を引き出すことで、企業の持続的な成長と競争力を支える、まさに経営の根幹をなす基盤といえるでしょう。
人事制度がもたらす3つの効果
企業の未来を創るのは「人」です。経営理念の実現と持続的な成長のために、人事制度は次の3つの効果をもたらします。
- 組織の方向性統一と戦略実行力の向上
経営理念やミッションを軸にした一貫性のある人材マネジメントにより、組織全体のベクトルが揃います。採用・育成・評価・配置の各プロセスで統一された方針を貫くことで、従業員の行動が経営目標と整合し、理念実現に向けた戦略実行力が高まります。 - 組織全体のパフォーマンス最大化
従業員一人ひとりの意欲と能力を最大限に引き出す仕組みを体系的に整えることで、個々の力が結集し、組織全体の成果へと昇華されます。この相乗効果により、企業の競争力と価値が継続的に向上します。 - 「個の成長」と「企業の発展」の好循環を創出
適切な人材配置・育成・活用を通じて、従業員がプロフェッショナルとして成長できる機会を提供します。従業員の成長が企業発展の原動力となり、互いに成長し続ける持続可能な好循環が生まれます。
人事制度の骨格となる3つの制度
人事制度は、従業員への期待役割や責任、職務のレベルを明文化する「等級制度」、行動や成果を評価する「評価制度」、給与や賞与を決める「報酬制度」の3つが骨格となります。
等級制度
等級制度は、人事制度全体の土台となる重要な仕組みです。まず組織として必要な役割や責任のレベルを等級として定義し、各従業員がどの等級に該当するかを決めていきます。これにより、組織に求められる機能と個人の役割が明確になります。
等級制度が果たす主な役割
この制度は、主に2つの重要な役割を担っています。
等級制度の役割 | |
|---|---|
責任と権限の明確化 | 等級ごとに期待される役割、担うべき責任の重さ、与えられる権限の範囲が明確になります。これにより、意思決定のスピードが上がり、組織運営の効率が向上します。 |
評価・報酬の客観的な根拠 | 等級ごとに期待される役割、担うべき責任の重さ、与えられる権限の範囲が明確になります。これにより、意思決定のスピードが上がり、組織運営の効率が向上します。 |
代表的な3つの等級制度
何を基準に等級を定義するかによって、主に以下の3種類に分けられます。
等級制度の種類 | |
|---|---|
職能資格制度 | 「人」の能力に着目し、職務遂行に必要な能力のレベルを基準に等級を定義します。能力開発を重視し、長期的な人材育成に適した制度です。 |
職務等級制度 | 「仕事(ジョブ)」の内容に着目し、難度や責任の重さといった仕事そのものの価値を基準に等級を定義します。専門性の高い職種や、明確な職務定義が可能な組織に適しています。 |
役割等級制度 | 「役割(ミッション)」に着目し、企業がその従業員に期待する役割の大きさや重要度を基準に等級を定義します。職能資格制度と職務等級制度の中間的な性質を持ち、日本企業で広く採用されています。 |
評価制度
評価制度とは、一定期間における従業員の能力、業務を遂行したプロセス、そして生み出された成果を公正に評価するための仕組みです。
評価制度が果たす「導き」と「根拠」の役割
評価制度は、単に優劣をつけるものではなく、企業と従業員双方にとって重要な役割を担います。
評価制度の役割 | |
|---|---|
行動を導く羅針盤 | 「何を(評価項目)」「どのように(評価基準)」評価するのかを明確に定めることで、企業が従業員に期待する行動や目指すべき方向性を具体的に示し、成長を促します。 |
人材マネジメントの客観的な根拠 | 評価結果は、以下のような重要な意思決定を行ううえで、客観的で公平な判断材料となります。
|
報酬制度
報酬制度とは、従業員の貢献に対して支払われる、給与・賞与・退職金といった金銭的報酬の体系を定めた制度です。
報酬の決定メカニズム
報酬は、人事制度の骨格である等級制度と密接に連動しています。等級ごとに期待される役割や職務価値が定義されており、それに応じて給与の上限・下限(給与レンジ)が設定されています。従業員は、自身の等級と評価結果に基づき、そのレンジ内の報酬額に位置づけられます。
成長を促す仕組みとしての役割
報酬制度は、単なる対価の支払いにとどまりません。スキルやコンピテンシー(行動特性)の向上を昇給・昇格の要件に組み込むことで、育成制度とも連携しています。これにより、従業員が自律的に学習し、成長するための動機付けとなり、個人の成長が報酬に反映される仕組みを構築しています。
人事制度のアクセルとなる育成制度
従業員の次の成長を後押しするアクセルの役割を担うのが「育成制度」です。評価によって明らかになった課題や、次の等級へ上がるために必要なスキルを、研修やキャリア開発支援を通じて提供します。これにより、従業員は着実に成長の階段を上ることができます。
育成制度を成功させる2つの重要ポイント
① 他の制度との「連携」
育成制度は、等級・評価・報酬制度と密接に連携させる必要があります。「どのようなスキルを身につければ等級が上がるのか」「どのような成果を出せば評価され、報酬につながるのか」。これらが連動することで、従業員の学習意欲は飛躍的に高まります。
② 納得感のある「客観的データ」の活用
なぜこの育成が必要なのか。その根拠を従業員意識調査などの科学的・客観的データを用いて示すことで、従業員の納得感を醸成し、主体的な参加を促します。
人事制度設計を進める5つのステップとポイント
1.経営方針と人材戦略を整理する
自社の経営理念や事業戦略を再確認し、人事制度が目指すべきゴールを明確に定めます。例えば「技術革新で業界をリードする」という方針であれば、専門性やチャレンジ精神を高く評価し、後押しする制度が必要、というように、制度の「あるべき姿」を描き出します。
ポイント:経営方針を一番に考える
他社の真似や流行りだけを追うと失敗する。
自社の経営戦略と連動させ、「どんな人に活躍してほしいか」を明確にする。
他社の事例や流行を追うだけでは、自社に合わず形骸化してしまいます。「どのような人材に、どのように活躍してほしいのか」という問いを、経営方針と深く結びつけて考えることがすべての出発点です。
2.現行の人事制度の状態と課題を整理する
現行制度が会社のゴールと合っているか、ギャップがあるならばそれはどこにあるのかを把握します。従業員アンケートや管理職へのヒアリングを通じて、「年功序列が強く若手の意欲が低い」「評価基準が曖昧で納得感がない」といったリアルな問題点を洗い出します。
ポイント:会社のゴールを見据え、現場で機能する制度を考える
理想だけで制度をつくると、現場の実態と合わず使われない。
設計前にヒアリングなどで「今、何が問題か」を正確に把握する。
理想だけで制度を作ると、現場の実態と乖離してしまいます。設計に入る前に、客観的なデータとヒアリングで「今、本当に解決すべき問題は何か」を正確に把握することが、実用的な制度をつくるために大切です。
3.等級・評価・報酬を設計する
見つかった課題を解決するため、制度の核となる「等級」「評価」「報酬」の具体的な仕組みを設計します。例えば、若手の活躍を促すなら、成果に応じて等級が上がる仕組みや、その評価が賞与に直結する報酬制度を設計し、「貢献が正しく報われる」という一貫した流れを創ります。
ポイント:客観性と透明性を意識した「分かりやすい」仕組みにする
評価や報酬の基準が曖昧だと、従業員は不信感を抱く。
誰が見ても納得できる客観的な基準をつくり、評価の理由をしっかり説明できることが重要。
評価や報酬の基準が曖昧だと、従業員は不信感を抱き、モチベーションの低下を招きます。誰が見ても納得できる客観的な基準をつくり、評価の理由を一人ひとりにしっかりと説明できる「透明性」が不可欠です。
4.人事制度設計のシミュレーションを行う
新たな人事制度を導入した場合に、人件費総額や従業員一人ひとりの給与がどのように変動するのかを、事前にシミュレーションします。複数のケースで試算を行うことで、「一部の従業員の処遇が大きく変動する」「想定以上に人件費が増加する」といった潜在的なリスクを把握し、円滑な制度移行に向けた調整を行います。
ポイント: 数値と影響を事前に検証する
制度の考え方だけでなく、人件費や処遇への影響を具体的な数値で確認する。
複数パターンのシミュレーションを行い、想定外の不利益や財務リスクを未然に防ぐ。
シミュレーションは、制度設計段階での矛盾やリスクを可視化するための重要なプロセスです。さまざまな従業員属性を想定して試算を行い、移行にともなう不利益を最小限に抑えるための調整や、必要に応じた経過措置の検討につなげていきます。
5.人事制度を運用しながら改善を進める
人事制度は、設計して終わりではありません。制度導入後は、全従業員への説明会や、評価者となる管理職への研修を徹底して行い、新制度の目的と意図を浸透させます。運用開始後も「評価基準が分かりにくい」といった現場の声に真摯に耳を傾け、マニュアルの改訂や追加研修を行うなど、改善を続けましょう。
ポイント:つくって「完成」だと思わない、常に改善を続ける
制度は一度導入して終わりではなく、運用を通じて改善していくもの。
現場の声や運用結果を定期的に振り返り、必要に応じて見直しを行う姿勢が重要。
どれほどよく設計された制度であっても、従業員に正しく理解され、日々の行動に生かされなければ十分な効果は発揮されません。経営陣の言葉で目的や背景を丁寧に伝えながら、運用状況を検証し、環境の変化に応じて制度を磨き続けていくことが、人事制度を機能させるためのポイントです。
弊社では、人事制度を通じて実現したい目的を明確にしたうえで、コアとなる等級・評価・報酬・育成制度を設計し、その後の運用・定着まで一貫して支援しています。詳しくは「人事制度設計・運用支援コンサルティング」をご覧ください。
人事制度におけるトレンド
リアルタイムな育成を重視
主流だった年に一度の評価制度は、変化の速い現代のビジネス環境では機能しづらくなっています。そこで、年に一度の画一的な評価面談から、より頻繁で質の高い対話を通じて従業員の成長をリアルタイムに支援する手法へと移行する傾向が顕著です。
代表的なものに、上司と部下が定期的に行う「1on1ミーティング」や、ランク付けを廃して日々のフィードバックと育成に重きを置く「ノーレイティング」があり、評価を「査定のためのイベント」から「成長のための継続的な対話」へと変革させようとする動きが加速しています。
納得感や透明性を高める手法に注目が集まっている
評価プロセスの「ブラックボックス化」は、従業員の不信感やモチベーション低下を招く大きな原因となります。そのため、評価の納得感や透明性をいかに高めるかという点に、強い関心が集まっています。
例えば、上司1人の視点だけでなく、同僚や部下など複数の関係者から多角的なフィードバックを得る「360度評価」や、会社全体の高い目標と個人の目標をリンクさせ、その進捗を全員で共有する「OKR(Objectives and Key Results)」などが注目されています。
これらの手法は、客観的で公正な評価を実現し、従業員の主体的な貢献意欲を引き出すことを目的としています。
個人の専門性・成果重視の傾向に
メンバーシップ型雇用が中心だった日本企業でも、個人の専門性や具体的な成果をより重視する傾向が強まっています。その代表が、職務内容(ジョブ)を明確に定義し、その職務を遂行できる人材を採用・評価する「ジョブ型雇用」の導入拡大です。
年功や勤続年数ではなく、そのポジションでどのような価値を発揮したかという「成果」が直接処遇に結びつくため、専門スキルを持つ人材が正当に評価され、活躍しやすい環境が整いつつあります。これは、企業が従業員のキャリア自律を促し、プロフェッショナル人材の獲得・定着を目指すうえでの重要な変化といえるでしょう。
まとめ:人事制度の設計で押さえるべき最重要ポイントのおさらい
人事制度は、企業の成長を支える経営の基盤となる仕組みです。その骨格は「等級」「評価」「報酬」の3つの制度で構成され、これらが連動することで人材マネジメントの軸が形成されます。等級制度で役割やキャリアの道筋を示し、評価制度で行動や成果を確認し、その結果を報酬制度に反映することで、従業員の納得感とモチベーションを高めます。
さらに、評価を通じて明らかになった課題や次の成長に必要なスキルを補うのが育成制度であり、3つの制度を実際の成長につなげる推進力となります。人事制度の設計は、経営方針の整理から始まり、現状把握、制度設計、シミュレーション、運用・改善へと段階的に進めることが重要です。等級・評価・報酬という骨格と、育成というアクセルが連動することで、従業員の成長が企業の成長へとつながる人事制度が実現します。
弊社では、人事制度によって実現したい目的を明確にしたうえで、コアとなる等級・評価・賃金・育成制度を設計し、その後の運用・定着までを一貫して支援しています。人事制度の設計や運用にお悩みの方はぜひご活用ください。
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