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静かな退職(クワイエット・クィッティング)とは? デメリットや対処方法を解説

  • 公開日:2025/01/22
  • 更新日:2025/01/22

静かな退職という働き方をご存じですか? 静かな退職とは、従業員が積極的な職務参加を控えることで、仕事と私生活のバランスを取ろうとする働き方です。本記事では静かな退職について以下の点を中心にご紹介します。

  • 静かな退職について
  • 静かな退職のデメリットについて
  • 静かな退職の対処方法について

静かな退職について理解するためにも参考にしていただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

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静かな退職とは

静かな退職とはどのような働き方を表しているのか、以下に詳しく解説します。

静かな退職が広まった背景

静かな退職(クワイエット・クィッティング)という現象は、従来の熱心な勤務姿勢を捨て、自分の職務に対して最低限の責任だけを果たすという働き方です。この考え方は、2022年にアメリカのキャリアコーチ、ブライアン・クリーリー氏がソーシャルメディアを通じて広めたことが起点となり、若い労働者たちに支持されるようになりました。

この働き方の普及は、仕事における過度なストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)を避けるための自己防衛手段として捉えられることが多いようです。加えて、職場環境や企業文化に対する不満が高まるなかで、自身の健康や私生活を守るためのバランスを取る方法として選ばれています。

調査機関によると、このような働き方を選ぶ人々は、業務に対する熱意を失っているわけではなく、むしろ持続可能な職業生活を望んでおり、過剰な負担から自己を守りつつ仕事を続けようとしているのです。この傾向は、労働者がより健全な労働環境を求め、職場の期待と自己の期待との間で健康的な境界線を引くことの重要性を示しています。

参考

静かな退職とサイレント退職の違い

静かな退職とサイレント退職は、表面的には似た概念に感じられるかもしれませんが、その本質は異なります。

静かな退職は、仕事に対する情熱を抑え、必要な業務のみを行いつつも、仕事場を離れることはありません。これは、自分自身を過度なストレスから守りながらも、職場での役割を続けるというバランスを取る行動です。

一方でサイレント退職は、外部には何のサインも示さずに突如として退職を決断する行動を表します。この場合、従業員は内面的な困難やストレスを抱えており、それが積み重なることで退職という形で爆発します。そのため、周囲には予兆を見せず、突然の決断が周囲を驚かせることが多い傾向にあります。

静かな退職のデメリット

静かな退職は、従業員が実際に退職するわけではないため、表面的には労働力の不足を引き起こさない ように見えますが、実際には職場にとっていくつかのデメリットがあります。

まず、職場のコミュニケーションと人間関係に負の影響を与える可能性があります。静かな退職を選択した従業員は、受動的な態度を取り、能動的な協力や意見交換を避けがちです。これにより、チーム内での意見の多様性や創造的な対話が減少し、結果として職場の総合的な生産性が低下することがあります。

次に、周囲の負担が増える ことも静かな退職のデメリットの1つです。最低限の仕事しかこなさない従業員が増えると、ほかのメンバーがその分の負担を負うことになり、不公平感や疲労感が増大します。これはチームワークの劣化や労働者間の摩擦を生むことにつながり、組織全体の士気に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、静かな退職が広がることで、若手や将来有望な人材が成長の機会を得られなくなることも懸念されます。新しいプロジェクトや責任ある役割が必要とされる場面で、積極的な参加を避ける傾向があるため、個人のキャリア成長だけでなく、組織の革新的な力も弱まります。

静かな退職が組織内で広まった場合、組織の長期的な成功を脅かす可能性があります。そのため、従業員の動機付けを維持し、積極的な参加を促すための環境を整えることが企業にとってますます重要となっています。

静かな退職の気づき方・対処方法

従業員の行動や態度に変化が見られた場合は、その背後にある原因を探るために迅速に対処することが肝要です。静かな退職の気づき方や対処方法について解説します。

静かな退職の気づき方

静かな退職を見極めるには、特定の行動パターンに注意を払うことが重要です。以下に、静かな退職に至る従業員の兆候をいくつか挙げます。

1.業務への最低限の取り組み
従業員が新しい課題や責任を避け、既存の仕事だけをこなしている場合、静かな退職の兆候かもしれません。

2.コミュニケーションの欠如
ミーティングやチームの討議で意見を述べない、同僚との対話を避けるなど、コミュニケーションの減少も警告信号です。

3.定時退社
以前は残業をしていた従業員が、業務上必要な場合でも毎日定時で退社するようになった場合、仕事への熱意が減退している可能性があります。

4.仕事への不満の表明
不満を頻繁に口にするようになったり、業務に対する意欲の低下が見られたりする場合、内面的な問題を抱えている兆候です。

5.成長の欠如
職業的な成長や進展を見せない従業員は、職務への興味を失っているかもしれません。

これらの兆候は、従業員が静かな退職へと進む過程にあるかもしれないことを示唆しています。また、これらの行動が見られた場合には、状況を改善するための適切な対策を講じることが重要となります。

エンゲージメントサーベイの実施

静かな退職を防ぐためには、従業員の関与度や満足度を把握し、必要な改善策を施すことが重要です。この目的を達成する手段として、エンゲージメントサーベイの定期的な実施が挙げられます。

エンゲージメントサーベイは、従業員が自分の職場にどれだけ心理的に投資しているか、愛着心を持っているかなどを測定するツールです。この調査を通じて、従業員が感じている会社とのつながりや仕事に対する情熱、職場での役割の充足感を数値化し、分析します。低いエンゲージメントが示された場合、それが静かな退職につながる前に、早期に対策を講じることが大切です。

エンゲージメントサーベイは年に1度または半年ごとに1回実施し、組織内のコミュニケーションの改善、キャリア開発の機会の提供、職場環境の改善など、具体的な改善策を計画し、実行に移すことが、組織全体としての健全性を維持する手助けとなります。

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ストレスチェックの実施

静かな退職を未然に防ぐためには、職場におけるストレスの監視が重要です。ストレスチェック制度を利用することで、従業員が経験しているストレスの程度やその原因を把握し、適切な対応策を立てることにつながります。

ストレスチェックは、従業員の精神的負荷を評価し、それが業務効率や職場の雰囲気にどのように影響しているかを明らかにするためのツールです。特に、50人以上の従業員を抱える企業では、このチェックを定期的に行うことが法令によって義務付けられています。この検査を通じて、従業員個々のストレス状態を評価し、必要に応じて職場環境の改善や個別のカウンセリングの実施が推奨されます。

新入社員や役割が変わった従業員は、大きなストレスを感じやすいため、これらのグループに対しては注意深くチェックを行うことが望ましいです。また、ストレスチェックの結果を基に、職場の改善策を計画的に実施し、従業員が健康で働きやすい環境を整えることが重要です。

人事評価制度の見直し

静かな退職への対策の1つとして、人事評価制度の見直しが挙げられます。従業員が感じる不公平感を解消し、公正な評価体系を確立することは、従業員のモチベーション維持とエンゲージメント向上に直結します。

人事評価制度を改善するには、まず評価基準を明確にし、透明性を高めることが必要です。すべての従業員が評価プロセスを理解し、自身の評価が公正に行われていると感じられるようにすることで、職場の信頼感を築きます。

特に、静かな退職が多く見られる20〜30代の若手従業員の意見を積極的に取り入れることも重要です。この世代のニーズに応じたアンケートを実施し、そのフィードバックを評価制度の改善に生かすことで、若手の育成と定着を図ります。

これらの措置により、静かな退職の予防だけでなく、従業員一人ひ取りが公正な評価を受け、それに基づいた適切な報酬やキャリアアップの機会をえられる環境が整い、組織全体の生産性向上にも寄与するでしょう。

多様な働き方・制度の導入

静かな退職を予防するための手段の1つとして、多様な働き方を提供することがあります。従業員が自らのライフスタイルに合わせて働ける環境を整えることで、ワークライフバランスを改善し、職場の満足度とエンゲージメントを高めます。

具体的には、フレキシブルな勤務時間の設定、リモートワークの推進、時差出勤の導入など、柔軟な勤務体系を採用します。また、育児休暇や介護休暇の制度を見直し、実際に利用しやすい形で提供することも重要です。

これらの施策を通じて、ワークライフ・インテグレーション ※という概念を職場に浸透させることができれば、従業員一人ひとりが仕事と私生活の両方で価値を見出しやすくなります。その結果、従業員が仕事に対してポジティブな姿勢を維持し続け、企業にとって魅力的な職場を形成する助けとなります。このような取り組みは、従業員の士気を高め、組織全体の生産性向上にも寄与するでしょう。

※ワークライフ・インテグレーションとは、仕事と生活を明確に分けるのではなく、両者を柔軟に融合させながらバランスを取る考え方です。個人の価値観やライフスタイルに合わせて、仕事と生活が相互に補完し合うことを目指します。

静かな退職に関するよくある質問

最後に、静かな退職に関するよくある質問に回答します。

静かな退職はどの世代に多い傾向がありますか?

静かな退職は若い世代に多い傾向にあり、Z世代やミレニアル世代に顕著で、20~30代半ばの若手社員に見られることが多いといわれています。この世代は、伝統的な働き方や組織文化に疑問を投げかけ、ワークライフバランスを重視する傾向があります。

近年、労働市場において雇用形態の多様化や柔軟な働き方が増えているにもかかわらず、多くの企業が従来の労働環境や評価制度を変えていないことから、若い世代はキャリアパスが不透明であると感じ、自らの働き方を見直すことが増えています。また、30~40代の働き盛り世代でも、職業に対する情熱を持ち続けることが難しいため、静かな退職を選択する例も少なくありません。

このように、静かな退職は主に若い世代に多く見られるものの、仕事へのアプローチや価値観の変化は、年代を問わず職場全体に影響を及ぼしています。このため、組織はすべての世代に対するニーズや期待に応じた職場環境の改善に努めることが求められる状況にあります。

静かな退職は将来のキャリアに影響しますか?

静かな退職を選択することは、短期的には楽な道のように思えるかもしれませんが、長期的には多くのキャリア上のリスクを引き起こす可能性があります。

具体的には、積極的に業務に取り組まないことで、評価が低下し、その結果、昇給や昇進の可能性が減少します。特に競争が激しい職場環境では、静かな退職を選ぶことで、ほかの同僚に比べて見劣りすることがあり、長期的な視点で経済的な安定や成長のチャンスを自ら放棄することになりかねません。

また、長期的にこのような働き方を続けることで、職場での孤立を深めることがあります。コミュニケーションの欠如はチーム内での信頼関係を損なうため、プロジェクトやタスクにおいて重要な役割を任されにくくなる可能性があります。これにより、仕事のやりがいや充実感が低下し、職務へのさらなる不満が生じるという悪循環に陥ることもあります。

加えて、静かな退職を選ぶ取りストラの際に不利な立場に置かれるリスクがあります。貢献度が低いと見なされた場合、組織がコスト削減を目指す際の最初の削減対象となりやすく、安定した職を維持するうえでの不安要素となります。

総じて、静かな退職は長期的なキャリアの観点から見ると多くのデメリットがあり、自己の職業的な将来に重大な影響を与える行為につながるリスクがあります。自身のキャリアを真剣に考えるならば、静かな退職という選択について、今一度向き合ってみましょう。

おわりに

ここまで静かな退職についてお伝えしてきました。静かな退職の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 静かな退職とは、熱心な勤務姿勢を捨て、自分の職務に対して最低限の責任だけを果たすという働き方を指し、仕事に対する情熱を抑え、必要な業務のみを行いつつも、仕事場を離れることはない状態
  • 静かな退職のデメリットには、職場のコミュニケーションと人間関係に負の影響を与える、職場の雰囲気が悪化する、若手や将来有望な人材が成長の機会を得られなくなるなどが挙げられる
  • 静かな退職の対処方法として、その兆候を早期に捉えるためのエンゲージメントサーベイやストレスチェックの定期的な実施、人事評価制度の見直し、多様な働き方や制度の導入などの対策を講じることが重要

静かな退職は、職場のストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)を避けるため、あるいは個人的な生活と仕事のバランスを取るために行われることが多い傾向にあります。しかし、静かな退職は個人のキャリア成長にも組織の生産性にも潜在的な負の影響を及ぼす可能性があるため、メリットとデメリットをしっかりと理解することが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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