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アサーションとは? 仕事でも役立つコミュニケーション手法を解説

  • 公開日:2023/05/30
  • 更新日:2024/06/21

アサーションとは、コミュニケーション方法の1つで、相手を尊重したうえで自分の意見を主張するものです。ハラスメント対策への意識向上や、リモートワークの普及からコミュニケーションが難しくなったことにより、注目されています。

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アサーションとはどのような意味?

アサーションとは、相手を尊重したうえで自分の意見を主張するコミュニケーションの方法です。ハラスメント対策への意識向上や、リモートワークの普及からコミュニケーションが難しくなったことにより注目されるようになってきました。

アサーションの意味

アサーションは、「自己主張」という意味で、英語では「assertion」と表記します。アメリカで提唱された、相手も自分も大切にすることが重要視されているコミュニケーションスキルのことで、ストレスの軽減やハラスメント対策として注目を集めています。

アサーションの「自己主張」とは、一方的に自分の意見を主張するのではなく、相手の意見を尊重しつつも、適切に自分の意見を述べることを意味します。否定される心配をせず発言ができたり、聞いてもらえたりすることから、風通しの良い人間関係の構築が期待できるでしょう。

アサーションの起源や背景

アサーションの起源は、1949年に出版された「行動療法」に関する書籍に記述された医学用語とされています。人間の尊厳を取り戻し、回復するための有効な手段として書かれていたようです。

現在のような意味で使われるようになったのは、1970年前後にアメリカで始まった黒人差別における公民権運動 がきっかけです。1950年ブラウン判決(「分離すれども平等」の否定)、1955~1956年バス・ボイコット事件などを経て1964年公民権法、1965年投票権法成立によって差別に立ち向かってきました。人種や性別などによる差別が撤廃され、すべての人が平等に人権を保障されたことから、これまで抑圧されてきた人たちも意見を主張する機会を得て社会に進出するようになりました。

しかし、長年の怒りなどから暴力的な表現になったり、そもそも表現方法を知らずうまく自分の気持ちを表現できなかったりしたことから、現在の意味でのアサーションのトレーニングが行われるようになったようです。

アサーションが注目されている理由

パワハラ防止法の施行や育児・介護休業法の改正などにより、企業におけるハラスメントを防止するための取り組みはますます強化されていっています。相手を傷つけずに自己主張するアサーションは、異なる年齢や立場が生むコミュニケーションの齟齬に悩んでいる方の助けにもなるでしょう。

また、コロナ禍によるリモートワークの普及もアサーションが注目されている理由の1つです。オンラインでのコミュニケーションは相手の表情や考え、感情が伝わりにくく、円滑なコミュニケーションに苦戦している方や組織も少なくありません。そのため、相手の状態や自分の意思に目を向けるアサーションの需要が高まっています。

アサーションを身に付ける効果やメリット

「言いたくないけれど言わなければならない」という状況に悩む方も多いのではないでしょうか。そのような状況でも相手を不快にさせず自己主張できるのがアサーションです。

ここでは、アサーションを身に付ける効果やメリットを4つ紹介します。

【1】職場の同僚に対してはっきり意見を言ったり「NO」を伝えたりしやすくなる

すでに手一杯なところに、急な休日出勤の要請や荷が重い仕事の打診などをされた場合、ビジネスシーンでは「NO」と断らなければならないこともあるでしょう。断れず仕事を抱えすぎるのは、不満やストレスの原因となりかねません。ただ、断る際に攻撃的になったり歯切れが悪くなったりすれば、相手との関係が悪くなる可能性も出てきます。

アサーションを身に付ければ、相手を不快にさせず良好な関係を保ったままはっきり断ることができるため、より働きやすい環境を自分で整えられるでしょう。

【2】取引先との交渉がしやすくなる

コミュニケーションを取るのは会社内だけではありません。取引先や顧客とも対等な関係での意見交換が必要な場面も出てくるでしょう。

取引先からの無理難題や過剰な要求を回避し、対等な立場で交渉できるのもアサーションのメリットです。

大幅な値引きや過剰なサービスは、のちにトラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。ビジネスを継続するためにも、自分の身を守るためにも、アサーションを意識した言動によって適切な条件での契約を進めていきましょう。

【3】人間関係が円滑になる

相手を不快な気持ちにさせずに自分の意見を言えるため、人間関係が円滑になるのもアサーションのメリットです。

自分の意見を通したい気持ちのあまり、つい語調が強くなってしまうこともあるのではないでしょうか。その結果、相手を傷つけてしまい関係が悪化するケースも少なくありません。

アサーションを身に付ければ、相手を傷つけずに適切に自分の意見を言えるようになります。指示すべきことや改善すべきことも建設的に話せるため、仕事の生産性も上がるでしょう。

【4】ハラスメント対策になる

パワハラ防止法の施行により、企業のハラスメントへの対策は年々強化されています。そのなかで、相手を尊重しつつ自分の意見を主張するアサーションへの注目が高まっています。

言いたいことの伝え方が分からず強く主張しすぎてしまいハラスメントと捉えられてしまうケースなどもありますが、アサーションを用いることで円滑なコミュニケーションが可能になり、ハラスメントの防止にもつながります。

アサーションにおける自己表現の3つのコミュニケーションタイプ

私たちが行っているコミュニケーションは、おもに3つのタイプに分けられます。自身のタイプはもちろん、他のタイプの傾向も理解して良好な人間関係を築きましょう。

ここでは、3つのコミュニケーションタイプをそれぞれ詳しく解説します。

【1】アグレッシブタイプ

アグレッシブタイプは攻撃タイプとも呼ばれ、自分の意見を強く主張するのが特徴です。他人への配慮がなく、自分の意見を通すためなら怒鳴ったり、言いくるめたりする傾向があります。

自分の意見をはっきり言えるのはメリットですが、他者と軋轢を生みやすく組織においては少々やっかいなタイプかもしれません。

仕事や組織のためというより、自分が正しいと認めさせたい、人の上に立ちたいという気持ちが強いため、仕事に支障をきたす可能性もあります。

【2】ノン・アサーティブタイプ

ノン・アサーティブタイプは非主張タイプとも呼ばれ、自分の意見を率直に伝えるのが苦手なタイプです。「否定されたくない」「間違ったことを言いたくない」という恐怖から自分の意見が言えない傾向にあります。

相手への気遣いから自己主張ができない場合もあります。それゆえやさしく穏やかな方がこのタイプに多い傾向にありますが、相手に合わせすぎてしまい、ストレスが溜まってしまうことも考えられます。

一方で、言い訳が多く、曖昧な意見でその場を乗り切るのも特徴です。

【3】アサーティブタイプ

アグレッシブタイプとノン・アサーティブタイプのいいとこ取りをしたコミュニケーションタイプが、アサーティブタイプです。

相手へ配慮しつつ適切に自己主張できるため、理想のタイプといえるでしょう。アグレッシブタイプのように自分の意見を押し通すこともなく、ノン・アサーティブタイプのように自分の意見を言えないこともありません。

相手との関係を築きながら、お互いの意見を聞き合えるため、適切な結論を導くことができるでしょう。

アサーションの具体的なトレーニング手法

コミュニケーションタイプをチェックしたら、トレーニングをしていきましょう。アサーションを身に付けるには、日頃から意識してトレーニングすることが大切です。

ここでは、アサーションの具体的なトレーニング手法を4つ紹介します。

DESC法

DESC法とはアサーションを体系的にまとめた方法です。

Describe(描写する):主観を交えず客観的に状況や事実を伝える
Express(表現する):自分の意見や感情を表現する
Specify(提案する):相手への要求や解決策を提案する
Consequence(結果を伝える):提案を実行した場合と実行しなかった場合の結果を予測し伝える

自分の意見を上記の4つに分類して伝えることで、関係を悪化させず建設的に話し合うことが可能です。

ABCDE理論

ABCDE理論は、Activating event、Belief、Consequence、Dispute、Effectの頭文字からきています。

これらはそれぞれ以下の意味を持ちます。

Activating event:出来事、状況
Belief:信念、受け取り方や感じ方、ものの見方
Consequence:結果としての感情や行動
Dispute:非合理的なBeliefに対する反論、異議
Effect:Disputeによる効果

おおまかにいえば、出来事(A)があって結果(C)が存在するのではなく、その間にあるものの見方(B)によって結果(C)が変わる、という考え方です。

ものの見方(B)は育った環境や過去に遭遇した印象的な出来事で変化するため、人によってはマイナスに偏ることもめずらしくありません。それによって、結果(C)もネガティブになってしまいがちです。そのような自身の考え方に対し反論(D)するように自問し、出た異議によって結論(E)を出す、という流れになります。

つまり、自身の考え方が正しいか自問自答し、健全な考え方に変換する方法がABCDE理論です。

言語的/非言語的アサーション

他者とコミュニケーションを取る方法は、言語だけではありません。表情やボディランゲージ、声のトーン、態度などから相手の感情を判断する非言語コミュニケーションも、アサーションにとって大切な要素です。

円満な関係を築くためにも、言葉選びだけでなく非言語的コミュニケーションでも相手を不快にさせないように意識しましょう。

研修でもアサーティブを学べる

アサーティブを身に付けるための研修もあります。アサーティブ研修では、人間関係に配慮しながら相手に本心を伝える方法を学ぶことができます。

このようなコミュニケーションスキルを学ぶことで、会社内におけるメンタルヘルスの向上やパワハラなどのハラスメントを防止することにつながります。

アサーションが活用できる場面

アサーションはビジネスにおけるさまざまなシーンで活用可能です。例えば、異なる意見を持つ相手に対し意見を伝える場合や交渉する場合などに活用できるでしょう。

例えば、人事評価や部下への改善点のフィードバックなどは伝えにくい内容ではありますが、アサーションを活用すれば相手を傷つけたり、変にまわりくどい表現になったりせずに会話することができます。また、アサーションが社内に浸透していれば、評価を伝えられる側の心理的安全性が高まり、対等なコミュニケーションが可能です。

また顧客との交渉が必要な場面で、関係性を損なわずに自社の主張を伝えたい場合などにもアサーションは有効です。

アサーションを学ぶための本

アサーションを学ぶのに役に立つ本を紹介します。

平木典子『マンガでやさしくわかるアサーション』(日本能率協会マネジメントセンター,2015)
日本にアサーションを紹介した、アサーションの第一人者である平木典子さんの著書です。マンガで分かりやすく解説しているため、アサーション初心者の方や本を読む時間が取れない方におすすめです。

平木典子『三訂版 アサーション・トレーニング』(金子書房, 2021)
アサーションが活用できる具体的なシーンを例に挙げて解説した初心者向けの書籍です。

平木典子『アサーション入門』(講談社,2012)
具体例を交えてアサーションの基本を学ぶことができます。また、実践方法も紹介しています。

おわりに

アサーションとは、相手を傷つけずに自己主張するコミュニケーション方法です。パワハラ防止法の施行や育児・介護休業法の改正などに関連して個人のセンシティブな問題に配慮できるようになったり、リモートワークが普及したりといった理由から、注目が集まってきました。

アサーションを身に付ければ、人間関係を悪化させることなく自分の意見を言うことができるようになります。円滑に仕事を進めるためにも、ぜひアサーションを身に付けてみてください。

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