用語集
心理的安全性とは? 注目されている背景やメリット・つくり方を解説
- 公開日:2022/08/18
- 更新日:2025/01/21
心理的安全性とは
「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織のなかで自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態を表す度合いのことです。組織行動学の専門家として知られるエイミー・C・エドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義されています。
なお、よく似ている言葉としては「心理的資本」が挙げられますが、心理的資本は「自分ならきっとできるはずだ」という、目標に向かって動くために欠かせないエネルギーのことです。心理的安全性とは異なる概念なので、混同しないように気をつけましょう。
◆「心理的安全性」を高めるコミュニケーションスキル
アサーティブ・コミュニケーションの解説はこちら
◆「マネジメント育成ブック」「VUCA×Z世代新人育成」など
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心理的安全性が注目された背景
ジョン・ボウルビィの「愛着理論」など心理的安全性に似た概念は古くから存在していました。
しかし、2016年にGoogleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことから、一気に注目を集めるようになりました。
Googleは2012年から約4年間をかけて、成功し続けるチームに必要な条件を探る「プロジェクト・アリストテレス」を実施。社内の数百に及ぶチームを分析対象とし、より生産性の高い働き方をしているのはどのようなチームなのか調査しました。
その結果、「心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイディアをうまく利用でき、収益性が高く、マネジャーから評価される機会が2倍多い」ということが判明したのです。
職場(企業・団体)と従業員の関係性に関連する人事用語を解説
エンゲージメントとは
心理的安全性が低い職場で起こる問題とは
それでは反対に、心理的安全性が低い職場ではどのような問題が考えられるのでしょうか。
エドモンドソンがスピーチフォーラム「TED」で紹介した「心理的安全性を損なう要因と特徴行動」について見てみましょう。
エドモンドソンの「4つの心理的安全性を損なう要因と特徴行動」
心理的安全性が低くなる原因として、4つの不安があります。
無知だと思われる不安(Ignorant)
質問や確認をしたくても「こんなことも知らないのかと思われないか」と不安になり、その結果、気になることがあっても質問しづらくなってしまいます。
無能だと思われる不安(Incompetent)
ミスや失敗した時に「仕事ができないと思われるのでは」と不安になり、自分の失敗や弱点を認めなかったり、ミスを報告しなかったりするようになります。
邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)
自分が発言することで「話の邪魔をしていると思われないか」不安になり、提案や発言をしなくなっていきます。
ネガティブだと思われる不安(Negative)
改善を提案したくても「他の人の意見を批判していると否定的に捉えられるのでは」と不安になり、現状の批判をしなくなったり、意見があっても言わなくなったりします。
心理的安全性がもたらすメリット
心理的安全性が高まることで、職場には多くのメリットがもたらされます。
パフォーマンスが向上し、業績や成果につながる
心理的安全性が高いと、安心して仕事に集中できる環境になります。その結果、個人のパフォーマンスが向上し、仕事の効率や業績向上につながります。積極的に議論し、納得した上で目標に向かうので、目標達成のスピードも速くなるでしょう。
コミュニケーションが活発になる
不安を感じて発言を控えることがなくなるため、個人間のコミュニケーションが活発になります。
コミュニケーションが円滑になると、メンバー同士での情報交換がスムーズになります。失敗や不正などのネガティブな情報も集まりやすくなるので、早い段階で気づいてすぐに対応が可能です。
また、どのような意見でも受け入れてもらえるという安心感があれば、創造的なアイディアや既存の考えを覆すような発想が出やすくなります。結果として現状を良くするための提言が積極的に行われるため、イノベーションが促進されます。
エンゲージメントが高まる
心理的に安全な職場では自分の能力を生かせるため組織への愛着心が深まり、エンゲージメントが高まります。離職率も低くなるため、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できるでしょう。
心理的安全性の高い組織のつくり方
これからのリーダーには心理的安全性を高める力が求められています。そこで、職場での心理的安全性を高める方法を5つご紹介します。
(1)心理的安全性を体験できる仕組みをつくる
発言することに自体に慣れていないと、職場で自由に発言することは難しいかもしれません。そこで、1on1で上司と話す時間や部署を超えてメンバーが集まりディスカッションの場がある勉強会などを設定し、安心して雑談や対話を繰り返せる機会をつくります。業務から少し離れた場所で心理的安全性を体験することで、発言することへの不安を徐々に取り除くことができます。
(2)特定の人に偏らず発言できるようにする
自由に意見を言い合っているように見えても、一部のメンバーだけがいつも発言している場合があります。
一人ひとりが発言できているかどうかをチェックし、立場の弱い人や新しく入った人などへ意識的に発言を促すことが大切です。
(3)何のために発言するのか共通した価値観を持つ
役職や年齢に関係なく意見を伝えられる風通しの良い組織にすることは、トップダウンが多い日本の会社では難しく感じられるかもしれません。言いたいことを言うのはお客様のため」、「良い商品を作るため」であるという価値観を共有すると、チームに一体感が出て意見が言いやすくなるでしょう。
(4)アサーティブ・コミュニケーションを心掛ける
アサーティブ・コミュニケーションとは、相手を尊重しながら対等に自分の要望や感情を伝えるコミュニケーション方法です。アサーティブネスやアサーションとも呼ばれます。
アサーティブなコミュニケーション技術を学ぶことにより、要求や気持ちを適切に表現できるようになるため、心理的安全性を高めるのに役立ちます。
(5)飲み会や食事会を実施する
職場以外の場所で交流することによってリラックスした状態になり、心理的安全性が高まりやすくなります。
他の方法を実践する前に、まずは飲み会や食事会の時間で心理的安全性を高める方法を試してみるのも良いでしょう。大勢での会食が難しい場合には、2~3人などの少人数での食事でも実践の価値はあります。
心理的安全性を高める5つの方法をご紹介しました。「心理的安全性によって責任を持たずに発言したり、言いたい放題になったりするのでは」と、心配する方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、間違えてはいけないのは、「心理的安全性は馴れ合いではない」という点です。職場での問題解決やイノベーションのための手段として心理的安全性を高めていくことを意識しましょう。
心理的安全性を高める方法については下記のコラムでも詳しくご紹介しています。
●心理的安全性を高め対等な対話でチームの活力を引き出す
上司による職場の心理的安全性の高め方
心理的安全性の高い職場をつくるには、上司をはじめとするマネジメント層の心がけが欠かせません。部下と接する際に気をつけたい、心理的安全を高める3つのポイントについてご紹介します。
親しみやすさを心がける
1つ目のポイントは、日頃から話しかけやすい雰囲気をつくることです。部下に対して気さくに話しかけたり、困っているチームメンバーをフォローしたりなど、「周りを見る余裕がある人だ」という印象を持ってもらえるように意識しましょう。
普段の人間関係にもいえることですが、「ずっと黙っている」「機嫌が悪そう」「慌ただしくしている」といった閉鎖的な印象の人は、近寄りがたく感じられてしまいます。自分からチームの様子を気にかけて、オープンな印象を与えることで、チーム内のコミュニケーションの円滑化にもつながります。
具体的な言葉を用いて指示する
2つ目のポイントは、相手が把握しているかどうか分からないことについては具体的に指示することです。一方的に「このくらいなら理解できるはずだ」と共通認識のレベルを設定してしまうと、部下は指示や説明の内容が分からず困ってしまう可能性があります。
さらに、「こんなことも分からない?」と無知を指摘したり、「もういい」と相手を邪険に扱ってしまったりした場合、心理的安全性を下げることにもなりかねません。最初は具体的な説明を心がけ、部下が問題なく対応できると分かったタイミングから、説明を徐々に省くようにしていきましょう。
相手を受け入れる姿勢を示す
最後のポイントは、相手を受け入れる姿勢を示すことです。1つ目のポイントの「親しみやすさを心がける」ことでコミュニケーションのきっかけはつくれますが、話をしっかり聞く姿勢がないと「話してもちゃんと聞いてもらえない」と思われてしまう可能性があります。相手が話をしている時は手を止め、生返事ではなくきちんとリアクションをしたうえで、必要に応じてアドバイスをするよう心がけましょう。
心理的安全性を高めるマネジメント手法
チームの心理的安全性を高めるには普段のコミュニケーションに加えて、組織的な取り組みも必要になります。心理的安全性を高めるマネジメント手法の例をまとめました。
1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う面談のことです。他の面談との違いは、「部下を評価するのではなく、話を傾聴する場であること」が挙げられます。面談のテーマは部下のモチベーションアップやキャリア支援に関することが中心ですが、状況に応じてプライベートの相談に乗っても構いません。
定期的な対話を通して信頼関係を育むことができるほか、部下の悩みや課題を早期にフォローできるところがメリットといえます。実施頻度は週1回~月1回ペース、実施時間は1回につき15~30分程度が基本です。
OKR
OKR(Objectives and Key Results)とは、目標設定や目標管理の手法です。まず始めに企業全体の目標を立て、チームや社員個人の目標ともリンクさせることで、「社員皆で同じ課題に取り組む一体感」を得られるところが特徴といえます。目標を共有することで社内の協力関係が生まれやすくなり、心理的安全性も高まりやすいところがメリットです。
ピアボーナス
ピアボーナスとは、仲間を意味するpeerと、報酬を意味するbonusを合わせた造語です。社員一人ひとりにポイントを付与し、「この人を褒めたい」「感謝したい」と思った相手にコメントを添えてプレゼントしてもらうことで、コミュニケーションの活性化を図ります。ピアボーナスで得たポイントについては、金銭や景品、社内通貨などに変換できる仕組みです。
周りに認められる安心感と、ちょっとしたご褒美がもらえる嬉しさが感じられる施策であり、Googleをはじめとする大手企業にも導入されています。
おわりに
心理的安全性が高い職場は、会社と働くメンバーの両方に多くのメリットがあります。1on1や勉強会、アサーティブ・コミュニケーションなど取り組みやすい方法から始めて、誰もが安心して自由に発言できる心理的安全性が高い職場を目指してみませんか。
心理的安全性についてこちらでもご案内しています。ぜひこちらもご覧ください。
●なぜGoogleは本音で語る文化を重視するのか
Google合同会社人事部長 谷本美穂氏に伺ったお話を紹介しています。
●RMS Message vol.48
上記では「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」を取り上げています。
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