チームの心理的安全性  Google なぜGoogleは本音で語る文化を重視するのか

職場におけるソーシャル・サポートを考えるにあたって、参考にしたい企業の1つがGoogleだ。「効果的なチームを作るためには、心理的安全性が圧倒的に重要だ」といち早く語り、心理的安全性のムーブメントを巻き起こしたこの会社は、どのような職場を作っているのか。Google 合同会社 人事部長 谷本美穂氏にお話を伺った。


効果的なチームを作る上で重要な心理的安全性

「チームの心理的安全性」という概念を提唱したのは、ハーバード・ビジネススクールで組織行動学を研究するエイミー・C・エドモンドソン氏だ。しかし、それを一躍有名にしたのはGoogleである。Googleは「Project Aristotle」というリサーチチームを立ち上げ、「効果的なチームを可能とする条件は何か」を探求して、チームの効果性に影響する5つの因子(心理的安全性、相互信頼、構造と明確さ、仕事の意味、インパクト)を突き止めた。なかでも、効果的なチームを作る上で圧倒的に重要な因子が、心理的安全性なのだという。この独自の研究が、世界的な心理的安全性ブームを作ったのだ。

Googleによれば、心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動をとったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味する。言い換えれば、「チームのなかでミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるチーム(=心理的安全性の高いチーム)の方が、チーム全体として高い能力を発揮するというのだ。

本社CEOの意思決定に触れ意見する機会を頻繁に得られる

人事部長の谷本美穂氏によれば、Googleが心理的安全性を高めることで目指すのは、「常に本心で語り合えるカルチャー」の醸成だ。「私は2018年5月に入社したのですが、とにかく驚いたのは、全員がフラットな関係で、自由闊達に話し合う文化、下から上へ気兼ねなく意見できる文化があることです。そして、その文化を作り上げることに、リーダーが真剣に力をかけていることです」

その象徴が、「TGIF」だ。TGIFとは、「Thank God, It's Friday!」の略で、いわゆる「花金」を意味する略語だが、Googleでは、金曜日に開かれる全社ミーティングを指す言葉に変わる。最近ようやく2週間に1度になったのだが、それまでは創業以来、毎週欠かさず開催されてきた。社員数十人のときにオフィスの一室で始めたことを、9万人以上となった今もほぼ同様に続けているのだ。

TGIFでは、CEO(現在はスンダー・ピチャイ氏)が世界中の全社員に向けて、今Googleが進めていること、これからチャレンジしようと考えていることなどを説明する。もちろんコンフィデンシャルな内容も多いが、CEOは社員を信用して公開し共有するという。Google社員なら、その中継に簡単にアクセスし、質問を投げることができる。各質問には「いいね」ボタンがつき、CEOは「いいね」を多く集めた質問から、時間の許す限り順に答えていく。つまりGoogleでは、たとえ新入社員でも、本社CEOの意思決定に触れ、問いかけ、意見する機会を均等に得られるのだ。また、ビジネスや職種の単位でも、TGIFと 同じような場が定期的に設けられ、誰もが上層部に問いを投げかけ、意見することができるという。

「先日、アメリカ本社に行った際、TGIFを生で見てきました。TGIFの素晴らしさは、この質問タイムにあると感じました。従業員はとても厳しい質問をするが、匿名で質問することは許されていない。リーダーは決して嘘を言わない、分からないことは分からないと答える。みんなのボイス(意見)を聞く一方でみんなはそのボイスに責任をもつ、という文化を大事にしていると実感しました」(谷本氏)

社内のホットワードはリスペクト

その谷本氏が今、社内のホットワードと捉えているのが、「リスペクト」だ。「私たちは、誰一人として疎外感を覚えることなくビジネスに参加できるカルチャーを作るために、極めて高い基準を設定しています。それは、ダイバーシティやインクルージョンを超えて、お互いにリスペクトすることです。あらゆるスタイルや意見をリスペクトして、その一切を排除せず、すべての声に意味や価値があると考えることです。そのためには、個人のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み・偏見)を退けなくてはなりません。ですから、この会社では、アンコンシャスバイアスを一人ひとりに意識してもらい、それを排除する取り組みを多様な面から熱心に進めています」

例えば、採用の際には、1人の候補者に対し必ず4人程度のインタビュアーが面談して、「一般認識能力」「リーダーシップ」「職務関連知識」、そして「グーグリネス(Google的であること)」の4つの観点で候補者を評価する。そのインタビュアーたちが合意しない限り、次のプロセスには進めない。彼らが合意した候補者だけが、採用決定委員会にかけられる。その委員会がOKを出して、やっと採用が決まるのだ。なぜここまで手間ひまをかけるかといえば、ひとえにハイアリングマネジャーが直感や独りよがりで採用することを避けるためだ。Googleは、例えばこのようにしてアンコンシャスバイアスを排除しようと努めている。

マネジャーの意識・考えを変える取り組みは、他にも数多く行われている。代表的なのが、「マネジャーサーベイ」だ。全マネジャーが年に2回、必ずチームメンバーからフィードバックを受けるのだ。初めての際にショックを受けないマネジャーはいないというほど、率直で厳しいフィードバックが返ってくる。それらの意見を受けて、マネジャーは内省したり、チームメンバーと話し合ったりして、自らのあり方を変え続けていく。

このサーベイと対話・内省のサイクルを回すことで、チームとしての学習が進む。チーム内の心理的安全性がこれを強力に支持する一方で、この安全性への信頼もさらに高まるという。こうやって、学習するチームができ上がっていく。メンバーは孤独にならずに、むしろチームに貢献しているという自信が生まれる。

本音で語り合うことで、壮大な目標を達成することができる

Googleは、なぜここまでして、心から本音で語り合えるカルチャーを構築しようとするのだろうか。谷本氏は、その理由をこう語る。

「これは私なりの理解ですが、本音で語ることを重視するのは、壮大な目標をスピーディーに達成するために欠かせないからです。例えば、私たちが日々使うOKR(Objectives and Key Results)という仕組みは、“どこに向かっているのか?(目標)”と、“その目標に近づいていることをどう把握しているのか?(前進していることを示す主な成果)”の2つにフォーカスすることで、チームや個人の目標を明確化するものです。また、この会社では、ムーンショット(困難だが壮大な挑戦)という言葉もよく使います。

OKRとムーンショット。2つのキーワードが表しているのは、Googleが、壮大な目標を立て、それを実現しようと試み続ける集団だということです。そのためには、一時的には対立してもよいから、全員で自由に意見を出し合い、活発に議論する。つまり、チーム学習をする必要があるのです。それには、心理的安全性が必須だ、というわけです。心理的に安全でなければ、私たちは心から本音で語り合いチーム学習することができず、結果として、目標達成はもちろんのことムーンショットなどは到底実現できないのです」

チームの目標を明確にした上で自由に意見を出し合うことが、なぜ壮大な目標をスピーディーに実現するのだろう。そう思う方がいるかもしれない。谷本氏はこう答える。

「私自身も実際に経験してビックリしたのですが、社内の多様なメンバーが、互いのリスペクトが整った場に集い、あらゆる意見を出し合うと、多くの方が想像するとおり、最初は必ずゴチャゴチャになります。ところが不思議なことに、チーム目標やムーンショットがシェアされたなかでこれを行うと自然と議論がある一点に向けて収束していくのです。全員が全員をリスペクトし、全員の声に心を開いていると、みんなが優れた意見に頷くからです。本音で語れる場を用意すると、結果的にチームの意見がスピーディーにまとまっていくケースが多いのです」

コーヒーを飲みながら1on1で対話する文化が根づいている

最後に、Googleのワークスタイルを簡単に紹介したい。Googleは社員を全面的に信用し、自由と責任を与えている。ジョブ型の雇用だが、「20%ルール」というものがあり、本人が希望するなら、業務時間の20%を本業以外のプロジェクトに費やしてもよい。一方で、いわゆる一斉人事異動はない。異動するときは、必ず社内公募に自分からアプライする形となっている。スケジュール管理は各自に任されており、働く場所も基本的に自由だ。重要な会議にテレビ会議システムで参加するのも、珍しくない光景だという。産休・育休などの制度も手厚い。

デジタルツールの進化は、すさまじい。例えば、社内中のドキュメントが共有されており、検索すればほとんどなんでも見られる状態にあるのだという。面白いのは、「1on1対話カルチャー」だ。Googleのオフィスには、各階にカフェや食堂がある。それは、30分単位で、コーヒーを飲みながら1on1で対話する文化が根づいているからだ。そうやって各自が自由にネットワーキングし、自分の可能性を広げ、興味を探求していく場なのだ。

壮大な目標を達成するために、あるいは新しい価値を創造していくために、一人ひとりが尊重され、本音で語り合えることを大切にしている。そのためのソーシャル・サポートは、情緒という観点でも情報という観点でもGoogleは、企業として最大限に整備しているといえるだろう。

【text:米川青馬】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.54 特集1「職場におけるソーシャル・サポート希薄化する人間関係にどう向き合うか」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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