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若手社員の本気を引き出すために

若手は今、何を想う

  • 公開日:2005/05/12
  • 更新日:2024/04/11
若手は今、何を想う

『人材白書2005』(社団法人日本経営協会)によれば、「今後、重点的に人材開発を計画している階層」として、50%近くの企業が「若手社員」を選択しています。これは「中間管理職」「中堅社員」に次いで高い値であり、また前年比では11%増と、他の層と比較しても高い伸び率を示しています。団塊世代の大量定年を控え、また少子化が進む中で、企業の成長のためには若手社員の育成が欠かせないという認識が広まっているといえそうです。

一方で、若手社員の育成については多くの企業が課題を抱えており、必ずしも満足のいく対策が取れているとはいえないというのが実情のようです。リクルートワークス研究所の「Works 人材マネジメント調査 2003」によれば、若手の能力・態度について「満足している」「やや満足している」と積極的な回答をした企業は半数に満たず、「満足している」と回答した企業に限ると1割程度にとどまっています。実際、弊社のセミナーアンケートなどに寄せられた意見にも、「自分から仕事を取りにこない、指示待ちだ」「会社へのロイヤリティがない」「コミュニケーション能力が低い」「モチベーションが低い」などなど、若手についての悩ましい声が多く見られます。

今回の特集では、若手社員の現状について整理し、そこから考えられる若手育成のヒントについて考えていきたいと思います。

上司・先輩から見るコミュニケーション・ロス(1)
若手から見るコミュニケーション・ロス(2)
「今」の若手の価値観
「今」の若手の就職観を生む背景
若手の本気を引き出すヒント

上司・先輩から見るコミュニケーション・ロス(1)

弊社が2005年5月に実施した世代別の就業観調査で、「あなたが仕事をしている中で、世代間のギャップを感じることはありますか」という質問を用意しました。その質問に対して寄せられた、30代以上の方の回答の一例です。

上司・先輩から見るコミュニケーション・ロス(1)

「そうそう」と思わず頷きたくなるコメントも少なくないのではないでしょうか。
また、ここには取り上げていませんが、マナーについての意見も多く見られました。
仕事に対する姿勢、周囲との関係性など、日々の接点の節々で「おやっ?」と感じる場面があるようです。
では、次に20代以下の方からの回答を見てみましょう。

若手から見るコミュニケーション・ロス(2)

下記は、同じ質問に対して寄せられた、20代以下の方の回答です。

若手から見るコミュニケーション・ロス(2)

いかがでしょうか。
仕事の進め方の違い、仕事に対するスタンスの違い、仕事や会社に求めるものの違い。さまざまな考え方・価値観の「違い」が、上司と部下や先輩社員と若手社員の間に存在すること、そしてそれが時として両者の関係性構築の妨げにもなり得ることが見えてきます。

■若手の視界

しかし、これらの価値観や考え方の「違い」は、生育環境や就労環境が違えば当然起こり得ることで、ある意味当然のことともいえます。

比較的自由に物を買い与えられてきたこと、ゆとり教育のもとで勉強をしてきたこと、携帯メールがコミュニケーションの主力であること、「自分らしさ」探しを大切にすること……いずれも若手が育ってきた現実であり、その中で醸成されてきたスタイル・価値観ともいえるでしょう。これを受け入れぬまま、一方的に若手の考え方や価値観を批判していても、反発が生じ、コミュニケーションが効果的に機能しないことは容易に想像がつきます。
若手がそのような環境の中で育ってきたことは、動かしようのない「過去」なのです。何十年にわたり会社を育ててきた人間が、「会社のために働くなんてダサイっすよ」と若手に一方的に言われたらカチンとくるのと同じことです。
若手をマネジメントする上での第一歩は、彼・彼女たちの「視界」を捉えることであり、それを踏まえて彼・彼女たちを活かすにはどうしたらいいかを考える必要があるといえるでしょう。

次のページでは、弊社で行った調査をヒントに、若手が仕事に対してどのような考え方・価値観を抱いているのかを少し整理して見てみます。

「今」の若手の価値観

ここでは、2005年5月に弊社で実施した意識調査の結果の中から、大きく「会社」「仕事」「対人関係」の3つの側面について、他の世代に比べて若手に特徴的に見られた傾向について触れてみたいと思います。

【会社】
・「会社の発展に貢献したい」「会社の成長のために仕事を進んでやる」という意識は弱い
・会社は「自分を成長させる」ための場であると捉えている
・「影響力の大きい仕事がしたい」「大きな権力を手にしたい」という傾向は強い

【仕事】
・「自分のやりたいこと」ははっきりさせておくべきと考え、その実現のためなら転職もいとわない
・やりたいことの実現のためには努力を惜しまず、仕事は「自己実現の手段」と捉えている
・興味のない仕事は自分の成長につながらないと感じ、そのような仕事にはやる必要を感じない
・「自分がやったことの成果がすぐに見える仕事がしたい」「自分の成果を評価してほしい」という傾向が強い
・失敗は成長のために必要なものとわかっているが、仕事に失敗は許されないという感覚が強い
・忙しそうな人に声をかけるのはためらってしまう
・「自分の仕事に協力を求めるのは相手の負担を増やすようで気まずい」と感じる

【対人関係】
・尊敬できる上司の存在は重要だと思っている
・仕事を進める上で飲み会も必要だと思うし、職場の人についても知りたいと思っている
・世代が違う人と話すことには気を遣う
・「自分のキャリアにプラスになる人間関係の構築に時間を割きたい」と考えている

いかがでしょうか。納得できるもの、意外に思われたもの、それぞれあったのではないでしょうか。
これはあくまでも全体で見た傾向であり、当然若手一人一人、持っている価値観は異なることに注意する必要があります。しかし、全体として環境変化の影響を受けて表れてくる世代の傾向というものは、ある程度読み取ることができるのではないでしょうか。

次のページでは、これらの傾向から見えてくる若手の意識について、育ってきた背景なども踏まえた考察を加えてみたいと思います。

「今」の若手の就職観を生む背景

■若手の持つ自立意識

以上の調査結果から、現在の若手が共通して持っているのは、仕事に対する「自分中心」という価値観と、「自分で居場所を見つけなければいけない」という強い意識だといえます。思春期が、終身雇用や年功序列の崩壊の時期に当たり、それに伴って安定的だった個人と会社との関係がゆらいでいく様子をメディアを通じて、あるいは身近なところで感じていた彼・彼女たちは、会社に対する信頼や依存心を持ちづらくなっているのかもしれません。

それゆえに、自分の力で社会を生き抜いていくために、早期に「自分らしさ」を確立し、自分の興味のある、強みを発揮できる領域で成長していきたいと考えるのではないでしょうか。その裏には、周囲に取り残されないように、「回り道をしたくない」「早く効率よく成長していかなければいけない」といったような、ある意味での焦りのような一面も垣間見えます。

■若手の持つ向上意識

「影響力を発揮すること」や「出世すること」を意識しているのも特徴的な側面ですが、その出世像には必ずしも「管理職」としての役割だけではなく、「世の中に対して影響力を発揮できる姿」と「周囲から必要な人材と認められることによる居場所の確保」の双方を求めている傾向があります。
その意味では、影響力を発揮する場は「ある特定の会社」である必要は必ずしもなく、自分の存在価値を高めることで周囲に必要とされる人材となり、その「自分らしさ」を発揮できる場所を求めているといえるでしょう。このような新たな「成長」「出世」像は、旧来の終身雇用や年功序列制度が崩壊した今、新しい社員活性施策を考える上でのヒントといえるかもしれません。

一方でそのように若手が捉える「自分らしさ」は、見方を変えればキャリアの浅い「彼・彼女たちの中での自分像」であることも十分に認識しておく必要があります。彼・彼女たちが本当に持っている「らしさ」や「強み」に気づかないまま、自分で描いている自分像に捉われて自己完結してしまう、そんな危険性も十分にはらんでいるのです。

次のページでは、そのような彼・彼女たちを活かすためのヒントを探ってみます。

若手の本気を引き出すヒント

彼・彼女たちを活かすための第一歩は、彼・彼女たちの価値観を理解すること、見えている現実を理解することにあります。つまり、今、目の前の若手が「何に関心を持ち」「どういう個人でありたいと思っているのか」をしっかりと踏まえることが重要といえるでしょう。

その上で、それらと会社として彼・彼女たちに求めるもの、期待するものとの接点を見つけそこに取り組ませることが、「自分のために」と本気になれるフィールドをつくり、そこでの経験を通じて視野を広げていくことにつながるのかもしれません。

■若手を取り巻く環境を捉えるために

若手が置かれている現実を捉える観点として、以下のようなフレームを考えてみます。
これらはどれか一つだけが整備されればよいものではなく、すべてが有機的につながってこそ大きな意味を持つものです。
「採用時の会社紹介の仕方を工夫した」「研修を導入した」「先輩社員をつけて面倒を見るようにした」……これらは彼・彼女たちを取り巻く環境の一側面でしかありません。また、不安も多く、目の前に起こる出来事に一喜一憂してしまいがちな若手に、全体的なつながりを示すことでそれぞれの側面に意味とシナジーを生み出すのが、若手を預かるマネジャーの一つの役割ともいえるのではないでしょうか。

若手の本気を引き出すヒント

与えられている職務(OJT)
・環境の変化により、極端に難しいレベルの課題になっていないか
・先々の成長のために必要なステップであることが示されているか
・本人にとって、成功体験ややりがい、効力を実感しやすい内容になっているか

Off-JT施策
<新人時>
・仕事を実際に進める上での基本となるスキルや知識などの不安が取り除かれているか(※ビジネスマナーや仕事の基本、業務上必要な知識など)
<若手期>
・施策の内容が若手の置かれている現実(成長ステージ)を捉えたものになっているか
・OJTとのつながりが意識されているか

本人のキャリアパス
・ロールモデルとなるような存在が身近にいるか
・本人が描く将来のイメージと現在の職務につながりが示せているか

採用時のメッセージ
・採用時のメッセージと入社してからの現実にギャップを感じてはいないか
感じているとすればそれはどこか
・本人が会社のどこに魅力を感じて入社したのかを周囲が理解できているか

配属時のメッセージ
・配属先の業務がその後の成長に与える意味を本人に伝えられているか
(本人の希望と異なる配属の場合は特に)

上司・先輩の関わり方
・若手が直面している現実を正しく理解できているか
・適切なフィードバックの機会を増やし、業務に対する姿勢や会社として大切にしていることを伝えられているか

本気になった若手の力は、間違いなく組織を活性化させ、会社を成長させる原動力となるはずです。その力を活かしきれていないとすれば、会社にとっても個人にとっても機会の損失であり、「宝の持ち腐れ」であるともいえるでしょう。
業務の高度化、ここ数年の採用抑制、育成のための余裕の不足など、若手を育てにくい環境ではあるのかもしれません。

ただ、育成に向けた第一歩は、「相手を理解する」こと。若手の本気を引き出すために、若手を理解するために。つい上司や先輩に遠慮してしまう若手に、こちらから一歩近づいて、彼・彼女たちが思っていることを受け止めることから始めてみてはいかがでしょうか。

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