特集
人材・組織開発領域における潮流やテーマ
ASTD 2005 世界大会 International Conference & Expo
- 公開日:2005/08/01
- 更新日:2024/04/11

毎年米国で開催されるASTD(全米訓練開発協会)の国際会議・展示会(International Conference & Expo) は、今年はフロリダ州オーランドで開催されました。(2005年6月5日~9日)
今回は2005年のASTDで感じられた、人材・組織開発領域における潮流やテーマ内容をご紹介したいと思います。
ASTD とは
・ASTD(米国訓練開発協会:本部/米国ヴァージニア州アレクサンドリア、1944年設立)は、人材開発・職場における学習に関する世界最大規模の会員制組織。現在、世界100カ国以上7万人の会員、さまざまな規模の企業を含む数千の組織会員から成っています。
ASTDは人事・人材開発担当者、トレーナー、コンサルタント、組織マネジャーなどに、専門家としてのトレーニング、及び情報・サービスを提供することによって、職場における学習促進、成果向上に貢献することを目的としています。
・ASTD国際会議&展示会は年に1回米国の都市で開催され、今年はフロリダ州オーランドで行われました。開催期間中は連日さまざまなテーマのセッションが行われるカンファレンスと、研修商品やeラーニングなどさまざまなサービスプロバイダー・ベンダーが自社ブースを出展するEXPOがあります。
カンファレンスのセッションの質は玉石混交ですが、本領域における主要テーマの全体の潮流・トレンドが捉えられます。またグローバル企業発表事例からのベンチマーキングなどができる場として多くの知見が吸収できます。
展示会では、商品サービスを提供する企業のブースが出展され、学習とパフォーマンスの向上を支援するさまざまなサービスやツールが紹介されています。
【2005年国際会議・EXPO概要】
EXPO出展社数:354社 カンファレンスセッション数 約300件
参加者数:7500名以上 (参加国数 72カ国)
<参考:海外参加者詳細>

ASTD2005の主要テーマ
以下が2004年から2005年にかけての主要テーマです。
2005年のASTDのカンファレンスでは、際立って新しいテーマやコンセプトが打ち出されたという印象はありませんでした。しかし、個人にスキル、情報、知識を提供するトレーニングというこれまでの枠を超え、ラーニング(学習)を組織としての能力、成果にどのように結合させていくかという大きなテーマが全体に流れていました。

主要テーマにおけるトレンド(1)
1. リーダーシップ
ASTDでは、毎回著名な方々の基調講演が行われます。今回の開催にあたる基調講演は、元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニ氏と、企業の組織変革を手がけた後、現在ニューヨーク市の教育改革に取り組んでいるボブノーリング氏によるもので、自らのリーダーシップの実践が語られました。全体を通して本テーマへの関心の高さがうかがえ、象徴的であったといえるでしょう。
リーダーシップ領域における流れには以下のような点が挙げられるかと思います。
1)リーダーシップは学ぶものである
「リーダーシップは学ぶものである」という基調講演における元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏の言葉に象徴されるように、リーダーシップとは、個人が自ら伸ばしていく能力、開発担当者側からみると、開発していく能力という考え方が定着しています。そして、個々人のリーダーシップをどのように開発していくかという実践的な方法への関心の高さがうかがえました。これを反映してか、りーダーシップが職務権限によって与えられている初期レベルから成熟していく段階的なモデルや、自身から、チーム、組織、社会へと拡大していくモデルなどレベル論的なものが紹介されていました。
2)リーダーシップ開発手法
企業のリーダーシップ開発の事例の中では、現場の課題をそのままプロジェクト化し、そのプロセスの中でさまざまな学びを深めるといったアクションラーニングが主流になっていました。リーダー開発の手法的には「ストーリーテリング」という、個人のリアルな経験を場でストーリーとしてグループの中で語り、共有することによって皆が学ぶ、気づく、という手法が複数のセッションで共通して取り上げられていたのが特徴的でした。また、コーチングやメンター制度を使った1対1で人が関わる育成手法も、開発手法として既に欧米では確立している様子でした。
3)セルフリーダーシップ
セッションでは個人としてのリーダーシップが数々の場で取り上げられていました。誰もがリーダーであり、人や周囲に影響をもたらしているという考え方や、開発プロセスにおいては「己を知る」を起点としているところが印象的でした。
2. ROI
予算を獲得するための投資対効果測定は長年のテーマですが、実際のセッションでは、効果を測ることそのものの重要性への関心は引き続き高いものの、精緻に定量化・数値化する手法を追い求めるというよりも、計測できない価値をどう表すか、どう組織内で認知してもらうかが重要だという傾向になっています。昨年紹介された手法として、業績に対してプログラムの寄与度と信頼性を掛けるという方法がありますが、今年もこれを活用した事例が紹介されていました。実際にROIとして計測している企業は15%程度であると言われており、今後もこのトレンドは大きくかわらないものとみられます。
今回紹介された新しい方向性としては、企業経済価値(EVA)のような将来価値の中で測れないかという考え方が出されていました。また、効果測定の方法として受講者観察サーベイ、受講者や上司などに対するインタビューのほか、バランススコアカードに組み込むことも一つの可能性として提示されていました。
【ASTD会場近景】

主要テーマにおけるトレンド(2)
3. eラーニング
eラーニングは、一時のブーム的な色は無くなり、既にラーニング(学習)の中の一部であるという位置づけに変化してきているようです。セッションでは実践例の紹介が主になっていました。展示会でも、eラーニングに特化した企業の出展は縮小傾向にあるようです。
ただ、eラーニングをどうデザインするか、といったセッションや書籍は数多くあり、学習者にとって魅力的なeラーニングコンテンツをどのようにデザインし、提供するかといった点においてはまだ進化していく可能性があるのかもしれません。
変化が激しい環境においては情報や知識の更新頻度は確実に速まっており、このため、個々人が必要な瞬間に必要な情報、情報源にアクセスできる仕組みの整備が必要だという主旨から、職場におけるナレッジマネジメントと現場におけるリアルタイムなラーニングが一体化されていくのではないか、といったコンセプトも提示されていました。
4. トレーニングからラーニング(学習能力)へ
これまで集合研修は、足りないスキルや知識を身につけるという位置づけで企業に導入されてきたケースが多かったかもしれません。しかし、このギャップを埋めるアプローチでは、今日のビジネス環境の変化に追いつかなくなっています。これを受けて、大きな流れとして、人材開発担当者の役割は、学習(ラーニング)というプロセス全体を、どのように組織の中でデザインし、学習する「能力」を高めるのか、という視界になってきています。OJT(業務)においてはワークプレースラーニングといわれる日常業務の中でのナレッジを共有し、すぐに学びを実際の業務に反映させていく取り組みが挙げられます。またOFFJT(研修)においてはスキル・知識習得はeラーニングで、また集合研修は現場の課題に直結したものを相互作用によって学び合うアクションラーニングで、という風にさまざまな手法を通して学びが深まるようにプロセスをデザインして導入するという流れが顕在化しています。この結果、集合研修の場は、単発的なイベントではなく、全体の学習プロセスの中の一部分であり、参加者の相互作用の中で学びを深め、気づきや意識の変容を促すという場としての価値が強まっています。また、アクションラーニングの場合は、数ヵ月など長期間にわたって継続する学習プロセスとして導入されている点が特徴的です。
5. 左脳で学ぶコンテンツから、体験から学ぶコンテクストへ
情報や知識といった「コンテンツ」ではなく、「コンテクスト」(文脈・本質的な意味)を学習することが大切だというメッセージが数多くのセッションで共通して伝えられていました。変化のスピードが加速する今日のビジネス現場では、すぐ陳腐化してしまう情報や知識を伝達するのではなく、行動・実践に適用できる本質的な「コンテクスト」を経験から学びとれる場や機会を、いかに提供するかという重要性が強調されてきています。この傾向は、これからの人材開発手法や人材開発担当者の役割に大きな影響を与えていきそうです。

人材開発担当者にとってのポイント
人材開発担当者にとってのポイントは?!
1)トレーニング導入からラーニングデザインへ
研修商品を導入するだけでなく、体系的に「学習」を促進するデザインを考えよ!
2)育成施策目的の明確化
育成施策を導入するときにはどんな課題に対して、何を目的に、どんな成果を求めるかゴールを明確に。何をもって成果とするのかを事前に設定することがポイント!
3)コンテクストを学ぶ場の提供
コンテンツを提供するならeラーニングや書籍で充分。集合研修の場は相互学習の中でコンテクストを掴める場に!左脳的な知識伝達ではなく、右脳を使う手法に注目!
4)組織的なラーニングアビリティ(学習能力)の向上
人材開発は研修だと思っていませんか?日常のさまざまな機会、場の提供を通して学ぶ力を高めていく仕掛けを!
5)個人⇒集団的、組織的な能力開発手法
個人の人材開発が必ずしも組織の力につながるとは限りません。組織力につながる人材育成施策を!
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