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発展ステージに照らして課題を認識

組織の「ひずみ」は、人事に解消できるか?

  • 公開日:2015/01/21
  • 更新日:2024/04/11
組織の「ひずみ」は、人事に解消できるか?

貴社の組織マネジメントは、組織の「発展ステージ」に適したものでしょうか?
弊社の調査・研究では、組織の発展に伴って人・組織の問題が生じ、その問題に応じて都度、組織マネジメントを進化させる必要があることが分かりました。そこで今回の特集では、組織の「発展ステージ」に照らして現在と未来の課題を認識できる「組織の発展モデル」をご紹介しながら、今後の組織マネジメントのヒントを考えていきたいと思います。

組織の発展が生む「ひずみ」とは?
4段階の発展ステージとその特徴
組織状態を把握するコツ
「ひずみ」を克服! 施策展開のポイント(1)
「ひずみ」を克服! 施策展開のポイント(2)

組織の発展が生む「ひずみ」とは?

A社「近年、事業の拡大とともに社員が増加している。現場からは、少人数でやっていた頃と比べて、社内の風通しが悪くなっているという声も上がっている。新しいマネジメントのスタイルを考える必要があるのではないか……」

B社「全社の方針に沿って、年度ごとに各事業部が前年のレビューと次年度計画を策定している。組織の規模が大きいため、全体最適を意識して、結果が予測できるものを計画に盛り込んでいるのはいいが、未知の領域へのチャレンジや投資ができていないのではないか……」

この2つは、弊社にお客様から寄せられる相談の一例です。A社は急成長を続けるベンチャー企業、B社は多くの人がその名を知る大手企業です。企業の規模も相談の内容も全く異なりますが、2つの相談には共通点があります。それは、それぞれの人事の悩みが組織の「発展ステージ」に起因しているということです。

組織の発展が生む「ひずみ」とは?

人間が生まれてからいくつもの発達段階を経て成長するように、組織にも発展の段階(=発展ステージ)が存在します。組織の拡大・成熟に伴い、多くの企業ではこれまでのやり方が通用しなくなる状況、すなわち、組織の「ひずみ」に直面します。そして、人事が頭を悩ませる多くの問題は、この「ひずみ」の影響を少なからず受けているのです。
したがって、人事としては、この「ひずみ」を乗り越えて、効果的な組織マネジメントができるように手を打つことが重要です。しかし、現在の自社組織の「発展ステージ」を見定めることは簡単ではありません。ましてや、今後起こりうる事業拡大や環境変化を見越して、未来の人事課題を予見することは至難の業です。

では、人事はどのように組織の発展ステージを見極め、手を打つべきなのでしょうか? 次のページでは、まず4段階の「発展ステージ」についてご紹介します。

4段階の発展ステージとその特徴

弊社の調査・研究では、企業が事業拡大に応じて4段階の顕著なステージを経て発展していくことが分かりました。加えて、各段階での、典型的な組織状態(初期特徴)と「ひずみ」も明らかになりました。弊社ではこれらを「組織の発展モデル」と呼んでいます(図表1)。

図表1.組織の発展モデル

なお、ここで言う「組織の発展」とは、次の2つの意味をもちます。
・事業規模の拡大に伴う人員の増加(店舗、拠点、工場の拡大/間接部門、管理部門の拡充)
・創業からの時間の経過による成熟化(共通する価値観の醸成/業務の磨きこみ・熟練)

もちろん個別の企業ごとにタイミングは異なるものの、基本的には「創業ステージ」から順を追って、移行していくと考えられます。では、4つのステージの特徴をそれぞれチェックしていきましょう。

1. 創業ステージ
志を同じくする仲間同士が事業を立ち上げ、企業組織を形成する段階。
システムは未整備であるものの、暗黙のうちに方向性が共有されており、製品・サービス開発と市場での生き残りに全精力が傾けられる。一方で、リーダーや少人数に頼りきる経営の限界に直面する。

2. 拡大化ステージ
拡大するニーズに対応して、売上と組織・人員規模を急拡大していく段階。
権限の階層化や分業が進むが、効率化よりも、増員や部署の増設を積極的に推し進めて事業拡大を目指す。一方で、属人的な業務運営の限界に直面する。

3. 公式化ステージ
株式上場やISOなどの社会的な承認を目指して、組織が公式化を進めていく段階。
組織は、安定的・継続的成長に向けて、属人性を排除し、生産性の向上を図る。一方で、行き過ぎたルール化や標準化による組織効率の低下に直面する。

4. 最適化ステージ
組織全体としての効率を継続的に高めていくことをねらって、全体最適化を志向する段階。
組織的な協力を促進することや、社員の多様な価値観に対応することが求められる。変革に向けたビジョンの共有と実践、横断プロジェクトの立ち上げや多様なキャリアパスの構築を行う。

このように、企業を持続的に発展させるために必要な人事施策は、組織のステージによって大きく異なります。まずは自社のステージを適切に把握することが、効果的な組織マネジメントの第一歩です。

自社のステージが確認できたら、次に自社の組織状態を把握する要素についてご紹介します。

組織状態を把握するコツ

前述の調査・研究を通じて、組織の状態を把握する観点が10個あることが分かりました(図表2)。加えて、10個の観点を用いて、発展ステージごとの「初期特徴」「ひずみ」を説明できることも明らかになりました。そのなかの1つである「1.方針の立案展開」について、組織の発展ステージごとの「初期特徴」「ひずみ」をご紹介します(図表3)。

図表2.組織を捉える10の観点/図表3.「方針の立案展開」の初期特徴とひずみ

さまざまな観点で自社組織の特徴を把握することができれば、必要な打ち手も考えやすくなるはずです。しかし、10個の観点のすべてを理解して、セルフチェックすることは簡単ではありません。

そこで、より簡易に自社組織の状態を把握するためのコツとして、「ひずみ」が起こる3つの要因をご紹介します。次の3つの要因を知っておくことで、日常の業務を通じて組織の状態を把握し、打ち手が考えられるようになります。

要因1. 社員の働く意識
規模が小さいときは挑戦心に溢れ、成長を求める社員が多く在籍しています。しかし、徐々に規模が大きくなると、安定を志向する社員が増えていきます。
→安定志向の社員が増えることで、チャレンジや変革が起こりにくくなっていないでしょうか?

要因2.把握できる視界の範囲
創業期には、経営陣が全社を見渡すことができます。しかし、組織が大きくなれば、各人の役割が明確になり、分業化が進むことで、経営者も管理職も一人ひとりが把握できる範囲はどんどん狭くなっていきます。
→個々が限られた視野・視界で取り組むことで、結果的に部分最適や短期志向に陥りやすくなっていないでしょうか?

要因3. コミュニケーションパス
社員数が少なければ、コミュニケーションの経路は単純かつ短いもので済みますが、社員数が多くなるほど、経営陣のメッセージは複雑で長い道筋をたどって全体に届く傾向が強くなります。
→情報伝達のコストが大きくなり、結果として判断・行動のスピードが遅くなっていないでしょうか?

以上を踏まえて、組織の「ひずみ」にどのように対処していけばいいかについて、その施策展開のポイントを、次のページ以降でご紹介します。

「ひずみ」を克服! 施策展開のポイント(1)

「ひずみ」を克服するための施策は、企業の発展ステージや現状によりさまざまなものが考えられるため、ここでは優先順位や進め方を考えるための「施策展開のポイント」をご紹介します。

●典型的な課題と打ち手
ステージ移行時の典型的な人事課題と打ち手の方向性を知っておくことが重要です。「ひずみ」の一つひとつへの個別対応に陥ることなく、俯瞰的に施策を検討することを可能にするためです。

典型的な人事課題と打ち手の方向性を、図表4でご紹介します。

図表4.ステージ移行時の典型的な人事課題ろ打ち手の方向性

次のページでは、残る2つの施策展開のポイントを紹介します。

「ひずみ」を克服! 施策展開のポイント(2)

●組織に対する共通認識をもつ場
多くの企業では、自社の組織の状態について、日常的に議論する機会はほとんどありません。現実の施策を実りあるものにするためには、まず組織運営に関わるメンバーが、自社の組織について共通認識をもち、テーマの重要性に合意していくことが重要です。そのとき、今回ご紹介している「組織の発展モデル」が役に立つかもしれません。

実際に、ある企業の研修プログラムでは、このモデルを使った議論の場をもちました。その際、参加者の方々からは、「自社の組織の実態を俯瞰して確認できた」「ひずみを解消しないまま、会社の規模が拡大していっていることが再認識できた」「何が起こるか分かるので、今後手を打つべき課題が見える」などの声が上がりました。

「組織の発展モデル」を参考にしながら、自組織について議論の場をもつことをお勧めします。

●組織状態の「モニタリング」のしくみ
社員向けの意識調査などを活用して、定期的に組織の状態を確認することができれば、「ひずみ」が発生する兆しを捉え、先手を打つことが可能になります。例えば、毎年1回、調査を実施・分析して、具体的なアクションを起こしていくしくみを作ると有効です。また、組織力や組織風土について多面的な情報収集を行なうことで、組織の状態を鮮明に把握することができます(図表5)。

図表5.組織状態の「モニタリング」のしくみ

組織の発展ステージに伴って生じる「ひずみ」を放置することは、事業へ悪影響を及ぼすおそれがあります。事業拡大の方向性と組織の発展のベクトルを合わせていくことは、人事にとってますます重要なテーマとなっていくでしょう。今回ご紹介した「組織の発展モデル」がその一助になれば幸いです。

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