連載・コラム
さあ、扉をひらこう。Jammin’2026 owner session report
熱量のある「やりたい」があれば、あとは自ずと実現する。Jammin’でそう学んだ(島津製作所・米倉さん)〈オーナーセッション〉
読了時間:10分
- 公開日:2026/09/14
- 更新日:2026/09/14
いよいよ今年も「Jammin’2026」がスタートした。リーダーセッションは9月から始まるが、それに先立ち、7月に「第1回オーナーセッション」をオンラインで開催した。オーナーとは、リーダーを派遣する企業の人事担当者などの皆さんである。実はオーナーたちも、Jammin’期間中に全4回の「オーナーセッション」に参加して学び合っている。今回は、Jammin’卒業生の米倉拓弥さん(株式会社島津製作所)に「Jammin’で得られた学びと現在の仕事や活動」について語ってもらった。その内容を紹介する。

株式会社島津製作所
製造本部 生産統括部 分析計測工場品質技術課 主任
米倉拓弥氏
- さあ、扉をひらこう。Jammin’2026 owner session report
- 熱量のある「やりたい」があれば、あとは自ずと実現する。Jammin’でそう学んだ(島津製作所・米倉さん)〈オーナーセッション〉
- 目次
- 卒業生・米倉さんの視点から見るJammin’
- 「もっと早く現場に行けばよかった」と後悔している
- 高齢者たちの「自分のことは、もういいから」が忘れられなかった
- 高齢者の孤独感と無力感を解決する「AIファシリテーター」を創出
- “やってみる”起点で、“いかしきる”“ひきつける”ができるようになった
- 現在は社内新事業を立ち上げながら、Jammin’の仲間と会社を設立
卒業生・米倉さんの視点から見るJammin’
第1回オーナーセッションは、Jammin’2026の概要とポイントの説明から始まった。当然ながらブラッシュアップは続けているが、受講者たちが「自己と組織を継続的に変革することができる共創リーダーとして成長する」という目的をはじめ、Jammin’の要点は今年も不変である。大きな変化があるとすれば、2025年から生成AIの活用が活発になったことだ。2026年も、受講者たちには必要に応じて生成AIを積極的に活用してもらいたいと考えている。
次に、Jammin’2024介護コースに参加した卒業生の米倉拓弥さんに登場してもらい、オーナーに向けて「Jammin’で得られた学びと現在の仕事や活動」について語ってもらった。米倉さんのチームは、AIファシリテーター「コンチェルト」の事業案をプレゼンテーションし、見事に特別賞を受賞した。米倉さんたちは2年後の今もコンチェルト事業を推進しており、2026年6月に株式会社を立ち上げたばかりだという(株式会社Concerto Labs)。Jammin’でどのような経験を積むことができたのか。Jammin’でどういった学びを得られたのか。どうやってAIファシリテーターの事業案を創出したのか。今、どのような姿勢や心境でビジネスに取り組んでいるのか。いろいろと伺った。
「もっと早く現場に行けばよかった」と後悔している
米倉さんがJammin’に参加した動機は、大きく3つあったという。「私はこれまで10年、島津製作所で液体クロマトグラフの開発に携わってきました。もちろんやりがいは感じてきましたが、一方でこのままでいいのだろうかという想いもありました。漠然と新規事業に関わってみたかったのですが、自分が向いているかどうかが分からず、Jammin’で確かめてみたいと思ったのが1つ目の参加理由です」。米倉さんは、今後のキャリアを考える判断材料を得たかったのである。
2つ目の理由は、リーダー力を高めたかったからだ。「リーダーのポジションに立つことは多かったのですが、自信がありませんでした。自分の得手不得手を再認識したうえで、リーダーとしての能力を高めたいという気持ちがありました」。3つ目は、越境体験がしたかったからだという。「学生時代は、さまざまな大学生が集まって共同実験する場によく参加していたのですが、社会人になってからはそういう場に足を運ばなくなりました。久々に越境したいと思い、Jammin’に手を挙げました」
そんな米倉さんだが、Jammin’には後悔があるという。「もっと早く介護の現場に行けばよかったと思っています。私たちのような素人が現場に行ったら、いったい何を言われるのだろう、私たちがどこまで関わっていいのだろうという不安があり、初めの一歩が遅れたのです。介護コースのトレーナーに『もっと現場に行きなよ!』と背中を押されて、私たちのチームはようやく現場に行くようになりました。また、介護コースの専門家・秋本可愛さん(株式会社Blanket代表取締役)と野沢悠介さん(株式会社Blanket取締役)のおかげで、介護現場特有の入りにくさを克服できたことも大きかったです」。これからJammin’に参加する皆さんには、米倉さんの後悔も踏まえ、Jammin’が始まったら、できるだけ早く現場に足を踏み入れてほしい。
高齢者たちの「自分のことは、もういいから」が忘れられなかった
一度現場に足を踏み入れてから、米倉さんたちは変わった。「介護コースの活動としてあらゆる場所に足を運びました。デイサービスやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)施設、介護付き有料老人ホーム、高齢者向けワークショップ、高齢者の地域交流などを見学しました。また、タウンミーティングに参加したり、自治会の高齢者との対話会を行ったり、要介護者にヒアリングしたり、認知症の方と会話したりもしました。首都圏だけでなく、関西や九州にも積極的に赴きました」
米倉さんはいつからそのように積極的に活動するようになったのだろうか。「私の活動に火がついたきっかけは、チームの仲間たちと『研修とはいえ、本気でやるならどうする?』『自分たちが本気で向き合える“不”って、何なんだろうね』と話し合ったことでした。この問いに向き合ったとき、私たちの取り組みは課題のための活動から、自分たちが本気で向き合えるものを探す活動に変わり始めたのです」
そんな米倉さんが、現場に通うなかで出会った忘れられない言葉があるという。「何人もの高齢者たちが、話している最中に『自分のことは、もういいから』とおっしゃるのです。私たちはこのような高齢者の孤独感と無力感に繰り返し触れて、これは何とか解決しなくてはならないと思うようになりました」
高齢者の孤独感と無力感を解決する「AIファシリテーター」を創出
こうして米倉さんたちのチームの「不」は定まった。「私たちはフィールドワークを重ねるなかで、多くの高齢者が孤独感と無力感を感じ、自己肯定感を下げている実態を知りました。私たちはこの『不』を解決する事業案として、AIファシリテーターというアイディアを創出したのです」。AIファシリテーターとは、要介護者同士の会話の輪に入って、彼らに質問を投げかけたり、話に相槌を打ったりして、会話を活性化させる存在だ。またAIファシリテーターはこれまでの会話を覚えており、参加者の好みや思考も把握している。
自分の話を聞いてくれる存在がいるだけで、高齢者たちの孤独感は和らぐ。その存在が自分の過去の話を覚えていて、自分のことをよく理解してくれていたら、孤独感はさらに減って会話が楽しくなるはずだ。介護者は、そんなふうに要介護者たちが楽しく会話していれば安心できるだろう。このようなAIファシリテーターを開発できたら、介護施設のサービスの質向上のために導入する運営者は少なくないのではないか。そのような考えのもとで企画した事業案である。
もちろん米倉さんたちは、この事業案に至るまでにさまざまな試行錯誤をしている。「私たちはこのアイディアを思いつくまでに、さまざまな現場でいろいろな人とひたすら話をしました。あるとき、要介護者の方々の会話が盛り上がって、ある人の入れ歯が飛んだことがありました。このとき、私たちは要介護者の方々が潜在的に人とつながる機会を求めていることを強く認識したのです」
最初は、単にAIが要介護者さんたちと会話するサービスを考えていたという。「ところが、専門家の秋本さん、野沢さんや社内外の人たちに、要介護者と話すAIサービスをどう思いますかと聞いて回ったところ、『AIと話すのってどうなんだろう?』『要介護者さんにはもっと一人ひとり色があるはずだ』などとおっしゃるのです。私たちは、AIが話し相手になるだけでは面白いサービスにならないことに気づきました。それなら、AIが人と人の話す場をつくるサービスがよいのではないかと考えたのが、AIファシリテーター誕生の経緯です」。その後、米倉さんたちは実際にAIファシリテーターを開発し、現場で要介護者の皆さんにプロトタイプを使ってもらい、実現性を確認している。
▼AIファシリテーター「コンチェルト」の事業提案資料(一部抜粋)


“やってみる”起点で、“いかしきる”“ひきつける”ができるようになった
Jammin’の負荷はどの程度だったのだろうか。「子育てと通常業務にプラスしてJammin’の日々でしたから、相当大変でした。ただ、メンバーの『ぶっちゃけ力』が高かったことに救われました。メンバーも同様に子育て期や繁忙期にあり、『今ちょっと仕事がきつい』『子育てで手が離せない』などと、初期の頃から隠さずに言い合えたのです」
では、その大変さを乗り越えた先に、どのような学びがあったのか。「そもそも私は、“やってみる”は得意でしたが、“いかしきる”と“ひきつける”は苦手でした。ところがあるとき、メンバーの1人がこう言ってくれたのです。『米倉さんは、“やってみる”起点で、“いかしきる”と“ひきつける”もできるようになっているよ』。言われてみれば、確かにそうでした。私はJammin’のなかで、とりあえず自分でやってみながら、周囲を巻き込んだり、周囲に魅力的なストーリーを語ったりしていたのです。これが私なりのリーダーシップスタイルなのだと思えるようになりました。自信がついたのです」
今、米倉さんはJammin’の学びを日々の仕事に生かしているという。「Jammin’卒業後、私は社内でも、困ったときには会社のいろいろな部門を頼って巻き込むようになりました。法律で困ったら法務部に行き、DB構築の必要があると思ったらグループ内のIT部署にアタックするようになりました。これは自分にとって大きな進歩です。こうして会社のいろいろな部門を知れば知るほど、自社のすごさも分かってきました。島津製作所には、いろいろな技術や専門性を持った人がたくさんいます。『科学技術で社会に貢献する』という島津製作所の社是に従って、彼らの技術や専門性を社会に生かしたいという気持ちも高まっています」
他には、Jammin’でどのようなことを身につけたのだろうか。「できるだけ現地に行く機会を増やし、力になりたい、助けたいと思えるポイントを見つけようとするようになりました。また今は、自分で動くものをつくって見せることを大切にしています。2026年4月から製造本部に異動したのですが、この部門はITに詳しい方ばかりではないので、口で説明するよりも実際に動くものを見せた方が協力や同意を得られやすいのです。それから、社内各方面に遠慮せず声をかけてつながりをつくり、それが途切れないように気を使うようにもなりました。そのつながりが意外に後で生きることがよくあるからです。いずれも、Jammin’で身につけたやり方です」
現在は社内新事業を立ち上げながら、Jammin’の仲間と会社を設立
さらに今、米倉さんは社内の新事業案件にも携わっている。Jammin’参加前に望んでいたとおり、新規事業にチャレンジしているのだ。「社内のチームメンバーと共に、エンジニアとデイサービス利用者の座談会や、高齢者向けの島津製作所本館見学会などを開いています。これらの取り組みは単なるボランティアではなく、開発者がユーザー像を明確にする機会や、本社徒歩圏内のデイサービスとのつながりを構築する機会になっています。今、これらの新事業が他の事業部や研究所を横断した大きな動きに進化しつつあります」。
米倉さんはプライベートでも、地域活動や地域イベントに参加するようになったという。「Jammin’以前は、自治体や地域活動にはまったく興味がなく、むしろ参加したくないタイプでした。それがJammin’で180度変わりました。一度つながる経験をしたことで、次のつながりを探す癖がついたのです。地域活動を起点に、介護に関わる意外なつながりや多種多様な職種とのつながりが生まれています」
一方で米倉さんたちは、Jammin’の事業案であるAIファシリテーター「コンチェルト」の事業展開にも継続的に取り組んでいる。「一度知った社会課題を無視して生きていくことはできません。今は新たな仲間も加わって7人で活動しており、2026年6月に株式会社として登記しました(株式会社Concerto Labs)。今後、コンチェルトを本格的に事業として立ち上げ、要介護者たちの『不』の解決に乗り出します。そのためにAI開発や現場検証などを着々と進めてきました。専門家の秋本さんや野沢さんにも相談に乗ってもらっています」
最後に、米倉さんからメッセージをもらった。「私が一番伝えたいのは、熱量のある『やりたい』があれば、あとは自ずと実現するということです。『やりたい』を起点に自分で何かをすると、つながりが生まれ、次の何かが起こります。それを繰り返していたら、いつの間にか実現するのです。そして『やりたい』の熱量は、必ず現場から生まれます。Jammin’はそれを実感する場でした」
米倉さんのお話が終わった後は、質疑応答を経て終了した。Jammin’2026では、どんなリーダーの活躍があるか楽しみだ。いよいよこれからが本番である。
【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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