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オンボーディングの質を高めるには?

カギとなるのは「社員理解の解像度」

読了時間:10

  • 公開日:2026/08/24
  • 更新日:2026/08/24
カギとなるのは「社員理解の解像度」

オンボーディングにはOJTや1on1、マネジャーによるフォローといったさまざまなアプローチがあり、組織の状況によって最適な支援のあり方も変わります。弊社でもオンボーディングを随時見直しており、今回は人事が主管する形で、オンボーディング施策のアップデートを行いました。本記事では、オンボーディングを全社的にアップデートした背景や具体的な取り組み、実施を通じて見えてきた変化を、人事グループ・牟田伸吾が人事ならではの視点でご紹介します。

オンボーディングを見直したきっかけは、“ローキャリア層の増加”
オンボーディング強化に向けた取り組みを開始
「インサイズ」の導入により、個の変化と組織の特徴を捉えやすくなった
サーベイを「呼び水」に、施策全体を進化させる

オンボーディングを見直したきっかけは、“ローキャリア層の増加”

――はじめに、オンボーディングを全社的にアップデートすることになった背景について教えてください。

新卒入社・キャリア入社問わず、社歴の浅い社員(ローキャリア層)の立ち上がりを、部署ごとではなく全社で支える必要性が高まったことが大きな理由です。

牟田様の画像

弊社は人材・組織領域のソリューションビジネスを提供している会社です。扱っているサービスの多くは無形財であり、お客様に提供できる価値の多くが、社員一人ひとりのスキルや経験に依存しやすい側面があります。だからこそ、入社した社員が早期に職場や仕事に適応し、活躍できるよう、部署ごとのOJTや1on1、サーベイなどを活用したオンボーディングによって、立ち上がりを支援してきました。

ただ、ここ数年はキャリア採用をかなり増やしていたため、社歴3年未満の社員が全体の35%を占めるようになりました。そこで、これまでのオンボーディングだけではサポートが行き届かない、と考えるようになったのです。

――ローキャリア層が増えると、現場ではどのような課題が生まれやすいのでしょうか。

部署にもよりますが、マネジャーの負担が増えます。マネジャーは部下育成だけでなく、マネジメント業務を幅広く行っているので、育成するメンバーが増えればその分、部下一人ひとりと向き合う時間は少なくなってしまいます。本当は手厚く関わりたくても、入社後のフォローに十分な時間をかけられなくなってしまうことも珍しくありません。

また、弊社のキャリアステップには、「入社から半年を目処に、任せる仕事の領域をぐっと広げる」という特徴があります。成長志向の強いメンバーが多いこともあり、例えば営業であれば、入社後から徐々に担当領域を広げながら、半年を目安に一人前の担当顧客を任せられるようになります。関わる人の数や仕事の量も引き上がるので、当然フォローに入るべきタイミングも増えるのですが、ローキャリア層が多い部署では手が回らなくなるケースも起こりがちです。

加えて、ローキャリア層が増えると人事側に届く情報も偏りやすくなります。「最近少し元気がなさそうだ」とか、「協働者とうまく連携できていないかもしれない」とか、どうしても早期離職に関わりそうな心配事が届きやすくなるんです。

もちろん、現場の課題は人事として把握しておくべきですが、それだけではローキャリア層の状況をフラットに見ることが難しくなります。弊社では部署ごとに人材開発委員会という会議を定期的に実施しており、マネジメント層が配下メンバーの状況を共有しているのですが、それでも状況をタイムリーに掴み切るのは難しいと感じていました。

そこで、ローキャリア層の早期戦力化や定着、入社後の立ち上がり支援をよりスムーズにするために、人事が主管する形でオンボーディングをアップデートしようということになったんです。

オンボーディング強化に向けた取り組みを開始

――オンボーディング強化の人事施策として、具体的にどんな取り組みを行いましたか?

オンボーディングを強化するためには、ローキャリア層のコンディション把握と、上司と部下のコミュニケーション促進が欠かせないと考えています。人事施策としてはさまざまなアプローチがありますが、今回は弊社のサービスである「インサイズ」を全社で活用することにしました。

牟田様の画像

「インサイズ」を活用するメリットは、主に2つあります。1つは、社内の良いところも悪いところも含めて、全体の状況をきちんと掴めることです。現場から人事に届いたSOSが組織全体の課題なのか、特定の部署・メンバーだけの課題なのか、あるいはまだ人事には見えていない課題があるのか……。こういった分析は、統一された指標で行わないとなかなか全容が見えてきません。特定の部署が独自にサーベイを実施したり、人事も特定の対象に別のサーベイを実施したりしていましたが、「インサイズ」に一本化することで人事も現場も同じデータを活用できる状態にしたいと思いました。 

もう1つは、1on1の質を高めることです。弊社はテレワークの社員が多く、対面でコミュニケーションを取る機会も限られています。だからこそ1on1は、部下のコンディションを把握するうえでとても重要な機会になるのですが、オンライン上のコミュニケーションだけで相手が抱えていることをすべて把握するのは難しいものです。上司と部下のコミュニケーションが少ないなかで、いきなり「最近どう?」と聞くのも唐突な感じがしますよね。

一方、「インサイズ」では32問の心理アンケートを通して、その時の血圧を測るようにコンディションを把握できます。1on1で「インサイズの結果を見たよ」と必ずしもストレートに話すとは限りませんが、話題のきっかけとしても活用しやすいのではないかと思いました。

<インサイズを用いた分析結果の一例(一部を加工しています)>

また、オンボーディングに「インサイズ」を活用するにあたり、社員の自己認知と環境認知を分けて見られるところも分析に役立ちました。あまりモチベーションが上がらない部下がいたとして、その原因が職場や対人関係といった環境にあるのか、当人の仕事との向き合い方やキャリア観にあるのか、切り分けて見ることができたのです。

弊社はマネジメント領域に力を入れている企業なので、新入社員やキャリア社員向けのオンボーディングにも前向きに取り組むマネジャーが多くいます。ただ、「人材育成に前向きな組織をつくれば、社員のコンディションも万全になるのか」と問われたら、決してそうではありません。社員から見た今の職場環境や、「職場には満足しているけれど、何故かモチベーションが上がらない」という社員の現状を把握するためにも、自己認知と環境認知を分けて捉えられる仕組みが必要だと考えました。

――「インサイズ」はどのような頻度で実施しましたか?

20代の若手については、入社から2年間、毎月回答をします。若手の社員はいろいろな刺激によってメンタリティが変化しやすいですし、1年目は好調でも2年目に心境が大きく変わる人もいるので、入社2年目まではフォローが必要だと感じたためです。

30代以上のキャリア入社者については、入社から1年間、2カ月に1回の頻度で「インサイズ」を利用します。「サーベイの結果の読み取り方や活用方法を知りたい」というマネジャーがいた場合は、適宜ガイダンスも実施しています。気になる結果が出たメンバーについては、私たち人事から上司に声をかけ、状況を確認することもありました。

「インサイズ」の導入により、個の変化と組織の特徴を捉えやすくなった

――「インサイズ」の導入後に得られた成果や、印象に残ったことを教えてください。

「インサイズ」の毎月のアンケート結果により、社員の状況はかなり見えるようになったと感じています。特に社員が働くうえで大切にしていることや、月ごとの変遷など、一人ひとりのコンディションの解像度が上がりました。

印象的だったのは、社員のモチベーションが上がったタイミングに気づきやすくなったことです。「インサイズ」の導入後、結果がやや心配な社員の上司に声をかけて、対応を相談するようにしていました。すると、なかにはその翌月に結果が好転することがあったのです。マネジャーが速やかにフォローに入ることで、当人の捉え方が上向いたことがはっきりと分かるのが印象的でした。

また、20代の「インサイズ」の結果には、結構浮き沈みがあります。50代の私からすると「物事の一つひとつにここまで一喜一憂するのか」と少し眩しくもあるのですが、いろいろな浮き沈みがありながら、徐々にコンディションが安定して成長していく様子が分かりました。

案件が立て込めばコンディションは悪化しますし、自分でうまくさばけるようになってくると、モチベーションも上がってくる。そうした繰り返しを見守ることで、セルフマネジメントを支えやすくなるのも、「インサイズ」を導入した成果の1つだと感じています。

さらに、全社でサーベイを統一したことで、弊社の特徴を俯瞰的に把握することもできました。例えば、仕事の質や量に対する負担をやや感じている社員が多い一方で、マネジャーに対するストレスは全体的に少ないことです。この結果からは、マネジャー層がメンバーを丁寧に支援できている様子がうかがえました。また、成長志向の高い社員には一定の負荷がかかっていることも分かったため、負担が過度にならないようサポートしていきたいと思っています。

サーベイを「呼び水」に、施策全体を進化させる

――「インサイズ」を導入した結果、現場からはどのような意見がありましたか?

牟田様の画像

上司層向けのアンケートでは、「メンバーの状況把握に役立った」という回答が全体の約8割、「メンバーとの1on1に役立った」という回答が約3分の2を占めました。1on1での生かし方としては、「インサイズの結果を見たよ」と直接話すのではなく、「最近こんなことが少し気になっているのかな」と、水を向けるための情報源として使われているようです。

メンバーからも、「上司との対話のきっかけになった」「自分の内省やセルフマネジメントに役立った」「周りに見てもらえている安心感があった」といった声が寄せられました。新たなサーベイを導入するにあたって現場の負担が増えることも心配していたのですが、1回のアンケートにかかる時間が4~5分に抑えられていることもあり、今のところ無理のない運用ができています。

一方で、上司層からは「インサイズのアンケート結果は、既に把握していた情報だった」という声もありました。もともと上司と部下のコミュニケーションが十分にできている場合、インサイズでは新しい発見を得られないこともあります。それはそれで、良好な状態であることを把握できたという意義がありました。

――「インサイズ」で見えてきたことを、他の施策につなげる動きもあるのでしょうか。

まだ道半ばですが、いくつか動きはあります。例えば、「インサイズ」の集計結果を各部門の責任者が集まる会議で報告したところ、「この結果を使って、どのようにオンボーディングを強化していくか」というディスカッションにつながりました。「インサイズ」というアンケートを呼び水にして、メンバーの育成について考えを深めるきっかけになったのではないかと思います。

また、新入社員の配属前に行ったメンタルヘルスのガイダンスでも、「インサイズ」の集計データを基に、弊社の傾向を伝えることができました。一人ひとりがきちんと成長していくために、一定の負荷がかかる環境であることや、マネジャー層がしっかりと新入社員をサポートしているという傾向を、説得力を持って話せた感覚があります。

今回のオンボーディングのアップデートを通してあらためて感じましたが、オンボーディングは特定の誰かが1人で行うものではなく、いろいろな関係者がローキャリア層を見守りながら進めるものです。だからこそ、人事や上司といったコア層が、新しく入ってきた仲間たちについて、同じ解像度で会話できることが重要なのだと思いました。「インサイズ」を共通言語の1つとして活用しながら、今後もオンボーディングを進化させていきたいです。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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