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マネジメント変革で組織を動かす【後編】

戦略人事の実現を阻む「横の分断」を乗り越える

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  • 公開日:2026/04/20
  • 更新日:2026/04/20
戦略人事の実現を阻む「横の分断」を乗り越える

中編では、戦略人事の実現に向けて、縦の分断(経営と現場)を解消する管理職の重要性と、マネジメント変革を推進するために、管理職「個人」と取り巻く「環境」の両輪アプローチの必要性について論じました。あらためて確認すると、マネジメント変革とは、マネジャー自身のスキル・スタンスの改革と、マネジメントを取り巻く環境・仕組みの改革の2つからなります。後編では、これらを実際に推進するための人事部門間の連携の重要性と、統合的なアプローチについて解説します。

本シリーズ記事一覧
マネジメント変革で組織を動かす【後編】
戦略人事の実現を阻む「横の分断」を乗り越える
マネジメント変革で組織を動かす【中編】
戦略人事の実現を阻む「縦の分断」を乗り越える
マネジメント変革で組織を動かす【前編】
戦略人事の実現を阻む2つの「分断」
横の連携強化──人事部門間の協働
横の分断を生む2つの問題
人事企画と人材開発をつなぐ情報連携の重要性
情報連携を実現するアプローチ
制度・育成・支援の三位一体で考える統合的ソリューション
おわりに──統合的アプローチが変革を加速する

横の連携強化──人事部門間の協働

ここで、前編で論じた「横の分断」の解消に話を戻しましょう。制度・仕組みは主に人事企画部門が、能力開発は主に人材開発部門が担当するのが一般的です。両部門が連携しなければ、施策の一貫性は保てません。

例えば、人事企画部門が1on1制度を導入する際、人材開発部門と協働して管理職向けの研修を設計し、さらにHRBPと連携して個別支援の体制を整える。こうした横の連携があって初めて、管理職は「何をすべきか分かる(制度)」「どうやるか分かる(育成)」「困ったときに相談できる(支援)」という状態になります。

しかし、多くの企業では、こうした横の連携が十分に機能していません。その背景には、2つの問題があります。

【図表1】人事組織の一例

横の分断を生む2つの問題

1.各人事機能の「縦の意識」の希薄化

第1の課題は、各人事機能が経営戦略との整合性を見直す頻度が低いという点です。

人事施策は年単位で動く期間の長いものが多く、設計当初は経営戦略との整合性を考えていても、次第に「ただ運用する」状態に陥りがちです。一方で、現場は環境変化にともない日々変化し、経営戦略もアップデートされています。にもかかわらず、人事部門は「経営と合意したことなので」という理由で人事施策を見直すことが少ないのです。経営側も、明日の業績に直結しないため、都度の見直しの必要性を強く感じません。

ここで強調したいのは、各人事機能の責任者クラスが「縦の意識」──経営戦略との整合性を常に意識し、環境変化に応じて見直す姿勢──を持つことの重要性です。各機能の責任者の視野や視点が狭ければ、機能間の分断はさらに拡大し、人事部門全体の機能不全を招きます。

各機能が縦の意識を持つことで、機能間の連携も自ずと必要性が高まります。なぜなら、経営戦略を実現するという共通の目的に向かって、各機能が協働する必然性が生まれるからです。

2.機能間連携の頻度・スピード不足

第2の課題は、機能間連携の頻度とスピードです。人事部門としての規模が大きくなり、組織の機能分化が進むほど、情報共有や意思決定に時間がかかるようになります。

比較的小規模な人事組織では、各部門の小さなトピックがリーダー間で常に共有されています。「誰々からこんな問い合わせが入った」「誰とこんな面談をした」等々です。1つずつは大きな判断や施策に影響のあるものではなくとも、そうした定性情報の積み重ねが、人材配置や各機能の施策提供判断などに反映されていきます。一方で、大企業においては、こうした高頻度・高速度の情報連携を実現することが難しいかもしれません。しかし、だからこそ意識的に仕組みをつくり、連携の頻度とスピードを高める工夫が求められます。

人事企画と人材開発をつなぐ情報連携の重要性

マネジメント変革を成功させるには、人事企画部門と人材開発部門が連携し、制度と育成を一体的に設計・運用することが不可欠です。しかし現実には、両部門は異なる専門性を持ち、別々に動いていることが多いのです。人事企画部門は制度設計や仕組みづくりに強みを持ち、人材開発部門は研修や育成プログラムの企画・運営に強みを持っています。

ここで重要なのは、組織間の適切な情報連携がされている状態をつくることです。人事企画部門が評価制度を見直す際、人材開発部門がどのような研修を実施しているかを把握している。人材開発部門が管理職研修を企画する際、人事企画部門が進めている制度変更の方向性を理解している。部門人事が現場の声を拾い上げたとき、それが本社人事の企画・開発部門に適切に伝わり、施策改善につながる。こうした情報の流れが確保されていることが、施策の一貫性と実効性を生み出します。

【図表2】人事部門が持つべき縦の意識と情報連携

情報連携を実現するアプローチ

情報連携を実現し、その頻度とスピードを高める手段としては、いくつかのアプローチがあります。

共通の目的とKPIの設定がまず重要です。経営戦略や人事戦略について共通認識を持つこと。そのうえで、人事企画部門と人材開発部門が共通のKPIを持ち、施策の効果を一体的に測定します。例えば、「1on1実施率」だけでなく「1on1を通じたキャリア目標設定率」や「メンバーのエンゲージメントスコア」など、施策の質を測る指標を共有することで、両部門が同じ方向を向いて動くことができます。

この共通基盤のうえで、具体的な連携の仕組みを構築します。

定期的な情報共有会議を設け、各部門の進行中の施策や現場の声を共有する場をつくります。重要なのは、単なる報告会ではなく、同じ現実やファクトを見る場にすることです。現場で起きている事象、従業員の声、データから見える傾向などを共有し、経営戦略との整合性や施策の改善について議論します。こうした共通認識の形成が、形骸化を防ぎます。

組織横断プロジェクトを立ち上げ、特定の人事テーマ(キャリア自律推進やマネジメント変革など)について、企画から定着まで一貫して関わる体制をつくります。プロジェクト形式にすることで、日常業務とは別に、集中して協働できる環境を整えます。

ハブ人材の活用も有効です。人事部門内外をつなぐハブとなる人材を配置し、組織の壁を越えて調整する役割を担ってもらいます。このハブ人材は、各機能の状況を把握し、連携の機会を見出し、スピーディーに情報を流通させる役割を果たします。

そして、もう1つ重要なのが人事機能間の異動(流動)です。全員とはいわないまでも、リーダークラス・リーダー候補は2~3年程度で機能を動かすことで、統合的に人事機能を見る経験を積むことができます。こうした人材の流動が、組織の壁を越えた理解と協働を促進します。

しかし、現実には「この業務はこの人でなければ回らない」という意識が、こうした流動の最大のボトルネックとなっています。特定の人材に依存した状態が固定化され、中長期的な人材育成や組織能力の向上が後回しになってしまうのです。

【図表3】情報連携を実現するアプローチ

外部パートナーを戦略的に「ハブ」として活用する

ここまで述べてきたように、マネジメント変革を社内リソースだけで推進するには、多くの困難が伴います。組織間の適切な情報連携の仕組みづくりと運営、専門的なアセスメント・サーベイツールの運用と分析、制度と育成の統合的な設計、質の高い研修プログラムの開発、管理職への個別支援、継続的なPDCAの運営──これらをすべて社内で完結させるのは、現実的には難しいでしょう。

そこで有効なのが、外部パートナーの戦略的活用です。外部のHR支援企業に期待できる役割の1つが、組織間の情報連携を促進する触媒(ハブ)としての機能です。人事企画・人材開発・部門人事の間に立ち、それぞれの動きを把握しながら連携の機会を見出し、調整を行います。外部の立場だからこそ、組織の壁を越えて率直に意見を述べ、部門間の利害を超えた提案ができます。さらに、マーケット視点を持つ第三者として、経営層への働きかけにも力を発揮します。

自社の課題や文脈を外部パートナーと共有し、共に解決策を考える。外部の知見を取り入れながらも、最終的には自社の人事部門が主体となって施策を推進する。こうした協働関係を築くことで、社内外のリソースの価値を最大化できます。

制度・育成・支援の三位一体で考える統合的ソリューション

弊社のような総合的なHR支援企業が提供する価値は、個別のサービスではなく、それらを組み合わせた統合的なソリューションです。マネジメント変革を成功させるには、制度・仕組みの整備、育成・能力開発、継続的な支援の3つを一体的に推進する必要があります。

制度・仕組みの整備では、評価制度、キャリアパス、1on1の仕組み、タレントマネジメントシステムなど、管理職がマネジメントを実践しやすい環境を整えます。人事企画部門が主導し、外部の人事コンサルタントが制度設計を支援します。

育成・能力開発では、多面評価によるマネジメント点検、役割認識のアップデート、コーチングスキル習得など、対話型マネジメントに必要な能力を開発します。人材開発部門が主導し、外部の研修機関やコーチが専門的なプログラムを提供します。

継続的な支援では、HRBPや上位役職者による個別支援、外部コーチによるパーソナルコーチング支援、マネジメントを支援するTechツールの提供など、管理職が実践のなかで直面する課題に寄り添います。人事部門と外部パートナーが協働して支援体制を構築します。

この3つが連動することで、管理職は「何をすべきか分かる(制度)」「どうやるか分かる(育成)」「困ったときに相談できる(支援)」という状態になり、マネジメント変革が現場に根付いていきます。

【図表4】弊社が提供するソリューションの視界

おわりに──統合的アプローチが変革を加速する

マネジメント変革は、制度だけ、研修だけ、ツールだけでは実現しません。人事企画と人材開発が連携し、制度・育成・支援を一体的に推進することで、初めて現場に根付きます。

そのためには、各人事機能が「縦の意識」を持ち、経営戦略との整合性を常に意識すること。そして、機能間連携の頻度とスピードを高め、小さな情報も含めて日常的に共有する文化をつくること。人事機能間の人材流動を促進し、統合的な視点を持つ人材を育てること。これらが横の分断を乗り越える鍵となります。

管理職を支える「仕組み」をつくり、必要な「能力」を育て、実践を「支援」する。この三位一体のアプローチを、人事企画・人材開発・経営層が協働して推進する。その過程で、外部パートナーを活用することも、変革を加速する1つの選択肢となり得ます。その先に、戦略人事の実現と、持続的に成長する組織の姿があるのです。

執筆者

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2007年、リクルートメディアコミュニケーションズ(当時)に入社。ブライダル事業、まなび事業で広報プランニング・マーケティング職を歴任後、2022年より現職。HRD・OD事業のマーケティング業務と、各種HR調査の企画設計・分析を担当。

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