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女性活躍を加速させる組織とは?

第3回 成功企業が実践している「女性活躍」組織のためのアプローチ

読了時間:10

  • 公開日:2026/04/20
  • 更新日:2026/04/20
第3回 成功企業が実践している「女性活躍」組織のためのアプローチ

2026年4月より、常時101人以上の労働者を雇用する事業主に対して「女性管理職の比率と男女の賃金差異の公表」が義務化されます。とはいえ、こうした動きを踏まえて女性管理職比率の向上に取り組むことを、単なる義務と捉えてしまうのは少々もったいないかもしれません。投資家はESGを、求職者はダイバーシティを重視して企業を選ぶ現代において、女性人材の活躍推進はもはや企業価値と採用競争力に直結する経営戦略なのです。

これまでの記事では、女性活躍を阻む要因の1つとなっている「女性の管理職志向」の実態や、女性活躍が進みにくい企業に共通する7つの構造的な課題をご紹介しました。本記事では女性活躍推進に先行して取り組み、すでに一定の成果をあげている5社の事例から、直面した課題やその解決策、自社に応用できる実践的なアプローチなどを読み解いていきます。

本シリーズ記事一覧
女性活躍を加速させる組織とは?
第3回 成功企業が実践している「女性活躍」組織のためのアプローチ
女性活躍を加速させる組織とは?
第2回 女性活躍を妨げる7つの課題と乗り越え方
女性活躍を加速させる組織とは?
第1回 管理職志向のデータを踏まえた具体的なアプローチ
「女性活躍が進まない……」企業ごとに異なる課題
女性活躍推進に成功した企業に見られる5つの特徴
「自社にフィットした施策」の設計が女性活躍を叶える近道
おわりに

「女性活躍が進まない……」企業ごとに異なる課題

女性活躍が進まない要因は、業界や企業の風土、事業の形態などによっても異なります。そこでまずは、今回取り上げる5社が弊社にお声がけくださった際の状況と、当時直面していた課題を以下にまとめました。

ビジネスモデル

社名

業種

従業員規模

詳細

BtoC

A社

自動車販売

500名以上1000名未満

全管理職100名強のうち、女性の管理職は2名のみ。現場は男性中心の文化が根強く、女性社員からは「管理職に対して仕事とプライベートを両立して働くイメージが全く持てない」との声が上がっていました。

BtoC

B社

カード会社

100名以上500名未満

採用人材の女性比率は6割と高い一方、管理職に占める女性比率は極めて少ない状態にありました。社内アンケートでは、女性社員の8割が「管理職を目指したい」という意欲を持ちながらも、そのうちの7割が「自分には能力が足りない」という不安を抱えていました。

BtoB

C社

専門商社

500名以上1000名未満

「働きやすさ」は提供できているものの、社員が「働きがい」を実感できないといった課題を抱えていました。「女性が担当するのは他の社員のサポートや定型業務」という固定観念が社内全体に浸透しており、女性自身の目線が上のポジションに向きにくい構造になっていたことも課題の1つです。

BtoB

D社

医療系卸売り

500名以上1000名未満

人員不足が慢性的に続いており、性別を問わず次世代のリーダー候補が枯渇。数年後には役職に対して人材が不足することが明白であり、生き残りのためにはトップダウンでの組織改革が避けられない状況にありました。

BtoB

E社

システム開発

500名以上1000名未満

「5年後に女性管理職比率30%」という親会社からの高い目標設定に対し、現場のロールモデルが圧倒的に不足していました。また、専門職であるエンジニアの間で「管理職といえば現場を離れてマネジメントに明け暮れるもの」という先入観にもとづくネガティブなイメージが先行していました。

女性活躍推進に成功した企業に見られる5つの特徴

これら5社はそれぞれの課題に向き合い、異なるスタート地点から女性活躍推進のための施策を企画・導入するに至りました。その施策設計の特徴を詳しく見ていきましょう。

1.数年にわたる段階的かつ継続的なアプローチ

当時、女性管理職が2名と少なく、女性から「管理職を務めるイメージができない」という声が上がっていたA社が行ったのは、「単発の研修を実施して終わり」ではない、数年にわたるステップアップの仕組みの構築でした。

例えば、管理職としてのスキルを獲得する道のりは、以下のように「本人の意識を醸成すること」を起点として設計しました。

1年目

「この会社でならキャリアを築けるかも」という意識を醸成する(マインドセット)

2年目

周囲に対して自らの影響力をどう発揮していくべきかを考えさせる

3年目

効率的にマネジメントを行うためのスキルを養う

つまり、いきなり「管理職になろう」と背中を押すのではなく、段階的に管理職に必要な経験を積み上げていく形にすることで、本人の心理的なハードルを下げた状態でのスタートを可能にしたのです。

2.「MUST・CAN・ WILL」による全方位型アプローチ

第1回でご紹介したとおり、昨今、「管理職を目指したくない」働き手の存在は決して珍しくありません。こうした拒否反応を示す働き手には、MUST(会社からの期待)・CAN(マネジメント知識)・WILL(やりたいこと)という3つの要素のうち、どれか1要素でも含まれる施策が効果を上げやすいことが分かりました。

MUST(会社からの期待)

「会社や周囲があなたに期待していること」を伝えることで、本人が「期待に応えたい」という想いを形成し、研修受講の動機づけを行う 

CAN(マネジメント知識)

管理職に必要な知識を学ぶことで「自分にもやれそうだ」という自信を与える

WILL(やりたいこと)

本人の価値観とキャリアを接続し、管理職への昇進に対する納得感を引き出す

そこでB社やE社では、「管理職」に対するあらゆる価値観を持つ働き手が存在することを踏まえて、この3つの視点すべてにアプローチする体制を構築しました。例えば「女性管理職のロールモデル不足」に悩んでいたE社は、社員が自らのキャリアをMUST→CAN→WILLの順番で考えられる機会をつくるように施策を設計しています。

具体的には、まず社内でサーベイを実施し、管理職候補者となる社員が自身への期待(MUST)を認識できる状態をつくります。そして、マネジメントに必要なスタンスや知識(CAN)を研修などによって吸収してもらいました。そのうえで、自らの今後のキャリア(WILL)を考えられる機会を用意したのです。

こうした流れで実施される施策には、「管理職になりたくない」という漠然とした想いの裏側にある、社員自身の「キャリアへの考え」を整理する効果が期待できます。

3.「両輪のアプローチ」で、本人・上司を同時に意識改革

管理職候補者本人の意識が変わったとしても、受け皿となる職場の土壌が変わらなければ学びは定着せず、実践にも結びつきません。そして組織の変化は、上司が「部下の本当の悩み」に気づき、キャリア面談や仕事の割り振り方を変えることで初めて生まれます。

そのため将来的な管理職不足が懸念されるD社では、本人向けの研修と並行して「上司向けガイダンス」を実施し、職場全体で意識の見直しをはかりました。

また、「女性の仕事はサポートや定型業務」という固定観念が定着していたC社でも、新任管理職研修を導入し、組織に対する人材育成の意識づけが行われました。

その結果、女性活躍を「女性だけの問題」にしない意識の醸成や組織全体の管理職育成力の強化にもつながり、翌年からは上司や風土(全社員)、制度・仕組みの変革にも取り組む方針を掲げています。

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4. Off-JTとOJTの連動による現場での学び定着

研修での学びを現場で素早く実践し、その結果を振り返るサイクルをつくるため、C社では約10カ月の間に「研修→職場実践→振り返り→変革課題の提言」といった流れを繰り返す取り組みを会社主導で実践しました。

実際に、このサイクルのもとで学んだ社員のうち3名が管理職に昇格し、女性管理職比率も施策実施の初年度には8%から10%へ上昇したそうです。

5.「多様な管理職像」を示し、固定観念を脱却

管理職に対する固定的なイメージを崩すうえでは、特定の理想像にこだわらず、「こんな管理職もあってよい」という多様な管理職像を発信するのも有効な方法です。今回の事例では、以下のようなアプローチが見られました。

時短勤務者の管理職化推進(B社)

時短勤務者を積極的に管理職研修に受け入れ、「働き方に制約がある社員も管理職として成長・キャリアアップできる」というメッセージを社内へと明確に発信しました。

ベテラン層の活躍推進(D社)

主に40代以上の社員に向けて「管理職へのチャレンジは今からでも遅くない」とアピールし、自社の管理職像を再定義しました。

「自社にフィットした施策」の設計が女性活躍を叶える近道

今回ご紹介した5社は、女性活躍推進のねらいこそ異なりますが、どの企業も「自社が実現したい状態」にフィットするように施策を設計している点は共通しています。

A社:女性社員の「気づき」を店舗運営改善へ

店舗運営や顧客接点において「女性の強みを生かすことで自社の戦略を推進していきたい」というねらいがあったA社。そのため、研修の締めくくりとして、経営層の前で研修参加者全員が自分なりの学びと今後への提案を発表し、研修での気づきを具体的な店舗運営の改善につなげて考える機会を設けました。

さらに、数年間の取り組みを振り返る場では、上司だけでなく女性社員本人が「スタッフ同士のコミュニケーションで職場が明るくなることがお客様の支持につながる」「前向きな気持ちになれば行動できる」と、学びを通じて得られた考えの変化や研修の成果を発表しました。研修を受けた女性社員の変化は、発表を聞いた経営層が驚くほどのものだったそうです。

B社:「サポート役」から「事業変革の担い手」に

B社には、顧客の要望の複雑化・高度化に対応すべく、事業戦略を加速させる存在として女性社員にも周囲をリードしてほしいという期待がありました。

取り組みの特徴は、「サポート業務中心」という女性社員に対する現状の認識から脱却するため、全社的な意識醸成から視野の拡大、女性社員のスキル獲得を経て、会社や事業の変革に向けた課題の検討・提言に進むといった一連の流れのもと、段階的に施策を設計した点にあります。

C社:幅広い階層へのアプローチで組織風土そのものを変革

C社では、ビジョンの実現のためには「女性社員の能力が生かされる職場づくり」が不可欠と考え、多様な価値観を持つ人材がポテンシャルを最大限に発揮できるような土壌をつくることに重きを置いていました。

この点を踏まえ、リーダークラスやリーダー手前の中堅層、そしてその上司にあたる管理職全体への「人材育成」の意識づけなど、数年にわたって幅広い階層にアプローチすることで組織風土の醸成に取り組んでいます。

D社:本人だけでなく上司の育成にも注力

事業の拡大やグローバル展開を見据え、管理職を増やして現場と経営をつなぐ中核人材を育成することをねらいとしていたD社。ポイントは、管理職候補となる女性本人だけでなく、その育成を担う上司への支援にも力を入れていた点です。

例えば、これまで女性部下に対して遠慮がちだった上司に対しては、今までの言動を振り返りつつ、部下の支援や働きがいのある職場づくりの方法を学んでもらう機会を設計しました。

その結果、「もっと日々の会話や個々に合った方法で成長を促していきたい」「一方的に期待を伝えるのではなく、お互いが納得できる形を目指したい」など、育成する側の意識に前向きな変化が起こっています。

E社:本人の挑戦と上司の支援を連動

E社では、新たな人材の採用のためには業界内のポジション向上、社会要請への対応が重要であると考え、女性管理職の育成によって社員一人ひとりが自社でのキャリアを力強く描けるようになること、その支援を通じて上司も成長し会社に変革をもたらすことをねらいとしていました。

具体的な取り組みとしては、職場における「キャリア観のすり合わせ」「一歩を踏み出すための目標設定」「事業上重要度が高い役割や仕事へのアサイン」といった動きの推奨と、その実現に向けた上司側の動きを支援する研修を連動させ、社員本人の「やってみたい」「これならできるかも」という気持ちを引き出すような設計となっています。

おわりに

これまで全3回にわたり、女性活躍推進の現状と課題、そして効果的な施策の内容についてご紹介しました。本連載をきっかけに、日本企業の女性活躍推進にどれだけの障壁や課題があるのか、あらためて気づいた読者の方も多いのではないでしょうか。とはいえ、今回ご紹介した5社のように的確に施策を実行し、段階的にでも成果や変化の兆しをつかむ企業が増えていけば、「管理職=罰ゲーム」という風潮や社会の在り方もいずれ変わっていくことでしょう。

変化が激しく先行きの不透明な現代において、企業が生き残るためにはどんな荒波にも負けない個人と組織の力が重要となります。今回ご紹介した内容が、貴社の個人と組織のポテンシャルを引き出すうえでお役に立てば幸いです。

執筆者

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営業統括部
マーケティング営業部
ソリューションプランナー

結城 綾乃

2022年中途入社。入社以降、中堅・中小企業を中心とする営業部署にてソリューションプランナーとして、経営・人事・現場を見据えながら多領域にわたる課題解決や価値創造の支援に携わる。

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