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女性活躍を加速させる組織とは?

第1回 管理職志向のデータを踏まえた具体的なアプローチ

読了時間:10

  • 公開日:2026/03/23
  • 更新日:2026/03/23
第1回 管理職志向のデータを踏まえた具体的なアプローチ

2026年4月より、常時101人以上の労働者を雇用する事業主を対象に「女性管理職の比率および男女の賃金差異の公表」が義務化されることとなりました。こうした流れを受け、近年は女性管理職比率の向上を急務と捉える企業が増えつつあります。

しかし、女性の活躍促進に向けた動きが活発化する一方で、当事者である女性社員からは「管理職にはなりたくない」といった声が少なからず聞こえてくるのも事実です。そこで本記事では、昨今の女性管理職をめぐる実態を各種データから分析し、女性社員の管理職志向を高めるために明日から実践できるアプローチをご紹介します。

本シリーズ記事一覧
女性活躍を加速させる組織とは?
第1回 管理職志向のデータを踏まえた具体的なアプローチ
日本における管理職志向の現状
キャリアを伸ばす意欲や機会の減少が、モチベーション低下に
「管理職を目指したくない」5つの理由とは
管理職昇格後にはポジティブな変化も
すぐに取り組める3つのアプローチ
おわりに

日本における管理職志向の現状

具体的なアプローチを紹介する前に、まずは日本における管理職志向の現状を把握しておきましょう。パーソル総合研究所が2022年に実施した『グローバル就業実態・成長意識調査』の「管理職になりたい人の割合」の国際比較によると、日本のビジネス人材の管理職志向は調査対象である18カ国中最下位の19.8%となっています。このデータからは性別にかかわらず、国内の働き手の大半が管理職に対してネガティブな印象を抱いている事実がうかがえます。

一方で興味深いのは、管理職志向の経年変化に見られる男女差です。リクルートマネジメントソリューションズ(以下、弊社)が2025年に実施した『若手・中堅社員の組織適応に関する現状把握調査』内では、新卒入社1~12年目の会社員男女2110名に、管理職とエキスパート職(※管理職ではない専門性を生かす職群)に対する志向を回答してもらい、その傾向を男女別で比較しました(図表1)。 

その結果、管理職志向は男性社員の場合は入社から7年目までの間は低下するものの、8年目以降は上昇に転じる傾向が見られました。一方、女性社員は入社時から一貫して低下し続け、年数を重ねても上昇することはありませんでした。

キャリアを伸ばす意欲や機会の減少が、モチベーション低下に

この傾向について弊社では、女性社員は身近な組織のなかで管理職のロールモデルが少ない場合に「ガラスの天井(性別による昇進の壁)」を実感しやすい可能性があること。また、出産・育児などのライフイベントとキャリア選択のタイミングが重なりやすく、管理職の重責と家庭の両立に不安や負担感があることが、志向を下げている可能性があると考えています。

一方でエキスパート職志向に関しては、男性社員は入社後ゆるやかに上昇を続ける傾向があることが分かりました。こうした傾向は管理職志向の割合が増減するなかでも一定であり、その背景には専門性を高めることで「管理職と専門職、両方の選択肢を確保しておきたい」といった心理がはたらいているようです。

ここで注目したいのは、女性社員の傾向は男性の場合とは異なり、エキスパート職への志向も入社後ゆるやかに低下し続けるという点です。このことから、女性社員は単に管理職志向が低いだけでなく、専門職としてのキャリア形成の意欲や機会も失ってしまっている可能性が考えられます。

以上の傾向は、「職場で評価されにくい」「やりがいを感じにくい」など、女性のキャリアに対するモチベーションが全体的に低下しているサインと見ることができます。つまり今、日本の企業には社員にとって「管理職が魅力的かつ現実的な選択肢になる」環境を整えると同時に、女性社員の専門性を高めつつ多様なキャリアの道筋を示すことが求められているのです。

<図表1>管理職志向/エキスパート職志向(男女別の経年推移比較)

管理職志向/エキスパート職志向(男女別の経年推移比較)

出典:リクルートマネジメントソリューションズ 2025年『若手・中堅社員の組織適応に関する現状把握調査』n=2110(男性1028名、女性1082名)

「管理職を目指したくない」5つの理由とは

さらにここからは、同調査内の「管理職を目指したくない理由」についての回答データをもとに、特に多く挙げられた5つの理由から男女別の傾向を掘り下げていきます(図表2)。

1. 責任の大きさからくる心理的負担

「あまり重たい責任を担いたくないから」と回答した働き手の割合は、男性29%に対して女性は42%と、男女で13ポイントもの差がありました。

2. ワークライフバランスに対する懸念

「業務時間が増え、プライベートと仕事の両立が難しくなるから」を理由に挙げた働き手は多かったものの、その割合に男女間で大きな差は見られませんでした。昨今は共働きがごく一般的となっていることもあり、家庭との両立やワークライフバランスに対する不安は男女共通の課題と捉えるのが適切なようです。

3.報酬と仕事量の不均衡

「給与と要求される仕事量の釣り合いが取れていないと感じるから」という理由も、男女にかかわらず一定割合の働き手が回答する結果となりました。

4. 経営への参画可能性が増大することへの関心の低さ

「会社の経営に携わることに関心がないから」と答えた女性社員は24%にのぼり、男性社員の17%を上回りました。

5. 自己効力感の不足

「自分には管理職の仕事が向いていない」と感じている働き手の割合は、女性が43%、男性が39%とこちらも女性の方が若干高い傾向が見られました。「周囲から期待されている」「期待に応えられるだけの経験を積んでいる」といった確固たる自信を持てずにいることも、男女共に管理職へのチャレンジを躊躇する要因となっているようです。

<図表2>男女別で管理職を目指したくない理由

男女別で管理職を目指したくない理由

出典:リクルートマネジメントソリューションズ 2025年『若手・中堅社員の組織適応に関する現状把握調査』n=1371(男性581名、女性790名)

また、逆に「管理職を目指したい」と考えている働き手の動機も見ていくと、こちらは以下のように男女間で多くの共通点が見られました(図表3)。

・「自分の成長に繋がるから」:男性53%、女性51%
・「マネジメント能力を身につけることができるから」:男性38%、女性35%
・「高い報酬を得られるから」:男性48%、女性42%

特に個人的な成長意欲や能力開発への関心は、男女の割合にほとんど差が見られません。一方で、「経営参画」「裁量権の広がり」への関心は女性の方が低い傾向にあります。これらの点に関しては、キャリアの選択肢を広く持つための支援が行き届いていないことが実態であり、今後の課題であるといえるでしょう。

<図表3>男女別で管理職を目指したい理由

男女別で管理職を目指したい理由

出典:リクルートマネジメントソリューションズ 2025年『若手・中堅社員の組織適応に関する現状把握調査』n=739(男性447名、女性292名)

ここまで紹介してきた実態と傾向から、女性社員の管理職志向を高めるうえでは以下のような視点が重要になると考えられます。

・これまでのキャリアで積み上げてきたものは何なのか
・その結果、どんなスキルが身についたか
・今後はどんなスキルが身につけば、よりやりがいを感じながら働けそうか
・どんな影響力を周囲に与える存在になりたいか

以上の事柄について本人と対話し、自らのキャリアの道筋を明確に描けるように支援することが、これからの企業にとっては大切な取り組みとなるでしょう。

管理職昇格後にはポジティブな変化も

日本における管理職志向の低さの背景には、管理職のやりがいや醍醐味が十分に伝わっておらず、「自分には不向き」「負荷が大きそう」といった偏ったイメージが先行してしまっていることも要因として存在しています。

一方で弊社が2016年に実施した『管理職意向の変化に関する実態調査』では、昇格前は管理職に対してネガティブなイメージを抱いていた人も、実際に管理職になると半数以上がポジティブなイメージに変わるという傾向が見られました。

なかでも、管理職に昇格後の女性社員の心理的な変化としては、以下のような声が上がっています。

「“戦略を立てて動かす”醍醐味を感じられるようになった」
「事業視点など、今までなかった視点から物事を見られるようになった」
「自分だけでなく職場全体の時間をコントロールできるため、管理職になってからの方がスケジュールに余裕ができた」

 これらの反応からは、管理職になる前は敬遠されていた経営参画や裁量権の広がりに対しても、ポジティブな印象への変化があったことが読み取れます。

また、「自分の成長や部下育成の醍醐味」という観点についても以下のような声が見られました。

「部下の強みやキャリアについて考える経験が増え、人間的成長につながった気がする」
「部下から『〇〇さんのおかげです』と言ってもらえることの嬉しさに気づいた」
「仕事の成果と部下の強みがつながったときはとても嬉しく、新しい一面を発見できた」

女性にとって管理職が魅力的なキャリアの選択肢となるためには、こうした管理職の本当の魅力や醍醐味を広く伝え、それを本人が感じられる環境をつくることも重要なのです。

すぐに取り組める3つのアプローチ

ここまで紹介してきた管理職志向の傾向と実態を踏まえ、ここからは女性社員の管理職志向の向上のため、すぐにでも取り組める具体的なアプローチをご紹介します。

1. 対話の機会を増やす

かつてある企業で実施した研修で、参加者の女性が「本音を言ってもいいですか?」と手を挙げ、こんな話をしてくれたことがありました。

「私は小学生の娘を育てつつ、介護もしながら今の仕事をしています。今回の研修は私にとってチャンスでもありとても嬉しいのですが、これ以上は頑張る余力がありません。どうしたらよいのでしょうか?」

社員のなかには、上記のような状況に置かれている人もいます。このことを把握しないまま突然「期待しています」とだけ投げかけても、本人は負担やプレッシャーを感じ、管理職の役割を“背負うべき荷物”として受け止めてしまう可能性があります。

社員に対して周囲が「管理職として期待したい」と思っていたとしても、その期待に応えられるか否かは、本人が現状をどう受け止め、どのように考えているかに左右されます。まずは本人との対話の機会を増やしながら、個人のペースを尊重して段階的に期待を伝えるようにしていきましょう。

2. 昇格前後のギャップの解消

現在の日本には「管理職=罰ゲーム」というような風潮があることから、社員によっては「管理職」に対して偏った認識を持っている可能性も考えられます。

そのため、もし社員本人が管理職に対して「自分には不向きだ」と感じているようであれば、まずは段階的に責任のある役割を任せ、そのなかで成功体験を積み重ねてもらう「プレマネジメント期間」を設けることをお薦めします。

例えば、現在の業務の延長線上として社内プロジェクトのリーダーを任せ、まずは小さなチームを運営してもらうのも1つの方法です。ほかには、複数の後輩の育成に関わってもらったり、課長の補佐役として課長の代わりに判断してもらう機会をつくったりするのも有効でしょう。

3. 社内の人脈や接点を増やせる仕組みづくり

自らの将来像を描くうえでは理想を体現する「ロールモデル」の存在が重要ですが、価値観や働き方が多様化する昨今、一人ひとりが自分に合ったロールモデルを見つけるのは簡単ではありません。

逆にいえば、社内で活躍する管理職の「等身大の姿」に触れる機会があると、その姿をロールモデルとして「自分にもできるのでは」「自分もこうなりたい」という感覚が生まれ、管理職志向の醸成につながる可能性が高まります。

そこでまずは、活躍中の管理職を身近な存在として感じられるような環境づくりに取り組んでみましょう。直属の上司以外とも1on1で話せる機会をつくるなど、社内で自然に人脈が広がるような仕組みを整えると、相談先の選択肢や情報の幅が広がります。

このとき、紹介する相手はいわゆる「完璧なロールモデル」である必要はありません。むしろ成果を出そうと試行錯誤していたり、仕事と生活のバランスを模索していたりといった「今の状況に前向きに取り組んでいる姿」を見せてくれる人の方が共感しやすく、キャリアへの前向きな気づきを与えてくれはずです。

また、人は誰しも身近に悩みを相談できる相手がいないと、心理的な負担が大きくなりやすいものです。その点において、こうした社員同士の交流の場を設けることは、管理職になった後も悩みを1人で抱え込まない体制をつくることにも効果を発揮します。

おわりに

女性の管理職志向の低さは、個人の意識改革だけで解決できる問題ではなく、状況の改善には会社側のサポートが欠かせません。まずは本人との対話を通じて今後のキャリアについてすり合わせ、段階的な成長機会を継続的に提供していく体制を整えることが大切です。

2026年の女性管理職比率の公表義務化は、見方を変えれば優秀な働き手を生かして企業の持続可能性を高めるチャンスと捉えることもできます。上述した施策例はあくまで小さな一歩ではありますが、その実践が大きな力を生み、組織の未来を変える一助となることを願っています。

執筆者

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ソリューションプランナー

結城 綾乃

2022年中途入社。入社以降、中堅・中小企業を中心とする営業部署にてソリューションプランナーとして、経営・人事・現場を見据えながら多領域にわたる課題解決や価値創造の支援に携わる。

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