連載・コラム
職場における新人育成の実態調査2024
組織と新入社員、どちらの成長も加速させる「職場全体が連携」した育成手法【後編】
- 公開日:2025/06/30
- 更新日:2025/06/30

あらゆる業界・規模の企業から聞こえる、新入社員育成への「育成担当者(※)のみに育成を任せることに限界を感じている」という声。本コラムの前編では、そんな企業が直面する育成課題の背景や、育成経験がもたらすメリットについて解説しました。
【後編】では、新入社員育成を推進するにあたって、お薦めしたい育成手法について解説。組織と新入社員、どちらの成長も加速させる効果的な方法を、詳しくお伝えします。
※育成担当者:新入社員の業務遂行や成長支援をする役割。企業によっては「OJTリーダー」「OJT担当者」「メンター」などと呼称する場合もある。
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- 「育成担当者任せ」は限界? 企業が直面する新人育成の課題と、育成経験がもたらすメリット【前編】
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職場全体が連携した育成手法の可能性
近年、育成担当者のみに育成を任せることに限界を感じるという企業が増えています。そのような状況下で育成に成功した企業の特徴を探ると、育成を「職場全体で連携」して進めている傾向が見えてきました。職場全体が連携した育成であれば、新入社員育成の成功はもちろん、育成担当者が潰れてしまうリスクを避けられるだけでなく、職場の風土をよりよくしていけます。
職場全体が連携した育成とは、<図表8>のように、育成担当者と新入社員のみの接点ではなく、上司と育成担当者が新入社員について連携を図ったり、職場のメンバーと新入社員を上手くつなぐ手法です。
<図表8>職場全体が連携した育成

実態はどうでしょうか。職場での新入社員育成体制についての設問では、「上司と育成担当者に加え周囲の同僚とも連携」「上司と育成担当者の連携」「育成担当者中心」がそれぞれ30~40%程度という結果でした。
<図表9>職場での新入社員育成体制
Q9. 職場での新入社員育成は、どのような体制で進めましたか。(単一回答/n=1,226)

本調査で特に注目したいのが、「職場全体が連携した育成の効果」に有効性を感じられる結果となったことです。以下で詳しくご紹介します。
■「職場全体が連携した育成」がもたらす効果
先ほどの新入社員の成長への評価<図表4>(前編参照)と、職場での新入社員育成体制<図表9>の関係を分析したのが図表10です。
結果、職場全体で育てる取り組みは、新入社員の成長への評価にも寄与していることが見受けられました。
「上司と育成担当者に加え周囲の同僚とも連携」では47.6%が、新入社員が期待どおりに成長したかの問いに対して「とてもあてはまる」もしくは「ややあてはまる」を選択していました。「上司と育成担当者の連携」では44.1%、「育成担当者中心」では41.0%という結果でした。つまり、関係者が広がるほど新入社員が期待どおり育っている傾向が見られたのです。
また、育成担当者中心の育成体制だった場合に、新入社員が期待どおりに成長したかという問いに対し「全くあてはまらない」と回答している割合が最も高かった(7.2%)のも印象的でした。
<図表10>新入社員の成長と職場での新入社員育成体制
【横】Q9. 職場での新入社員育成は、どのような体制で進めましたか。(単一回答/n=1,226)
【縦】Q4. 担当した新入社員は、期待どおりに成長しましたか。ご自身から見た評価で構いません。(単一回答/n=1,226)

さらに、職場全体が連携した育成のメリットを聞くと、「チームワークの強化」や「担当者の負担軽減」のほか、新入社員目線でも「視野の広がり」や「チームへの順応」に寄与している結果も得られました。
<図表11>職場全体が連携して育成することのメリット
Q11. 関係者が連携して育成することのメリットを教えてください(育成する側のメリット、新入社員のメリット)。(自由記述/n=543)

■職場全体が連携した育成を行うメリット
今回の回答から大きく3つのメリットが考えられます。
● 1つ目:組織のチームワークや成長
育成担当者の回答から、職場内の凝集性が高まったという回答が多く見られました。新入社員育成という「共通したテーマ」に皆で向き合うことで、対話の頻度や質が上がり、一致団結できるケースが考えられます。
● 2つ目:育成担当者の負担軽減や育成方法のアップデート
誰もが忙しいなかで、育成を担うことには心身ともに負荷を感じる人も多いです。実際に、工数負荷軽減のみならず「安心感を得られた」というような心理的側面のメリットを回答している育成担当者も多く見られました。
また、周囲の意見やアドバイスが、育成方法のアップデートにつながったという回答も多数存在しました。近い将来、育成担当者がリーダーやマネジメント職につくケースもあり、育成経験によって培った育成スキルは、新入社員育成という限定的な役割にとどまらず、育成担当者の今後の活躍に生かされることになるでしょう。
● 3つ目:新入社員へのさらなるメリット
まず、新入社員に多様な観点で育成を行うことで、視野・視界が狭く凝り固まってしまうリスクを避けられるといった回答が見られました。納得感を重要視する新入社員の傾向を鑑みると、選択肢から選べる状態にする効果は大きいと考えます。
また、新入社員が自分の育成対象を離れた後のメリットに関する回答も多く見られました。これは新入社員が自律して仕事を進めていくなかで、分からないことや悩みも出てきた時に、新入社員が1人で抱え込んでしまうことを防ぐことにつながります。
このように新入社員の育成は、方法次第で新入社員の成長だけではなく、組織の活性化につながり大きなリターンを得られる可能性があるといえるでしょう。
職場全体を巻き込んだ育成を推進していくために
では、実際に職場全体が連携した育成を推進していくためには、どのようなことが大切でしょうか。
まず、育成担当者は、1人ですべての育成を背負うのではなく、周囲の力の動員を心がけることが重要です。責任感の強い人ほど「自分一人で何とかしなければ」と無理に抱え込んでしまうケースもあります。しかし、育成者も自分の業務を行いながらプラスで育成を担っていることが多く、すべてを1人でやりきるのは無理が生じる可能性が高いです。新入社員の成長という目的を忘れず、視野を広げ、周囲を巻き込んでいく動きが大切です。
また、育成担当者が頼れる風土を上司がつくっておくことも大切です。風土が醸成されれば、育成は驚くほど加速します。育成風土は少しずつ醸成されます。下記で、職場育成の推進事例を紹介しますので、できるところから取り入れていただけると幸いです。
<図表12>職場育成の推進事例

職場全体で行うことで、育成が新入社員だけのためのものではなく、組織全体の活性化に寄与する機会になり得ます。新入社員育成で行うべき事項を仕組み化することにより、本来の目的以上の効果が期待できるのです。育成自体の難度が上がり工夫が必要になった昨今、重要な方法だと考えています。
最後に
育成担当者に、新入社員から学べたことを聞くと「価値観の違い」や「初心」、「デジタル・効率化」など、想像以上に新入社員から気づかされたこと・学んだことについての回答が多く集まりました。
<図表13>新入社員から学んだこと
Q12. 育成に取り組むなかで、自分が教えるだけではなく、逆に新入社員や若手社員から気づかされたり、学んだりしたことがあれば具体的に教えてください。(自由記述/n=376)

新入社員と接するなかで、価値観の違いを感じる場面も多いかもしれません。しかし、違う観点をもつ者同士だからこそ、お互いに学びも多いと考えることもできます。実際に、育成に成功している企業の多くが「教える立場にあっても、新入社員から学べることもあるかもしれない」というフラットな目線で新入社員と向き合い、育成のプロセスから組織を発展させる新しい価値観を得ています。
せっかく新入社員育成を実施するのであれば、ぜひ広い視野をもって取り組み内容を考えてみてはいかがでしょうか。価値が無限大に広がるはずです。

執筆者

サービス統括部
HRDサービス推進部
トレーニングプログラム開発グループ
研究員
武石 美有紀
2014年大学在学中に個人事業開始。 2016年リクルートキャリア(現リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。現在は、リクルートマネジメントソリューションズ にて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。
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