STEP

連載・コラム

職場における新人育成の実態調査2024

「育成担当者任せ」は限界? 企業が直面する新人育成の課題と、育成経験がもたらすメリット【前編】

  • 公開日:2025/06/30
  • 更新日:2025/06/30
「育成担当者任せ」は限界? 企業が直面する新人育成の課題と、育成経験がもたらすメリット【前編】

近年、あらゆる業界・規模の企業から、新入社員育成に対して「育成担当者(※)のみに育成を任せることに限界を感じている」という声をよく耳にします。
そこで、本コラムの【前編】では企業が直面する育成課題の背景と、育成経験がもたらすメリットについて、【後編】では、組織と新入社員、どちらの成長も加速させる効果的な育成方法について、弊社が行った調査をもとに紹介していきます。

※育成担当者:新入社員の業務遂行や成長支援をする役割。企業によっては「OJTリーダー」「OJT担当者」「メンター」などと呼称する場合もある。

本シリーズ記事一覧
職場における新人育成の実態調査2024
「育成担当者任せ」は限界? 企業が直面する新人育成の課題と、育成経験がもたらすメリット【前編】
職場における新人育成の実態調査2024
組織と新入社員、どちらの成長も加速させる「職場全体が連携」した育成手法【後編】
新入社員育成の難度が高まる原因
育成担当者が感じている難しさ
育成担当者の育成状況
新入社員育成の可能性
最後に

新入社員育成の難度が高まる原因

はじめに、新入社員育成の難度が高まる原因を整理していきます。育成を難しくさせる原因は、「育成環境の変化」と「新入社員の変化」が考えられます。1つずつ紹介していきましょう。

まず「育成環境の変化」についてです。

  • 正解のないVUCA環境:環境変化が激しく、過去の成功モデルが通用しないため、育成担当者自身も「正解」を定められなくなっている。
  • リモート・オンライン化:リモート環境では、新入社員が何に困っているかを掴みにくく、新入社員側も相談しにくい。また、オンラインでのコミュニケーションは、非言語情報が不足し、新入社員の些細な変化に気づきにくい。
  • 労働時間の制約:働き方改革や残業削減の流れで、育成に確保できる時間が限られる。また、業務量は変わらない(あるいは増えている)ことが多いため、たわいもない会話をする時間が減り、心理的距離を縮める機会が得にくくなる。

次に、「新入社員の変化」についてです。

  • 経験と必要スキルのギャップ拡大:不確実性が高い時代には、自ら学び行動する力が一層求められる。しかし、新入社員の学生時代は少子化やインターネットの発展などの影響で情報が手に入りやすく、自ら行動する経験が減っており、社会で求められる自律性とのギャップが大きい。
  • 育成の個別化:価値観の多様化が進み、トップダウンで一律に育成していくことが難しくなった。各々の価値観や習得スピードに応じた育成が求められ、育成担当者には個最適化の設計力と対応力が必要になっている。

このように、企業を取り巻く環境と、新入社員自身の経験や価値観の双方がかつてないほど変化しており、従来の育成だけでは通用しにくくなっているのです。

「育成環境の変化」と「新入社員の変化」

育成担当者が感じている難しさ

では、実際に育成担当者は、どのようなところに難しさを感じるのでしょうか。

育成担当者に、育成にあたり苦労したことを聞くと、「新入社員のメンタルやモチベーションの管理」 26.1 %、「新入社員との間のギャップ(考え・価値観・経験など)」 23.7 %、「新入社員への効果的な関わり方や育て方(育成スキル)」 16.2 %が上位の回答率となりました。

この結果から、育成スキル・時間不足に苦労する割合よりも、新入社員の心理的側面へのフォローや価値観などから生じるギャップに苦労する割合の方が多いと分かります。

<図表1>育成で苦労したこと
Q1. 育成にあたり、苦労したことは何ですか。あてはまるものを最大2つまでお選びください。(2つまで複数回答/n=1,226)

育成で苦労したこと

また、育成担当者に、新入社員育成で上手くいかないことが生じたことによる自分へのマイナスの影響を聞いたところ、「自分の業務への時間が割けなかった」「メンタルダウン」「自信喪失」「ストレスがかかった」などの回答傾向が多く見られました。

育成が上手くいかないことは、新人が育たないだけにとどまらず、育成担当者の業務やメンタルにマイナス影響を与えることが示唆されます。

<図表2>育成が上手くいかないことで生じる自分へのマイナス影響
Q2. 新入社員育成で上手くいかないことが生じたとき、何か自分にとってマイナスの影響がありましたか。具体的な内容およびその理由を教えてください(自分の業務やメンタル面への影響など)。

育成が上手くいかないことで生じる自分へのマイナス影響

育成担当者の育成状況

さて、育成担当者による新入社員の育成状況はどのようなものでしょうか。
育成にかけるコミュニケーション頻度や、新入社員の成長への評価、新入社員の変化を感じるまでの期間を聞きました。

■コミュニケーション頻度

育成担当者に、育成に関わるコミュニケーション頻度を聞いたところ、「ほぼ毎日」 38.7 %の選択率が最も高く、「ほぼ毎日」「3日に1回」の合計は57.5%という結果でした。

この結果を鑑みると、新入社員に多くの時間を割いて関わろうとする育成担当者が多いことが想定できます。ただし、「1週間に1回未満」「全く取れていない」の合計も21.7%あり、コミュニケーションの時間をなかなか取れていない育成担当者も見られます。

<図表3>育成に関わるコミュニケーション頻度
Q3. 新人社員との日々の関わりのなかで、育成に関わるコミュニケーションはどのくらい取っていましたか。(単一回答/n=1,226)

育成に関わるコミュニケーション頻度

■新入社員の成長への評価、新入社員の変化を感じるまでの期間

育成担当者に、担当した新入社員が期待どおりに成長したかを聞くと、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」の合計44.2%が、「全くあてはまらない」「ややあてはまらない」の合計18.3%を上回り、肯定回答が上回る結果となりました。

<図表4>新入社員の成長への評価
Q4. 担当した新入社員は、期待どおりに成長しましたか。ご自身から見た評価で構いません。(単一回答/n=1,226)

新入社員の成長への評価

また、新入社員の変化を感じるまでの期間を聞くと、育成を開始してから「3カ月程度」33.9%と、「半年以上」33.9 %が多い結果となりました。

<図表5>新入社員の変化を感じるまでの期間
Q5. 育成を開始してから、どのくらいの期間で新入社員の変化を感じるようになりましたか。(単一回答/n=1,226)

新入社員の変化を感じるまでの期間<

育成には多くのコミュニケーションが必要で、成長には時間がかかるという結果から、今日の新入社員育成の難しさが感じ取れます。多忙ななかでも育成に一定の時間を割いている人が多い現状を考えると、今後育成の「質」をいかに上げていくかが鍵になるでしょう。

新入社員育成の可能性

ここからは、調査結果を通して、新入社員育成の可能性をお伝えしていきます。
まず、育成担当者にとって育成の機会がどのように捉えられているかの結果を提示します。

■育成経験による意識変化

育成担当者に、育成経験による意識変化を聞くと、新入社員の育成を経験後、育成の機会への捉え方は、「前向き」「やや前向き」の合計が新入社員育成を任された当初より5.3ポイントアップする結果となりました。

<図表6>育成の機会の捉え方の変化
【左】Q6-1. 新入社員育成を任された当初、育成の機会をどのように捉えていましたか。(単一回答/n=1,226)
【右】Q6-2. 新入社員育成を経験してみて、育成の機会をどのように捉えるようになりましたか。(単一回答/n=1,226)

育成の機会の捉え方の変化

そして、育成当初「後ろ向き」「やや後ろ向き」と回答したものの、経験後に「前向き」「やや前向き」と回答した人に、その理由を尋ねると、「自分の学びや成長」「育てる醍醐味」「前向きな感情」「意外にやりやすい」などの理由が挙げられました。育成経験のプロセスで、自分の学びや成長ができたり、育成自体への醍醐味やポジティブな感情を得られたりした育成担当者が多く見られたのです。

<図表7>育成の捉え方が前向きに変化した理由
Q7. 新入社員育成を経験してみて、育成の機会をどのように捉えるようになりましたか。(自由記述/n=65)
※Q6-1(育成を任された当初)で「後ろ向き」「やや後ろ向き」と回答した人のなかで、Q6-2(育成経験後)では「前向き」「やや前向き」と回答が変化した人にお伺いし抜粋しています。

育成の捉え方が前向きに変化した理由

■育成経験から得られるメリット

「育成」という仕事は、育成担当者にとって一定の負荷はかかるものの、それ以上にメリットをもたらすと感じる人が一定数いることが示唆されます。そのため、育成担当者は、育成に対してネガティブな印象があったとしても、育成経験がもたらす自分にとっての価値を探しながら新入社員と関わることで、役割への納得感を高めることができるといえるでしょう。

企業にとっても、育成を「新人を育てるためのもの」という目的だけでなく、中堅リーダーの育成や、組織全体のチームワークや育成風土づくりの機会と捉えて取り組むことで、組織全体にとっての価値を最大化することができると考えます。

最後に

【前編】では、育成担当者が感じている「育成の難しさ」やその背景について、また「育成経験」が当人や組織にもたらすメリットについてご紹介しました。【後編】では、組織と新入社員の成長を加速させる、効果的な育成方法について詳しく解説します。ぜひこちらもご一読ください。

◆新入社員の育て方・生かし方を学ぶ「育成担当者研修」

執筆者

https://www.recruit-ms.co.jp/assets/images/cms/authors/upload/3f67c0f783214d71a03078023e73bb1b/aac76b66d4bc40e29322e19aaf3ae588/2207011512_6579.webp

サービス統括部
HRDサービス推進部
トレーニングプログラム開発グループ
研究員

武石 美有紀

2014年大学在学中に個人事業開始。 2016年リクルートキャリア(現リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。現在は、リクルートマネジメントソリューションズ にて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。

この執筆者の記事を見る

本シリーズ記事一覧
職場における新人育成の実態調査2024
「育成担当者任せ」は限界? 企業が直面する新人育成の課題と、育成経験がもたらすメリット【前編】
職場における新人育成の実態調査2024
組織と新入社員、どちらの成長も加速させる「職場全体が連携」した育成手法【後編】
SHARE

コラム一覧へ戻る

おすすめコラム

Column

関連する
無料セミナー

Online seminar

サービスを
ご検討中のお客様へ

電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください

SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ
0120-314-855

受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)

facebook
x