連載・コラム
人材育成を役割転換から考える【図解】
トランジション・デザイン・モデル ~Business Officer編~
- 公開日:2024/09/30
- 更新日:2024/09/30
トランジション・デザイン・モデルとは、組織における人の成長を「役割転換」というテーマから体系化したモデルです。日本の多くのビジネスパーソンは、社会人として組織の一員となり、経験を積むにつれて期待される役割が変化していきます。これらの期待役割の変化を正しく認識し、役割転換(トランジション)をはかることで、ビジネスパーソンとして成長していきます。
リリースした2010年当初から現在に至るまで、弊社トランジション・デザイン・モデルは業界・業種、そして従業員規模を問わず多くのお客様にご活用いただいています。
不確実性の高い昨今においても、人材育成を考える際の普遍的な「ものさし」としてより多くの企業にお役立ていただきたいと考え、本連載をスタートしました。
第8回の今回はBusiness Officer(ビジネスオフィサー)と呼ばれるステージについて紹介いたします。
Business Officer/事業変革ステージとは――戦略的な資源配分を通じて、自ら描いた事業構想を実現するステージ
本ステージからは経営陣の仲間入りを果たし、事業収益の責任を担う責任者の1人としてのステージとなります。Senior Manager層と共に中長期的な事業環境の変化を見据えたうえで、戦略的に資源を配分し、経営の期待に応える成果を生み出すことが期待されます。
- 目次
- トランジションのプロセスとは
- ①トランジションの入口のサイン
- ②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
- ②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
- ③このステージで一般的に求められるスキル
- ④トランジションを促進する経験
- ⑤トランジションの出口のサイン
- まとめ
トランジションのプロセスとは
ビジネスパーソンがトランジション(役割転換)を果たし、新たな役割を担えるようになっていくために必要なプロセスを5つの観点から捉えています。
①トランジションの入口のサイン
新たな役割に向けて意識や行動を変える必要性を自覚するきっかけを指します。
②トランジションの核心となる意識・行動
各ステージでパフォーマンスを発揮するために、特に変えなくてはいけない意識や行動を指します。この意識や行動には、それまでの役割ステージのときと比較して、“伸ばす”べきものと“抑える”べきものの両方があります。
③このステージで一般的に求められるスキル
各ステージで期待される役割を担うために、必要なスキルを身につけることを指します。
④トランジションを促進する経験
各ステージで求められる期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルを自分のものにしていくための経験学習を指します。
⑤トランジションの出口のサイン
各ステージでパフォーマンスが出せるようになり、自信が生まれている状態を指します。
ここでも本人の自覚と、周囲からの見られ方の変化との双方が含まれます。
①トランジションの入口のサイン
社内から経営ボードメンバーの一員としてみなされるようになったとき、Business Officerステージの入口に立っていると考えることができます。また、事業の収益を管轄する責任者となった場合や、複数の部を統括する本部長、統括部長といった肩書がつく場合も、その人は入口に立っているといえるでしょう。
②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
Business Officerステージで積極的に意識し、取り入れるべき行動は以下です。
②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
逆に、Business Officerステージで抑えるべきありがちな意識や行動として以下が散見されます。
トランジションを乗り越えられないとどうなる……?
1つ前のステージであるSenior Managerステージとの違いは、特定の職務機能という視点を越え、事業の持続的な成長に向けて構想し、構想を実現することで、事業の収益性を高めることにあります。
例えば、開発・生産・営業・物流(アフター)など、複数の領域に跨る事業全体のトップとして事業を見立て、今後の発展のために構想・決断・実行することが該当します。部門単位で複数の機能を受け持つということは、自分がこれまで経験してこなかった部門も含めて現場の状況を把握し、適切な判断を行う必要があります。
社内で特定の部門間において、利害相反や対立関係などがあった場合、自分がよく知っている経験のある部門の視点に偏ったものの見方をしてしまうと、組織内での軋轢を生んだり、事業として最適な判断が下せなくなったりしてしまうことが考えられます。
先行きが見通せず、不確実性の高い今の時代においては部や組織を横断して新たな価値を生み出していくこと、既存概念にとらわれない新しい勝ち筋を見出していくことが企業存続にとても大きな影響を与えます。
社内で新たな価値を生み出すためには、各部が協力し合い、知恵を出し合うような姿勢が必要不可欠ですが、対立や軋轢が生じて、各部が自部門最適ばかりを主張してしまうと、事業として1つの方向に向かって協働して いくことが難しくなります。
また不確実性が高いからといって、戦略推進を先延ばしにしたり、安易に前例を踏襲するような無難な選択を続けたりしてしまうとどうなるでしょうか。その間にライバル企業が差を付けはじめたり、新たな競合が参入したりと、事業の存続が危ぶまれるような状況になり、最悪の場合事業の収益性が悪化し、衰退につながることが考えられます。
このような状況に陥るのを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
③このステージで一般的に求められるスキル
Business Officerに求められるスキルは、考えるスキル・実行するスキル・人を動かすスキル・自己をコントロールするスキルの4つのカテゴリーに分類することができます。
事業の発展を実現するにあたって、まずは構想を描く必要があります。構想を描くには、事業が成り立つために必要な要件は何かを理解することが肝要です。事業がビジネスとして収益を出し続けるためのビジネス環境を特定し、外部環境による脅威やリスクを洗い出し、競合優位性と収益性を高めるためには何が必要か、ということを構想します。
また多くの場合、意思決定するだけの根拠が出揃うことはほとんどありません。根拠となる事実がすべて出揃わないなかで、意思決定する力が求められます。
そして戦略を構想、決定していくうえで、事業フェーズとして今は守りを固める時期なのか、攻め時なのかを見極めることも重要です。そのためには、経営陣との接点から今後事業で何を要望されるのかを察知したり、破壊的な変化が訪れた際のプランBを想定したりする力も求められます。
次に構想を実現していく段階においては、経営陣やコーポレートスタッフを動かし、必要な協力や資源を調達したり、投資判断をしたりする力が求められます。これらは前述のとおり、よく知っている特定の職務機能の視点ではなく、事業全体を俯瞰した持続的成長の観点から判断することが重要です。
ほかにも複数の機能を管轄するという前提に立つと、短時間で多くの情報を把握しなければならないことから、短時間での接点を通じて、関係者同士の結束を強める力も重要です。
また実現のためには、マネジャー層が自ら戦略推進せざるを得ないような要望ができる力も必要となります。
さらに将来必要となるリソースの調達や投資という意味では、マネジャーの育成やリーダー候補を見抜き育成環境を整えること、優秀な人材を惹きつける組織風土を開発する力も欠かせません。
④トランジションを促進する経験
ここまで、Business Officerステージでの期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルについて解説してきました。ここからはBusiness Officerステージで必要な意識・行動・スキルを自分のものとして習得するために必須となる経験について、70:20:10のフレームワーク(※)をベースに解説していきます。
(※)70:20:10のフレームワークとは、ビジネスパーソンの成長を促す経験の特性として70%の現実の仕事経験、20%の人間関係における経験、10%の計画された学習経験(研修など)を指し、人材育成施策をデザインするうえで中核となる考え方です。
事業の構想を描くため、まずは顧客やエンドユーザー、協力企業などのステークホルダーの本音に触れ、事業が何で成り立っているのか、発展のために改善すべき点は何かを理解する経験が必要です。
また、時勢を見極める力を養うには、新しいビジネスモデルに転換させていくような経験を積むことや、M&Aの実行・実行後の事業会社の経営管理を行うことなどが有効です。
ほかにも、不審事業や組織を立て直すことを通して組織風土改革の経験を積むことも、次の世代のリーダーが成長するために必要な経験となります。
⑤トランジションの出口のサイン
経営陣から最終的な判断を委ねられるようになり、持続的成長を判断軸として事業の特性を捉え、クリティカルな目で意思決定することができるようになると、Business Officerステージはクリア!といってもよさそうです。
まとめ
1つ前のSenior Managerステージでは「変革主導」という表現で期待役割について紹介しました。その上位者であるBusiness Officerは経営ボードメンバーとして、事業の収益性を担保し、高めるための「事業変革」を構想し実現させていくことが期待役割です。
彼らが適切に時勢を読み、環境変化を予測し、あまたの情報のなかで何を特に重要な指標と捉え、意思決定するかが事業や組織の未来に多大なる影響を及ぼします。
会社の代表と経営陣、そして「変革主導」を担うSenior Managerが一枚岩となり、事業の方向についてどのように舵取りをするか建設的な議論を重ね、実現に向けてさまざまな障壁を乗り越え強く推し進められるかどうかが、会社の未来を決めるといっても過言ではありません。
1人でも多くの方が、Business Officerステージで葛藤しながらも、明るい未来のための事業構想を実現することができるようなリーダーシップを発揮していただくためにも、本コラムがお役に立てたら幸いです。
おすすめコラム
Column
関連するお役立ち資料
Download
関連する
無料オンラインセミナー
Online seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- お役立ち情報
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ・資料請求
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)