連載・コラム
【徹底解説】人材育成を役割転換から考える
トランジション・デザイン・モデル~Starter編~
- 公開日:2024/09/09
- 更新日:2024/09/11
トランジション・デザイン・モデルとは、組織における人の成長を「役割転換」というテーマから体系化したモデルです。日本の多くのビジネスパーソンは、社会人として組織の一員となり、経験を積むにつれて期待される役割が変化していきます。これらの期待役割の変化を正しく認識し、役割転換(トランジション)をはかることで、ビジネスパーソンとして成長していきます。
リリースした2010年当初から現在に至るまで、弊社トランジション・デザイン・モデルは業界・業種、そして従業員規模を問わず多くのお客様にご活用いただいています。
不確実性の高い昨今においても、人材育成を考える際の普遍的な「ものさし」としてより多くの企業にお役立ていただきたいと考え、本連載をスタートしました。
第1回目の今回はStarterと呼ばれるステージについて紹介いたします。
Starter/社会人ステージとは――ビジネスの基本を身につけ、組織の一員となるステージ
社会に出て、会社組織の一員であるという自覚を持つステージです。
一般的には学生から社会人に切り替わる入社1年目の社員や、第2新卒として転職し、入社してきたばかりの、社歴の浅い社員が該当します。会社に所属するメンバーの一員になるために、周囲と関係を築くことが求められます。
- 目次
- トランジションのプロセスとは
- ①トランジションの入口のサイン
- ②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
- ②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
- ③このステージで一般的に求められるスキル
- ④トランジションを促進する経験
- ⑤トランジションの出口のサイン
- まとめ
トランジションのプロセスとは
ビジネスパーソンがトランジション(役割転換)を果たし、新たな役割を担えるようになっていくために必要なプロセスを5つの観点から捉えています。
①トランジションの入口のサイン
新たな役割に向けて意識や行動を変える必要性を自覚するきっかけを指します。
②トランジションの核心となる意識・行動
各ステージでパフォーマンスを発揮するために、特に変えなくてはいけない意識や行動を指します。この意識や行動には、“伸ばす”べきものと“抑える”べきものとの両方があります。
③このステージで一般的に求められるスキル
各ステージで期待される役割を担うために、必要なスキルを身につけることを指します。
④トランジションを促進する経験
各ステージで求められる期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルを自分のものにしていくための経験学習を指します。
⑤トランジションの出口のサイン
各ステージでパフォーマンスが出せるようになり、自信が生まれている状態を指します。
ここでも本人の自覚と、周囲からの見られ方の変化との双方が含まれます。
①トランジションの入口のサイン
入社して、新たな組織に適応することが求められるとき、Starterステージの入口に立っていると考えることができます。
会社に属する一人の従業員として、ふさわしい言葉遣い・身だしなみ、社内ルールを守ることが求められるとき。また、上司や先輩からの指導を受け、社内外の会議に参加し、仕事を与えられたときに、その人は入口に立っているといえるでしょう。
②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
Starterステージで積極的に意識し、取り入れるべき行動は以下のとおりです。
一言でいうと、周囲とのより良い協働関係を築くことを意識した立ち居振る舞いが求められます。
②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
逆に、Starterステージで抑えるべきありがちな意識や行動として以下が散見されます。
周囲とのより良い協働関係の妨げになる立ち居振る舞いは改めることが求められます。
トランジションを乗り越えられないとどうなる……?
信頼関係が築けないと、周囲になじむことができず、聞きたいことがあっても聞きづらくなってしまうことが考えられます。そして、誤った認識のまま仕事を進めてしまったり、納期に対する遅延が発生したりしかねません。
また、分からないまま放置したことで、依頼通りの仕事ができなかったときに、「先輩から教えてもらっていないので、できませんでした」といったスタンスでいると、いつまで経っても自分で考える力が身につかない恐れがあります。
その結果、周囲からの信頼を得ることが難しく、今後の成長に繋がるような仕事を任せてもらえなくなる可能性があります。では、そうした状態になるのを防ぐためには、どうすれば良いのでしょうか。
③このステージで一般的に求められるスキル
Starterに求められるスキルは、考えるスキル・実行するスキル・人を動かすスキル・自己をコントロールするスキルの4つのカテゴリーに分類することができます。
これらのスキルは一言でいうと、組織の一員になるために必要なスキルです。言い換えると、周囲と認識を合わせ、言われたことを着実に進めるために必要となる力とも言えます。
また、周囲とお互いに気持ちよく仕事を進めていくためには、相手の立場や気持ちに配慮することや、社会人として状況にふさわしい言葉遣いができるといったこともとても大切なスキルです。
さらに次のステージに向かうためには、上司や先輩のフィードバックを正しく理解し、受け止めることがとても重要です。周りの人からのフィードバックを聞き入れて、自分の行動と経験を振り返ることが、今後の成長には欠かせません。
また組織の一員として、生活習慣や体調を自己管理することも、大切なスキルです。
プライベートの充実はもちろん大切ですが、夜通し飲み会やゲームをして次の日に体調を崩す……といったことは、周りに迷惑をかけてしまうので、メンバーとしてふさわしい行動とは言えませんよね。
④トランジションを促進する経験
ここまで、Starterステージでの期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルについて解説してきました。ですが、それらをただ単にインプットさせたり、指示したりするだけではなかなか本人のトランジションは促進されません。
ここからはStarterステージで必要な意識・行動・スキルを自分のものとして習得するために必須となる経験について、70:20:10のフレームワーク(※)をベースに解説していきます。
(※)70:20:10のフレームワークとは、ビジネスパーソンの成長を促す経験の特性として70%の現実の仕事経験、20%の人間関係における経験、10%の計画された学習経験(研修など)を指し、人材育成施策をデザインする中核となる考え方です。
Starterステージでの仕事経験として、重要なことは「失敗を恐れずにチャレンジし、仕事を通じてさまざまな立場や価値観の人との協働を経験し、そこから学ぶこと」です。
ですが、いきなり「とにかくやってみよう! 頑張ろう!」と伝えてもなかなか現実はそううまくいきませんよね。
Starterステージの人が、失敗を恐れず一歩を踏み出し、経験から学べるようになるために、周囲の関わりがとても重要です。周囲の関わりとは、ただ単にOJTリーダーなどを中心に手本を示すことだけに限りません。新人が自分の行動と経験を振り返り、気づきを得られるように支援することが有効です。
例えば、日常の対話のなかで「相手の立場なら、これを言われたときにどう感じると思う?」
「次は何に意識して取り組めるといい?」などと、業務の進捗状況を確認するだけでなく、本人への気づきを与えるような問いかけがビジネスパーソンとしての成長を促します。
そして、上司・OJTリーダーだけが関わるのではなく、職場で接する先輩社員全員が成長に関与していくことが大切です。
残り10%のOff-JTは一例ではありますが、基本的な仕事の進め方や、コミュニケーションの取り方、ビジネスマナーなどの研修が考えられます。これらは、業務を行う際に必要な基本的な行動の理解を促します。
⑤トランジションの出口のサイン
組織の一員としての振る舞いや言動が身につき、周囲から見ても安心して仕事を任せることのできる状態だと感じられるようになってきたらStarterステージはクリア!といってもよさそうです。
まとめ
一般的にも、社会人1年目で身についた習慣は、その後あまり大きく変わることは少ないといわれています。そのくらいStarterステージはその人の今後の社会人人生にとって大きな影響力があり、重要なステージです。
周囲と良好な関係を築くために必要な意識・行動・スキルを習得すること、そして阻害する行動をなるべく抑えること。失敗を恐れず挑戦し、周囲からのフィードバックや労いの言葉をもらいながら、良質な経験をたくさん積み学ぶこと。それがStarterステージの方にとって一番大事な仕事なのかもしれませんね。
今の世の中では転職が当たり前となり、うまく周りになじむことができないまま、次の会社での仕事に移ってしまう新人、若手の方も増えています。
業務が多忙で新人育成になかなか時間を割けないのが現実かと思いますが、今回お伝えしたことは、どんな業界の企業、業種の仕事においても社会人の土台として、欠かせないことばかりです。
Starterステージでもがき、頑張っている新人の皆さんの1人でも多くの方が、自分の力で周囲との信頼関係を築けるように、その周囲の皆さんがStarterステージで必要な意識・行動・スキル、そして経験を理解し、それらの獲得を支援することを日常で実践してもらえたら幸いです。
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