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【徹底解説】人材育成を役割転換から考える

トランジション・デザイン・モデル ~Manager後期編~

  • 公開日:2024/09/13
  • 更新日:2024/09/19
トランジション・デザイン・モデル ~Manager後期編~

トランジション・デザイン・モデルとは、組織における人の成長を「役割転換」というテーマから体系化したモデルです。日本の多くのビジネスパーソンは、社会人として組織の一員となり、経験を積むにつれて期待される役割が変化していきます。これらの期待役割の変化を正しく認識し、役割転換(トランジション)をはかることで、ビジネスパーソンとして成長していきます。

リリースした2010年当初から現在に至るまで、弊社トランジション・デザイン・モデルは業界・業種、そして従業員規模を問わず多くのお客様にご活用いただいています。
不確実性の高い昨今においても、人材育成を考える際の普遍的な「ものさし」としてより多くの企業様にお役立ていただきたい考え、本連載をスタートしました。
第6回の今回はManager後期と呼ばれるステージについて紹介いたします。

Manager後期ステージとは――組織業績を達成しながら、ミドルアップダウンの変革を推進していくステージ

管理職等の役職に登用されてから数年経過し、ある程度組織としての業績達成への寄与が安定してきた方に該当するステージです。
企業によっては課長以上部長未満の役職として、次長などの肩書に相当します。

Manager前期での「個と組織に働きかけ、組織業績を達成する」という役割に加え、事業全体の影響を考え、中長期的な戦略についての意見を求められたりするなど、これまでよりも、より経営視点寄りの立ち居振る舞いが求められます。

継続的に安定して成果を出し、自部門最適とは限らない、大局を見た意思決定を行うために必要な経験やスキルなど、このステージにおけるトランジション(役割転換)のポイントを解説していきます。

トランジションのプロセス 概要のおさらい
①トランジションの入口のサイン
②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
③このステージで一般的に求められるスキル
④トランジションを促進する経験
⑤トランジションの出口のサイン
まとめ

トランジションのプロセス 概要のおさらい

ビジネスパーソンがトランジション(役割転換)を果たし、新たな役割を担えるようになっていくプロセスを5つの観点から捉えています。

①トランジションの入口のサイン

新たな役割に向けて意識や行動を変える必要性を自覚するきっかけを指します。

②トランジションの核心となる意識・行動

各ステージでパフォーマンスを発揮するために、特に変えなくてはいけない意識や行動を指します。この意識や行動には、それまでの役割ステージのときと比較して“伸ばす”べきものと“押える”べきものの両方があります。

③このステージで一般的に求められるスキル

各ステージで期待される役割を担うために、必要なスキルを身につけることを指します。

④トランジションを促進する経験

各ステージで求められる期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルを自分のものにしていくための経験学習を指します。

⑤トランジションの出口のサイン

各ステージでパフォーマンスが出せるようになり、自信が生まれている状態を指します。
ここでは本人の自覚と、周囲からの見られ方の変化との双方が含まれます。

トランジションの概念図

①トランジションの入口のサイン

Manager前期ステージよりも明確ではありませんが、例えば全社レベルのプロジェクトに参加するよう求められるほか、直属の上司以外の上位者から意見を求められる機会が増えたとき、また事業や部門の中長期的な戦略づくりのプロセスに参画することが求められるようになったとき、その人はManager後期ステージの入口に立っているといえるでしょう。

入口のサインのイメージ

②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動

Manager後期ステージで積極的に意識し、取り入れるべき行動は以下となります。
Manager前期ステージと比較すると一段と視座の高い言動が求められることが分かります。

“伸ばす”意識・行動のイメージ

②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動

Manager後期ステージで抑えるべきありがちな意識や行動としては、以下が散見されがちです。

トランジションを乗り越えられないとどうなる……?

そもそもManager後期ステージでは、Manager前期ステージでの期待成果であるメンバーやチームの力で組織業績を達成するということができていることが前提となります。

そのため、「マネジメント活動として求められていることは何か」を正しく理解し、活動に落とし込めていない場合は、Manager前期ステージと同様の懸念が考えられます。(Manager前期ステージについてはこちらの記事をご参照ください)

Manager後期では事業全体や会社全体の視点での動きが求められます。しかし、マネジャーとしての自組織への近視眼的なものの見方から抜け出せないことで、自組織に都合の良い考え方に固執してしまい、事業全体の影響を考えて意思決定する力がいつまでも身につかない状態に陥ってしまう可能性も考えられます。

またマネジャー自体がそのような考え方でいると、その部下であるメンバーもその影響を受けて、自組織最適の考え方に偏ってしまう恐れもあります。

このように、自組織のピープルマネジメントや目標達成に意識が行きすぎしまい、自分たちのことばかりを考える組織という風に社内で認知されてしまうと、結果として関係者からの期待には応えることが出来ず、協働しづらい組織と思われてしまうことが懸念されます。

では、そうした状態になるのを防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。

③このステージで一般的に求められるスキル

Manager後期に求められるスキルについて、考えるスキル・実行するスキル・人を動かすスキル・自己をコントロールするスキルの4つのカテゴリーに分類することができます。

ここでもManager前期ステージでの期待成果を出すために必要なスキルが身についていることが前提となります。

その前提に立ったうえでManager後期では、より経営視点での意思決定やマネジメントスキルが必要になります。そのため、自組織最適ではなく、事業全体最適という視点をもち、ものごとを考え、判断ができるように考え抜く力が求められます。

また「ミドルアップダウンの変革を推進していく」ためには、管理職として現場の声を聞き、自社の置かれた外部環境の変化などを的確に捉えるための情報収集力も必要となります。

そして既存の枠組みや前例、慣習を所与のものとして捉えるのではなく、そのなかに新しい戦術や手法を試し、ビジネスとしてのチャンスを生み出すような機会をつくれないかなど、事業影響を見極め新たな取り組みを提案する力が、変革を推進していくために必要となります。

④トランジションを促進する経験

ここまで、Manager後期ステージでの期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルについて解説してきました。ここからはそれらの意識・行動・スキルを自分のものとして習得するために必要となる経験について、解説していきます。(※)

(※)70:20:10のフレームワークとは、ビジネスパーソンの成長を促す経験の特性として70%の現実の仕事経験、20%の人間関係における経験、10%の計画された学習経験(研修など)を指し、人材育成施策をデザインする中核となる考え方です。

ここでも、Manager前期ステージから求められる「組織業績の達成する」ために必要な経験を積んでいることが前提となります。

プレイヤー時代の経験則やこだわりを手放すことは、容易なことではありません。Manager後期では、自部門最適ではなく事業全体の影響を考えた上での思考や意思決定をできるかどうかが大きな分岐点になると言えます。

そのため、事業全体の影響を考える一助となるような経験を積むことが肝要です。例えば「部門横断プロジェクトを主導する役割を担う」や、「ゼロからの立ち上げ」「海外拠点、出資先などでのマネジメント経験をする」などは強制的にこれまでの経験ややり方が通用しにくい環境に身を置くことで、事業全体という視点での思考や判断力を養うことにつながります。

⑤トランジションの出口のサイン

どのような組織を担当しても成果をあげるマネジャーという評判がたつ、経営陣から意見を求められる機会が増える、といった兆しが見えるとManager後期ステージはクリア! といってもよさそうです。

出口のサイン

まとめ

冒頭でお伝えしたように、Manager後期ステージでは、より高いレベルでの組織業績の達成が求められ、視界も自部門にとどまらず、より経営視点に近いものの見方、考え方が求められるステージといえるでしょう。

「④トランジションを促進する経験」でもお伝えしましたが、いちプレイヤーからこれまでの経験則やこだわりを手放し、管理職としてのトランジション(役割転換)を果たすことは容易ではありません。さらに変化の激しいビジネス環境においては、その変化を見通し、先手を打つような変化適応力のある組織が生き残っていく時代ともいえます。

決して容易なことではありませんが、既存のやり方に執着することなく、いかに変化や価値観の多様性などこれまで経験していないことについて、受け入れ取り込めるかがManager後期ステージの成果創出において、大きな分岐点となります。

Manager後期ステージに該当する方が、より柔軟に視座を高く持ち、全体を見据えた意思決定ができるように、また一人でも多くの方が、Manager という役割を通じて、メンバーと共に生き生きと働きながら、持続的に成果を出せる状態になるために、本コラムが少しでも参考なれば幸いです。

まとめのイメージ
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