連載・コラム
新人若手に関する三重苦
新人若手育成のアタリマエを変えよう
- 公開日:2012/04/09
- 更新日:2024/03/26

「新人が思うように育たない」「早期離職者の増加」「メンタル不全者の増加」新人若手に関する三重苦と呼ばれる問題を抱える企業が増えているようです。
今回は新人若手育成の課題に対してサービスをご提供させていただいているコンサルタントからのコラムをお届けします。
皆さんの会社のアタリマエは、これからの時代に合っていますか?
- 目次
- 新人若手が育たないのは誰の責任でもない
- イマドキの新人若手と嘆くのではなく、育成のパラダイムを変える
- 育成力こそこれからの時代のマネジメントに求められる必須条件
- 新人若手の成長なくして、企業の明日なし
新人若手が育たないのは誰の責任でもない
新人若手育成に関する三重苦問題が顕在化し始めたのは、2005年のことです。この年、就職氷河期が終わり、大手企業を中心にそれまで自粛していた新卒採用が再開されました。いわゆるゆとり世代と呼ばれる若者たちが本格的に社会に出て、職場のマジョリティーになっていくターニングポイントとなった年です。そして、その動きに合わせるかのように、弊社のお客様から彼・彼女らの育成に関する悩みを聞くことが増えていきました。「新入社員をうまく教えられない」「若手とのコミュニケーションの方法がわからない」・・・・・・。日本を代表するようなそうそうたる企業が新人若手の育成に悩み、さまざまな手を打ったもののうまく機能していない。なぜこのような状況が起こっているのか?そこには研修だけでは解決できない根本的な問題があるのではないか?そう考えた私たちは、企業の人事部門や育成担当者、さらには当該新入社員の皆さんにインタビューやアンケート調査を行いながら実態を探り始めました。

その過程でまず明らかになったのは、この問題に関わる新人や上司、先輩、育成担当者の全てが他責の構造になっていることでした。人事の言い分は「頑張っていい人材を採用しているのに、現場には育てる意識が希薄なんじゃないか」であり、現場は現場で「最近の新人はなっていない。育てる余裕もないので、もっとしっかり教育をしてから配属して欲しい。そもそも採用が間違っているのではないか」という不満が募っている状況。当の新人若手社員からは「とにかくしんどいです。もっと上司や会社にサポートしてほしいけど言えない」という声が多く聞かれました。では、なぜ他責の構造になっているのか?ここが大きなポイントなのですが、じつは誰にも責任はありません。新人若手が思うように育っていかないのは、企業を取り巻く環境がかつてとは根本的に変わってしまったことが原因だったのです。
イマドキの新人若手と嘆くのではなく、育成のパラダイムを変える
下の図をご覧になっていただければおわかりのように、かつてと比べると企業を取り巻く状況はあらゆる面で「人が育ちにくい」環境に変わってきています。

例えば、国内経済の成熟化やIT化、グローバル化の進展によって、仕事の高難度化が進み、ビジネスパーソンには厳しい環境下で自ら育つ現実対峙力が求められてきています。しかし、今の新人若手世代は、その力を最も苦手としています。それは彼・彼女らが悪いわけではなく、生まれ育った社会環境が大きく変化していることに原因があります。
かつて日本企業の新入社員の成長度合いは、2:6:2といわれていました。最初から順調に成長していく人が20%、伸び悩みが20%。60%はいわゆる普通に成長できていました。ところが私たちの調査から、今は最初から順調な新人はわずか5%に過ぎず、伸び悩みが約80%を占めることがわかりました。人が育ちにくい構造に変わり、今は伸び悩むことがアタリマエなのです。このような状況に対して、受け入れ側が従来のアタリマエで育成しようとすることにそもそも無理があります。彼・彼女らにとってはまるで文化の異なる国に行ってバッシングされているような気持ちでしょう。そうではなく「新人は伸び悩むこと」が今のアタリマエであり、そこからどうリカバリーしていけるかが育成者側にも新人にも問われています。「なぜこんなことが・・・・・・」「やる気が・・・・・・」とイマドキの新人を嘆くのではなく、変わらなければならないのは自分たちのアタリマエなのだということを認識して、育成のパラダイムを大きく転換しなければいけない時代なのです。
育成力こそこれからの時代のマネジメントに求められる必須条件
私たちが提供するサービスは、現在、主に育成担当者を対象として行っています。ワークショップ形式で新人が置かれている構造を理解していただいた後、育成方法のポイントについてもご紹介していますが、あくまで主眼に置いているのは「アタリマエ」を変えていただくことです。解決のための具体的な処方箋を期待して参加された方の中には、一番の鍵が自分の中にあることを知って愕然とする方もいらっしゃいます。しかし、ほとんどの企業の皆さんには興味深く、かつ熱心に受け止められているという実感を持っています。中でも嬉しいのは、「これからの時代は、自分とは違う価値観を持っている人たちをマネジメントする力が求められてくる。新人若手の育成はその力を身に付けるための絶好の機会」といったように前向きにとらえてくださるケースです。こうした育成担当者は、マーケットと直接触れ合い、時代や社会に対する感度の良い企業に多いようです。
このサービスを提供した企業に対し、しばらく期間を置いた後に成果報告を兼ねたフォロー研修を行っていますが、そこで私たちが驚くような変化が起きているケースもあります。「新人若手育成を手段として職場づくりをした結果、メンバー間のコミュニケーションが高まり、困難だと思っていた目標達成もできた」。こうした声を聞くと、日本企業の逞しさを感じますし、サービスを開発して良かったと思いますね。
新人若手の成長なくして、企業の明日なし
企業を取り巻く環境の激変は、もはや止めることができない不可逆な流れです。今や育成力こそ競争力の時代に勝ち残る術であり、持続的成長に不可欠な要素となっています。その中でも企業の未来を担う新人若手の育成は最も重要なテーマの一つであり、変化に適応した育成の再構築が、規模、業種、地域に関わらずあらゆる企業に求められてくるでしょう。実際、私のお客様でも新人若手の育成は最も重要なテーマだと気づいている企業は、社長以下すべてが育成を成長戦略としてとらえ、企業全体で取り組んでいます。 今は日本企業にとって、かつて経験したことがない環境下での挑戦をする時期です。行く手には大変な道のりが待っていますが、それは日本企業が成長していくために必要な新しいマネジメントの創造期であるともいえます。私たちのサービスが、少しでもその助けになれたら嬉しく思います。
執筆者

サービス統括部
HRDサービス推進部
トレーニングプログラム開発グループ
主任研究員
桑原 正義
1992年4月人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。 営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。 探究領域:VUCA×Z世代の新人育成のアップデート、“個を生かす”生成アプローチ NPO法人青春基地(プロボノ)。立教大学経営学部BLP兼任講師
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