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バックキャスティングとは? 意味やメリット、実践にあたっての流れを解説
- 公開日:2024/12/20
- 更新日:2024/12/20
社会問題やビジネス課題に有効なアプローチとして昨今注目を集めているのが、未来から逆算して現在を考える思考法「バックキャスティング」です。本記事では、そんなバックキャスティングのメリットや具体的な実施方法を紹介します。
バックキャスティングとは?
バックキャスティングとは、問題解決や目標達成における考え方の一種であり、「実現したい未来」を前提に現在の物事を考える思考法のことです。ビジネスにおいては主に中長期的なビジョンの策定や、アイディアの創出といった場面で活用されます。
バックキャスティングでは、はじめに理想的な未来を描き、「その実現のためには何をすべきか」という視点から現在の行動を決定します。そのため、思考の柔軟性や自由度が高く、劇的な変化が必要な課題や実現の難しい目標にも高い効果を発揮します。
フォアキャスティングとの違い
未来を起点として現在を考えるバックキャスティングと反対の思考法として知られるのが、現在や過去の状況をもとに未来を考える「フォアキャスティング」という考え方です。
フォアキャスティングの特徴は、すでに確定している現実を出発点として物事を考えるため、より実現性が高いアプローチができる点にあります。こうした強みから、フォアキャスティングは現状の改善や、比較的近い未来の予測などに多く用いられます。
バックキャスティングが注目されている背景
バックキャスティングとフォアキャスティングはいずれも将来の予測・計画に効果を発揮する思考法ですが、少子高齢化や環境問題といった昨今の「目指すべき状態」が明確な社会課題には、バックキャスティングが有効であることが指摘されています。バックキャスティングには、不安定な時代に確かな未来を実現する手段としての役割が期待されているのです。
その一方で、現代は社会の変化が激しく将来の予測が困難な時代であることから、キャリアプランなどの立案には近年フォアキャスティングが多く用いられています。
バックキャスティングを取り入れるメリット
バックキャスティングを活用することは、人材や組織に以下のようなメリットをもたらします。
現在の延長線上にはない問題にも取り組める
バックキャスティングは、まだ確定していない未来を起点として物事を考える思考法のため、現実の延長線上にはない課題や目標も取り扱うことが可能です。
特に、現代において直面する問題は決まった答えが用意されていない複雑で曖昧なものが多いことから、状況にとらわれない柔軟な思考ができることは大きな強みとなります。
新たなアイディアが生まれやすくなる
現状を踏まえて解決策を検討するフォアキャスティングは、導き出される結論も現実的かつ消極的な内容になりやすく、斬新なアプローチの考案には向いていません。
一方で、バックキャスティングは実現したい未来を第一に考えるため、自由な発想で新しいアイディアを生み出すことができます。より多くのアイディアを必要とする場面では、下記の記事にて紹介している「ブレインストーミング」という手法も効果的です。
人材や組織の変革につながる
バックキャスティングによって設定される目標や課題は、現実よりも理想が強く反映される分、フォアキャスティングの場合と比較してハードルが高くなる傾向にあります。
こうした困難で挑戦しがいのある事柄への挑戦は、従業員一人ひとりに自ら考えて行動する姿勢が身につくなど、時として人材や組織の意識に変革をもたらすことがあります。
組織内のコミュニケーションが円滑になる
組織としてバックキャスティングを実施するなかで生まれる理想の未来像は、メンバー間の共通言語となり、組織内で交わされるコミュニケーションを円滑にしてくれます。
また、全員が同じ未来像を共有する組織では、誰もが気軽に発言できる風通しのよい風土が形成されるため、新しい意見やアイディアも生まれやすくなるでしょう。
バックキャスティングを取り入れるデメリット
上記のようなメリットがある一方で、バックキャスティングの活用にはデメリットも存在します。
現実と理想のギャップに挫折しやすい
バックキャスティングは、大きな目標や課題にも取り組める思考法ではありますが、大きすぎる理想像は現実との間にギャップを生み、挫折の原因になってしまうことがあります。
またバックキャスティングは、現状を参照するよりも先に理想像を決める思考法のため、地に足のついた計画を立てるのが難しいことも挫折につながりやすい要因の1つです。
モチベーションが続きにくい
バックキャスティングによる目標達成・課題解決までの道のりは、遠く長いものになりがちな分、進捗状況を実感しにくく、途中で熱量が失われやすい点も大きなデメリットです。
さらに、長期にわたる計画は不確定要素の影響も受けやすく、環境の変化などによっても取り組みに対するモチベーションが損なわれてしまうことがあります。
短期的な取り組みには不向き
未来から逆算して現在を考えるバックキャスティングは、あくまで長期的な取り組みに適した思考法であり、短期的な事柄ではむしろ手間がかかり非効率的です。
短期的な問題の解決においては現状を正しく把握することも重要となるため、フォアキャスティングを活用した方がより正確な結論を導き出せるでしょう。
バックキャスティングの具体的な方法
ここからは、バックキャスティングを実際に行う際の手順を紹介します。
未来のあるべき姿を設定する
バックキャスティングを行ううえでは、目指すべき未来が具体的に決まっていることが大前提となります。「いつまでに」「どうなりたいのか」というビジョンをはっきりと設定し、組織で取り組む場合は必ずビジョンを組織内で共有しましょう。
また、ビジョンの設定にあたっては一旦現在や過去の状況は考慮せず、自由に理想像を描くことが大切です。現時点では実現が難しいと感じる内容であっても、ひとまず設定したうえで次のステップに移ります。
ギャップを洗い出す
目指すゴールが設定できたら、次は到達に向けた道のりを設計していきます。その際に効果的とされるのが、現状と理想像の「ギャップ」を洗い出すという手法です。
今の状況となりたい姿の間にどのような差がどのくらいあるのか、何が足りないのかを考えることで、おのずと行うべき行動や越えるべきハードルが可視化されます。
課題を設定して具体的なアクションプランを決める
埋めるべきギャップをすべて洗い出した後は、その内容を課題として設定し、各課題の解決に向けたアクションプラン(行動計画)を具体的に決めていきます。
アクションプランの策定は、まず行動そのものをリスト化し、それぞれの行動をいつまでに行うべきか考えてスケジュール上に配置するといった流れで進めます。時間軸に沿って配置すると計画の無駄や不足も可視化されるため、そのつど過不足の調整も行いましょう。
定期的に進捗確認を行う
アクションプランの内容を実行する際は、計画通りに行動が進まないことも考えられるため、定期的に進捗確認を行い、問題が発生している場合は原因の解決にあたりましょう。
進捗確認を行う際は、上司との1on1形式での実施も効果的です。1on1については、以下の記事で詳しく解説しています。
バックキャスティングとSDGsの関係性
近年のバックキャスティングに対する注目の高まりに大きな影響を与えているのが、SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)の存在です。SDGsとは、2030年までの実現を目的とした計17項目からなる「あるべき未来の社会の形」のことです。
SDGsの定める内容は環境問題や人権問題の解決、格差の解消など多岐にわたり、現状のままでは実現が困難な項目が多くを占めています。このことは、SDGsがあるべき未来から逆算して考えられたバックキャスティング型の目標であり、その達成においてもバックキャスティング的アプローチが不可欠であることを示しています。
まとめ
バックキャスティングは、メリットとデメリットの両方が存在する思考法であり、活用にあたっては状況を見極め、フォアキャスティングなどの他の思考法と適切に使い分ける必要があります。一方で、多くの社会課題を抱える現代において、バックキャスティングが効果を発揮する場面はこの先さらに増えていくことが予想されます。
バックキャスティングとフォアキャスティングの使い分けに関しては、弊社の提供する研修でも学ぶことが可能です。研修は若手や中堅といった階層ごとに最適化されており、各職層に必要なノウハウを効果的に学ぶことができます。
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