用語集
ケイパビリティとは? ビジネスでの使い方や具体例を解説
- 公開日:2023/06/20
- 更新日:2024/06/21
ケイパビリティ(capability)とは、一般的に「能力」「才能」「可能性」などを意味する言葉です。ビジネスでは、企業や組織の持つ「企業全体の組織力」や「組織固有の強み」として使われます。具体的な例としては、デザイン性・スピード・効率性・高品質などが挙げられます。
1992年にボストンコンサルティンググループのジョージ ストークス、フィリップ エバンス、ローレンス シュルマンの3人が「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy」という論文のなかで、ビジネスにおけるケイパビリティの概念を提唱しました。ケイパビリティは技術力や開発力などの単体資産ではなく、資産を活かして強みにする「バリューチェーン全体の組織的な能力」と定義されています。競争が激しい市場で企業が生き抜くためには、自社のケイパビリティを正確に把握し、刷新し続ける必要性が高まっています。
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ケイパビリティとはどのような意味?
ケイパビリティとコアコンピタンスの違い
ケイパビリティと似た言葉に「コアコンピタンス」があります。コアコンピタンス(Core competence)の「コア」は「核」「中心」、「コンピタンス」は「能力」を意味する英語で、「企業の核となる能力」の意味です。上記で紹介した論文のなかでは「特定の技術力や製造能力」と定義されています。企業の具体例としては、シャープの液晶技術、ホンダのエンジン技術が該当します。
ケイパビリティは一部分の特定技術のみではなく、事業プロセス全体におよぶ組織的な能力です。組織全体の強みというニュアンスが強く、具体例としては「研究開発力」「独自の技術力」「マーケティング力」などの組織的能力が挙げられます。
ケイパビリティを高めるメリット
ケイパビリティの一つである事業プロセス全体における強みは、他社から見えにくいため模倣しづらいのが特徴です。企業によってそれぞれ経営理念や組織風土は異なるため、同業他社で同製品やサービスを真似て提供する場合でも、事業プロセスは異なり同じにはなりません。ケイパビリティは単体の技術のみでは成り立たないため、製品やサービスを真似するだけでは高められないものです。
また、ケイパビリティは組織固有の強さでもあります。組織固有の強さを確立するためには、コアコンピタンスを高めることも欠かせません。ケイパビリティとコアコンピタンスはお互いに補完し合う関係にあり、ケイパビリティを高めることでコアコンピタンスも向上します。組織固有の強さを確立することで企業の独自性が強くなり、市場での優位性を獲得できるでしょう。
ケイパビリティを高める際の注意点
ケイパビリティを効果的に高めるためには、現在不足しているポイントや理由、優位性があるポイントを明確にする組織分析から始めましょう。自社の現状をプロセスに沿って丁寧に把握するなかで、組織に不足する部分や優位に立っている部分がはっきりします。
その結果、自社のケイパビリティの方向性が決まり、戦略や計画を作成し直せるでしょう。次項で解説する2つのフレームワークでケイパビリティを把握することがお薦めです。
ケイパビリティを向上させるためには、人材育成も必要不可欠です。自社の強みを高める人材獲得も必要ですが、従業員の能力や可能性を高めるにはさまざまな知識を得られる学習教育も有効です。新しく柔軟な発想が生まれやすくなり、企業成長にも貢献するでしょう。
しかし、人材育成には時間がかかり即効性はありません。また、ケイパビリティは組織全体の再構築となるため、成果が出るまでに時間がかかりやすいでしょう。長期戦を覚悟して、トライ&エラーを継続し続けることが大切です。
ケイパビリティを把握するためのフレームワーク
ケイパビリティを把握するためのSWOT分析、バリューチェーン分析という2つのフレームワークの考え方を紹介します。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析は、自社の現状を以下の表にある4つの要素に分けて分析する方法です。SWOTとは、「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」の頭文字から取ったものです。
4つの要因からなるSWOT分析に基づき自社の現状を把握することで、自社の強みや課題を発見しやすいでしょう。感覚的に表に割り振るのではなく、客観的に自社の現状を分析して分けると効果的です。他社との差を詳細に比較するために調査を行うほか、他社製品やサービスを利用することで自社の強みや弱みの認識が正しいか、再認識できます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業活動を主活動と支援活動に分けて、どの活動によって付加価値が生まれているかを分析することです。主活動と支援活動は、以下のように分けられています。
バリューチェーン分析で各活動のコストや強み、弱みを見つけたあとに、VRIO分析(ブリオ分析)を行うことで、各活動の質を見極めます。VRIO分析はValue(経済的価値)、Rareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の頭文字を取ったもので、それぞれの要素から分析する方法です。各項目にYes/Noまたは5段階評価で回答して、強みと弱みを浮き彫りにします。
ケイパビリティを強化する「ダイナミック ケイパビリティ」の考え方
「ダイナミック ケイパビリティ」は、1997年にデイヴィッド J ティース氏によって提唱された企業戦略論です。ビジネス環境の変化に対応するために、人やもの、資金、情報など企業にある資産を再活用して、自社の事業や組織を変革することです。
日本では2020年に経済産業省と厚生労働省、文部科学省が共同で発表した「ものづくり白書」のなかで、ダイナミックケイパビリティが「企業変革力」と定義され、注目を集めました。
ダイナミックケイパビリティには感知、捕捉、変容の3つの能力が必要です。それぞれの能力について、以下で説明します。
感知(Sensing)
感知は顧客ニーズや他社の動向、社会情勢などの経済環境変化を素早く察知する能力です。R&D(研究開発)投資による最先端技術の開発、ニーズ調査による探索、協力企業などの事業動向把握などにより、感知能力が高まるでしょう。
変容(Transforming)
変容は企業間競争で優位に立つために、社内資源を再構築し組織全体を変容させる能力のことです。市場変化に適応できるように組織を再編成することや、社内ルールの変更などを迅速かつ継続して取り組む必要があります。
捕捉(Seizing)
捕捉はすでに社内外にある資源を再利用して、新しい商品やサービスの事業を始める能力です。捕捉能力を高めるために、既存技術や関連資産の改良、技術や設備への適切な投資、新たなビジネスモデルの設計などが必要です。
まとめ
市場変化が激しいなかで企業が勝ち残っていくためには、ケイパビリティを強化し続けることが欠かせません。そのため、現在の自社状況をしっかり分析して、弱みと強みを確認して変革することが重要です。
ケイパビリティは組織全体に関わり、社員の教育や育成も必要です。社会の変化に企業が対応するために社員は新しい知識を身につけ、企業は常に組織を改革し続ける必要があるでしょう。
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