用語集
MBO(目標管理制度)とは? メリット・デメリットや導入のポイント
- 公開日:2022/03/30
- 更新日:2024/07/18
MBOは、社員の自発的な目標達成により、事業を成功へと導くマネジメント手法として注目されています。今回はMBOの概要をはじめ、具体的な効果や導入時の注意点などを解説します。
MBO(目標管理制度)とは
MBO(目標管理制度)とは、企業としてのビジョンや成果に向けて、個々が自ら目標を設定し、その達成レベルに応じた評価によって組織を管理するマネジメント手法です。個人に目標を与えるのではなく、あくまで自主的に決めてもらい、それに対してどう結果を出すのか見極めながら人材活用をしていくフレームワークとされています。
なおビジネス上では、「MBO」と呼ばれる用語が2種類存在します。M&A手法の一種を指すMBO「Management Buyout(経営陣による自社買収)」という言葉もありますが、今回解説するのは「Management by Objectives(目標による管理)」です。
KPI管理・OKRなど似た言葉との違い
MBOと混同しやすいのが、「KPI管理」や「OKR」といった用語で、いずれも同じく目標管理に関わるものです。MBOと似た言葉ですが、それぞれで次のように意味が異なります。
KPI管理との違い
KPI(Key Performance Indicator)は、日本語で「重要業績評価指標」と訳される用語で、組織としての目標達成に向けた過程を数値化して示した基準を指します。
簡単な例として、「チーム全員で商品Aを合計10個販売する」との目標があるとします。仮に5名チームなら、1名につき2個ずつ販売すれば、チームとしての目標達成ができます。このように組織全体の目標に対し、個々がどのようなアクションをすべきなのか、明確な基準を表したものがKPIです。
KPI管理では、組織全体の目標をもとに、個人のタスクに落とし込んでいきます。一方でMBOでは、組織全体での成果に向けて自分で何をすべきなのか考え、自ら目標を決めて行動していく点が異なります。
なおKPI管理については、以下の記事でも詳しく解説しています。
OKRとの違い
OKR(Objectives and Key Results)は、日本語で「達成すべき目標と成果指標」と訳される用語です。組織として目指したいビジョンに対し、個々が出すべき成果指標として、全体の目標を細分化していくフレームワークを指します。
OKRの主な目的は、組織としての高みに向けて、チーム全体を活性化させることです。組織全体で比較的難度の高いビジョンを設定し、個々の挑戦的な姿勢を促す管理方法でもあります。あくまで一人ひとりのパフォーマンス向上を図るものなので、基本的には目標達成率100%を目指すものではありません。
また、OKRは重要指標に絞り込むことが重要で取り組み全てを指標化しないのが特徴です。
一方でMBOでは、組織の課題解決など、何かしらの確かな結果を出すことが前提にあります。個々がそれぞれの目標を達成することで、組織としての大きな成果を生み出す目的がある点に違いがあります。OKRと違って、MBOでは各自の主要な取り組みをすべて目標に組み込みます。
またOKRについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
OKRとは? 企業が使う目標管理の手法を、他の手法と比較して解説
MBOを導入するメリット
ここまでに見てきたように、MBOでは従業員自身で目標を考え、そして達成に向けて自ら行動することで組織としてのよりよい結果を生み出す目的があります。実際に、組織のマネジメントにおいてMBOを取り入れることで、次のような効果が期待できます。
自己管理による業務のマネジメントが可能になる
MBOは自分自身で目標を設定すると同時に、その達成に向けて、どう動くのか自ら考えて実行に移していくフレームワークです。MBOでは、目標の達成率と評価が連動しているため、きちんと結果を出すための自発的な行動を促せる効果が見込めます。
例えば営業で、「新規顧客数の10%増加」を目標にした場合。「どうしたら訪問数を増やせるか」「何をすると受注率が上がるか」など、業務効率化や課題解決に向けて、自分で考えて動く習慣が身につきやすくなります。こうして、従業員自身で業務の進め方をコントロールする自己管理能力が磨かれていき、セルフマネジメントスキルにつながるメリットがあります。
従業員のモチベーションが向上する
MBOでは組織全体で目指す成果に向けて、自分自身で目標を決めることで、企業経営に対する個々の当事者意識も高まりやすくなります。誰かに与えられたり押し付けられたりするのではなく、「こうしてみよう」という自発的な姿勢で目標達成に励めるからこそ、結果が出たときの達成感も大きくなるでしょう。
そして自らの取り組みが企業の成果につながれば、「自分も事業に貢献している」という充実感も得られます。こうした確かな手応えが生まれることで、従業員の意欲が湧きやすくなり、モチベーションも向上する効果が見込めます。
組織目標やチーム目標達成の実現性が高まる
MBOの前提となるのは、組織全体としての成果であり、それを従業員個人の目標達成によって生み出していくフレームワークです。それぞれで目標の内容は違っても、基本的には、全員で同じゴールを目指していきます。一人ひとりの目標達成を重視した、前向きな取り組みを促すのがMBOであり、相乗効果的に組織の高いパフォーマンスにつながる効果も見込めます。個々がMBOを意識して日々の業務に励むことで、企業やチームとして大きな目標を叶えやすくなるメリットもあります。
MBOを導入する際に陥りがちなポイントや注意点
MBOを取り入れることで、今までに出てきたようなさまざまなメリットが見込めますが、より効果的に活用していくために注意しておきたい部分がいくつかあります。ではMBOの導入における、よくある失敗例やその対処法も併せて見ていきましょう。
プロセスや過程が軽視されがちになる
目標達成が評価につながるMBOでは、結果ばかりを重視して、目標達成までのプロセスが軽視されてしまうケースも。例えば「○○のスキルが身についた」など、目に見える結果ではなくても、目標達成への取り組みから得られることもあります。こうした過程が正しく評価されないと、モチベーションが下がってしまう場合も。
また目標達成ができたとして、そのプロセスが次に生かせなければ意味がありません。なぜその結果になったのか、プロセスにもきちんと目を向けることが必要。さらに場合によってはMBOで設定した目標ばかりを追うあまり、目標として設定していない業務が発生した場合に、その業務を疎かにしてしまう可能性も想定されます。
こうした事態を防ぐためには、より幅広い視点からの評価基準を設定する・管理職がこまめにフォローするなどのマネジメント対策も重要です。
全社目標やチーム目標を意識して個人目標を設定する必要がある
個人の目標設定を完全に従業員任せにしてしまうと、会社やチーム全体として目指す成果に直結しづらい内容になってしまう可能性も。MBOはあくまで組織全体の目標達成がゴールとなるため、そこからあまりかけ離れた内容では、思うような成果にはつながらないでしょう。
もちろん従業員主体で、個人の目標を決めるのは大前提です。従業員自身に目標を設定してもらいつつ、管理職からのフィードバックやアドバイスなども加えながら一緒に考えていきましょう。
ノルマ管理になる場合がある
MBOで設定した目標がノルマのように感じるようになってしまうと、従業員にとって余計なプレッシャーやストレスがかかり、意欲を削いでしまう可能性も考えられます。極端な例ですが「目標達成率○%なら減給」など、ペナルティを与えるような評価方法では、厳しいノルマになってしまいがちです。
会社や上司から押し付けるような管理体制はMBOとはいえず、個々のモチベーション低下にもつながるため要注意。できるだけ目標達成に向けた、自発的な姿勢につながる評価やマネジメントを行うことが大切です。
単なる手続きにせずにマネジメントに活かす必要がある
そもそもMBOによってどのような組織運営がしたいのか、あらかじめ明確にしておかないと、導入すること自体が目的になってしまうケースも。ただやみくもにMBOを取り入れてしまうと、形骸化してしまう可能性があります。今後のよりよいマネジメントに生かせるように、MBOによってどう成果を出していくのか、きちんと運用方法を検討しましょう。
MBOを実施するときの流れ
ここからはMBOの具体的な運用イメージについて、順序立てて解説していきます。
目標設定
まずは全社的な経営ビジョンをもとに、MBOを通じて、会社やチームとしてどのようなゴールを目指すのか明確にします。そして組織全体の方針を従業員に共有したうえで、一人ひとりが達成すべき目標を設定。従業員自身で目標を設定してもらいながら、その内容が適しているのか、上司や管理職による客観的な判断から必要に応じて調整するようにしましょう。
例えば、目標のレベルが過度に高いまたは低い・内容が抽象的すぎる・事業成長との関連性がないなど、何か問題があれば修正できるようにフォローしていきます。
計画実行・実施
個人の目標設定ができたら、次は具体的な行動計画に落とし込んでいきましょう。その目標を達成するために、日々の仕事をどう進めるのか・どのような実行策が必要なのか、明確なアクションとして洗い出します。そして行動計画が固まったら、日常業務のなかで実行に移していきます。
進捗確認
目標達成に向けた行動計画中には、上司と従業員自身で、こまめに進捗を確認。従業員との定期的なミーティングの機会を設けて、第三者となる上司の視点から、目標に対する現状のフィードバックを行います。
もし目標達成に向けたプロセスなどに課題があれば、一方的にアドバイスをするだけでなく、従業員と一緒に解決策を検討してみましょう。従業員自身で振り返りができるように、例えば行動計画の修正案を出してもらうなど、自ら調整ができるように促すのがベストです。また日報などの記録を日常的に残してもらうと、より徹底した自己管理につながります。
評価と振り返り・フォローアップ
目標達成の期限が来たら、その時点での結果に対する評価を行います。この際には、従業員自身でも、どのように目標達成ができたのか自己評価を実施。同時に、上司からの客観的な基準による評価をしていきます。もし結果が思わしくなければ、その原因や問題点を見直しながら、次回の対策方法を一緒に検討。また目標達成ができていれば、今回の成功例がどう生かせるのか振り返りをして、次回につなげていきましょう。
おわりに
MBOは、一人ひとりの自発的な目標設定と行動を促すことで、組織全体の大きな成果につなげていくマネジメント手法です。個々が前向きに目標達成に取り組めるMBOにより、例えば従業員のモチベーションアップや組織全体のパフォーマンス向上など、さまざまな効果をもたらすメリットも。なおMBOのような目標管理方法については、以下の研修でも詳しく解説しています。MBOを取り入れたマネジメントをお考えの際には、ぜひご活用ください。
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