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ジョハリの窓とは? 4つの窓と使い方の具体例を解説

  • 公開日:2014/02/21
  • 更新日:2025/05/26

ジョハリの窓とは、人と人との円滑なコミュニケーションを考えるために考案されたモデルのことです。心理学者ジョセフ・ルフトとハリントン・インガムが発表し、のちに「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。
人間は対人関係において、「開放の窓(自分も、相手もよく知っている領域)」「秘密の窓(自分は知っているが、相手には知られていない領域)」「盲点の窓(相手はよく知っているが、自分には分からない領域)」「未知の窓(自分も相手も知らない領域)」の4つの領域を有しており、対人関係を向上させていくためには、「開放の(自分も、相手もよく知っている領域)」を拡大していくことが重要であるとされています。なぜなら、お互いが「開放の窓」で関わるときは、緊張しない理想的な関係であるといえるためです。

ジョハリの窓とは

ジョハリの窓

ジョハリの窓は、自己分析を通じて「自分から見た自分」と「他人から見た自分」の違いを知ることで、人との関係性をより良い形で築くための心理学的フレームワークです。1955年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリントン・インガムによって考案され、両者の名前から「ジョハリ(JoHari)」と名づけられました。ビジネスの現場では主に人材育成やカウンセリング、チームビルディングなどに活用されており、自己理解と他者理解を深めるうえで有効とされる手段として注目されています。

ジョハリの窓の基本的な概念

ジョハリの窓とは、「自己理解」と「他者理解」のズレを視覚的に捉える心理学モデルです。横軸には「自分が知っている自分」、縦軸には「他者から見た自分」を取り、それぞれ「知っている/知らない」の2区分で交差させることで、4つの領域(開放・秘密・盲点・未知)が構成されます。このモデルを用いることで、自己開示やフィードバックの重要性に気づき、人間関係の円滑化やチームの相互理解を深めることが期待されます。

このモデルの最大の特徴は、「自分には見えていない自分」にも目を向けられる点にあります。他者との関わりのなかで得られるフィードバックや、自分の内面を開示するプロセスを通して、これまで意識していなかった部分に気づけます。その結果、相手との信頼関係が築かれ、より効果的なコミュニケーションへとつながっていきます。

ジョハリの4つの窓の意味と具体例

ジョハリの窓は、「自分に関する情報」を4つの領域に分類することで、自己認識と他者理解のギャップに気づき、より良い人間関係を築くための心理学モデルです。この4つの窓は、「自分が知っているか/知らないか」と「他者が知っているか/知らないか」という2軸の組み合わせから成り立ち、それぞれ異なる特徴と意味を持っています。

ここでは、

  • 開放の窓
  • 秘密の窓
  • 盲点の窓
  • 未知の窓

の4領域について、それぞれの意味と具体例を交えながら詳しく解説します。

開放の窓

英語では「OpenSelf」と呼ばれる「開放の窓」は、自分自身も把握しており、周囲の人々にも認識されている自分の側面を指します。例えば、自分の性格や仕事上の強み、話し方など、お互いに共有されている情報がこの領域に含まれます。言い換えれば、自分の自己認識と、他者から見た印象が一致している状態ともいえるでしょう。この「開放の窓」が広がると、周囲との認識のズレが少なくなり、誤解が生まれにくくなります。その結果、相手との信頼関係が築きやすくなり、やり取りもスムーズになります。職場であれば、円滑なチームワークや意思疎通の土台となる重要な要素です。自己開示とフィードバックの積み重ねによって、この領域は徐々に広がっていきます。例えば、自分の考えや価値観を率直に伝えたり、他者の反応を素直に受け入れたりすることで、相互理解が深まり、よりオープンな関係性が育まれていきます。

秘密の窓

「秘密の窓」は英語で「HiddenSelf」と表現され、自分では認識しているものの、他人には伝えていない内面的な情報や感情の領域を指します。例えば、過去のつらい経験や劣等感、誰にも話していない価値観などがこの領域に該当します。いわば、自分のなかに秘めた思いや背景であり、他者には見えていない部分です。この「秘密の窓」が広い状態は、周囲に対して多くを隠している状態ともいえ、他人との距離が縮まりにくくなる傾向があります。本人としては守りたい領域であっても、相手との信頼関係を築くうえでは障壁になることがあります。一方で、少しずつ自分の気持ちや考えを開示していくことで、相手との関係性が深まり、「開放の窓」が広がっていきます。例えば、自分の苦手意識や葛藤を言葉にして伝えることで、相手からの理解や共感を得られることもあります。

盲点の窓

「盲点の窓」は英語で「BlindSelf」と呼ばれ、自分では気づいていないものの、他人には見えている自分の一面を指します。例えば、自分では意識していない口癖や、意外な長所・短所などがこの領域に含まれます。日常でも「それ、無意識にやってるよ」と指摘されて初めて気づくような場面が、まさにこの窓にあたります。この領域が大きいままだと、気づかないうちに相手に誤解をされたり、不快感を与えたりすることもあり、円滑なコミュニケーションを妨げる要因になります。そのため、盲点の窓は可能な限り小さく保つことが望ましいとされています。ただし、厄介なのは「自分では気づけない」ことが特徴である点です。そのため、他者からの率直なフィードバックや意見を受け入れる姿勢が不可欠になります。例えば、同僚や上司、友人など信頼できる相手との対話を通じて、自分の見えない一面に気づけます。盲点の窓を狭めることは、自己認識の精度を高めるだけでなく、他者との理解を深めるうえでも大きな意味を持ちます。定期的に他人の目線を取り入れることが、自分自身をより客観的に見つめ直す鍵となるのです。

未知の窓

「未知の窓」は、英語で「UnknownSelf」と表現されます。これは、自分自身も気づいておらず、他人からも知られていない、誰の目にも触れていない領域を意味します。例えば、今はまだ表れていない能力や、特定の状況で初めて現れる感情・反応など、未知の可能性を秘めた自分がここに含まれます。この領域は、日常的には意識することが難しい一方で、自己成長や変化のヒントが眠っている場所でもあります。「こんな一面があったなんて」と後から気づくような経験は、この未知の窓に由来するものかもしれません。また、「盲点の窓」や「秘密の窓」を縮小し、「開放の窓」を広げていく過程で、未知の領域にアクセスしやすくなると考えられています。他者との深い関わりや、新しい挑戦、環境の変化などが、自分でも知らなかった特性を引き出すきっかけとなるのです。

ジョハリの窓の使い方

ジョハリの窓は、自己理解と他者理解を深めるための心理モデルとして知られています。このモデルをコミュニケーションや人間関係の改善に応用する際に鍵となるのが、「フィードバック」と「自己開示」の2つのアプローチです。ここでは、それぞれの役割や、ジョハリの窓を活用する際のポイントについて解説します。

(1)フィードバック

フィードバックとは、相手の行動や態度に対して、自分や他者がどう感じたか、どのような影響があったかを事実に基づいて伝えることです。ジョハリの窓でいえば、「盲点の窓(他人は知っていて自分は知らない領域)」を「開放の窓(自分も他人も知っている領域)」へと広げる働きがあります。相手が自覚していない行動や印象に気づかせることで、より正確な自己理解を促すのがポイントです。例えば、上司が部下にフィードバックを行う場面では、「業績が良くないから頑張れ」といった抽象的な評価ではなく、「先日のクライアント対応で、○○という反応があったよ」といった具体的な事例を伝えることが有効です。これは、指示や評価ではなく、本人が自ら気づける材料を提供するコミュニケーションです。一方的な判断や命令になってしまうと、防衛反応を引き起こしやすく、盲点の領域にアプローチできなくなってしまいます。フィードバックの本質は、「気づきを与えること」であり、その前提として客観性と相手への配慮が欠かせません。

(2)自己開示

自己開示とは、自分に関する情報や気持ち、価値観などを相手に伝える行為です。これは、「秘密の窓(自分だけが知っている領域)」を「開放の窓」へと広げる効果を持ちます。自分の内面を適切に共有することで、相手との距離が縮まり、信頼関係が生まれやすくなります。例えば、仕事上で苦手に感じていることや、過去に失敗した経験を率直に話すことは、相手に安心感や共感を与えるきっかけになります。特にリーダーや管理職がこうした自己開示を行うことで、チーム全体のコミュニケーションが柔らかくなり、心理的安全性の向上にもつながります。

弊社のトレーニングでは、「開放の窓」を大きくして自己理解を促進するために、「自己開示」や「率直なフィードバック」ができるような研修を開発・運営しています。

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ただし、すべてをさらけ出す必要はありません。相手との関係性やタイミングを見極めながら、自分の考えや背景を少しずつ伝えることで、開放の窓が自然に広がり、円滑な人間関係が築かれていきます。

ジョハリの窓を活用するための手法

ジョハリの窓は、自己理解や対人関係を深めるために広く使われている心理学モデルですが、実際に活用するには具体的な方法を知っておくことが重要です。特別な資格や高価なツールを必要とせず、紙とペンさえあれば始められる手軽さがある一方で、目的や参加者に応じた工夫次第で、その効果は大きく変わるとされています。ここでは、ジョハリの窓を活用する際の代表的な3つの方法を紹介します。

紙とペンを使う方法

ジョハリの窓は、紙とペンだけで気軽に始められるシンプルな手法です。特別なテンプレートがなくても、自分自身と他者から見た自分を、自由な形式で書き出していけます。4つの窓(開放、秘密、盲点、未知)を縦横2軸で区切った枠を書き、それぞれにあてはまる情報を整理するだけでも効果があるとされます。グループワークとして取り組む場合には、書き方や項目の内容をあらかじめチームで統一しておくと、フィードバックや共有がしやすくなります。例えば、「仕事での自分」「人間関係における自分」など、テーマを決めて記述することで、メンバー間での理解がより深まるでしょう。また、書き出した内容をもとに対話を行うことで、思わぬ気づきや相互理解が生まれやすくなります。

診断アプリなどを使用する方法

ジョハリの窓を活用する手段の1つとして、専用のアプリやWEBツールなどのデジタルツールを利用する方法があります。これらのツールでは、自己評価と他者からの評価を組み合わせて、4つの領域を可視化することが可能です。自己理解を深めるだけでなく、他者との認識のズレを把握することで、対人関係の改善にもつながります。また、オンラインでグループワークができるタイプのツールもあり、職場やワークショップの場で手軽に活用できます。対面でのやり取りが難しい状況でも、参加者間でフィードバックを交換することで、ジョハリの窓の特性を生かした実践が可能になります。

項目からあてはまるものを選ぶ方法

「自分は話し上手か」「チャレンジ精神があるか」など、あらかじめ用意された特性リストのなかから、自身に該当すると思う項目を選ぶ形式も、ジョハリの窓を実施する方法の1つです。自由記述のように一から言葉を考える必要がないため、初めて取り組む人や短時間で進めたい場合にも適しています。あらかじめ用意された項目を選ぶ形式は、自由記述よりも取り組みやすく、自他の評価の比較が容易な点が特徴です。ただし、用意された選択肢の範囲に限られるため、細かなニュアンスや個性を完全に表現するには不向きな面もあります。

ジョハリの窓の活用がもたらす実践的なメリット

ジョハリの窓は、自己成長や職場での人間関係づくりにも役立つ実践的な心理モデルです。自分自身を深く知ることができるだけでなく、他者との関係性やチームの相互理解を高める効果も期待できます。
具体的には、

  • 自己理解が深まる
  • チームワークの向上
  • 対人能力の向上

といった3つの側面で、目に見える変化をもたらします。ここでは、それぞれの効果について詳しく見ていきましょう。

自己理解が深まる

ジョハリの窓は、自分自身を客観的に見つめ直すことを可能にする心理モデルです。特に「自分では認識しているつもりの自分」と「他人から見えている自分」とのズレを可視化できる点が、大きな特徴といえるでしょう。例えば、自分が強みだと思っていなかったことを他者から高く評価されていた場合、それは「自分のなかでは盲点だった部分」になります。逆に、自分では長所だと感じていた特性が、他人には意外に伝わっていなかった、ということもあります。こうしたギャップに気づくことで、自己認識の精度が高まり、自分の強みや弱みに対する理解がより明確になります。また、他人にあまり話していなかった価値観や感情を少しずつ開示していくことで、これまで閉ざされていた「秘密の窓」の領域が狭まり、「開放の窓」が広がっていきます。この過程を通して、自分が何を大切にしているのか、どのような行動特性があるのかがクリアになり、内面の理解が深まります。

チームワークの向上

特にチームでこのモデルを使ったワークに取り組むことで、メンバー同士の相互理解が進み、組織全体の対話がスムーズになります。
一人ひとりが「開放の窓」を広げ、自分の考えや特性を共有できるようになると、チーム内に信頼が生まれやすくなります。また、長所だけでなく短所もお互いに伝え合えるような関係性が築ければ、それは心理的安全性の高い職場環境ともいえるでしょう。このような風土が整うことで、結果的に生産性や組織力の向上にもつながっていきます。

対人能力の向上

自己開示が進んで「開放の窓」が広がってくると、自分自身を無理なくさらけ出せるようになります。このような心理状態では、緊張や不安を抱えにくくなり、自分への肯定感が育ちやすくなります。その結果、他者とのやり取りもより自然でストレスの少ないものになっていきます。
また、「ジョハリの窓」を通して自分の言動や特性を客観的に把握できるようになると、無意識のうちに相手を傷つけてしまうような誤解や摩擦も減らせます。結果として、対人関係でのトラブルを防ぎやすくなり、より良い人間関係の構築にもつながるでしょう。

ジョハリの窓を行う際の注意点

ジョハリの窓は、自己理解や他者との関係性を深めるうえで有効な手法ですが、そのプロセスには繊細な要素も多く含まれます。効果的に活用するためには、ただ実施するだけでなく、参加者の心理的安全性や関係性に十分に配慮することが大切です。ここでは、ジョハリの窓を用いたワークを行う際に、事前に意識しておきたい3つの注意点について解説します。

人間性を否定しない

ジョハリの窓を活用するうえで、まず意識しておきたいのが「言葉の選び方」です。フィードバックや評価の際には、相手の性格や人格を否定するようなネガティブな表現を避けることが基本です。例えば、「消極的」という言葉を使う代わりに「慎重である」といった前向きな表現に言い換えるだけで、受け取る側の印象が大きく変わります。評価する項目のトーンが柔らかくなることで、参加者が安心してワークに取り組みやすくなります。
とはいえ、どれだけ言葉に気を配っても、自己肯定感が低めの人は些細な表現でもネガティブに受け取ってしまうことがあります。ジョハリの窓は、自分がどう見られているかという繊細な領域に触れるため、進行役は雰囲気づくりにも十分配慮することが大切です。
重苦しい空気にならないよう、あくまで「楽しく取り組む」場であることを意識して進めましょう。フィードバックの目的は指摘ではなく、気づきと前進のための対話であるという意識を共有しておくと、全員にとって心地よい時間になります。

自己開示を強制しない

ジョハリの窓を用いたワークは、多くの人にとって気づきや対話のきっかけとなる一方で、全員にとって心地よいものとは限りません。人数が多くなればなるほど、自分自身を振り返ったり、他人を評価したりすることに抵抗を感じる人が出てくるのは自然なことです。
なかには、過去のつらい経験やコンプレックスと自己分析が結びついてしまい、ワークの内容が心理的負担になるケースもあります。こうした場合、無理に参加を求めるのではなく、その人のペースや気持ちを大切にする姿勢が求められます。
ジョハリの窓は、人間関係を円滑にしたり、コミュニケーションを深めたりするのに有効とされる心理モデルですが、使い方を誤ると逆に関係性に緊張を生むリスクもあります。そのため、「参加はあくまで任意であること」「自己開示の量は個人で選べること」を事前に共有し、参加者が安心して取り組める環境づくりを意識しましょう。

信頼できる人と行う

ジョハリの窓は、自分の内面を言葉にして伝える「自己開示」を伴うため、安心できる人との間で行うことが重要です。もし、メンバーのなかに初めて会う人や、関係性がぎくしゃくしている人が含まれていると、心理的なハードルが高くなり、本音を話すことに抵抗を感じやすくなります。

自分をさらけ出すには、それなりの安心感と信頼が必要です。「相手にどう思われるか」という不安が強い状態では、自己開示もフィードバックも建前になってしまい、ジョハリの窓の本来の効果は得られにくくなります。
そのため、このワークは、日常的にコミュニケーションが取れていて、信頼関係が築かれている相手と行うのが理想です。職場であれば、既存のチームや部署内での実施が適しているでしょう。互いにリラックスして話し合える雰囲気のなかで行うことで、自分に対する理解も他者への理解も、より深まっていきます。

まとめ

ジョハリの窓は、自己理解と他者理解を深めることで、人間関係やコミュニケーションの質を向上させるための強力な心理学モデルです。自分と他者の視点を整理し、「開放の窓」を広げていくプロセスは、単なる分析にとどまらず、信頼や安心感に基づく関係づくりにもつながります。
特に、フィードバックや自己開示といった行動を通じて、自分では気づきにくい盲点や内面に向き合うことができる点は、個人の成長だけでなく、チームや組織の活性化にも効果的です。
ただし、活用する際には「信頼できる関係性」「配慮ある言葉選び」「無理のない進め方」といった点に注意しながら、安心して取り組める環境を整えることが欠かせません。
人間関係やコミュニケーションに課題を感じている方、自分の特性をもっと深く知りたいと考えている方は、ぜひジョハリの窓を活用してみてください。気づきと対話を重ねることで、これまで見えていなかった“新しい自分”に出会えるかもしれません。

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