「ありたいシニア人材像」を作る
組織・職場の期待を固め、シニア層に明示する
弊社の調査では、仕事に充実感をもっていない人ほど、その原因を会社および上司だと考えている人が多い傾向が出ています。その理由はおそらく、会社や上司を含めた職場が自分にどのような期待をしているのかがわからなかったり、期待されていないと感じているからでしょう。
明確な期待や方針を出しにくい場合もあるでしょうが、そのように感じている人をそのままにしておくことは、本人だけでなく明らかに組織全体への悪い影響につながっていきます。会社や職場がシニア層に何を期待しているのかをしっかり考え、施策と関連付けて上手に伝えていく必要があるのです。
起こりうる変化、期待される役割の変化をメッセージする
50代社員の適応不全が起こる最大の原因は、起こりうる変化をリアルに想定できずいざ起こったときに不具合が生じてしまうためです。それを防ぐには、起こりうる現実を想定した上で心の準備を早い年代で行ってもらう必要があります。リクルートの40代後半〜60代前半の働く価値観調査(2020年)では「働けるうちはできるだけ働き続けたい」「しばらくは働き続けたい」が全年齢層で 9 割を超えていました。一方「キャリアについて考えていない」「自分に自信が持てず将来も不安」「自信はあるが将来は不安」「自信もあるしキャリアも前向き」「具体的なキャリアプランが描けている」「将来のキャリアのために行動を起こしている」からあてはまるものを回答してもらった結果、「キャリアについて考えていない」層が半数以上となっており、年齢が上がるにつれて残りのキャリアも短くなるため、考えていない層の比率が上がり、50代でも 50%以上、45〜49歳でも 45.1%がキャリアについて考えていない結果となっています。長く働くことを希望しつつも、キャリアについて考えていないことからも、現実に企業の中でさまざまな適応不全が実際に起きていることは想像に難くありません。多くのミドルシニア層は、変化を想起しきれていないことが伺えます。仕事面や生活面などさまざまな観点で、具体的なシーンを想起することが重要です。可能であれば、40代のうちからしっかり自分の50・60代のキャリアを考えていく必要もあります。
ロールモデルを作る後押しを仕掛ける
この世代は、役職定年後もプレイヤーとして複数年働く最初の世代ですが、ポストオフ後の処遇や再雇用後の処遇などは企業ごとに差も大きくまだ企業側が期待しているようなロールモデルが少ないのが現状です。この世代には、自分が所属している組織に何を残せるのか、どのような貢献ができるのかをしっかりと考え、後進に示していくことが求められています。この世代に後進の良いロールモデルとなってもらうためには、組織的な支援が重要になってきます。そのためにも、シニア層に会社の期待を明確に伝え、彼らと協力してありたいシニア人材像を作っていくと同時に、ロールモデルになってもらう意識付けとすでに活躍しているシニア人材の情報を共有していくことも有効です。
職場の期待を受け、シニア層が自ら役割を決める場を用意した
- 50代前半で役職定年となるが、その後は同じ職場で後進の指導や管理者のサポートを担ってほしいと考えていた
- 処遇は下がるが、雇用延長後も意義を感じながら働いてもらいたかった
- 役職定年時に研修を実施し、目標を設定したあとに期待値のすり合わせと具体的な計画づくりを上司と話し合って進めていくことにした
- 研修の中で、上司・後輩からシニア層に「何を学んでほしいか、何を教えてほしいか」を伝える場を作った
- 受講後、上司と行った目標設定・行動計画を職場にオープンにして、役割や期待を公開する仕組みを導入した
- シニア層自身が組織への貢献領域が明らかになったため、その後は提案も増えタテ・ヨコの意見交換が活発になった
- 各職場がシニアへの期待を自ら検討するようになった