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ウェルビーイング(Well-being)とは? 必要される背景から取り組むメリット、実践方法まで解説

  • 公開日:2024/01/26
  • 更新日:2024/05/24

ウェルビーイングは、近年注目されている人々の幸福の定義で、ビジネスシーンでも取り入れるべき考え方として広まっている概念です。今回はこのウェルビーイングの概要から、企業にもたらす効果や取り入れ方に至るまでを解説します。

ウェルビーイング(Well-being)とは?

ウェルビーイング(Well-being)とは?

ウェルビーイング(Well-being)とは、直訳すると「よい状態で存在する」、すなわち広い意味での「幸福」を示す言葉です。元々は世界保健機関(WHO)設立時の憲章前文で、「健康」の定義として「Well-being」が使われたのをきっかけに、日本でも広く浸透しました。

世界保健機関(WHO)では、例えば他者との関係性やアイデンティティなど、社会的な要素も含めたすべてが充足した状態を「健康=Well-being」と定義しています。つまり単純な心身状態の加減や一時的な感情から得られる喜びだけでなく、人々が多様な観点から継続的に手にできる幸福感こそが、ウェルビーイング(Well-being)です。

ウェルビーイング(Well-being)を構成する5つの要素

ウェルビーイングは、一般的な認識として、以下で提唱される要素を網羅することで実現できるとされています。なおウェルビーイングの構成要素の定説で代表的なものは、次の2つです。

ポジティブ心理学 PERMA理論

PERMA理論は、ポジティブ心理学を研究したアメリカの学者マーティン・セリグマンが唱えた、ウェルビーイングの構成要素です。以下5つの要素の頭文字から、PERMA理論と呼ばれています。

・Positive Emotion(喜び・楽しみ・愛情・感動などの前向きな感情)
・Engagement(何かしらの活動への熱中や没頭)
・Relationship(他者との親密な関係やネットワークの構築)
・Meaning(自らの存在意義の認識)
・Accomplishment(目標の達成や自己実現)

アメリカの世論調査やコンサルティングを行うギャラップ社

世論調査の世界的パイオニアであるギャラップ社では、独自の幸福度統計の結果から、以下の5つをウェルビーイングの要素として提唱しています。

・キャリア(仕事・育児・勉強など、自己で選択したライフワークの充実度)
・ソーシャル(交友・人間関係の親密性)
・ファイナンシャル(経済基盤や資産活用の満足度)
・フィジカル(心身の健康やエネルギーの充足感)
・コミュニティ(職場・学校・居住地などを含めた地域社会での貢献性)

現代でウェルビーイングが必要とされる背景とは?

現代でウェルビーイングが必要とされる背景とは?

近年では、厚生労働省の「雇用政策研究会」の議題に取り上げられるほど、ウェルビーイングの考え方は高い注目を集めています。さらに政府による「成長戦略実行計画」(2021年)でも、「国民一人ひとりのウェルビーイングの実現」が明確な目標として提示されました。特に現代のビジネスシーンでは、次のような背景から、ウェルビーイングへの意識が求められています。

多様化が進む社会

時代が進むにつれて、人々の価値観や人生観などは多様化し、市場のニーズも細分化しています。単純な物質的消費ではなく、体験としての満足感も求められる昨今。あらゆる考え方の人材が活躍することで、世間の期待に応じた、画期的なアイデアやイノベーションが誕生する可能性も高くなります。そして能力も性質も異なる、多彩な人材を集めて個々が本領発揮できる職場にするには、従業員のウェルビーイングを重視することが大切。従業員のウェルビーイングを守ることは、さまざまな人材を引き寄せる共に、互いに尊重し合って相乗効果を生み出す環境につながります。

働き方改革の推進

働き方改革により、各企業で従業員全員が健全に活躍できる環境整備が進められ、ワーク・ライフ・バランスを維持しやすい勤務スタイルが当たり前になってきています。年齢・性別・生活環境に関係なく誰もが働きやすい社会へとシフトするなかで、各人材が一層活躍できる職場にするには、やはり従業員のウェルビーイングが重要です。例えば他者との関わり合いや達成感など幅広い観点から充実したウェルビーイングは、従業員の確かなモチベーションにもなります。

健康経営の強化

従業員の心身の健康を守ることは、一人ひとりのパフォーマンスの維持・向上につながり、企業の業績アップにも直結します。実際にこうした健康経営は、経済産業省でも推奨されており、数々の企業で健康増進に対する取り組みが進められています。従業員の体調管理はもちろん、精神的にも身体的にも常に良好な状態で働くには、やはり一人ひとりのウェルビーイングが大切。従業員のウェルビーイングを追求した環境づくりを進めることは、企業全体の健康経営を支えることにもなります。

エンゲージメントの向上

社会全体の多様化が進むなかで、最近では労働や雇用に対する考え方も変わってきています。これまでは一度就職したら、同じ会社で定年まで働くのが一般的でした。しかし近年は、より適した職場を求めて転職するケースも当たり前に見られるようになり、人材の定着が難しくなってきています。そこで各従業員がウェルビーイングを実感できる環境により、エンゲージメントを高めることで愛社精神を育むことも重要。エンゲージメントが向上すれば、離職を防止できると同時に、会社に貢献しようとする意欲を高めることにもつながります。

人材不足と人材確保の観点

少子高齢化により、労働人口の減少も深刻化している現代では、人材不足は大きな社会問題となっています。そうしたなかで人材の流動も激しい傾向にあり、各企業の人手確保は重要な課題です。人手確保のためには、やはり多様な人材が活躍できる環境が必要で、一人ひとりのウェルビーイングも欠かせません。誰もが満足感を持って働けることで、幅広い人材による高い生産性を生み出し、人手不足の補てんにもつながっていきます。

SDGsへの取り組みの一環

SDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての人に健康と福祉を」という、ウェルビーイングに関する項目もあります。こうした背景から、SDGsを推進する企業としては、ウェルビーイングに注目した取り組みは必須といえます。なお以下のプログラムでは、SDGsと人材との関係性についてご紹介しています。SDGsと関連させた人材活用をご検討の際には、ぜひ参考にしてください。

<関連リンク>
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ウェルビーイング導入がもたらす企業のメリット

ウェルビーイングは、今後のよりよい組織運営には欠かせない考え方です。では実際に、ウェルビーイングによってどのような効果が得られるのか、具体的なメリットも以下からご紹介します。

離職率の低下

前述にもあるように、従業員がウェルビーイングを実感できる企業なら、「ここでずっと長く活躍したい」「もっと会社に貢献したい」などの意欲も湧きやすくなります。重要なのは、「今の充実感はこの会社でしか得られないだろう」と、従業員自身に感じてもらうことです。福利厚生や勤務条件なども大切ですが、こうした制度や仕組みだけ手厚くしても、もっと好条件の職場があれば転職してしまう可能性も。そこでもう少し踏み込んだウェルビーイングにより、例えば人間関係なども含めた総合的な満足感がある環境なら、離職を考える人はさらに少なくなるでしょう。企業全体としてウェルビーイングを意識すれば、人材の流出を防げる効果が見込めます。

リテンションの向上

リテンションとは、簡単にいうと組織の維持力を示す言葉で、経営に大きく影響する人材の保持やリソース形成などの意味を持ちます。ウェルビーイングによって離職率が下がれば、当然ながらリテンションも向上します。人材がしっかりと定着して、社内の一人ひとりのスキルが磨かれていけば、最終的には組織力の底上げにもつながるでしょう。ウェルビーイングを通じてリテンションを高めることは、企業全体として大きな力を生み出す効果ももたらします。なおリテンションの向上については、以下でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

<関連リンク>
リテンションとは

生産性の向上

個々がウェルビーイングを自覚できている場合、それぞれの心身状態もよく、仕事に対する熱意やエネルギーも高まりやすいと考えられます。こうして従業員一人ひとりのモチベーションを維持できれば、担当業務にも前向きに取り組みやすくなり、生産性も向上する効果が見込めるでしょう。ウェルビーイングを通じて、従業員の積極的な行動や作業効率化などを促すことは、結果として会社全体の業績アップにもつながります。

ワークエンゲージメントの向上

ワークエンゲージメントとは、仕事への意欲や集中力を強く持っている状態を指します。ウェルビーイングによって、各従業員が会社で働くことで満たされている実感ができれば、おのずとワークエンゲージメントにもつながる効果が見込めるでしょう。例えば積極的に学ぼうとしたり、難題に根気よく取り組もうとしたりなど、常に向上心を持って働く姿勢にも直結します。なおワークエンゲージメントの重要性などは、以下でもご紹介しているため、ぜひチェックしてみてください。

<関連リンク>
ワークエンゲージメントとは

優秀な人材の確保

ウェルビーイングによって、従業員が定着する組織を構築できれば、自然と優秀な人材が集まりやすくなるメリットもあります。仮に求人を出す際に、従業員のウェルビーイングを重視する点を明示できれば、より多くの求職者からの応募が舞い込みやすくなります。候補者が多ければ多いほど、優秀な人材に出会える確率も高くなり、自社が求める従業員の採用にもつながるでしょう。そして無事に採用できた後も、社内のウェルビーイングによって定着すれば、長期で活躍する重要な人材として確保できます。

企業がウェルビーイングを実現するための具体的な取り組み

企業がウェルビーイングを実現するための具体的な取り組み

では実際に、従業員のウェルビーイングを叶える取り組みとして、企業で実践できる施策をいくつかご紹介していきます。

コミュニケーションの活性化

ウェルビーイングでは、人と人とのつながりも大切な要素の1つであり、やはり社内の人間関係も大きく影響します。従業員同士で密にコミュニケーションを取れる職場の方が、互いの関係性も築きやすく、各企業ならではの働きやすさにもつながるでしょう。例えばオフィス内で気軽にランチやミーティングができるカフェスペースや、簡単に情報交換ができる社内SNSなど、仲間同士の交流を促す仕組みを取り入れる方法が考えられます。

キャリア自律への支援

キャリア自律とは、自分自身でキャリアプランをコントロールし、自らその実現に向けて行動できる状態をいいます。ウェルビーイングでは、何かに夢中になったり目標を追いかけたりして得られる充実感も、重要な構成要素の1つです。キャリア自律のサポートを通じて、従業員自身で働くビジョンを見出して主体的に取り組めるようになれば、自然とウェルビーイングにもつながっていきます。例えば個人的にスキルアップに向けて勉強できる学習ツールを導入する、キャリアコンサルタントやメンターによる定期面談を実施するなど。あくまで従業員自身で考えて働き方を選択し、個々の意志を持って動ける体制を整えることが大切です。

福利厚生の充実化

ウェルビーイングの基本でもある心身の健康を守るためには、安心して働ける福利厚生がそろっていることも欠かせません。例えば家賃補助・帰省手当・昼食代負担・託児所の完備など、私生活を支援する福利厚生を充実させることで、ストレス感のない働きやすさにもつながります。その他にもリモートワークの導入や残業削減など、労働環境の見直しも併せて検討してみましょう。

メンタルヘルス対策の強化

ウェルビーイングの実現には、精神衛生面のケアを通じた、心身の健康維持も不可欠です。基本的なストレスチェックに加えて、例えばカウンセラーや相談窓口の設置・職場環境のこまめな把握と改善・定例ミーティング・休暇や労働時間の見直しなど。労働のストレス緩和に向けた、さまざまな仕組みを取り入れる方法が考えられます。

健康増進活動の推進

精神面に限らず、もちろん身体的な健康も、ウェルビーイングの実現に欠かせない要素です。定期健診や予防接種などの他、適度な運動を促進するなどの取り組みも効果的でしょう。例えば福利厚生にフィットネスジムの割引サービスを取り入れたり、社内でクラブ活動やスポーツイベントを実施したりする方法もあります。

ビジョンやパーパスの共有

企業として目指す方向性を明確にし、従業員一人ひとりが組織の当事者である意識を持つことは、社会的な充実感を得ることにつながります。自分が何かしらに貢献している自覚は、ウェルビーイングの大切な要素であり、企業の一員として強く認識することで実感できるものともいえるでしょう。

なお以下のコラムやセミナーでも、ビジネスにおけるウェルビーイングの在り方について詳しくご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

<関連リンク>
【コラム】自ら「やる」と決めることがワーク・エンゲージメントを高める
【コラム】これからの人事は従業員のウェルビーイングを高めるアプローチが大切だ
仕事のパフォーマンスを高めるウェルビーイングな働き方 ~働く人のための幸福学入門~(182)

まとめ

ウェルビーイングは、豊かで幸せな人生を歩むための指標にもなる概念です。一般的に生涯の大半は仕事をして過ごすことになるからこそ、労働現場のウェルビーイングにも、企業として配慮していくことが必要。昨今は社会的な労働力不足の影響などもあり、ウェルビーイングを積極的に意識して、人材確保に向けた工夫をすることが大切です。ぜひ今回の記事も参考に、企業としてのウェルビーイングについて一度見直してみましょう。

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