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ワークエンゲージメントとは? 意味や高める方法、メリットを解説
- 公開日:2023/08/08
- 更新日:2024/12/20
ワークエンゲージメントとは
ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態を指します。ポジティブ心理学が注目されている近年の動向にともない、オランダのユトレヒト大学ウィルマー・B・シャウフェリ教授によって提唱された概念です。
このワークエンゲージメントは仕事に向けられた一時的な感情ではなく、持続的・全体的な感情である点が特徴です。個人・組織の両方に対して肯定的な影響をもたらす有益な概念として、ビジネス界で近年注目されています。また、2018年に厚生労働省から発表された「平成30年版労働経済の分析」でも、ワークエンゲージメントが従業員の健康やパフォーマンスに影響を与えると言及されています。
従業員エンゲージメントとの違い
ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの違いは、個人のエンゲージメントが向けられている対象です。ワークエンゲージメントは「仕事そのものに対してポジティブな心理状態」を指します。仕事に対してやりがいや誇りを感じており、熱心に取り組めている状態です。
一方で従業員エンゲージメントとは、「職場メンバーとの目標実現や成果創出に向けて、自ら進んで貢献したいと思っている状態」です。職場のメンバーとの関係性も良好で、目標達成や成果の創出に向けて貢献したいと思えている、「会社や仲間に対してポジティブな心理状態」を指します。
ワークエンゲージメントを構成する3つの要素

ワークエンゲージメントは以下に挙げている3つの要素から構成されており、これらをすべて満たすことによって成立します。
- 活力(Vigor)
- 熱意(Dedication)
- 没頭(Absorption)
本項では、各要素の特徴や仕事との関連性について解説します。
活力(Vigor)
活力は、仕事に対するエネルギーが高水準で心理的な回復力が高いうえ、仕事への努力を惜しまない気持ちがあり、難しい課題にも積極的に取り組める状態のことです。仕事から活力を得ているため、労働でのストレスを感じにくく、楽しみながら仕事を行えます。
また、ミスやトラブルが原因でストレスを感じても、活力が高いとすぐ回復するため、仕事に支障が出にくい点も特徴です。活力(Vigor)を満たしていると、困難な状況に置かれても、粘り強く働けるようになります。
熱意(Dedication)
熱意とは、仕事に強い関心を持って熱中しており、なおかつ仕事における意味を見出し、誇りを持って新しいことに挑戦しようとする意欲がある状態です。従業員の熱意が高い場合、新たな知識のインプットも積極的に行うので、斬新な商品やサービスのアイディアが生まれたり、業務効率化につながったりする可能性が高まります。
従業員は結果を求めて努力を継続するため、熱意(Dedication)は従業員個人のキャリアアップはもちろん、会社の業績アップにも寄与する要素です。
没頭(Absorption)
没頭とは、仕事に取り組んでいる際に幸福感を感じ、集中力が高まっていることにより、時間が早く進むような感覚を得ている状態です。従業員が仕事に没頭している場合、仕事の精度やスピードが向上するので、業務効率化につながるだけではなく、人為的なミスも減らすことができる場合もあります。
仕事中に他の仕事やプライベートについて考えていると、どうしても集中力は落ちてしまいます。業務効率化の実現には、時間を忘れるほど仕事にのめり込むようなタイミングがあるとよいでしょう。
ワークエンゲージメントと関連している3つの概念

ワークエンゲージメントと関連している概念としては、以下の3つが挙げられます。
- ワーカホリズム
- 職務満足感
- バーンアウト
これらの概念も、従業員のワークエンゲージメントに深く関連しています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ワーカホリズム(ワーカホリック)
ワーカホリズムとは、仕事の活動水準こそ高い状態を保っているものの、仕事に対する態度や認知が低い状態です。「ワーカホリック」と呼ばれることもあります。ワーカホリズムは要するに、「働かなければならない」と考えている状態です。つまり、従業員は仕事を失う不安、働かないことへの罪悪感を回避するために仕事をしています。
仕事の活動水準が高いという点はワークエンゲージメントと同じですが、ワーカホリズムは仕事に対して強迫的、否定的な感情を抱いているため、ネガティブな心理状態です。仕事で結果を出すことは可能ですが、ワーカホリズムは基本的に長く続かず、従業員の心身にも悪影響を与えかねません。
ワーカホリズムはワーカホリック(仕事中毒)とも呼ばれ、仕事中毒になる原因や症状を理解すれば、適切に対処することが可能です。
職務満足感
職務満足感とは、仕事に対する態度や認知は高いものの、仕事の活動水準が低い状態です。上記のワーカホリズムと対極的な概念になります。
ワークエンゲージメントと同様、仕事に対してポジティブな感情を持っているため、従業員はやりがいを持って働いている状態です。しかし、仕事に没頭しているわけではないので、時間を忘れるほどの集中力を発揮できていません。そのため、従業員の心身に負担はかかりませんが、会社への貢献度が低くなりやすい傾向にあります。
ワークエンゲージメントは「仕事に取り組んでいる際の心理」ですが、職務満足感は「仕事そのものに対する心理」を指していることが大きな違いです。
バーンアウト
バーンアウトとは、仕事の活動水準が低いうえ、仕事に対する態度や認知も低い状態です。ワークエンゲージメントと対極に位置する概念であり、「燃え尽き症候群」という別名でも知られています。
仕事や会社に対してネガティブな感情を持っているうえ、働くことへの意欲や関心も失っているため、社会的活動を停止している状態です。バーンアウトは誠意と熱意を持って仕事に取り組んできたものの、思うような結果を得られなかったなどが原因で発生します。
従業員がバーンアウトに陥った場合、責任を同僚や部下に押しつける、手抜きや欠勤が増えるなど、さまざまな問題行動を起こす可能性があります。会社だけではなく、顧客や取引先にも悪影響を与えかねないため、特に注意が必要です。
ワークエンゲージメントを高めるメリット

ワークエンゲージメントを高めることで、以下のようなメリットを得られるようになります。
- 生産性の向上
- 従業員のメンタルヘルス対策
- 顧客満足度の向上
- 離職意向が低く組織コミットメントが高い
各メリットの概要をまとめたので、きちんと押さえておきましょう。
生産性の向上
ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事におけるパフォーマンスも高い傾向があります。仕事に対してポジティブな感情を持ちながら、より積極的に業務を遂行するようになるため、生産性の向上へとつながるのです。
また、ワークエンゲージメントが向上すると、従業員の学習意欲もアップするので、セミナーなどで新たな知識や技術を習得する可能性も高まります。その結果、画期的なアイディアや新たなビジネスチャンスの創出にも期待できるでしょう。
従業員のメンタルヘルス対策
ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事における心理的ストレスも少ない傾向にあります。メンタルヘルスケアの側面があるため、心身の健康を促進できることはもちろん、より良い組織風土の構築や離職率の低下につながることもメリットです。
近年、職場での働き方や人間関係に悩む方が増えていることから、ストレスチェックなどのメンタルヘルス対策を行う企業も増えています。これと並行してワークエンゲージメントの向上施策を実施すれば、相乗効果が見込めるでしょう。
メンタルヘルスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
顧客満足度(CS)の向上
ワークエンゲージメントが向上すると、先述したように仕事のパフォーマンスが高まります。これにより、サービスや成果物の質が上がると、顧客満足度も向上し、結果的に購入や問い合わせといったアクションにつながるのです。
また、顧客満足度が高まると、顧客ロイヤルティ(企業への愛着・忠誠)も高まるため、リピート率向上やブランディングという点でも有益です。
離職意向が低く組織コミットメントが高い
また、一般社員624名を対象にした弊社調査では、ワークエンゲージメントが高い人ほど仕事における幸福度や適応感が高く、離職したいという意向が低い傾向にあることが分かりました。加えて、ワークエンゲージメントが高い人は会社の理念や目的を達成したい、この会社を選んでよかったと愛着感情が高い傾向にあり、組織コミットメントが高いという結果が出ました。
【調査レポート】一般社員624名に聞く、 ワーク・エンゲージメントの実態
ワークエンゲージメントを高めるための2つの要素
ワークエンゲージメントを高めるために必要な2つの要素は、「仕事の資源」と「個人の資源」です。仕事の資源と個人の資源はそれぞれ影響し合い、ワークエンゲージメントの向上につながります。それぞれの要素について、詳しく解説していきます。
仕事の資源
仕事の資源とは、仕事を自身でコントロールできる状態であったり、上司や同僚からの支援を受けられたりといったモチベーション向上における要因を指します。正当に評価されたり、キャリア開発の機会があったりといった点も、仕事の資源といえるでしょう。仕事の資源が多いほど、ワークエンゲージメントが高まっていくことが分かっています。
仕事の資源を満たす方法として、1on1やコーチング、業務効率化の推進や柔軟な働き方の許容が挙げられます。特にコーチングに際しては、対話をベースに行うことが大切です。
個人の資源
個人の資源とは、仕事において心理的ストレスを軽減させたり、モチベーションを上げたりするために必要な内側の要因を指します。自己効力感や自尊心、粘り強さ、楽観性のことです。
個人の資源を満たす方法として、タイムマネジメントや対人スキルのトレーニングなど、仕事を円滑に進められるスキルを身につけるとよいでしょう。また、自身が「主体的に仕事に取り組めている」「望んで仕事をしている」という実感や、定期的なメンタルヘルスケアも大切です。バーンアウト状態を防いだり、心身の健康を保ったりすることにつながります。
ワークエンゲージメントの尺度と測定方法
ワークエンゲージメントは、主に3つの方法で測定できます。尺度と測定方法を理解し、適切に自社の取り組みとして取り入れていきましょう。
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)
MBI-GSは、ワークエンゲージメントの対になるバーンアウトの数値を測定する方法です。「消耗感(疲労感)」「冷笑的態度(シニシズム)」「職務効力感」の3つのカテゴリで、合計16個の質問を通して測定します。算出した数値が低いほど、ワークエンゲージメントが高いと評価されます。反対に、算出した数値が高いほどバーンアウトに近い傾向があるでしょう。
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)
OLBIも、バーンアウトの数値を測定する方法です。「消耗感(疲労感)」「冷笑的態度(シニシズム)」の尺度から、合計16個の質問を通して測定します。MBI-GSと同様に、数値が低いほどワークエンゲージメントが高い傾向にあります。
UWES(Utrecht Work Engagement Scale)
UWESとは、17個の質問を通して「活力」「没頭」「熱意」の数値を測定する方法です。ワークエンゲージメントを測定する方法としては最も安定しており、企業でも利用される機会が多いのが特徴。短縮版UWESと超短縮版UWESがあり、短縮版は質問が9個、超短縮版は質問が3個と、手軽に取り入れやすいのが魅力です。
ワークエンゲージメントを高める方法

ワークエンゲージメントを高める方法としては、一部の手法をご紹介します。
- 参加型討議の実施
- CREWプログラム
- ジョブ・クラフティング
- 「思いやり行動」を増やすプログラム
それぞれ概要や注意点をまとめました。
参加型討議の実施
参加型討議とは、日頃から抱えている悩みや課題、職場活性化のための取り組みなどについて、従業員同士で討論できる場を設けて意見交換を行う方法です。ディスカッションの一種ですが、従業員同士が率先して討論を行うことで、ワークエンゲージメントが高まります。
ただし、テーマによってはスムーズに進行しない可能性もあるため、アンケート調査やチェックリストなどを活用し、あらかじめ意見をまとめておくことが重要です。聞き上手な従業員を進行役にすると、意見を出しやすくなります。
また、その場限りの討論で終わらせず、討論内容をまとめて解決策を講じることも大切です。テーマや参加者を変更しつつ、ディスカッションを継続することも心がけましょう。
CREWプログラム
CREWプログラムとは、従業員同士が敬意を持って接する良好な人間関係を築くことで、働きやすい職場環境を実現する方法です。CREWは「Civility(礼節・丁寧さ)Respect(敬意)and Engagement(エンゲージメント)in the Workplace(職場)」の略称となります。
取り組み自体はシンプルで、決められたテーマに沿って従業員同士で対話を重ねるのみです。手軽に始められる方法ですが、プログラムは1度きりではなく、継続的に開催することで次第に効果を発揮します。テーマや社内の状況にもよりますが、少なくとも3カ月以上は続けたいところです。
テーマを決める際は、プログラムの目的を踏まえて、敬意や尊敬に関する内容、お互いの親睦を深められる内容に設定しましょう。
ジョブ・クラフティング
ジョブ・クラフティングとは、従業員個人にやりがいを持てる働き方や仕事との向き合い方、他の従業員との接し方などについて考えてもらう方法です。働き方やコミュニケーション方法を自ら工夫することにより、ワークエンゲージメントを高める目的があります。
おもな施策としては、業務の洗い出しや従業員強みといった自己分析を通じて、仕事や職場に対する捉え方を見直すという方法があります。ジョブ・クラフティングは自主的に取り組むことが基本ですが、研修を行うなど会社から働きかければ、さらに促進することが可能です。
「思いやり行動」を増やすプログラム
職場で問題を抱えている方や多忙で手が回らない方に対し、自発的にサポートする動き「思いやり行動」を生み出す方法です。業務効率化やミスの予防につながるだけではなく、人間関係の改善も見込めます。
このプログラムでは、単に他の従業員を思いやるだけではなく、求められるサポートの内容や具体的なアプローチまで決めることを促します。また、最初にグループワークを開催して、サポートできそうな内容を話し合ってから実践に移すことも大切です。
そして、プログラム開始から2週間程度経ったら、再度グループワークを開催しましょう。サポートを実践した結果、どのような変化が起こったか、もっと改善するためには何をすべきかなど、あらためて話し合うことでエンゲージメント向上につながります。
おわりに
ワークエンゲージメントは仕事に対するポジティブな心理状態であり、個人・組織のどちらにも肯定的な影響をもたらすものです。厚生労働省が取り上げたこともあり、日本のビジネス界でも注目を集めています。
従業員のワークエンゲージメントが高めると、生産性の向上やメンタルヘルスの改善、顧客満足度の向上といったさまざまなメリットを得ることが可能です。まずはツールなどを使ってワークエンゲージメントの測定を実施し、その結果に合わせて向上施策を検討しましょう。
組織課題の可視化ツール「エンゲージメント・ドライブ」
エンゲージメント向上施策を検討するとき、まずは現状を把握することが大切です。エンゲージメントに影響のある要素を測定し、課題を明らかにする必要があります。弊社が提供する「エンゲージメント・ドライブ」は、エンゲージメントの状況を洗い出し、会社や組織状態の改善に役立つ診断を行う「組織課題の可視化ツール」です。
エンゲージメント・ドライブの特徴は、エンゲージメント向上の対象を「仕事」「職場」「会社」の3つに分類している点です。3つのエンゲージメントとその要因を測定することで、組織・個人の状況を細かく把握できるうえ、エンゲージメント向上の要因も探れるようになっています。
さらに、組織の概要や各側面の細かいデータなど、見るべきポイントがわかりやすい報告書を提供しています。報告書を見ることで、エンゲージメントの状態や課題を一目でチェックできます。また、サーベイ結果に基づく課題仮説の提示、一般的な施策内容に関するヒント集を提供していることも特徴です。施策の検討・実行にあたり、有用な情報が手に入ります。
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