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リテンションとは? 採用難時代のメリットや人的資本経営との関係を解説

  • 公開日:2023/06/22
  • 更新日:2024/06/21

リテンション(retention)は、「維持」「保持」のことを意味します。企業ではおもに人事領域で注目されており、自社になくてはならない人材の確保と定着に焦点を当てたマネジメントのあり方や、具体的な施策を指しています。

近年、日本企業では人材を「資本」と考えてその価値を最大化する人的資本経営の考え方がでてきました。リテンションの考え方は、こうした流れのなかで特に「従業員の離職をいかに防ぐか」という視点から人事施策を問い直すことを促します。リテンションは、既存顧客との関係性の維持発展を目指すマーケティング領域でも使われることがありますが、この記事では人事領域に限定して解説していきます。

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リテンションが注目を集めるようになった背景

リテンションが注目を集めるようになった背景

そもそも、なぜ企業はリテンションを考える必要があるのでしょうか。

その背景には、企業を取り巻く環境の変化や、それにともなう働く人々の価値観の多様化があります。以下で順に説明していきます。

少子高齢化などによる慢性的な人材不足

まず、労働力となる母数そのものが少なくなったという事実があります。

日本の65歳以上の人口が全人口に占める割合は、1970年には7%程度でしたが、1994年には14%を超えて上昇を続け、2020年には28.8%に達しました。少子化が進み、団塊世代が退職を迎え、労働人口といわれる15歳以上65歳未満の人口は、ピーク時の1995年と比べると2020年は1,000万人以上も減少しています。(参考:「令和3年版高齢社会白書(全体版)」内閣府)

近年では、人材不足が常態化し、企業が必要な人材を確保することが難しくなっています。同時に、限られた人材を手放すことの負担もより大きくなりました。

転職市場活発化による人材の流動化

多くの日本企業にとって新卒一括採用や終身雇用が当たり前であった時代には、「人材を定着させる」ということをあえて意識する必要はありませんでした。

しかし長引く不況の末、経営を取り巻く環境は不確実性を増し、従業員の雇用を将来的に保障することが難しくなっています。

そこに労働力不足も相まって転職市場は活発化し、優秀な人材の流出がしやすくなるという状況が生み出されました。

働き方の多様化

労働環境の変化は、働く人々の価値観にも影響しています。人生を仕事中心に考える人は徐々に減り、ワークライフバランスを重視する人が増えてきました。一方、仕事に対しても収入のためだけでなく、やりがいや成長を考える傾向が高まっています。

従業員を定着させるために、企業はより柔軟な制度や、仕事へのやりがいを高めるための工夫が求められるようになったといえるでしょう。

リテンション施策を導入する3つのメリット

企業にリテンションが求められる背景を紹介いたしましたが、具体的な取り組み方に興味を持たれた方も多いことでしょう。

リテンション施策についてはのちほどご紹介しますが、まずは施策の導入が企業にどのようなメリットをもたらすのかを知っていただきたいと思います。

採用・育成コストの削減

リテンション施策を行う目的として離職を防止することが挙げられます。離職率を低下させることで、新たに社員を採用するためのコストや育成にかかるコストも減らすことができるでしょう。

知識やノウハウの流出の防止

長く働くと従業員の知識やノウハウが蓄積され、結果として仕事の効率アップや商品サービスの付加価値という成果を生み出します。リテンションを強化すれば、従業員の流出だけでなくこうした知識やノウハウの流出も防止することができます。

従業員が定着すれば、企業内の無形の資産を増やすことにもつながるということです。

社員のモチベーション向上

離職率が高い職場や企業において共通する傾向として社員のモチベーションが低いという点があります。リテンションの一環として魅力的な職場を作ることで、社員のモチベーションが高くなり、離職の防止につながります。

リテンション施策を導入する3つのメリット

リテンション施策の種類と具体例

リテンション施策の種類と具体例

従業員のリテンションを強化する施策には、大きく分けて金銭的報酬と非金銭的報酬があります。本項ではそれぞれの具体例を説明します。

金銭的報酬の例

インセンティブ

英語のincentive は「奨励、刺激、誘因」という意味であり、インセンティブはいわゆる報奨金のことです。成果に応じて規定の報酬とは別に支給されるもので、従業員の高い目標設定とその達成を奨励します。
広義のインセンティブには後述するような金銭以外の報酬も含まれますが、多くの場合は金銭的報酬のことを意味します。

福利厚生

リテンションを高めるためには法令で定められた福利厚生だけでは不十分であり、より働きやすさや生活の充実につながる制度を工夫することが必要です。
例えば健康診断に精密ながん検診を付加することや、勤続年数の多い社員へのリフレッシュ休暇を充実させることなどが考えられます。
個々の従業員の状況に寄り添う制度を工夫することも大切です。単身赴任者が多ければ引越し代の負担や家賃補助の拡大、被扶養者が多い場合には子育て、介護支援策などを充実させるとよいでしょう。

従業員の能力に応じた給料

自分の能力が正当に評価されることは、仕事へのやりがいを大きく高めます。明確な評価ルールに基づく給与設定があれば、あらゆるレベルの従業員が自分の能力を客観視でき、全体の底上げをうながします。
会社の信頼度を上げ、優秀な従業員の離職を防ぐためにも、十分に検討された評価制度を作ることが大切です。

ストックオプション

ストックオプションは会社が付与する権利であり、従業員や役員が一定期間、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で自社の株式を購入できるというものです。株価が上がったときに売れば上昇分が利益として得られるという、事実上の金銭的報酬となります。
会社の業績を上げることでストックオプションによる利益を得ることができるため、優秀な従業員の長期的な勤続をうながすことができます。また、ベンチャー企業が新入社員を採用する際にも、誘因力を高めるものとなるでしょう。

ボーナス

ボーナスが従業員のモチベーションとなることは、容易に想像できます。しかし業績に応じるといった会社側の都合でその有無や支給額が変動するため、場合によっては労使の信頼関係を壊す諸刃の剣になることも考慮すべきです。
ボーナスをリテンション施策とするためには、計画性を持って企業の資産を確保し、従業員の期待を裏切らない支給の方法を工夫する必要があります。

以上のように、金銭的報酬にはさまざまなものがあります。しかし、限られた予算内で人材の流出を防止するためには、以下で紹介する非金銭的報酬と併せて実施を検討する必要があります。

非金銭的報酬の例

風土や人間関係

風土や人間関係がマッチしていることでリテンションに繋がります。その理由として社員が働きやすい環境を提供することで、仕事での成果も上げやすくなり定着率も向上する傾向にあります。
定着率が向上することで採用コストの削減や業務効率の向上など、企業にとってメリットが生まれることになります。そのため、オンボーディング施策などを実施して風土や人間関係が一致する環境を整備することは、リテンションを高めるうえで重要な要素の一つになります。

キャリア形成の支援

先述のように、キャリア形成の支援はリテンション施策の目的そのものです。従業員一人ひとりが自分の将来像を描き、仕事を通して目標に近づけるよう支援するためには、具体的に何が足りていないのかを明確にして、支援計画を立てる必要があります。

厚生労働省は、個人のキャリア形成のために考慮すべき以下の6つのステップを発信しています。

1. 自己理解:進路や職業・職務、キャリア形成に関して「自分自身」を理解する。
2. 仕事理解:進路や職業・職務、キャリア・ルートの種類と内容を理解する。
3. 啓発的経験:選択や意思決定の前に、体験してみる。
4. キャリア選択に係る意思決定:相談の過程を経て、(選択肢の中から)選択する。
5. 方策の実行:仕事、就職、進学、キャリア・ルートの選択、能力開発の方向など、意思決定したことを実行する。
6. 仕事への適応:それまでの相談を評価し、新しい職務等への適応を行う。

こうしたキャリア支援を職場で実践するためには、個々に異なる未来像を実現するために必要なスキルを明確化し、現状を客観的に評価することが必要です。
そのためには、直属の上司だけでなく多くの人が関わり、企業全体として支援していくことが求められます。

ワークライフバランスの実現

仕事と生活のバランスを取れるようにするためには、制度の柔軟性が不可欠です。フレックスタイムの導入や多様な休暇制度を充実させるなど、他の施策と同様に従業員の現状に沿った工夫をしていくことが大切です。
しかし、制度を取り入れただけでは解決しないということも理解しておく必要があります。実際の職場でこうした制度が利用されるためには、上司の対応や従業員同士のコミュニケーションの活性化など、職場の風土をつくることが重要になるからです。
リテンションという視点から考えるなら、優秀な社員ほどフリーランスで活躍しやすくなります。
こうした社員の離職を防ぐためにも、「この企業だからこそ働きたい」と思ってもらえるような職場づくりの努力が欠かせません。リテンションを高めるためのワークライフバランスを実現するためには、他の施策と合わせて従業員が長期的に働きやすい社内環境を整えることが大切です。

まとめ

人材の流出を防ぐリテンションの考え方や施策に関して解説しました。

リテンションを強化するために重要なことは、企業側の都合だけでなく従業員の要望を十分に検討し、ニーズに合わせてバランスを取りながら施策を講じていくことです。何より会社が自分たちのことを大切にしてくれていると感じられることが、人材の流出の防止につながっていくでしょう。

人生の選択肢が増え、人々が自分に合った生き方を模索することできるようになり、企業が抱える離職のリスクは今後ますます高まっていきます。

現状をしっかりと見直し、少しでもできることから始めていきましょう。

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