導入事例
ジョブ型×職能型のハイブリッド型人事制度への移行とキャリア自律支援を実施
株式会社七十七銀行
- 公開日:2023/11/06
- 更新日:2024/07/09
事例概要
背景・課題
2021年からスタートした経営計画「Vision 2030」では「挑戦的な企業文化への変革」が大きなテーマとなりました。私たち人事部は、挑戦的な企業文化を確立するため、2023年4月、57年ぶりの大々的な人事制度改革を実施し、「ジョブ型+職能型」のハイブリッド型人事制度としました。
検討プロセス・実行施策
新人事制度を行内に定着させるため、全行規模の「マネジメント実践研修会/リーダー実践研修会」を実施しました。全行員にキャリア自律を促すためには、マネジメント職層のキャリア形成支援スキルとコミュニケーションスキル(1on1スキル)の向上が欠かせないからです。マネジメント職層には、日々の1on1ミーティングを通じて部下の「仕事と人生の伴走者」になってもらいたいと考えています。
成果・今後の取り組み
新人事制度が定着するまでには、ある程度の時間がかかります。まずは今後2年で、誰もがキャリアを主体的に考え、その実現に向けて挑戦することが当たり前だと考える企業風土にしたいと思っています。一番大事なのは、一人ひとりが自分らしいキャリアと生活を実現するために挑戦し、努力することです。今後は、上司や人事部がキャリア選択や挑戦を応援する仕組みをさらに整えていきます。
背景・課題
挑戦的な企業文化を確立するため、「ジョブ型+職能型」のハイブリッド型人事制度へ
石山:2021年5月、私たちは未来の七十七グループの姿を描き、グループ役職員が一丸となって前進するための羅針盤となる「Vision 2030」を策定しました。そして、この「Vision 2030」では、地域と七十七グループが持続的に成長していくために「挑戦的な企業文化を確立する」ことを掲げました。
人事部では、その実現のため、大きな制度改正としては半世紀以上ぶりとなる人事制度改革を行うことを決め、企業文化に変革を起こすべく検討を開始しました。
私たちはまず、2021年5月に従業員意識調査を行いました。従業員の想いを起点にした人事制度にしたかったからです。調査の結果、「堅実でまじめな社風は良いけれど、一方でチャレンジ精神や人事制度などに課題がある」という声が多いことが分かりました。特に、多くの若手・中堅行員が、年次や経験を重視した職能型の人事制度に不満を持っていることが明らかになりました。チャレンジを奨励するためには、お客様や地域への貢献を適正に評価し、成果を給与に反映するシステムに変える必要がありました。
この調査結果を踏まえ、2021年9月から、リクルートマネジメントソリューションズのコンサルタントの協力を得て、新人事制度を構築しました。キーワードは「挑戦」「選択」「エンゲージメント」の3点です。第一に、ジョブ型雇用(役割等級制度)を導入し、職務や役割によって給与が変わる仕組みに変更しました。これは年齢や経験にとらわれず、地域・お客様に対しより付加価値の高いソリューションを提供できる行員を増やしていくことが、地域と七十七グループの持続的成長に繋がると考えたためです。ただし、職能型(職能資格制度)の要素は残しました。なぜなら、これまで培ってきた能力や経験も七十七銀行のビジネスに活用していくことが重要だと考えたからです。私たちにとっては、「ジョブ型+職能型」のハイブリッド型人事制度が現時点でのベストだと考えています。
第二に、行員に「キャリア自律」を促し、キャリアを主体的に考え、その実現に向けて挑戦する体制を整備しました。職務や役割によって処遇が変わる新人事制度においては、一人ひとりが「自分は将来何をしたいか、どうなりたいか」を考え、その実現に向けて行動することが必要不可欠です。行員の価値観も多様化し、これまでのゼネラリストだけではなく、各分野のスペシャリストになりたいと考える行員も非常に多くなっていたので、それぞれのキャリアが実現可能となるよう処遇面等を見直し、キャリアの選択肢や成長機会を拡充しました。それによって、モチベーションとエンゲージメントを向上させたいと考えています。
このようにして、2023年4月、私たちは57年ぶりの人事制度改革を実行しましたが、制度改革の前と後では、「行員に求められる意識」が大きく変わることは想像に難くありません。一番の懸念は「いかにスムーズに新人事制度を定着させられるか」ということでした。
検討プロセス・実行施策
上司が部下の「仕事と人生の伴走者」になり、タッグを組む組織に変える
鈴木:新人事制度は、2021年に方向性が固まりました。それを受け、新人事制度において求められる考え方や必要なスキルを、制度改革前に行員に対し研修する必要性を強く感じました。その際、最優先で実行することに決めたのが「マネジメント実践研修会」です。新人事制度では「キャリア自律」が求められます。
マネジメント職層には、部下のキャリア志向を理解し、その実現を支援する「キャリア形成支援」の考え方と、そのためのスキルを持ってもらう必要がありました。しかし、これまで業務進捗や営業推進、人事管理など「仕事にかかる管理」について研修を行うことはありましたが、「キャリア形成支援」について働きかけたことはありません。リーダーや部下行員よりも先に、マネジメント職層の意識改革が必要だと感じました。
そこで、引き続きリクルートマネジメントソリューションズの力を借り、制度改革前の2022年5月から、「マネジメント実践研修会」を実施しました。受講者は、全部課店の支店長・本部課長・次長の総勢300名超です。この研修では、これからのマネジメント職層に求められる役割とキャリア形成支援の考え方のほか、コミュニケーション手法(1on1スキル)を学んでもらいました。部下に「キャリア自律」を促すためには、指示命令ではなく、部下自身が納得感を持って「挑戦」「選択」ができるような、気付きを与えるコミュニケーションが大切だからです。
実はこれまで、マネジメント職層が集まってグループワークを行うような研修はありませんでした。初回、和気あいあいとグループワークをする光景を目の当たりにした時、「ここから七十七銀行が変わるんだ」と、感動したことは今でも忘れられません。
平山:「マネジメント実践研修会」では、受講者全員に、1カ月に1度、計3回実際に集まってもらいました。このやり方は受講者への負担はあったかもしれませんが、結果的にとても効果が高かったと感じています。月に1回集まると、その都度日々の悩みを持ち寄って、より良いマネジメントを行うためにはどうしたらよいかを真剣に話し合うからです。マネジメント職層の意識が徐々に変わっていく様子が垣間見え、3カ月で3回は適切な回数・期間だと感じました。
石山:その後、人事制度改革前の2022年7月から、一部の部課店で1on1ミーティングを試験的に導入しました。
平山:その頃から、支店長たちが「1on1ミーティングをやってみてどうだったか」を、研修内で情報交換する様子も多く見られるようになりました。
石山:研修後の実践だったこともあってか、試験導入が好評を得たため、2022年10月には全部課店での1on1ミーティングを開始しました。これも、マネジメント職層の意欲の表れだと思います。
鈴木:新人事制度において、1on1ミーティングは、「挑戦」「選択」「エンゲージメント」のすべてのテーマをつなぐ、大切な役割を担うものです。マネジメント職層には、日々の1on1ミーティングを通じて、「仕事の管理」の側面と「人材の育成」の両方の側面を持った、部下の「仕事と人生の伴走者」になってもらいたいと考えています。もちろん、主役は部下本人であり、部下自身の努力が必要不可欠ですが、上司と部下がタッグを組むことで生まれる効果は大きなものだと考えます。
平山:続いて、2023年から「リーダー実践研修会」をスタートさせました。受講対象者は、全部課店のリーダー職層で、2年間で約1000名に受講してもらう予定です。リーダー職層は1on1ミーティングを行うわけではありませんが、人事評価の一次考課者であり、日ごろからより密接に部下と関わる層です。コーチングやキャリア形成支援にかかるスキルを高めてもらう必要がありました。将来のマネジメント職層候補ですから、現時点からマネジメントにかかる意識を持ってもらうことも大切だと考えています。また、マネジメント職層とリーダー職層の間に共通言語を作り、彼らが日常的にキャリア形成支援について話し合うことが、職場の風土を変えていくと考えています。リーダーたちもグループワーク研修に対し、前向きに取り組んでいます。
成果・今後の取り組み
キャリア形成支援に注力して、自分らしいキャリアと生活を実現できる会社にしたい
石山:今回の人事制度改革は57年ぶりですから、新人事制度が定着して十分に機能するまでには、ある程度の時間がかかると考えています。人事部としては、まずは今後2年で、誰もがキャリア形成を主体的に考え、その実現に向けて挑戦することが当たり前という企業風土に変え、全行員に自分のキャリアを実現してもらいたいと思っています。
鈴木:日常的には、すでに変化を感じる出来事がいくつもあります。例えば先日、本店ビルで働くパートタイマーの方々が、上司との1on1ミーティングでどんな話をしたかを食堂で語り合っていました。少なくとも1on1ミーティングに関しては、行内に定着してきたことを実感しています。
石山:一方で、1on1ミーティングは質の向上が課題です。ジョブ型やキャリア自律を推し進める際は、実際のポストに限りがあることを考慮しなくてはなりません。こうした現実を踏まえたうえで、部下一人ひとりの想いを真摯に受け止め、部下のモチベーションを上手に引き出してハイパフォーマーに育成していくのは、マネジメント職層の役割です。その役割を果たすためには、マネジメント職層が1on1スキルをもっと高める必要があります。課題は他にもたくさんありますが、これから皆で協力して、より良いものにしていければと考えています。
鈴木:先日、「キャリアサポートブック」を制作・発信しました。七十七グループ内の多種多様な仕事内容やキャリアルートを紹介する冊子です。先輩方のキャリアインタビュー記事も多数掲載しており、一人ひとりのキャリア志向の違いや努力の方法など、読めば読むほど発見があります。きっと、これからキャリアを考える人や、今まさにキャリア形成に向けて努力している人たちの参考になるはずです。
これからの銀行は、支店長だけがキャリアゴールではありません。一番大事なのは、行員一人ひとりが自分の長所や特性を知り、自分らしいキャリアと生活の実現のために、挑戦し努力することです。そのためには、上司や人事部が、一人ひとりのキャリア選択や挑戦を応援する「伴走者」になる仕組みが欠かせません。今後は、その体制をさらに整えていきたいと思っています。
シニアソリューションプランナーの声
リクルートマネジメントソリューションズ
シニアソリューションプランナー 樋渡 裕
七十七銀行様では大きな人事制度改革に踏み切り、その新制度をしっかりと運用していくため、マネジメント層、リーダー層という上司向けの教育に力を入れることになりました。
これまでは「支店長を目指す」という一本道のキャリアから、さまざまな働き方を自分で考えながら将来を描いていくことになります。今までの考え方から大きく転換することが必要となるため、一朝一夕には変化しづらく地道な長い取り組みが必要になることが想像されました。そのなかで、新制度導入前に支店長を対象にしたマネジメント実践研修会から育成施策はスタート。ここまで大規模なマネジメント研修は初めてということもあり、七十七銀行様の変革に向けての本気度を感じました。
一方で、受講するマネジメント層の皆さん同士もお互いに興味を持ち、活発な議論をし、現場における悩ましさも吐露しながら前向きに研修に取り組んでいらっしゃいました。大きなエネルギーを感じたことを覚えています。
まだ変革への取り組みは始まったところです。このような大きな変革期にお手伝いができていることを噛みしめ、さらなる発展に寄与できるよう弊社一丸で支援させていただきたいと思っています。
企業紹介
株式会社七十七銀行
1872(明治5)年に国立銀行条例が制定され、全国各地に150を超える国立銀行が設立された。七十七銀行は、1878年12月にその77番目の第七十七国立銀行として設立された。これが七十七銀行の前身であり、現在の行名の由来となっている。七十七グループは、地域社会の繁栄のため、最良のソリューションで感動と信頼を積み重ね、ステークホルダーとともに、宮城・東北から活躍のフィールドを切り拓いていくリーディングカンパニーを目指している。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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