職場での個人の学びに関する実態調査 20代〜50代の会社員457名に聞く、仕事に関する学びの実態

執筆者情報
組織行動研究所
研究員
佐藤 裕子

組織をとりまく環境が大きく変わるなか、働く個人に求められる能力・スキルは短いスパンで大きく変化している。今日、働く個人は、仕事に関してどのような学びを、どのようなやり方で得ているのだろうか。また、職場からのサポートは十分に得られているだろうか。本調査では、20代〜50代の会社員の「仕事に関する学び」の実態を明らかにした。「学び」の定義は、知識やスキルの習得だけでなく、経験や対人関係からの学びなども含めたものとした。


調査概要

20代〜50代の正社員の一般社員、管理職にアンケート調査を実施した(図表1)。性別、年齢層(20代/30代/40代/50代)、職務系統(営業/サービス/事務/技術)がそれぞれ均等になるように回収した。有効回答数は457名である。

調査対象とする「学び」をどのように定義するかで、調査結果は大きく異なってくる。今回は、「仕事に関する学び」について回答を得た。また、ここでいう学びとは、知識やスキルの習得だけでなく、経験や対人関係からの学びなども含める、とした。

「過去1年で新しい学びがあった」約6割

まず、過去1年の新しい学びの有無を「現在携わっている仕事に直結する新しい学び(以下、現在の学び)」と「中長期的に自分のキャリア形成に役立つ新しい学び(以下、中長期の学び)」それぞれについて、尋ねた。学びが「あった」「どちらかといえばあった」と回答したのは、「現在の学び」で全体の59.7%、「中長期の学び」で50.1%だった(図表2)。

高適応群はより学んでいる

学びの有無は、パフォーマンスやコミットメントに、どのように関係しているだろうか。「期待どおりの成果を上げている」「今の仕事にやりがいを感じる」など適応感に関する7項目(1まったくあてはまらない〜6とてもあてはまる)を尺度化し、高適応群(上位49.9%)、低適応群(下位50.1%)ごとに学びの有無を見ると、高適応群は学びが「あった」「どちらかといえばあった」の割合が「現在の学び」で78.9%、「中長期の学び」で67.6%と低適応群に比べて大幅に高かった。学びが仕事や組織への適応感を高めると同時に、適応感が次の学びを促進すると考えられる。

環境変化や職務特性、キャリアへの考え方が学びの有無に影響する

どのような要因があるとき、学ぶのだろうか。今回の調査では、「環境変化(大きな環境変化にさらされている、市場の変化が速いなど4項目)」「職務の重要度・自律度(自分で判断し主体的に進めることが求められるなど7項目)」「キャリア見通し(自分がどうなりたいのかはっきりしているなど4項目)」「専門職志向(今の職務・専門分野でキャリアを追求したいなど6項目)」を検証したが、いずれも高・低群で学びの有無に有意な差が見られた。

一方、年代別(20代〜50代)の「学びの有無」はどうだろうか。結果としては、年代による統計的な差は見られなかった。また、役職、学歴による差も見られなかった。

新しい学びがあるかどうかは、年齢などの個人属性よりも、学びが必要とされる環境や職務があること、キャリア見通しや専門職志向が育まれていることに影響を受けることが示唆される。

労働時間の短縮は必ずしも学びにつながらない

昨今、働き方改革によって学びを促進させたいという話を聞くが、労働時間と学びの関係はどうだろうか。今回の調査では、「現在の学び」「中長期の学び」共に、月間労働時間群と学びの有無に、統計的に有意な差は見られなかった。また、「現在の学び」「中長期の学び」共に、「あった」「どちらかといえばあった」が最も多いのは、月間240時間以上の群だった(図表3)。

併せて、過去1年の「労働時間の変化(増減)」と「学びの量の変化(増減)」の関係を見たところ、「現在の学び」「中長期の学び」共に、労働時間が増えた群の方が、学びの量が増えた人の割合が統計的有意で多かった。

労働時間の増減には、異なるさまざまな要因が考えられるため解釈は難しいが、今回の結果からは、少なくとも労働時間が短いことと学びの多さ、労働時間が減少することと学びの増加には関係が見られなかった。学びを業務時間外のインプット活動と見るか、今回のように仕事を通した学びも含めて考えるかによっても結果は異なるだろう。

「自分の得意な学び方がある」約5割

ここからは、学び方の実態について見ていく。

まず、「自分にとって得意な学び方があるか」について尋ねたところ、「ある」は11.2%で、「なんとなくある(39.8%)」を含めると約5割であり、「ない(49.0%)」と約半数ずつの結果だった(図表4)。

得意な学び方がある人はそうでない人に比べ、より多く学んでいることも確認できた。「得意な学び方がある」群は、「現在の学び」「中長期の学び」共に、学びが「あった」「どちらかといえばあった」が8割を超えており、「なんとなくある」「特にない」群より大幅に高い割合となっている(図表5)。

仕事を通じてうまく学ぶための方法

では、得意な学び方がある人は、どのような学び方が自分にとって有効だと考えているのだろうか。具体的な内容を自由記述で回答してもらったところ、比較的多く見られたのは「経験から学ぶ」「人と学ぶ」「仮説・想定をもつ」「言語化・アウトプットする」に関するものだった(図表6)。これらはいずれも、正解のない時代に仕事を通じてより多くの学びを得るための有効な方法だと思われる。

仕事を通じた学びにつながる行動については、あらかじめ設定した選択肢にも回答してもらった。結果を、高適応群の平均点が高かったものから順に並べたのが図表7である。すべての項目で、高適応群が低適応群に比べて有意に高いが、特に高適応群が高かったのは、差が大きい順に「何事も成長機会と捉えて、目の前の仕事を大切にしている(主体的キャリア形成)」「人に話をすることで、ヒントやアイディアを得ようとすることが多い(アウトプット型の学び)」「仮説検証を意識的に行いながら仕事を進める(リフレクション)」「新しい経験を積める環境、成長できる環境を求めて行動している(ジョブクラフティング)」「自発的にスキル・能力開発に取り組んでいる(主体的キャリア形成)」だった。与えられた環境や職務はいつも学びに適しているとは限らないが、そんななかでも学びを見つけようとしたり、より良い経験を積めるように仕事をアレンジしたりし、かつ経験を学びに変えるためのアウトプットやリフレクションをしているのが特徴的だといえる。

ITと学び

学び方がITの進展によって変化しているといわれて久しいが、仕事に関する学びにおける実態はどうだろうか。新しい領域についての情報収集の方法を聞いたところ、「ネットで調べる」が最も多く、ややあてはまるまで含めると8割以上だった。次いで「人に聞いてみる」が約7割、「実際に経験してみる」が約6割で、「本で調べる」は半数に満たなかった(図表8)。この傾向は、年代によっても変わらなかった。

また、最近よく使うようになった、また効果的だと思っている学びのテクノロジーやその活用法を聞いたところ、「チャットツールによるリアルタイム情報共有」「遠隔会議システムによる対話機会の増加」を挙げる人が多く、「学習教材のIT化」「情報記録・保管の効率化」も見られた(図表9)。ただ、記述数は必ずしも多くなく、こうした変化が当たり前になっている職場がある一方で、そうでない職場もまだまだ多く、学びの内容やスピードに差が生じている可能性がある。

「今の会社や職場は成長できる環境だ」約4割

では、個人の自発的な学びを促進するために、会社や職場はどのようなサポートができるだろうか。

現在の会社や職場が成長できる環境だと思うかと尋ねたところ、「とてもそう思う」「そう思う」と答えたのは全体の41.4%と半数を割り込んだ。「現在の学び」「中長期の学び」の高群(学びが「あった」「どちらかといえばあった」を選択)は低群(学びが「なかった」「どちらかといえばなかった」を選択)と比べ選択率が高かったが、それぞれ58.6%、61.6%であり、必ずしも高いとはいえない結果だった(図表10)。

「成長できると思う」理由として多かったのは「取り組みがいのある仕事」「同僚からの刺激がある」「教育制度がある」「成果主義」などである。一方、「成長できないと思う」理由として多く見られたのは「仕事に変化がない」「評価されない」「学習風土がない」だった(図表11)。

学びにつながる職場風土

学びにつながると思われる職場風土については、あらかじめ設定した選択肢への回答も得た。成長できる環境だと思う群(高成長環境群)の平均点が高い順に示したのが図表12である。成長できる環境だと思わない群(低成長環境群)と比べて差が大きいのは、差が大きい順に「従業員が仕事を通して成長できることを重視している(成長支援)」「お互いの成長への関心が高い(成長支援)」「お互いの成果への関心が高い(成果・貢献重視)」「互いに切磋琢磨している(成果・貢献重視)」「お互いの仕事の成果やプロセスに率直にフィードバックし合える(成果・貢献重視)」だった。従業員同士が、お互いの仕事の成果と成長の両面に関心をもち、信頼し合い、共に成長していこうという関係性が学びを促進するといえそうだ。

従業員の学びを支援する制度・仕組み

制度・仕組みの整備で、従業員の学びを支援することができるだろうか。制度・仕組みの導入割合、役に立っていると回答した割合を示した結果が図表13である。導入割合・役立ち度共に高いものとしては「上司との1on1ミーティング」「上司・同僚からのフィードバックサーベイ」「勤務時間・場所の制度」が挙げられた。いずれも全員一律ではなく、一人ひとりの状況に合った学びをサポートする制度である。

導入割合がそれほど高くはないものの役立ち度が高いものとしては、「自己学習のための金銭支援」「社内の多様な人との勉強・交流会」「社内外の人と情報交換する場所」「社外副業」「本業以外の仕事機会」などが挙げられた。目の前の業務を少し離れた越境的な学びをサポートする制度は、個人の役立ち度は高いが導入している会社はまだ少ないようだ。

結び

今回、新しい学びを得られていることと自分なりの学び方を確立していることが、パフォーマンスやコミットメントの高さに強い関係性があることを改めて確認できた。その一方で、うまく学べていない人も、半数近くいることが見えてきた。うまく学べている人の背景には、キャリア意識の高さなどの個人要因だけでなく、新しい学びを必要とする裁量度の高い職務、成果と成長を求め関わり合う職場、一人ひとりに合った学びを支援する制度・仕組みがあった。また、年齢や労働時間は必ずしも学びを阻害する要因にはならないこと、既存のやり方や知識を超えた学びの支援は未だ十分ではないことが示唆された。

変化の激しい正解のない時代に生き残るために、多くの企業が、従業員に学び続けてほしい、学び続ける企業風土を作りたい、と考える一方、働く人の多くも、やりがいのある仕事を通して成長し、より貢献したいと考えている。職務設計、職場風土開発、学びを支援する制度・仕組み整備など、人事ができること、すべきことは多く、今回の調査結果が、参考になれば幸いである。また、これまで機関誌RMS Messageでも紹介してきた大人の学び(37号)、越境的な学び(44号、51号)、仕事経験を通した学び(44号)、学び合う職場(48号)などについても、さらに検討していきたいと考えている*1。

*1 機関誌RMS Message
37号(2014年11月)「大人の『学ぶ力』は高められるか
44号(2016年11月)「『越境』の効能
  −調査レポート「越境活動経験者の社外活動からの学びとは
48号(2017年11月)「組織の成果や学びにつながる 心理的安全性のあり方
  −調査レポート「チームリーダー516人に聞く、心理的安全性の必要性や効能
51号(2018年8月)「ミドルマネジャーのワーク・ライフ・エンリッチメント
  −調査レポート「管理職の社外活動が職場に及ぼす影響とは


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.55 特集1「職場の学びはどう変わるか」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

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