管理職411人に聞く、社外活動の実態調査 管理職の社外活動が職場に及ぼす影響とは

執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子

管理職は、どのような社外活動をどれくらいの頻度で行っているのか。それらは、職場やマネジメント行動に対してどう役立っているのか。
社外活動が充実している管理職と、そうでない管理職との間には、どのような違いがあるのか。先行調査の結果もふまえながら、管理職の社外活動の実態を明らかにするための調査を実施した。


先行調査と調査概要

本誌44号「『越境』の効能」(2016年11月発行)では、「越境活動実態調査」を実施した。社外活動への参加動機、学びの実態を尋ねたところ、越境経験を本業に生かしたい、生かせそうだと感じている越境経験者が8割近くに上ることが明らかになった。

また、弊社では「ボス充」という造語で、生活を楽しみ社外活動が充実している管理職のことを表現し、2017年10月「上司の社外活動に関する意識調査(『ボス充』意識調査)」を実施した。結果、社外活動が充実している上司の方が、若い部下には魅力的に映っていることが明らかになった。

そこで、本調査では、社会人になった後に社外活動を経験している課長相当の管理職を対象に、社外活動が職場や部下へのマネジメント行動に及ぼす影響を明らかにすることを試みる(図表1)。なお、データ回収数の制約もあり、今回は男性のみに限定した。

社外活動の実態

社外活動ごとの実施状況は、図表2のとおりである。「趣味・スポーツなどのスクールやコミュニティ」の選択率が最も多く、「月に数回」「週に数回」の実施頻度が他と比べて多い。次に多いのは、「年に数回以下」まで含めると「セミナー・勉強会・研究会」であるが、実質的に活動している状態といえる「月に数回」まででは、「育児」「副業・兼業(起業含む)」「地域貢献活動」「ボランティア活動」である。

活動内容によって実施頻度の傾向は異なり、「ほぼ毎日」が多いのは「育児」、「月に数回」が多いのは「趣味・スポーツなどのスクールやコミュニティ」、「年に数回以下」が多いのは「セミナー・勉強会・研究会」などである。「年に数回以下」の活動の選択数は平均3.0、「月に数回」は平均2.0である。

社外活動を始めた理由としては、活動を特定して尋ねてはいないが、面白そう・ネットワークづくり・社会貢献が3大理由であった(図表3)。

現在社外活動を行っていない人(n=65)にはその理由を選択してもらったが、「仕事が忙しくなり時間がとれなくなったから」が52.3%で過半数を占めた。「機会や時間があれば、社外活動を再開したいか」に対しては、「はい」24.6%、「どちらともいえない」67.7%、「いいえ」7.7%だった。再開したい内容としては、ボランティア活動、地域貢献活動、スポーツ、副業の記述が見られた。

職場やマネジメント行動への役立ち

先述の「越境活動実態調査」では、社外活動の本人にとっての効能として、新しい人的ネットワーク、ものの見方の獲得、人間的成長などが挙げられていた。ここでは、職場やマネジメント行動に対して役立っているものについて自由記述回答を求めたところ、部下育成、多様性理解・コミュニケーションの幅の広がり、その他態度・心構えに関する具体的な記述が確認できた(図表4)。

また、きっかけとして「人から誘われたから」(19.7%)、「家族から要請があったから」(10.4%)というケースも一定数存在し(図表3)、社外活動は必ずしも自分の意志で積極的に始めたものばかりではない。そんな状況でも、やってよかったと思えることもあるだろうと考え、自由記述回答を求めたところ、地域貢献活動に関する記述が64件で最も多かった。他にボランティア活動が25件、趣味・スポーツが16件だった。図表4と重複する部分もあるが、図表5にエピソードを紹介した。

部下との対話

『ボス充』意識調査」では、若い部下の多くは、上司の社外活動での学びの話を聞きたいと思っていることが明らかになった。それでは、実際に管理職は部下に対してどれくらい自分の社外活動の話をしているのだろうか。結果として、3分の2は活動内容にかかわらず部下に社外活動について話していることが分かった(図表6-1)。

「活動内容にかかわらず話をしている」「活動内容によっては話をしている」を選択した人に、話をする理由を聞いたところ、「部下との人間関係が円滑になるから」が58.6%で最も多かった(図表6-2)。「活動内容によっては話をしている」「まったく話していない」を選択した人に、話をしない理由を聞いたところ、「プライベートなことまで話す必要はないと思うから」が53.4%で最も多かった(図表6-3)。社外活動をしていることを「知られたくない」「話しづらい雰囲気がある」という回答も想定していたが、1割強にとどまった。部下との関係性に対する考え方によって、話をするかどうかの違いが生じているようだ。

社外活動が充実している管理職の特徴

最後に、社外活動が充実している管理職(以降「ボス充」群)の特徴を見ていく。集計にあたり、「ボス充」群の認定方法を図表7のようにした。社外活動が充実していて(社外活動「積極群」:「月数回」の活動が1つでもある)、プライベートから仕事へのポジティブな効果を認識している群(スピルオーバー高群)を「ボス充」群とし、それ以外を「ボス充でない」群とした。

活動内容については、ボランティア活動、地域貢献活動、副業、趣味・スポーツ、育児、介護についての選択率が、統計的に有意に高い。セミナー・勉強会・研究会は有意傾向にとどまり、ビジネススクールや政治活動には有意差が見られなかった。年齢は、「ボス充」群は30代前半と40代が多く、「ボス充でない」群は50代が多かった。

(1)管理職の社外活動に対してポジティブな考え
管理職が社外活動を行うことに対する考えとして「やった方がいい」の選択率が「ボス充」群79.0%に対して「ボス充でない」群は57.8%、「どちらともいえない」が「ボス充」群19.5%に対して「ボス充でない」群40.3%で、「ボス充」群の方が社外活動に肯定的な傾向が確認された。

(2)部下とプライベートも含めた関係性を志向
自分の社外活動を部下に話しているかどうかは、「ボス充」群74.9%、「ボス充でない」群56.6%と、「ボス充」群の方が多かった。

管理職としての行動や考えについては、部下との関係性に関する4項目に有意差が確認され、「ボス充」群の方が部下とプライベートも含めた関係性を志向していた(図表8-1)。

一方、本人のワーク・ライフ・バランスに対する考え方(「A:プライベートより仕事を優先する B:仕事よりプライベートを優先する」「A:仕事は生活の中心 B:仕事は生活の一部」「A:遅くまで仕事をしている B:早く帰る」)には、有意差がなかった。

(3)仕事・職場へのプラスの効果、社会貢献、本人の学びに肯定的な職場環境
管理職が社外活動を行うことに対する会社・職場の考え方に関して、有意差があったものを図表8-2に示した。「ボス充」群の職場環境の方が、仕事や職場へのプラスの効果、社会の役に立つもの、本人の学びにつながるものであることが望ましいとされている。職場での学びの共有意向も高く、仕事一筋の「仕事人間」「会社人間」より社外活動が充実している方が人間として魅力があるとの認識が多いようだ。

一方、家族に関わることならよい、本人の生活の充実につながることならよいという特徴については、有意差はなかった。部下や職場の業務に支障をきたすようであればやめた方がよいというのも、両群とも3割強と多く、有意差はなかった。

(4)本人の適応感、職場の心理的安全性いずれも高い
本人の適応感、職場の心理的安全性ともに「ボス充」の方が有意に高い傾向が確認された。特徴的な項目を紹介する(図表8-3)。

働くことに関する価値観のうち、ワーク・ライフ・バランスについて、「ボス充」群は、趣味・家庭重視でありながら、打ち込める仕事であれば仕事中心の生活になることをいとわないという傾向も強い。実際に、平均的な月間労働時間について尋ねたところ、両群で差は見られなかった。社外活動が充実しているからといって仕事をおろそかにしているわけでも、労働時間が短いわけでもないようだ。

同じく価値観のうち、働く意味については、あえて生計を維持するための「営利的な活動」と役割貢献実感や喜びを伴う「人間的な活動」という2項目で尋ねたところ、前者には大きな差はないが、後者には大きな差が見られた。

適応感(満足・成果)については、いずれの項目も「ボス充」群の方が高い。職場の心理的安全性についても、本人の認識ではあるが、「ボス充」群の方が、相互に尊重し合い、安全な職場である傾向が見られる。

今回、先行調査の結果もふまえて、管理職にとって、本人のみならず職場や部下に対するマネジメント行動への社外活動がもたらす効能は何か、社外活動が充実している管理職(「ボス充」)の特徴は何かを見てきた。部下育成や多様性理解の面で、役立っていることが具体的に語られ、それは必ずしも自ら積極的に始めたものだけに限らないことも明らかになった。また、社外活動が充実している管理職は、部下との関係性においてプライベートも含めた全人格的な人間関係を築こうとしていること、自身の適応感のみならず、職場の心理的安全性についても高い傾向にあることが確認された。職場環境や本人の価値観には、単なる家庭重視以外の側面が見られ、育児や介護などのケア役割だけではないライフ充実も志向することが、管理職本人、さらにはその職場や部下に対してもポジティブな影響を及ぼすことが示唆される結果となった。本調査では、限られたサンプルではあるが、管理職のワーク・ライフの充実を考える参考になれば幸いである。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.51 特集1「ミドルマネジャーのワーク・ライフ・エンリッチメント」より抜粋・一部修正したものである。
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