401名の経験者の声を聞く、越境活動実態調査 越境活動経験者の社外活動からの学びとは

執筆者情報
組織行動研究所
研究員
藤澤 理恵

正社員として勤務している会社での就業以外に、社外活動を行った経験のある人401名、そのような経験がない人83名にアンケート調査を行い、越境活動への参加動機、経験からの学び、越境活動を阻害する要因などの実態を探った。


調査概要

2016年9月、従業員数300名以上の企業に勤務する正社員を対象に、社外活動に関する調査を実施した(図表1)。

社外活動の種類として図表2の7種類を挙げ、少なくともいずれか1つについて5年以内に半年以上継続したことがある401名に、最も熱心に取り組んだ活動について回答してもらった。比較のため、社外活動の経験がない83名からも回答を得た。

越境経験者401名の参加動機

正社員として会社というコミュニティに所属しつつ、社外の活動に参加することは、コミュニティを横断する「越境」の側面を含んでいるといえる。どのような企業人が「越境」をしているのか。そして企業人にとって「越境」はどのような経験なのだろうか。

調査対象者の活動内容の内訳は図表2のとおりである。ボランティア活動、地域貢献活動がそれぞれ約3割、副業・兼業が約2割、異業種勉強会、ビジネススクール・大学院(国内・海外)がそれぞれ約1割、政治活動が3%程度となった。

また、活動を始めた理由(3つまで)のうち、活動内容ごとの選択率上位3つを図表3に示した。ボランティア活動、地域貢献活動、政治活動においては社会貢献への動機や人の縁がきっかけとなっている。異業種勉強会やビジネススクールへの参加にはスキル習得や社外ネットワークづくりへの期待が高い。副業・兼業ではそこから得られる収入への期待が主であった。

社外活動の内容は多岐にわたっており、参加動機もさまざまであることが分かる。

越境経験者は会社や仕事に対して前向き

参加活動やその動機の多様さは、越境経験者たちの、生活者としての多様な顔を反映している。では、彼らの企業人としての顔はどのようなものだろうか。越境経験者たちは日頃、会社や仕事にどのように向き合っているのだろう。

働き方に関する越境経験者・未経験者の考え方の違いを、図表4にまとめた。「会社志向」「専門性志向」それぞれ2つずつの質問項目について、越境経験者と未経験者の回答を比較すると、すべての項目の平均値において越境経験者が未経験者を上回った。「できる限り現在の会社で働き続けたい」以外は、平均値分布の差を確認するt検定によって、統計的に意味のある差が存在していることが確認された。

越境経験者たちは、専門性やプロとしての能力発揮だけでなく、会社への貢献にも前向きである。社外活動に熱心に取り組むからといって、会社への気持ちが薄れているようには見受けられない。

新しい繋がりや視野の拡大、人間的成長を実感する人が8割

社外活動において、参加者はどのような経験をするのだろう。図表5は、社外活動に参加したことによる変化についてたずねた結果である。

およそ8割の越境経験者が「新しい人的ネットワークができた」「新しいものの見方ができるようになった」「人間的に成長できた」「新しい知識や能力が獲得できた」という項目にあてはまる*2と回答しており、新しい繋がりや視野・能力の獲得の実感が窺われる。参加した活動によって5〜8割のばらつきが見られた。

また、半数以上の越境経験者が、本業における仕事の意味づけや人との関わりが変化したと回答している。それぞれあてはまる*2と回答した人は「仕事をする目的や意味について深く考えるようになった」(66.9%)、「社外の人との仕事上の関わりを増やした」(66.1%)、「自分の仕事の範囲をより広く捉えるようになった」(63.9%)などである。活動別ではボランティア活動、異業種勉強会、ビジネススクールでより高い傾向が見られた。

このように、生活者としてのそれぞれの理由から参加した多様な活動であるにもかかわらず、いくつかの共通した「越境経験」の実感があるようだ。異文化との比較と共に、社外から仕事や自社を眺めることで、気づきが得られていると考えられる。

*2 「ややあてはまる」「あてはまる」「とてもあてはまる」の合計

越境活動で得たものを積極的に本業に還元したい

越境経験を本業に還元したいと考える人は多いようだ。「参加活動で得たもの(知識・スキル・ノウハウ・人的ネットワークなど)を積極的に本業に生かそうと思いますか」との問いに、76.6%がそう思う*3と回答している(図表6)。本業還元の具体的な場面についてのコメントを図表7にまとめた。

*3 「 どちらかといえば思う」「思う」「とても思う」の合計

ボランティア活動では、社内外の人との繋がりが増え、課題に対して積極的に行動したり、一人ひとりに向き合う気持ちが仕事にも生きるとのコメントが見られる。緊急時の危機管理や、多様な立場を理解することなど、対応力の幅が広がる実感もあるようだ。

地域貢献活動では、長く続く関係性のなかで、年齢層も所属コミュニティも多様な人々と連携していく必要がある。全体を見渡し多様な意見をまとめる能力や、人間関係を深めて円滑にするコミュニケーションを、職場でも生かしたいというようなコメントが多く見られた。

異業種勉強会やビジネススクール・大学院では、業務に直結する情報が得られたり相談ができたりするような人脈が、本業にも役立つと実感されている。また、業界独自の目線から離れ、事業の環境を俯瞰する視点を得て思考や発想の幅が広がるとの趣旨のコメントが見られた。

副業・兼業や政治活動では、本業とは異なる仕事や組織で実際に働いてみて初めて気づいたり獲得したりした視点や能力に具体性があり、興味深い。

人事への要望は活動の許可・時間の融通・きっかけづくり

越境未経験者に「今後、経験してみたい社外活動」をたずねたところ、「副業・兼業(起業含む)」(26.5%)、「社会福祉、文化振興、災害復興などの、ボランティア活動」(18.1%)、「異業種勉強会」(18.1%)の順であった。活動に取り組めていない理由は「本業の時間が忙しくて時間がないから」(62.5%)、「どうやって始めてよいか分からないから」(35.4%)が上位を占めた。

最後に、社外活動を継続したり、これから取り組んだりする際の「会社や人事への要望」を図表8に紹介する。社外活動の許可と理解、定時退社やフレキシブルな勤務時間制度、社内で試してみる機会などのコメントが見られた。ご参考になれば幸いである。

生活者としての多様な経験は本業に還元される

越境経験を本業に生かしたい、生かせそうだと感じている越境経験者が8割近くにのぼることは予想以上であった。ボランティア活動など、当初は本業に生かそうという動機が大きくないような場合にも、である。

越境活動では、本業の仕事や組織を社外から客観視することに加え、社内では経験しづらい多様な人間関係や、達成感やもどかしさなどの情動を経験する。そして、それらの経験が仕事の意味づけや人間関係を変えていく可能性が示唆される。企業は、従業員個人の関心や事情に沿った活動が許容されるような柔軟な勤務制度を導入したり、社外活動の機会を主導して提供することで、大きな還元が得られるかもしれない。



※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.44 特集1「「越境」の効能」より抜粋・一部修正したものです。
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