連載第6回目のテーマは「ヒト・モノ・カネをマネジメントする経験」です。
この経験は、ヒト・モノ・カネの裁量権を持ち、全体最適を考えた上で意思決定・実行を担う経験です。前回、航空部門に異動となった佐々木が、今度は、グループ会社に出向となります。
そこで佐々木は、経営企画部の新規事業担当として奮闘し、事業成果をあげるに至りました。
では、この経験がリーダー育成にとってなぜ有効なのかを考えていきます。
ヒト・モノ・カネをマネジメントすることは、いわゆるマネジメント、リーダー職としての当然の職務です。この職務を全うするには、ヒトに対して働きかけ動かすこと、カネを理解するための財務知識、マーケティングの視点、デリバリーを設計する力…等々、広範な力が求められ、鍛えられ、経営的な視点と感覚を得る機会となりえます。それだけでも十分意味のある経験と言えるかもしれません。しかし、この経験において最も重要なのは、ヒト・モノ・カネに責任を持った上で、決断し、実行するということです。
今回、佐々木は、成長軌道にあるグループ会社で新規事業の戦略を練り、決断、実行するという前向きな仕事に取り組みましたが、実際に経営幹部の方々にインタビューをさせて頂くと、事業の撤退やグループ会社の清算など、非常に厳しい場面に直面されているケースも多くあります。その中で、従業員の生活と事業合理性の狭間に立たされ非常に厳しい決断をし、最前線で実行するということを経験し、経営者、リーダーとしての覚悟や姿勢を獲得されています。
また、出向の場合には、親会社から離れて初めて問題や課題がよく見えてきたという声も多く聞かれます。これもまた大きな学びと言えるでしょう。
今回は、グループ会社への出向というケースを取り上げました。前述のとおり、当然、「ヒト・モノ・カネをマネジメントする」という機会は他にもあります。全社的な横断プロジェクトの責任者なども代表例でしょう。しかし、企業の状況によっては、必ずしもそうした機会を潤沢に用意できるとは限りません。特に、組織がフラット化し職務権限も変化していく中で、ヒト・モノ・カネ、特にヒトをマネジメントする機会が限られている企業もあるでしょう。
限られた機会をどのような人材に提供していくか、そして、そこでどのように成長してもらえるとよいのか、これらを組織的に考えていくことがますます重要になってきています。
今回は以上です。本連載も、残すはあと2回となりました。次回はいよいよ、「経営者・実力者の物の考え方や覚悟に触れる経験」です。佐々木は、重大な火消し案件に直面。いよいよクライマックスを迎えます。ご期待ください。
【イラスト:ノグチタロウ】
※「成長経験デザイン」について詳しく知りたい方は、>>>特設ページ<<<をご覧ください
過去の記事はこちら
■第1回「そこまで責任とるんですか!?」■第2回「このままでは失敗する…どうする…」
■第3回「こんなこと日本ではありえない!」
■第4回「仕事を請けたのに、人がいないって!?」
■第5回「13年目、チャンスという名の左遷異動!?」