連続小説 真のリーダーへの道 第2回 「このままでは失敗する…どうする…」

リーダーの成長には、「仕事経験から学ぶこと」が最も重要であるといわれています。
企業は自社のリーダー育成のために、リーダーの成長に必要な経験を明らかにし、そしてその経験を網羅的に積めるよう、ポジションや仕事・役割を、意図的にローテーションさせていくことが有効です。私たちは、これを「成長経験デザイン」と呼んでいます。
リーダーに必要な経験は各社さまざまで、特定するのは至難の業です。そこで弊社では、先行研究やインタビュー、これまでの支援事例などから、リーダーの成長を促す8つの経験を抽出しました(下図参照)。

この連載小説では、架空のリーダー佐々木の成長ストーリーをたどりながら、それぞれが具体的にどのような経験で、それによって何を学び、どのようにリーダーシップを形成していくのか、1つずつ紹介していきます。
第2回は、「自分なりの問題意識に基づき目標を定め、行動する経験」についてご紹介します。


 

※8つの経験について詳しく知りたい方は、特設ページをご覧ください

顧客・メンバーとの意思疎通がものを言う

初めてのプロジェクトリーダーとして大変な経験(第1回)をした次の年、佐々木は新たなプロジェクトのリーダーとなった。プロジェクトマネジャーはやはり山崎だ。
そのプロジェクトで、佐々木は新たなチャレンジを始めた。前年と同じようなミスを犯さないために、原因を振り返り、悩んだ末に取り組むことを2つに絞った。二度とあんな思いはごめんだ……。

1つ目は、上下左右と丁寧にコミュニケーションを取りながら、「チームビルティング」をすることだ。よつば銀行プロジェクトのような致命的ミスを減らすためには、プロジェクトメンバー・顧客との濃密な関係づくりが必要だ、と佐々木は考えた。昨年は、周囲との意思疎通が足りていなかった。顧客・メンバーとの意思疎通が十分にできていれば、認識のズレやミスをもっと少なくできるはずだと佐々木は仮説を立てたのだ。
そこで彼は、顧客と対話する機会を増やせるよう、進め方を見直して、顧客の置かれた状況を把握し、課題を設定して顧客と議論することにこだわった。更に、その内容をプロジェクト内部で共有し、いつもチームメンバーの視界を揃えることに力を入れた。

更に、密な連携のために、チームの一体感を高めることにもこだわった。上下関係をあまり気にせず、チーム全員がざっくばらんに対話できる関係がつくれるよう、例えば、プロジェクトの節目ごとに懇親会を開いて、お互いの人となりを理解しながら、メンバー間で状態を確認し合える場を用意した。チーム内でこまめに情報を共有したり、やり取りしたりできるよう、タスクごとにいくつかのメーリングリストを開設した。悩みがありそうなメンバーがいれば、佐々木はそれとなく声をかけて話を聞いた。それから、プロジェクトの最初には、一人ひとりの希望するキャリア、目指すポジション、身につけたいスキルをヒアリングし、彼らの将来を考えながら、チーム内の業務分担を進めていった。

結果として、プロジェクトは、明らかに昨年よりもスムーズに進行した。しかも、関わるチームメンバーたちのプロジェクトへのコミットメントも、明らかに高まっているようだった。「タスク」ではなく、「人」がプロジェクトを動かしていくのだ、と佐々木はあらためて感じていた。

システムテストに多くの時間とコストを割いた

そして、佐々木の2つ目のチャレンジは、更なる「システムテスト」への注力だった。

そもそも、よつば銀行のプロジェクトで起こったトラブルは、開発の最終段階であるシステムテストの際に見つかった欠陥によるものだった。実はこのとき、初のプロジェクトリーダーということもあり、佐々木はテストに割と力を入れていた。システム開発プロジェクトでは、開発が予定より長引いてしまい、テストは最後に取って付けたように実施されるケースが珍しくない。そのため、納品後にトラブルが発覚して、大きな問題になるプロジェクトが後を絶たないという現実があるのだ。もし、よつば銀行プロジェクトで佐々木がテストの手を抜いていたら、納品が遅れていたか、納品後にトラブルが発生していただろう。佐々木はテストに助けられたと感じていた。

その経験を経て、佐々木は新たなプロジェクトで、システムテストに更に多くの時間とコストを割いた。その際、社内で最もテストに詳しいという噂のプロジェクトマネジャー・田中のもとに、話を聞きに行った。多くのシステム開発エンジニアは、どうしても開発のみに力点を置きがちで、田中のようにシステムテストを熟知するプロジェクトマネジャーは少なかった。田中は佐々木の考えに強く共感し、独自のテスト手法をすべて教え、この手法をベースにして、ぜひ自分なりのテストのやり方を試行錯誤してほしいと激励した。佐々木は、田中の熱意とノウハウに後押しされながら、テストに十分な期間を取り、メンバーに田中から教えてもらったテスト手法の徹底を求めていった。

なぜそこまでテストに力を入れる必要があるのでしょうか?

佐々木のチームは、やはり開発は多少長引いたものの、チーム内でよく話し合うことで、小さなミスも極力減らし、大きなミスを出すことなく、予定通りに任務を完遂した。
今度は、山崎からもおおいに褒められた。予定をきっちり守った上に、システムの完成度が高かったからだ。「なぜ、うまくいったと思うか?」と要因を訊く山崎に、佐々木は自分なりの2つのチャレンジの話をした。佐々木のチャレンジを知った山崎は、それ以降、自らのプロジェクトでは同じようにチームビルティングとテストを重視するよう、プロジェクトリーダーに求めていった。こうして佐々木のやり方は社内に少しずつ広まった。

そんなとき、佐々木は1人の若手メンバーから、「なぜそこまでテストに力を入れる必要があるのでしょうか?」と問われた。佐々木は、にやっと笑って答えた。「無駄だと思うだろう。でも、そうじゃない。自分の仕事、一つひとつが社会につながっている。だからこそ、皆で結束し、連携し、丁寧に細部まで確認しきることが必要なんだ」。あの夏の冷や汗は、佐々木にこの教訓をいつでも思い出させた。
佐々木はあらためて、ビジネス・顧客・社会をしっかりと広く見渡しながら、自分なりに問題意識を持って、課題や目標を定め、行動することの重要性をかみ締めていた。




連載第2回の経験は「自分なりの問題意識に基づき目標を定め、行動する経験」でした。
本連載の主人公である佐々木は、第1回の「事業・社会における影響・責任を実感する経験」を通じて、自身が携わる仕事の責任を痛感しました。上司の山崎の支援を得ながらなんとか乗り切った佐々木は、プロジェクトマネジメントに関して自分なりの問題意識を持つようになります。
そして、プロジェクト推進体制やコミュニケーションの見直しを図りつつ、システムテストの工程に大幅な改善を実現すべく社内のスペシャリストである田中に協力を仰ぎます。そして、プロジェクトを成功に導き、自信つけています。自分自身で課題を設定し、周囲を巻き込み、協力を仰ぎながらプロジェクトを進める佐々木の一連の言動・行動からはさまざまな学びを得ていることが感じ取れます。

弊社の調査では、この経験から習得した能力として最も関連性が高かった要素は、「組織・チームに変化を起こす力」です。
いずれも、リーダーとなる人材には身に付けてほしい力として人材開発課題に挙がってくるものが多いのではないかと思います。
しかし、この経験は、もともと問題意識の高い人でなければできない経験であり、組織としてどうにかできるものではないと考える方もいらっしゃると思います。そういった側面があるのは否めませんが、環境づくり・人の関わりによって可能性を高めることもあるのではないかというのが私たちの考え方です。

ここで重要になる考え方が「ジョブクラフティング」です。ジョブクラフティングとは自ら仕事の意義や意味を位置づけ直し、主体的に仕事において創意工夫・チャレンジに取り組むことです。
「ジョブアサインメント」は、どうしても上司が与えるものという前提となり、その時々の状況やタイミングによってアサインメントが効果的に行えない場合もあります。一方でジョブクラフティングは、本人へのちょっとした働きかけや示唆の提供によって、前向きな問題意識を持つことを促せる可能性があります。
大手企業の経営リーダー(事業責任者クラス)の方々に経験に関するインタビューを行うと、もともと問題意識が高く果敢に問題に挑む方もいらっしゃいましたが、何らかの実体験や周囲の関わり、環境から自分の仕事を俯瞰し、問題意識が醸成され行動される方も相当数いらっしゃいました。

本連載のリーダー候補の佐々木は、自分の失敗経験と上司である山崎の関わりが1つのきっかけとなっています。実際のインタビューでは、
(1)これまでの延長線上にはない課題解決に向けて期待をかけたり、示唆を与えてくれたりする上司がいた
(2)組織が変化を生み出す必要性に迫られていた
といったことが1つのきっかけとして作用しながら、自分なりに「こうしなければならない」「こうしたらいいのではないか」という考えが生まれてきたという話を伺うことが多くあります。

以上を踏まえると、直接的に付与することは難しい(というより不自然)ものの、上司からの期待レベルを上げることや、前例踏襲では立ち行かなくなる課題を付与することによって、自分なりに考える機会をいかに創出していくかが「自分なりの問題意識に基づき目標を定め、行動する経験」をデザインしていくには重要だといえます。

次回は、「多様な価値観の人と仕事をする経験」です。佐々木の活躍の舞台が海外に移ります。

【イラスト:ノグチタロウ】



※「成長経験デザイン」についてさらに詳しく知りたい方は、特設ページをご覧ください

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