STEP

用語集

裁量とは? 裁量権や裁量労働制のメリット・デメリットを解説

  • 公開日:2024/06/27
  • 更新日:2024/06/27

ビジネスシーンでよく使われる言葉に「裁量」があります。この記事では、裁量の意味から裁量権を持つメリット・デメリット、裁量労働制の仕組みや導入方法まで、分かりやすく解説します。

裁量とは

裁量とは、「自分の考えに基づいて物事を判断し、処理すること」です。ビジネスシーンでは、上司の指示や命令に従うのではなく、自分で考えて決められる状態を指します。裁量が大きいということは、自分で自由に決められる範囲が大きいということです。また人事を決定する権利や、予算を使用する権利など、自分で物事を判断して決定できる権利のことを「裁量権」と呼びます。外資系企業やベンチャー企業といった成果主義の企業は、裁量権が大きいところが多いといわれています。

ビジネスシーンにおける裁量の使い方

裁量という言葉は、ビジネスシーンにおいて、さまざまな文脈で使われます。具体的な例をご紹介します。

  • 裁量の大きな会社で働きたい
  • 部下に裁量を委ねている
  • 自分には裁量がないので、約束できない
  • 管理職になって裁量権を持ちたい

など

職場実践による経験学習を通じて、マネジャーの学びを促進する
マネジメントの基本知識を実践的に学ぶ管理職研修

職場で裁量権を持つメリット・デメリット

職場で裁量権を持つメリット・デメリットのイメージ画像

裁量権を持つことには、メリットもデメリットもあります。

裁量権があるメリット

裁量権があることで、自分で考えて行動する機会が増えます。その経験から多くを学び、成長することができるでしょう。また裁量権が大きいと、1つのプロジェクトのなかでも数多くの判断を下すことになります。さまざまな業務に幅広く関わることができるため、多彩な経験を積むことができます。自分の判断でプロジェクトがうまく進めば達成感が大きく、やりがいも実感できるでしょう。

裁量権があるデメリット

自分で判断を下すということは、責任も伴います。裁量権が大きくなればなるほど責任も大きくなり、プレッシャーやストレスを感じやすくなります。また成果を出そうと業務量が増え、長時間勤務になる恐れも。企業によっては、裁量権の大きさに対して待遇が見合っていない場合もあるでしょう。その場合は「頑張りに対して、給与が見合っていない」といった不満につながるかもしれません。

裁量労働制とは

裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず、企業と社員の間で決めた「みなし労働時間」の分だけ給与を支払う制度です。例えば企業と社員の間で、みなし労働時間を8時間と決めたとしましょう。その際、実際に働いた時間が5時間であっても10時間であっても、8時間分の給与が発生します。また働く時間帯も社員の自由です。

裁量労働制の概要

労働基準法で定める労働時間は、原則「1日8時間・週40時間」です。多くの企業では勤務時間も定められているでしょう。しかし研究職や開発職といった専門性の高い職種では、時間が縛られることで、かえって効率が悪くなるケースがあります。そこで「労働時間や勤務時間を労働者本人に任せて、生産性を上げよう」というのが、この制度の目的です。

厚生労働省「裁量労働制の概要」

裁量労働制が適用される仕事の種類

厚生労働省は裁量労働制を2つに分け、それぞれ適用できる業種と職種を以下のように定めています。

【専門業務型裁量労働制】
◾️新商品や新技術の研究開発、人文科学や自然科学に関する研究
◾️情報処理システムの分析、設計
◾️メディアでの取材、編集
◾️デザイナー
◾️放送番組、映画などのプロデューサー、ディレクター
◾️コピーライター
◾️システムコンサルタント
◾️インテリアコーディネーター
◾️ゲーム用ソフトウェアの制作
◾️証券アナリスト
◾️金融商品の開発
◾️大学での教授、研究
◾️M&Aアドバイザー
◾️公認会計士
◾️弁護士
◾️建築士
◾️不動産鑑定士
◾️弁理士
◾️税理士
◾️中小企業診断士

【企業業務型裁量労働制】
企業業務型裁量労働制の適用には、以下の4つを満たす必要があります。事務職の業務すべてが該当するわけではないので注意しましょう。

  • 事業戦略の策定など、事業の運営に関する業務
  • 企画、立案、調査、分析を組み合わせて行う業務
  • 業務遂行の方法を労働者の裁量に委ねる必要があると、客観的に判断される業務
  • いつ、どのように行うかなど、広範な裁量が労働者に認められている業務

裁量労働制の労働時間と残業代

裁量労働制は、基本的に残業代が発生しません。しかし「みなし労働時間」を法定時間である「1日8時間・週40時間」以上に設定した場合、超えた分は残業手当の対象となります。また「週に1回または4週に4回以上」と定められている法定休日に勤務した分は、休日勤務手当の対象です。午後10時~午前5時の勤務にも深夜手当が発生します。

裁量労働制とフレックスタイム制の違い

フレックスタイム制とは、一定期間の総労働時間を定め、その範囲内で日々の勤務時間を労働者が決められる制度です。業務や職種に制限はありません。裁量労働制は1日の労働時間に対して制約がなく、基本的に残業手当もないのが特徴です。一方フレックスタイム制では、1日のなかで必ず出社しなければいけない「コアタイム」を設定できます。また総労働時間を超えたら残業手当も発生します。

裁量労働制の導入方法

裁量労働制の導入方法のイメージ画像

裁量労働制を導入する際、どのような手順を踏めばいいのか簡単にご説明します。

専門業務型裁量労働制の場合

下記の項目について労使協定で定めます。その後労働契約や就業規則に盛り込み、所轄の労働基準監督署に届け出を行います。制度を実施する前には、労働者に説明したうえで同意を得ましょう。

  1. 対象の業務
  2. みなし労働時間
  3. 業務の遂行手段や時間配分などについて、労働者に具体的な指示をしないこと
  4. 労働時間に応じて実施する、健康・福祉を確保するための具体的措置
  5. 苦情処理のために実施する具体的措置
  6. 制度適用について、労働者の同意を得なければならないこと
  7. 労働者が制度適用に同意しなかった場合、不利益な取り扱いをしてはならないこと
  8. 制度適用の同意を撤回する手続き
  9. 労使協定の有効期間(3年以内が望ましい)
  10. 「労働時間の状況」「健康・福祉確保措置の実施状況」「苦情処理措置の実施状況」「同意および同意の撤回」について、労働者ごとの記録を協定の有効期間および期間満了後3年間保存すること

企画業務型裁量労働制の場合

労使委員会を設置し、下記の項目について決議を行います。委員5分の4以上の賛成を得なければいけません。その後に労働契約や就業規則に盛り込み、所轄の労働基準監督署に届け出を行います。制度を実施する前には、労働者に説明したうえで同意を得ましょう。

  1. 対象の業務
  2. 対象の労働者
  3. みなし労働時間
  4. 労働時間に応じて実施する、健康・福祉を確保するための具体的措置
  5. 苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  6. 制度適用について、労働者の同意を得なければならないこと
  7. 労働者が制度適用に同意しなかった場合、不利益な取り扱いをしてはならないこと
  8. 制度適用の同意を撤回する手続き
  9. 労働者の賃金・評価制度を変更する場合は、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  10. 決議の有効期間(3年以内が望ましい)
  11. 「労働時間の状況」「健康・福祉確保措置の実施状況」「苦情処理措置の実施状況」「同意および同意の撤回」について、労働者ごとの記録を決議の有効期間および期間満了後3年間保存すること

厚生労働省「裁量労働制の概要」

裁量労働制のメリット

裁量労働制を導入することで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しくご説明します。

人件費の予測がしやすい

裁量労働制では、あらかじめ定めた「みなし労働時間」で給与を計算することができます。みなし労働時間が法定労働時間を超えない限り、残業手当も発生しません。月ごとに人件費が大きく変動することがないため、人件費の予測がしやすいでしょう。

残業管理を減らすことができる

一般的に、残業時間の集計や計算は管理監督者が行います。残業時間を削減するために頭を悩ませている担当者もいることでしょう。裁量労働制では従業員一人ひとりが自由に労働時間を管理します。そのため残業管理の手間を大幅に減らすことができます。

裁量労働制のデメリット

一方で、裁量労働制にはいくつかのデメリットもあります。

長時間残業が発生しやすくなる

裁量労働制では従業員が労働時間の管理をします。そのため長時間労働を防ぐための監視が行き届きにくいのがデメリット。知らず知らずのうちに長時間労働が常態化し、従業員が疲弊してしまう恐れもあります。

届け出や制度設計の工数がかかる

裁量労働制を導入するには、労使協定の締結や労使委員会での決議を行ったうえで労働基準監督署に届け出をしなければいけません。人事制度や就業規則の改定といった、制度設計の手間がかかるのもデメリットです。

チームワークの醸成が難しい

裁量労働制では従業員が自由に出勤・退勤できるのが特徴です。そのため従業員同士が顔を合わせる時間が少なくなる可能性があります。従業員がコミュニケーションを取る機会を意図的に設けないと、チームワークを高めにくくなるかもしれません。

まとめ

裁量を持ちたいと願っているビジネスパーソンは多いことでしょう。大きな裁量を持つことで、やりがいや成長につながるはずです。また多様な働き方の1つとして、裁量労働制にも注目が集まっています。裁量労働制は自由度が高い半面、長時間労働につながる懸念やチームワークを高めにくいといったデメリットもあります。そのような環境下で成果を出すには、日頃から高い自律性を養い、周囲を積極的に巻き込んでいく力が必要といえるでしょう。

どんな環境下でも自律的に周囲に働きかけ成果を出し続けるビジネスパーソンを目指す
変化の時代に求められる自律的な中堅社員開発研修

人のモチベーションエネルギーを最大限に引き出し、戦略実現のために「これに取り組む」という決断・実践を支援
戦略実現のための決断・実践支援研修

おすすめの
無料オンラインセミナー

Online seminar

サービスを
ご検討中のお客様へ

電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください

SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ
0120-314-855

受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)

facebook
x