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公開日:2024/01/30
更新日:2024/03/29

360度評価(多面評価)とは?活用メリットとデメリットを解説

360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下、他部署など複数の関係者から評価を行う手法のことです。周囲のあらゆる方向からの評価であるため多面評価とも呼ばれます。360度評価の実施目的は、一般的に人材育成と評価の2つに分かれます。人材育成を目的とする場合には、評価結果を本人にフィードバックし、自己変革を期待することが多いです。

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360度評価(多面評価)の導入状況・実施目的

まず、360度評価(多面評価)の導入状況や実施の目的について、2020年に弊社が行った360度評価活用における実態調査の結果をもとに見ていきましょう。

360度評価(多面評価)の導入状況

360度評価(多面評価)の導入状況


360度評価(多面評価)を導入している企業は、年々増加しています。2007年には5.2%、2018年には11.8%であったのに対し、2020年に実施した調査によると31.4%という結果でした。そして「今後も継続して実施する/今後実施してみたい」と答えた企業は、全体の半数(50.4%)を占めました。

ここまで導入状況が変わった背景としては、働き方改革の影響があると考えられます。以前はオフィスで全員が同じ空間で働くことが当たり前でしたが、リモートワークやフリーアドレス、フレックスタイム制などの導入により、上司や人事からの単一的な視点だけでは従業員の評価がしづらくなりました。そのため、上司だけではなく同僚や周囲の関係者から評価を集める360度評価(多面評価)の需要が高まっているのです。

また、近年は現場の意見を積極的に取り入れる「共創型の組織づくり」が重要視されていることも、360度評価(多面評価)の導入率の増加に影響を与えているでしょう。

360度評価(多面評価)の実施目的

360度評価(多面評価)の実施目的


弊社が2020年に実施した同調査によると、360度評価(多面評価)を導入した目的として 最も多かった回答は「他社と比較したときの自社の人材のレベルがわからないから」(37.5%)でした。

2 番目、3 番目に多く選択されたのは「現在の評価(上司評価等)があてにならないと感じたから」(35.7%)、「現場の社員から導入を求められたから」(32.2%)です。

上記からは、市場のなかで自社の人材を客観的に評価したいというニーズや、上司以外の人からも評価を行いたいという現場の状況がうかがえます。

360度評価活用における実態調査について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。

【コラム】360度評価の背景と効果的な導入の仕方とは?

360度評価(多面評価)の活用メリット

360度評価(多面評価)の活用メリット

360度評価は「上司が部下を評価する」のではなく、「部下が上司を評価する」ことを目的に導入するケースが多い評価手法です。近年、リモートワークやテレワーク、時短勤務に代表されるように、働き方や仕事への価値観が多様化し、今の部下の期待と上司のマネジメントがマッチしないことが多くなっています。それを背景として起こりうるパワハラや、離職の増加などのリスクに備えるため、360度評価が採用されています。

360度評価(多面評価)の活用メリットは、以下の4つが挙げられます。

評価対象者が、自分の強みや弱みに気づきやすくなる

1人の評価者による評価は、評価対象者を一方向から見て評価することとなります。そのため、見落としてしまっている点も多いことが考えられます。360度評価(多面評価)であれば、評価対象者が上司や部下、同僚といった複数の人間から評価を受けることによって、自分の強みや弱みに気づきやすくなるでしょう。

納得感のある評価を行うことができる

人事評価を人材育成に活用したい、というニーズもあるでしょう。そのためには、評価結果に納得してもらったうえで、自らの課題に取り組んでもらうことが重要です。

しかし、上司と接する機会が少ない部下の場合、上司による評価に対して、「恣意的な評価がされている」「自分の働きぶりを見てくれていない」と感じる可能性があります。その点、360度評価(多面評価)は上司以外の評価者がいるため、評価に納得してもらいやすいと考えられます。

職場におけるコミュニケーションが活性化される

コミュニケーション不足を課題に抱える組織も少なくありません。社内コミュニケーションがうまく取れないと、社内の雰囲気に悪影響を与えるだけではなく、情報共有の漏れや、生産性の低下を招いてしまうこともあります。

特にコミュニケーションが不足しやすいのは、上司と部下の間です。上司から部下へは声を掛けやすくても、部下が上司に声を掛けにくいというケースはよくあります。360度評価(多面評価)は、面談の機会を設けてフィードバックを行うことによって、上司と部下とのコミュニケーションを活性化するためのツールとしても活用できます。

自己評価と他者評価のギャップが明らかになる

通常の評価の場合、上司は部下を評価するだけで、部下に評価される機会はないため、お互いの間で認識のズレが生じることも少なくありません。一方、360度評価(多面評価)では、他者評価だけではなく自己評価も行うため、両者の評価のギャップが明らかになります。

例えば、自分ではリーダーシップを発揮しているつもりでも、同じチームや部署のメンバーには伝わっていないことがあります。このような場合、評価のギャップが生じている理由を探ることによって、本人の意識・行動変革を図ることが可能です。

360度評価(多面評価)を導入する際の注意点

360度評価(多面評価)を導入する際の注意点

360度評価(多面評価)には上記のメリットがある一方、以下の一時的な懸念点があります。

評価者との関係性に影響が出る可能性がある

同僚や部下から予想よりも低い評価を受けたり、批判的なコメントをもらったりして、評価者との関係が一時的に悪化する可能性もあります。ただし、自分に対する評価や批判的なコメントが自己を見直すきっかけになるなど、長期的にはプラスの効果をもたらすことも考えられます。

評価者との関係悪化が懸念される場合は、評価の匿名性を確保する、人事部が評価者を指定するなどの方法を取ると良いでしょう。

本人に遠慮して適切な評価ができない可能性がある

評価者と評価対象者の仲が良く、評価者が本人に遠慮して適切な評価ができないというケースもあります。

「仕返しされたくないから、甘く評価しよう」「関係をぎくしゃくさせたくないから、無難に評価しよう」という社員がいると、360度評価を実施する意義が薄れてしまいます。360度評価(多面評価)を実施する際は、評価者を対象とした研修を実施し、事前に実施目的や重要性を理解してもらうようにしましょう。

人員と工数が必要となる

従来のように上司が部下の評価をつける体制であれば、評価に必要な人員や工数は限定的です。しかし、360度評価(多面評価)では、上司だけでなく周囲の関係者全員が評価をするため、評価にかかる工数と時間が大幅に増加します。

また、評価されたデータをもとに人事評価を決定するため、人事担当者の工数も多くなってしまうでしょう。集められた評価はデータ化されて、客観的な視点からあらためてチェックされます。

360度評価(多面評価)を導入したことによって、全社での工数が大幅に増加し、普段の業務に支障が出てしまっては本末転倒です。360度評価(多面評価)を効率的に運用するためには、サーベイ・アセスメントツールの導入が必要といえます。

360度評価(多面評価)の評価項目とは

ここでは、360度評価(多面評価)における代表的な評価項目をご紹介します。

課題発見に関する項目

【現状把握力】
自分の部署や会社が置かれている状況を把握する力
【問題分析力】
自らが直面している問題やお客様が抱えている問題を分析する力
【企画力】
新しいアイディアや発想を生み出す力
【チャレンジ精神】
達成が困難と思われる課題にも前向きに取り組める力

課題遂行に関する項目

【判断力】
取るべき行動を的確に判断する力
【計画力】
目標を実現するために具体的で効果的な計画を立案する力
【行動力】
自ら率先して行動する力
【責任感】
何事にも一生懸命取り組み、最後までやり抜く力

人材活用に関する項目

【共感力】
他者の立場に立って物事を考える力
【人材育成力】
仕事を任せたり、フィードバックを行ったりして、部下の能力開発を促す力
【動機づけ力】
声を掛けたり、適切な目標を設定したりして、部下のモチベーションを高める力
【包容力】
部下の相談に乗ったり、困ったときにサポートしたりする力

コミュニケーションに関する項目

【傾聴力】
相手の話に親身に耳を傾ける力
【意思疎通力】
自分の考えを相手に分かりやすく伝える力
【折衝力】
意見が対立する相手と話し合い、妥協点を見つける力
【協調性】
他部署や社内外の人と連携して業務に取り組む力

360度評価(多面評価)のサーベイ・アセスメントツールを選定する際のポイント

360度評価(多面評価)のサーベイ・アセスメントツールを選定する際のポイント

サーベイ・アセスメントツールを選定する際には、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

測定内容(評価項目の選定)

サーベイ・アセスメントツールを選ぶ際に多くの企業が頭を悩ませるのが、測定内容(評価項目の選定)です。どのような項目を測定すれば適切な評価ができるのか、また測りたいものが測れるアセスメントツールかどうかなどを慎重に検討します。特に、評価項目が被観察者にマッチしているか、評価に客観性はあるかは重要なポイントです。

品質・結果の確からしさ

サーベイ・アセスメントツール自体の品質も重視したいポイントです。具体的には、回答しやすい構造になっているか、似たような評価項目がないかなどを確認しましょう。また、対象が誰であっても高得点になるような項目があると、得点に差がつかず客観的な評価ができない可能性があります。反対に、極端にバラつきが出るような項目があっても適切とはいえません。

また、利用実績が少ないツールは標準得点の信頼性が低く、せっかくツールを導入したのに自社の評価が世のなかの標準に比べて高いのか低いのかが分からないということになりかねません。

このような評価項目の分かりやすさや実績、測定手法の信頼性をもとに、サーベイ・アセスメントツールの品質を見極めましょう。

施策設計力・支援力

360度評価(多面評価)は、一度実施すれば終わりというわけではありません。360度評価(多面評価)の結果を得られたあとに、企業が苦労する課題として以下が挙げられます。

・低い得点をつけた観察者の特定(犯人探し)の防止
・結果が著しく低い対象者への対応

調査結果の返却時には、プライバシーに十分配慮することや、結果はあくまでも業務自体の客観的な評価であり対象者の人格や能力を否定するものではないことを、周知しておく必要があるでしょう。

360度評価(多面評価)では、このように実施後の対応も含めた全体施策の設計が可能かどうかも重要なポイントです。企業に合った全体施策を設計できるか、サポート体制の充実度や柔軟性の高さは、サーベイ・アセスメントツールによって異なるためよく比較検討しましょう。

リクルートマネジメントソリューションズでは、360度評価ツールとしてMOAシリーズなどを提供しています。

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360度評価(多面評価)を効果的に運用するためのポイント

360度評価(多面評価)を効果的に運用するためのポイント

360度評価(多面評価)の効果を最大限に高めて活用するには、以下のような点を意識しましょう。

導入目的の周知

360度評価(多面評価)を導入する際は、対象者だけでなく、回答者にも施策目的の理解を深めてもらう必要があります。

360度評価(多面評価)の目的としてまず挙げられるのは、自社の人材レベルの評価や昇給・昇格の判断基準、対象者の育成などでしょう。しかし、導入目的を対象者・回答者に伝える際は、違う表現で伝えるとより効果が高まることもあります。

例えば、導入目的を「本人の能力開発のため」と伝えた場合は71.8%の企業が、「職場のコミュニケーションを活性化させるため」と伝えた場合は62.4%の企業が導入の効果を実感しています。

360度評価(多面評価)を導入すること自体に、ネガティブな印象を与えないためには、何のために導入され、何のために評価結果が活用されるのかを明確に広報しておくことが大切です。

360度評価(多面評価)の実施について個別に周知する際には、以下の3点を伝えられるような文面を作成しましょう。

・実施の明確な目的
・調査の対象者または回答者になった理由
・回答によって個人特定はされないこと

トライアルの導入

360度評価(多面評価)に対して現場から否定的な意見や異論があった場合には、本格導入する前にトライアルを導入してみるのも1つの手です。トライアル後にアンケートや課題のヒアリングを実施することで、360度評価(多面評価)の有用性を理解してもらうことにもつながります。

適切な回答者・回答人数の設定

対象者を適切に評価できるのは、普段から業務上関わりのある人です。一般的に、回答者の人数は6〜8人が適切といわれています。例えば、直属の上司1〜2人、同部署や同プロジェクトの同僚3〜4人、部下3〜4人などから、合計6〜8人になるよう設定します。

しかし、無理に回答者の人数を多くする必要はありません。同じ部署内の上司や同僚、よく連携を取っている他部署など、対象者との接点が多く、日常の職務行動を身近で見ている人を数人、回答者として設定しましょう。

結果返却方法の工夫

得られた評価結果を、ただ返却するだけではあまり効果が期待できません。なかには結果をネガティブに捉えてしまう人もいるでしょう。

評価結果を今後のスキル向上や課題解決につなげるためにも、上司から面談や 1on1 の場で返却することが望ましいといえます。

しかし、なかには元々フィードバックを相互に行う文化が根付いていない企業もあるでしょう。上司からの返却やフィードバックが難しい場合は、専門の事業者が実施するフィードバックセッションの活用も検討してみてください。フィードバックセッションでは、参加者同士が客観的な意見を出し合うことで気づきを得られるうえ、評価結果の正しい理解にもつながります。

なお、対象者が上位階層(経営幹部クラスなど)の場合は、コーチングとセットでの返却など、より丁寧なフィードバック体制を整えましょう。

おわりに

今回は、360度評価(多面評価)を活用するメリットおよび留意点についてご紹介しました。

360度評価(多面評価)では、上司の視点だけではなく、同僚や部下の視点も評価に取り入れることによって、本人の気づきや意識・行動変革につなげることができます。評価に納得感を持たせたり、職場のコミュニケーションを活性化したりするためにも、360度評価(多面評価)を導入してみてはいかがでしょうか。

360度評価(多面評価)を活用したリーダーシップ開発および中堅社員の意識・行動変革については、以下の研修で詳しくご紹介しています。
360度サーベイで現状を振り返り行動指針を固めるリーダーシップ開発研修(LDP)【3日】
360度サーベイで現状を振り返り行動指針を固めるシニアメンバーシップ開発研修(SDP)【3日】

企業における360度評価活用の実態についてはこちらのコラムでもご案内しております。
360度評価活用における実態調査レポート−360度評価の背景と効果的な導入の仕方とは?

また360度評価サービス開発担当からの導入時のアドバイスも下記のプレスリリースにてご紹介しております。
360度評価活用における実態調査 結果を発表 導入企業の意外な活用目的や、効果的に活用できている企業の工夫が明らかに

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