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導入事例

3年間、若手社員を「職場ぐるみ」×「育成体系」×「データ」で育て上げ、早期戦力化を実現する

株式会社デンソー

3年間、若手社員を「職場ぐるみ」×「育成体系」×「データ」で育て上げ、早期戦力化を実現する
  • 公開日:2023/12/11
  • 更新日:2024/07/09

事例概要

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背景・課題

人と組織のビジョン「PROGRESS(プログレス)」を実現するため、若手育成に力を入れる必要がありました。現場は若手の早期戦力化を求めているが、「若手の高いキャリア意識」「世代間ギャップ」「育成時間の不足」といった課題を抱えており、育成難度は増すばかりという現状がありました。これらの課題を解決するため、2021年から「若手の早期育成・戦力化」の変革を開始しました。

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検討プロセス・実行施策

第一に、データやヒアリングから人が育つ職場の特徴をモデル化した「職場ぐるみ育成」を促進しています。第二に、3年間で期待する成長レベルに届くように「若手育成体系」を刷新しました。特に自立・自律の考え方が早期に身につくように「キャリア教育」を重層的に実施し、力を入れています。第三に、若手本人と職場と人事をつなげる共通言語として「育成データ」を積極活用しています。

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成果・今後の取り組み

入社1・2年目ともに立ち上がりがスムーズで、本人たちも成長実感を得ていることがデータやインタビューで確認できています。職場ぐるみの育成も軌道に乗り、部長・室長・課長・OJTリーダーの大半が肯定的かつ意欲的です。「デンソーの若手社員は日本トップレベルに成長している」状態を目指し、若手本人・職場・人事が三位一体となり、会社全体で若手を育て合う風土を醸成します。

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背景・課題

現場は若手の早期戦力化を求めているが、育成難度は増すばかりである

都築:私たちデンソーが「若手の早期育成・戦力化」の変革を考え始めたのは、2020年です。当時、私たちはデンソー変革プラン「Reborn21」に取り組みました。この取り組みを一層加速させるべく、人と組織のビジョンを定め、「実現力のプロフェッショナル集団」を目指すことを決めました。そして、2021年には、人と組織のビジョン「PROGRESS(プログレス)」として、情熱で自己新記録に挑むプロ(人)と、多彩なプロが出会い・共創する舞台(組織)を掛け合わせて、「人と社会の幸せのために新しい“できる”を実現」という価値を提供する、という「ありたい姿」を設定したのです。

現場は若手の早期戦力化を求めているが、育成難度は増すばかりである

<図表1>人と組織のビジョンとその実現のための本質課題

<図表1>人と組織のビジョンとその実現のための本質課題

この「ありたい姿」を実現する鍵の1つが、これからのデンソーを担う「若手社員育成」でした。しかし私たちは、若手社員育成を強化するうえでいくつかの課題を抱えていました。

第一の課題は、私たちが若手社員の「高いキャリア意識」に応えきれていなかったことです。私たちはPROGRESSで、社員に自立・自律を呼びかけており、特に後ほど詳しく説明する「キャリア自律」を強く求めています。ところが、今の若手社員はすでにキャリア意識が高く、Will(やりたいこと)が明確なのです。私たちは、彼らの高いキャリア意識をこれまで以上に活かして、彼らのキャリア自律を早期に実現できる会社になる必要がありました。

第二の課題は、「世代間ギャップ」です。価値観の多様化により、若手社員への指導に悩む上司が増えました。さらに、コロナ禍にオンラインコミュニケーションが増えたことで、OJT育成が難しくなっており、従来の育て方を見直す必要がありました。

第三の課題は、「育成時間の不足」です。日本では、時間外労働時間の上限規制がどんどん厳しくなっています。そのため、上司やOJTリーダーが若手育成に使える時間が減っており、その育成体制に限界が来ていました。職場内で、上司やOJTリーダーだけが若手育成に労力を割く仕組みを考え直す必要もあったのです。

自動車業界は今、ビジネスの大転換期を迎えています。私たちの事業ポートフォリオも激しく変わっており、組織再編や製品の入れ替わりが次々に起こっています。グローバルに関わる組織も増え、高レベルの業務が増えています。そのため、どの組織も若手社員にできるだけ早く一人前になってほしいと思っているのです。

私たちは、「トップギアで走り続けているデンソーの各職場に対し、ただ新入社員を配属するだけでなく、スムーズな定着・即戦力化を後押ししたい。そして新入社員には、他社では実現できない角度での成長を果たし、入社時に抱いていたキャリアを早期に実現する手ごたえを感じてもらいたい」という思いを持ちながら、2020年から若手の早期育成・戦力化を構想し取り組んできました。

2021年度には「早期配属」・「1年目研修」・「2年目キャリアデザイン研修」をスタートし、2022年度には、後ほど詳しく触れる「オンボーディングサーベイ」などを開始しました。そのうえで、2023年1~2 月にあらためて、若手社員を預かる「111名の直属上司との意見交換会」を開き、「育つ若手」と「若手が育つ職場」の特徴を明らかにしました。2023年4月から、これまで取り組んできた各施策を体系化し、リスタートしました。


<図表2>若手の早期育成・戦力化の施策体系(全体像)

 <図表2>若手の早期育成・戦力化の施策体系(全体像)

検討プロセス・実行施策

「職場ぐるみ育成」の促進と「3年間若手育成体系」の刷新を両輪で進めている

「職場ぐるみ育成」の促進と「3年間若手育成体系」の刷新を両輪で進めている

:私たちは2023年4月から、若手の早期育成・戦力化を体系化し、推進しています。変革は、PROGRESSに謳っている「情熱で自己新記録に挑むプロ」となるべくキャリア実現を支援しながら、「職場ぐるみ育成」「3年間若手育成体系」「育成データ」の三本柱で行っています。

「職場ぐるみ育成」は、文字通り、直属上司とOJTリーダーだけでなく、職場の全先輩、若手が業務上で関わる職場内外のプロ、さらに人事・部長・室長などが一緒になって、若手育成に関わっていく体制を指します。職場内の「タテ・ヨコ・ナナメ」のコミュニケーションと、職場外のプロや前後工程との繋がり・共創の両方を重視しています。直属上司とOJTリーダーだけで育成する仕組みから脱却し、職場が一丸となって若手を育成する体制を整えようとしているのです。


<図表3>デンソーらしい職場ぐるみ育成

 <図表3>デンソーらしい職場ぐるみ育成

職場ぐるみ育成の仕組みづくりにあたっては、先ほど紹介した111名の直属上司との意見交換会で、「若手社員が育つのはどのような職場なのか?」を議論しました。その結果、「計画性を持って、適任者全員が若手をサポートする職場」がよいことが分かりました。そこで職場ぐるみ育成に乗り出したのです。例えば、上司とOJTリーダーが育成計画立案やフィードバックを担当し、先輩Aが仕事の進め方を伝え、先輩Bが専門知識を教え、先輩Cがメンタルケアを行う。このように全員が若手社員に関わっていく職場を理想としています。

<図表4>「若手社員が育つ」職場モデル

<図表4>「若手社員が育つ」職場モデル

一方で、私たちは「3年間若手育成体系」を刷新しました。3年かけて、若手社員に一人立ちしてもらうための研修体系を再構築したのです。この体系は、デンソーらしさを伝える「デンソースピリット実践」、仕事の型を教える「問題解決8STEP」、キャリア自律を目指してもらう「キャリアデザイン研修」の3つの軸から成ります。3年間で3つの軸をマスターし、デンソーらしさと仕事の型を身につけるだけでなく、キャリア自律を実現してもらうことを目指しています。

デンソーでは、キャリア自律を「個人の成長・幸せと会社の大義・発展の統合」と定義しています。単に社員個人がWill(やりたいこと)・Can(できること)・Must(すべきこと)を設定するだけでは、キャリア自律とは呼びません。一方で会社のWill(組織の大義・デンソーらしさ)・Can(組織能力)・Must(組織ビジョン・目標・場)を理解して、自分が組織に何を期待され、どう貢献できるかを考える必要があるのです。デンソーでは、個人のWill・Can・Mustと組織のWill・Can・Mustを統合できたとき、はじめてキャリア自律が実現すると考えます。

「キャリアデザイン研修」では、若手社員自身に、自分のWill・Can・Mustと組織のWill・Can・Mustを段階的に統合してもらう支援を行っています。この研修で考えた内容は、職場で上司と対話するための「キャリアデザインシート」や「コミュニケーションシート」に対応し、そのまま現場で使える仕立てになっています。なお、キャリアデザイン研修は、リクルートマネジメントソリューションズと共同で企画・実行しています。

<図表5>若手育成体系(OFF-JT)例

<図表5>若手育成体系(OFF-JT)例


若手本人と職場と人事をつなげる共通言語として「育成データ」を積極的に活用

 若手本人と職場と人事をつなげる共通言語として「育成データ」を積極的に活用

川瀬:私たちはさらに「育成データ」を積極的に活用しています。具体的には、リクルートマネジメントソリューションズの協力のもとで、若手が自らの成長実感を回答する「オンボーディングサーベイ」と、周囲が若手の成長を評価する「360度フィードバック」を定期的に行い、その結果を職場に展開しています。

上司やOJTリーダーは、それらの育成データをもとに若手の育成計画を軌道修正したり、若手本人と対話したりしています。また、若手本人にも結果をフィードバックし、自らが成長するきっかけの1つにしてもらっています。

<図表6>オンボーディングができている状態像

<図表6>オンボーディングができている状態像

私たちは育成データを、若手本人と職場と人事をつなげる「共通言語」と捉えています。デンソーは技術者を中心に理系社員が多く、データの扱いに慣れています。お互いの間にデータがあった方が、話しやすいケースが多いです。また、私たち人事も育成データがある方が、職場との対話が捗ります。例えば、「育成データでは若手が悩みを抱えているようですが、実際にはどうですか?」などと声をかけやすくなりました。

<図表7>新人・若手メンバーが直面する5つの壁の把握(オンボーディングサーベイ)

下図は、オンボーディング(組織への定着・戦力化)のプロセスにおいて、新人・若手メンバーが直面しがちな5つの要素(壁)と心理的な状況(想定される症状)を一般的なモデルとして表したものです。
オンボーディングサーベイでは、立ち上がりのプロセスを構造化して、現状を可視化することができます。

<図表7>新人・若手メンバーが直面する5つの壁の把握(オンボーディングサーベイ)

なお、知識・スキルの獲得においては「自社ラーニングシステム(GLS)」を充実させており、若手本人に意欲があれば、GLSで専門性やポータブルスキルを十分に学ぶことができます。さらに、手挙げ制で参加可能な外部研修コンテンツも用意しています。他にも、私たちは育成体系の一環として、社内で5~6名の「学び合いチーム」を形成し、チームでの自主的な学び合いを推奨しています。お互いの成長を応援し合い、学習意欲を刺激し合う関係になってほしいと願っています。

成果・今後の取り組み

最終的な目標は、「デンソーの若手社員は日本トップレベルに成長している」状態

最終的な目標は、「デンソーの若手社員は日本トップレベルに成長している」状態

:現時点での成果をお伝えすると、まず2022年度から導入していたオンボーディングサーベイでは、入社1・2年目社員ともに、全体的には立ち上がりがスムーズで、本人たちも成長実感を得ていることが確認できています。

私たちはオンボーディングに際して、「職場適応」「基本行動」「意味理解」「経験サイクル」「主体性・視座」の5つの壁を設定していますが、多くの若手が比較的順調に壁を乗り越えつつあります。

また、職場ぐるみの育成も軌道に乗っています。部門長・部長・室長・課長・OJTリーダーの大半が、人事部の提唱する職場ぐるみの育成に肯定的で、高い意欲をもって取り組んでくれています。その結果、多くの職場の雰囲気がさらによくなってきています。

今後は、リクルートマネジメントソリューションズが作成した「経験カード(若手時に成長を促進する経験をまとめたツール)」を活用し、どのタイミングでどのような経験をさせることが有効なのかを分析したり、育成データの活用シーンを増やしたり、ベストプラクティスを全社に展開したりして、職場ぐるみの育成と3年間若手育成体系の質を高めていきたいと考えています。また、私たちとしては、社内人財育成コンサルタントとなって職場の課題解決をさらに促したいと考えています。

私たちの最終的な目標は、「デンソーの若手社員は日本トップレベルに成長している」状態です。今後もその目標に向かって、若手本人・職場・人事が三位一体となり、会社全体で若手を育て合う風土を醸成していきます。

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ソリューションプランナーの声

西岡尚輝の顔写真

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューションプランナー 西岡 尚輝

昨今の人材の流動化と事業環境の大きな変化を主な背景としてデンソー様においては、若手の早期戦力化が求められております。これは、さまざまな業界において起こっていることであり、同じ悩みを抱えていらっしゃる企業も多いのではないでしょうか。

今回のデンソー様の取り組みについて、素晴らしいと感じたことは大きく分けて3つありました。

1つは、「データと現場の声の両面を大事にしながら問題を認識していること」です。どちらかに偏るのではなく、データを駆使して全体としての傾向を捉えるのと同時に、現場に足を運んでインタビューを通して若手や職場での支援状況に対して深い理解をしながら問題を認識されていました。足を運ぶことで現場との信頼関係も築いていらっしゃると感じています。

2つ目が、「現状進行している取り組みとうまく組み合わせながら効果を高めようとしていること」です。単独の施策展開では効果が限定的になってしまいますが、「若手の早期育成・戦力化」と並行して取り組まれている「マネジメントへの支援施策」や「キャリアを支援する仕組みづくり」と接続することでシナジーをうまく引き出せるように施策が設計されているのがとても素敵な点だと感じています。

3つ目が、「職場モデルを設定して職場としてありたい姿を会社から提示したこと」です。理想の職場というのを人事部内でとどめるのではなく職場モデルとして人事部が方向性を示すことで、職場として目指す状態が明確になる/磨かれることになり、課題意識が高まり職場での取り組みが促進されると感じています。

デンソー様の取り組みは、変革の入り口に立ったところだと思いますので、実現に向けて引き続きご支援ができるようチーム一丸となって励んでまいります。
また、これからさまざまな企業で若手が育つ・活躍すると言われるような社会に向けてさらにソリューションを進化させていけるよう力を尽くしていきたいと考えています。

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コンサルタントの声

シニアコンサルタント 山本 りえ

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
シニアコンサルタント 山本 りえ

「若手社員を早期に育成・戦力化したい」、一方で「5年以内の離職が過去と比較して増えている」といったお声が昨今増えてきております。特に「社員のプロ化」に向けて、「キャリア自律」を推進されている企業にとって、入社からの3年間は夢・志を自ら実現するためのスタンスや思考ステップ、行動様式を学んでもらう絶好の期間でもあります。

株式会社デンソー様は、人と組織のビジョン「PROGRESS(プログレス)」を定め、「情熱で自己新記録更新に挑む多彩なプロ」を育てるために、キャリア自律、人財育成、評価・処遇、働き方・カルチャーの4つの変革を進められています。(会社のパーパスと従業員のキャリア自律 デンソー)本事例は、若手社員を対象に入社から3年間のオンボーディングに向けて、データや現場ヒアリングなどから「若手社員が育つ職場モデル」を設定し、職場ぐるみで支えながら成長サイクルが効果的・効率的に回るように施策を体系化し、運用されている事例です。

今回、「若手の早期育成・戦力化」のご支援を通じて我々が最も大事にしたことは、「現場視点(現場の行動誘発)」です。「新人・若手メンバーが自立的にPDCAを回し、成長実感をもつために現場に役立つ支援は何か?」をお客様と一緒に考え、サーベイや研修設計にとどまらず、職場マネジメントツールやコミュニケーションツールなどとリンクさせることで、現場負荷を下げ、上司・部下の対話が促進されるように設計しました。また、全社のPROGRESSの施策をご支援していることもあり、施策間での連動性を高め変革の方向性やメッセ―ジをブレさせず、シナジーが出る取り組みとなっています。

“人”の領域においてもデータ活用が進むなか、上司・部下の対話も進化しています。上司は部下の話を聴き、寄り添い、言葉を尽くすことがこれまで通りの対話の前提となりますが、言外の感情を察するのが苦手な上司の方もいますし、自分の気持ちを言葉にすることが苦手な部下もいます。これからの時代、どのようなタイプの方でも最大限能力発揮できるように、データを利活用しながら自分のビジョン実現に向けて現状(成長)を振り返ったり、悩み・壁を解消したり、次のアクションを選択したりし、自分らしく前進できるご支援をしていきたいです。

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企業紹介

株式会社デンソー

先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカー。スローガンである「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい。」を実現するため、「電動化」「先進安全/自動運転」「コネクティッド」に注力し、新しいモビリティの価値を提供すると共に、「非車載事業」として、FA(ファクトリー・オートメーション)や農業の工業化に取り組み、社会・産業界の生産性向上に貢献している。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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