調査レポート
360度評価活用における実態調査レポート
360度評価の背景と効果的な導入の仕方とは?
- 公開日:2020/05/25
- 更新日:2024/05/31
360度評価(360°サーベイ)を人事施策として導入する企業が増えています。 その背景には、働き方改革の浸透や、VUCA時代を迎えたビジネス環境の変化などがあるようです。 このたび、360度評価をこれから導入する企業、導入したもののお悩みの企業の参考となるべく、導入方法の実態や、効果の成否を分けるポイントなど、企業の人事業務を行っている方を対象に600人への調査を行いました。
- 目次
- 調査概要
- 360度評価の導入は近年増加している
- 360度評価の対象者は誰か?
- 他社と比較して自社のレベルを知りたい
- 360度評価はどのように活用されているのか
- 効果的に導入するための広報の仕方
- 360度評価をどのように返却するか
- 最後に
調査概要
360度評価(多面評価)とは
360度評価とは上司だけでなく、同僚や部下、他部署など複数の関係者から評価を行う手法をさします。一般的に360度評価の実施目的は人材育成と評価の2つに分かれるが、人材育成を目的とする場合には、評価結果を本人にフィードバックし、自己変革を期待することが多いです。
360度評価の詳しい説明はこちらをご確認ください。
360度評価の導入は近年増加している
VUCA時代おけるビジネス環境、少子高齢化、働き方改革やITテクノロジー向上……など、同時多発的さまざま社会変化を受け、企業や組織、マネジメントのあり方も変わってきています。
テレワークやオフィスのフリーアドレス化など、働き方の変化に伴い、人事や上司から現場の様子が見えづらい状況となっています。そのため評価の材料として、さらに相互に学び合う組織づくりのため、360度評価を導入する企業が増加していると考えられます。その1つが、360度評価を導入する企業の増加です。
2007年に5.2%だった360度評価の導入率は、2018年に11.8%となりました。(※出典 労政時報 第3956号 /18.8.10/8.25)。さらに、今回弊社で行った調査では「360度評価を現在実施している」企業を合計すると全体の31.4%となっています(図表1)。
360度評価の対象者は誰か?
360度評価を導入している対象として一番多いのは課長層(62.5%)、次いで部長層(59.5%)でした。
弊社の360度評価をご利用いただく際にも、やはり管理職(課長・部長層)の方を対象とすることが多いのですが、今回の調査で事業部長・役員層への導入をしている企業も一定数あることが分かりました。
役職が上がると、周囲から率直な評価やフィードバックはもらいづらくなるため、360度評価という手法の価値が発揮されやすくなります。周囲への影響力が大きい階層であるからこそ、多面的なフィードバックから気づきを提供する重要性も高いと考えられます。
また、新人・若手へ導入していると回答した企業は27.8%でした。新人・若手のうちは成果を求めるだけでなく仕事の進め方を身に付けていくことも重要なため、業績評価に加えて仕事のプロセスを評価できる360度評価は人事評価の手法として役立つでしょう。
他社と比較して自社のレベルを知りたい
次に360度評価を導入した目的について見ていきます。
一番多く選択されたのは「他社と比較した時の自社の人材レベルが分からないから」(37.5%)でした。社員に関する定量データを持っていない企業では、自社のレベルを判断するための材料として、アセスメントデータを取得するところから始めなければなりません。その際に360度評価であれば、本人の育成や上司のマネジメントツールとしても活用できるため、導入しやすい、ということが考えられます。
2番目、3番目に選択されたのは「現在の評価(上司評価)があてにならないと感じたから」(35.7%)、「現場の社員から導入を求められたから」(32.2%)でした。人事だけでなく現場の従業員自身も、誰か1人からの評価ではなく、多角的な評価を求めている様子がうかがえます。その背景には、冒頭でお伝えしたような一人ひとりが見えづらくなっている職場の変化があるのかもしれません。普段はしづらい上司へのフィードバックの機会にもなり、風通しの良い職場づくりにも貢献できます。
360度評価はどのように活用されているのか
360度評価はやはり「人事評価への活用」を目的として導入されるケースが多いのでしょうか。
人を多面的に見ることで、評価の公平性が担保できることや、主観性を排除できることから、人事評価への活用を目的として導入される企業は多いでしょう。また、最近は役員層向けの360度評価サービスの利用も増えています。人事からは見えづらい、現場から経営に対する評価を定期的に確かめることで、コンプライアンスに則って事業推進を真に加速させる現場づくり、人材配置を企業が志向し始めているためです。
しかしながら、「人事評価に反映している」の選択率が54.5%にとどまったことからも見えるように、評価以外の目的で360度評価を導入する企業も少なくありません。
効果的に導入するための広報の仕方
冒頭でもお伝えしたように、360度評価の導入について慎重になる企業もあります。一番よく挙げられる懸念点は「現場からの反発があるのではないか」という心配です。一方、今回の調査では、「職場の雰囲気が良くなった」「意外と管理職が前向きに受け止めている」「いい意味で緊張感が持てる」などの効果を感じられるコメントも見受けられました。
導入を成功に導くポイントは何でしょうか。
ここでは、効果的な導入を実現するために押さえておきたいポイントは何か、調査結果をひもときながらお伝えしていきます。
まず、導入の際に否定的に受け止められないためには、実施前や実施時にきちんと広報していくことが重要です。
何のために導入して、何に反映し、具体的にどのように活用されるものなのかをしっかりと伝えましょう。そうでないと「これで昇進が決まるのではないか?」のような臆測が広がり、低い評価を付けたのは誰か? と犯人捜しにつながってしまう可能性もあります。
目的については、「本人の能力開発のため」「職場のコミュニケーションを活性化するため」と伝えている場合に、導入後の効果を感じる割合が増えていることが分かりました (図表5) 。事前に準備できるならば、「上司との面談で~~~~のように使用する」「各職場で結果を確認し合い~~~~~~のように使用する」など、具体的な活用イメージを伝えると、より効果を感じやすいかもしれません。
360度評価をどのように返却するか
次に結果の返却と効果の関係について見ていきます。
まず結果を「本人に返却していない」企業は24%でした。返却していない企業のうち78.5%が「特に効果は感じていない」と回答しており、効果のためにはしっかりと結果をフィードバックした方が良いと考えられます。
最後に
360度評価の導入を検討された際に、もう1つ不安として伺うのが、導入の際の人事の方の負荷についてです。実際に導入された企業で負担の大きかったことは何なのか、どのように解消していくのが良さそうか、なども含め今回の調査レポートダウンロード版に結果を掲載していますのでご参照ください。
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最後に、360度評価を導入された企業が効果を感じた点について以下のような声があったのでご紹介します。
「直属の上司・部下以外の観点からも、人事において有益な判断材料が得られた」
「初めは抵抗もあるが意外と実施後は好印象が多い」
「職場の雰囲気が良くなった。なんでも言い合える空気になった」
「社員の隠れた能力発掘に効果を発揮している」
「人事では見えにくい部分が見える」
「人事評価が低い人物が、同僚からの評価が高かったなどの発掘があった」
リクルートマネジメントソリューションズでは「360°評価システムMOA(Multi-Observer-Assessment)」「経営人材360°評価システム PRO-MOA」をご用意しています。
導入、ご検討に際してのサポートやご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせフォームやお電話からご連絡ください。
執筆者
HRアセスメントソリューション統括部
アセスメント基盤開発部
測定技術グループ
マネジャー
川越 未紀
2014年リクルートマネジメントソリューションズ入社。営業職を経て、2015年より多面評価サービスの商品開発に携わる。人材アセスメント・組織サーベイといった心理測定ツールの開発を専門領域とし、適性検査や従業員満足度調査などの新規開発や技術研究に取り組んでいる。
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