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課題を設定し問題解決を行うスキルを身に付ける

問題解決のための論理的思考法とは〜課題との違いからプロセスまで〜

  • 公開日:2007/02/01
  • 更新日:2024/03/25
問題解決のための論理的思考法とは~課題との違いからプロセスまで~

昨今、企業の人事教育担当の方から、ビジネススキルのなかでも思考法に関するもの、例えば「論理的思考力(ロジカルシンキング)」や「問題解決能力」といった切り口でご相談いただくことが急激に増えてきています。

その背景としては、テレワークやオンライン化の浸透、DX推進など、事業をとりまく社内外の環境変化のスピードが加速し、複雑化していることが影響しているようです。
そのような変化の大きい環境下では、一律の「正解」が存在せず、常にその時の環境に合わせた「最適解」を考え続けることが求められます。
「最適解」を考え続けることは経営層や管理職だけで実現するのは難しく、日頃から社員一人ひとりが職場の問題や課題について正しいプロセスで考え、課題解決に向けて何をすべきなのかを、組織ぐるみで共有することが大事になってきます。
そのためには「共通言語」としての論理的思考力や問題解決の考え方を一人ひとりが身に付けることがより重要となってくるのです。

今回の特集では、基本的なビジネススキルとしての「問題解決のための思考法」について取り上げてみたいと思います。

 

「問題」と「課題」の違いについて
問題解決がうまくいかない理由
問題解決力を高めるには
課題を明確にするポイント
まとめ

「問題」と「課題」の違いについて

「問題」と「課題」、私たちはこの2つの言葉を日常の場面でもよく使いますが、「問題解決」を考えるにあたり、ここではまず、「問題」と「課題」について違いを明らかにし、それぞれを定義することから始めたいと思います。

1.問いかけて答えさせる題。解答を要する問い
2.研究・論議して解決すべき事柄
3.争論の材料となる事件。面倒な事件
4.人々の注目を集めている(集めてしかるべき)こと
出典:広辞苑・第6版

日本語は広義であることが特徴ですが、ビジネスの現場では、多くは次のように定義されます。

つまり、私たちは、定めた目標(あるべき姿)と現状(現実の姿)の間に差異(ギャップ)が生じると、その状況を問題だと認識するのです。
逆にいうと、あるべき姿(目標)が定まっていない場合には、何が問題かを定義することができません。

問題とは

「何が問題か」はありたい姿に照らして考える

1つの事象について、問題だと思う人と、 “別に問題ではない”と思う人がいる、ということもよくあります。例えば最近は「円安」についてニュースでもよく取り上げられます。「円安が進むのは問題だ」と主張されることがある一方で、輸出で業績を上げている企業にとって円安は悪いことばかりではありません。また、海外旅行もせず海外の物も買わない人にとっては直接的な影響は感じられず「特に気にならない」という場合もあるでしょう。
このように同じ事象を認識していても、問題だと思う人とそう思わない人の両方が存在する場合があります。それはどういうことを表しているのでしょうか。

実は、集団で「問題」が共通認識されるためには「あるべき姿」も共通化されている必要があります。
1.あるべき姿(目標)が明確に定まっており、共有できている場合
2.あるべき姿(目標)が共通化されておらず人・状況により異なる場合

1.「あるべき姿」が定まっている 2.「あるべき姿」が定まっていない

1のケースは、目標が組織・集団のなかで明確に共有されており、現状とその目標との間に差異を生じている時です。このケースでは、組織・集団内の誰もが問題を認識します。

2のケースは、組織・集団のメンバー間で、目標(あるべき姿)が定まっていない時です。
メンバー一人ひとりが描く目標(あるべき姿)が異なれば、人により問題の認識も異なります。
先に取り上げた「円安」のケースにあてはめていうと「1ドル何円であるのが適正か」ということが共通認識として持たれているわけではないため、人によって現状を問題だと考える人もいれば、そうでない人もいる、ということが起きている状況です。
つまり、そもそものあるべき姿(目標・標準)が異なるために、問題の捉え方が異なってくるのです。

上記の例は日本の社会全体を対象とした例ですが、ビジネスの場合はその企業や組織全体で何が問題かの捉え方、つまりあるべき姿の共通認識を持っておく必要があります。
また、今のように環境が大きく変化し続けている状況では、いったん定めた目標も、常に見直しが求められます。つまり、環境変化を捉え、それを踏まえて新たに目標を設定し直すことにより、「問題」も変化していくのです。

課題とは何か

一方、「課題」を辞書(広辞苑・第6版)で引くと「題、また問題を課すること。また、課せられた題・問題」とあります。「問題」も「課題」も“解決”という言葉を伴うことから、「課題」とは次のように定義できます。
「課題とは、問題を解決するために、行動を起こすことを意思表明したもの」

問題を認識した後に解決するためには、主体的に解決する意志を持って行動を起こすことが必要です。
それが、課題設定する、または課題化するということです。
あるべき姿に照らした時の現状の問題は何かを見定めたうえで、問題を解決するために何に取り組むべきかを設定していきます。この「何に取り組むべきか」が課題となります。

この時にありがちなのは、「問題を解決すること」自体を課題としてしまうケースです。
例えば、問題が「売上が目標に対して不足していること」だとすると「売上目標を達成させること」を課題としてしまうようなケースです。
それだと具体的に何に取り組めばよいのかが分からず、課題が正しく設定されているとはいえません。
そうならないように問題解決のプロセスを正しく踏むことが重要です。

問題解決がうまくいかない理由

問題解決にはプロセスがある

どんな仕事にも正しく成果を出すためには決まったプロセスがあります。しかし、私たちは日頃、問題を解決したい時、なぜかいきなり結論や解決策を考えようとしてしまいがちです。
そして「解決策の選択肢」についてすぐに議論を始めようとしてしまうのです。しかし、このようなプロセスを踏まない問題解決はうまくいかなかったり、周りの賛同を得られなかったりという状況に陥ることが多いのです。

問題解決には下記のような踏むべきプロセスがあります。

(あるべき姿・目標・基準に照らして)
1.現状とあるべき姿のギャップから問題を認識する
2.現状を分析して問題が起きている原因を特定する
3.問題を解決するために取り組むべき課題を設定する
4.課題を優先順位付けして実行計画を策定する
5.計画を実行する
6.結果を振り返り組織へ還元する

問題解決の際に起こりがちなこと

「問題解決に優れた人」は、実は、意識してこのプロセスを踏んでいます。
しかし、ビジネスの現場は常に問題解決の連続であり、皆が常にうまく解決できるとは限りません。企業の人事担当の方からは、例えばこんな声をよくお聞きします。
・現状分析が甘く偏った理解にとどまってしまう
・ビジネス環境や状況は常に変化しているのに、自ら問題に気づけない
・指示された課題はこなせるが、自分で課題設定できない
・説明に自分の主観が混ざっており説得力がない
・時間がかかるうえになぜそのような結論に至ったのか、説明を聞いてもよく分からない
問題となる原因分析が不十分問題となる原因を特定し分析しなければ、適切に問題を解決することができないままです。そのためにも、まずは問題の解決に取り組む前に、問題となっている原因の分析を行いましょう。
例えば、目標とする売上をなぜ達成できないのかという問題があったとします。その原因を探るには、何を行えばよいのでしょうか。この場合は、これから伸ばす必要のある数字や不足している顧客の数について詳細に分析しなければなりません。
上記のような場合は原因の特定が容易ですが、原因によっては判断が難しい場合もあります。原因を探りにくいときには「マインドマップ」を書くなどして、思考表現の手段に頼ってみる方法も一案です。


問題解決方法の選択肢が少ない

問題の解決に際し、現在いくつの方法が提示できているでしょうか。1つや2つだと少なすぎて、その方法が果たして適切かどうかという所で思考が止まってしまいがちになります。
問題解決の方法を挙げるときには、できるだけ多くの候補を提示するようにしましょう。その理由は単純で、挙げられる候補が多ければ多いほど、問題解決の可能性も高まるためです。
多様な意見を取り入れて可能な限り多くの候補を揃え、そのなかから自分たちの問題解決の近道となる候補を割り出して絞り込んでいきます。もしかして、複数の解決方法のなかで一度に行えるものや、ひとまとめにできるものもあるかもしれません。
このように、できるだけ多数の候補を挙げ、そこから絞り込みをしていくことによって、課題解決方法そのものの精度も高めていくことができるでしょう。


問題解決の検証を行えていない

問題解決の方法が割り出せて、実施した後にも検証を行う必要があります。その際には、課題解決策として選定した方法と、実際の進捗状況を必ず照合して成果検証を行ってください。
もし、当初に想定したよりも効果が出ていない(解決につながりきれていない)とします。その場合には、検証結果に応じて「検討段階で提示された他の解決策を導入してやり直してみる」「現状の解決策そのものの方向性を見直してみる」などの対応を行いましょう。
選定した課題解決方法について、その効果を検証したり過程を振り返ったりすることで、次以降に生じた課題に対する解決がスムーズになる可能性もあります。

問題解決がうまくいかないもう1つの理由

問題解決のプロセスを理解していて、そのとおりにやろうとしてもうまくいかないことがあります。その場合は論理的思考がうまくできているか確認してみます。
上記に挙げた例でもいくつかは論理的思考力の不足が原因になっていることが考えられます。
私たちは情報、経験、知識を活用して、結論を導き出しますが、結論を出すために“考える(思考)”という行為を行っています。論理的思考ができないと、思考が正しく前に進まずに問題解決プロセスがスタックしてしまうのです。

例えば、
・何が問題かを認識できない
 →あるべき姿に照らして現状を正しく見ることができていない
・現状分析、課題形成ができない
 →事実や情報をもとに考える筋道を立てられない
・結論が出るまでに時間がかかる
 →結論を出すための筋道(手順)を持っておらず、ぐるぐると考え続けてしまう
・思い込みが混ざって説得力のない説明になる
 →事実と意見を分けて考えたり、複数の情報をラベリングして整理したりすることができない。自分でも整理できていないため説明を求められてもその根拠・理由が説明できない。つまり、思考過程がブラックボックス化している
といったことが思考過程で起きていると問題解決のプロセスを前に進めることができません。

問題解決力を高めるには

問題解決のために身に付けたい2つのスキル

上記でお伝えしてきたように、問題解決を効果的に進めるためには、下記の2つの力を高めていくことが重要です。
1)問題解決のプロセスを身に付け、すぐに解決策を考えようとせずにステップを踏んで進めること
2)プロセスを進めるなかで、論理的に思考すること

2つ目の論理的思考(ロジカルシンキング)はどのようにして高めていけばよいのでしょうか。
主な論理的思考にはフレームワーク思考、MECE(ミーシー)、ゼロベース思考などの手法があります。

フレームワーク思考とは

フレームワーク思考とは既存のフレームにあてはめて思考を進めることです。代表的なフレームである「ピラミッド構造」を例に取って説明します。ピラミッド構造とは、結論を頂点としてその根拠を下の階層にどんどん並べていき、事象をピラミッドのような構造にして考えることです。

▽ ピラミッド構造

自社はAエリアに出店すべきだ

例えば、「自社はAエリアに出店すべきだ」というのが主張したい結論だった場合、その根拠として「Aエリアには見込み客が多い」「Aエリアには出店コストの安い物件候補がある」などが挙げられます。さらに「見込み客が多い」の根拠として「中規模の大学が2つある」などのようにさらにその根拠を記載していくことで、どうしてその結論に至ったのか、という構造を誰もが分かりやすく理解できるようになるのです。

このようにフレームワークにあてはめて思考を進めていくと説明しやすく、話があっちに行ったりこっちに行ったりしないため聞き手にとっても理解しやすい形で思考をアウトプットすることができます。実際に図式化せずとも頭のなかにこの構造を作って話せれば十分なのですが、慣れないうちは紙に書いて構造を可視化してみることをお薦めします。

MECE(ミーシー)とは

MECEは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った造語です。日本語では「漏れなく、ダブリ(重複)なく」という意味で使われます。ピラミッド構造などのフレームワークを使って考える際に、その要素を「漏れなく、ダブリなく」考えていくことで偏りがない構造を作っていくことができます。例えば新しい商品の企画を考えている時に、「商品の仕様」の観点はあるが「価格」についての観点が漏れている、などの状況を防ぐことができます。

ゼロベース思考とは

ゼロベース思考とは、先入観にとらわれることなく、白紙の状態から考える姿勢のことです。思い込みにとらわれてしまうと、新しい発想を生み出すことができなくなったり、自分で限界をつくってしまったりします。自分の中の無意識な思い込みや前提条件をなくして、どうすればできるのかをゼロベースで考えることが大切です。

最後にもう一度「重要なのは問題と課題を定義すること」

冒頭でも定義することについてお伝えしましたが、問題解決をするにあたって一番大事なことなのであらためてお伝えしようと思います。
問題解決のためにはプロセスを身に付け、論理的思考力を高めることは必須です。
ただ、そのプロセスのなかで「問題は何か」「課題は何か」をきちんと定義することが最も重要なプロセスなのです。
一見問題に思える事象、例えば冒頭で取り上げた「円安」や「円高」、「少子化」など、またビジネスの例でいくと「主力商品の売上減」「社員の退職」なども、フラットに見れば単なる状況にすぎません。
その状況によって「誰がどう困っているのか」「解決すべきことなのか否か」ということまで思考して他人に説明できる状態にすることが「問題の定義」で、問題解決ステップのスタートです。
そして、その問題の真の要因は何か、解決するためにはどんな課題を推進していけばよいのか、を考えていくことが「課題の定義」になります。
そこが曖昧なまま「一見問題に思える現象に飛びついてしまうこと」は問題解決においてよく陥りがちな失敗です。

課題を明確にするポイント

向き合うべき課題を明確化するためには、どのような点を意識するとよいのでしょうか。ここでは、課題明確化を実現させるために留意したいポイントについてご紹介します。

客観的に物事を捉える

課題と向き合うときは、つい主観的に捉えてしまいがちになります。しかしそうではなく、必ず客観的に捉えるようにし、それを習慣づけましょう。
視点が主観的なままだと、細部には目が行くものの課題の全体像を見極めにくくなってしまいます。このため、根本的な原因自体を誤って認識してしまったり、解決策として見当違いな方策を割り出してしまったりするなどの見誤りを招いてしまいがちになるでしょう。
客観的な視点を大事にするには、自分の考え方だけに頼らないことも重要です。上司や同僚などの声も聞くなどし、多面的に現状の課題を分析します。

物事に対し常に疑問を持つ

あらゆる物事に対して、疑問を持つようにする習慣を付けましょう。それが、課題解決力を養うポイントとなります。
例えば、営業活動を適切に行っているのに見合った成果が得られていないとします。その課題を真摯に受け止めることは大事ですが、単に「困った」だけで済ませてはいけません。「なぜ売れなくなったか」「他社の競合製品で売れているものがあるなら、なぜそれは数字が取れているのか」など、疑問を持って考察を行いましょう。
何らかの事柄に対していつも疑問を持つ癖を付け、思考力を高めていくようにしてみてください。

まとめ

この記事では、問題と課題の違いをご説明しつつ、問題を解決に導くための論理的思考力の高め方、課題明確化実現のポイントなどをご紹介しました。
弊社では論理的思考力や問題解決力を向上させ、ビジネスの現場で個々が力を発揮できるよう、さまざまなトレーニングプログラムをご用意しています。
職場の課題明確化・問題解決力向上のためにぜひご活用ください。

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