連載・コラム
さあ、扉をひらこう。Jammin’2024 session report vol.1
Jammin’2024始動! 44社247名が早速「不」について話し始めた〈Jammin’2024リーダーセッション1〉
- 公開日:2024/10/28
- 更新日:2024/10/28
異業種・越境による共創リーダーシップ開発研修「Jammin’」、6年目のJammin’2024がスタートした。 9月6日(金)にオンラインで開催された第1回リーダーセッションでは「44社247名」の次世代リーダーが一堂に会した。参加者たちは、これから約半年にわたって取り組む「事業案の立案」に向けて、基調講演やレクチャーを受け、チームビルディングを始めた。またこの日、オーナー(主にリーダーを派遣する企業の人事担当者)の皆さんも、次世代リーダーたちと共に基調講演に耳を傾け、オーナー同士の交流をスタートした。本記事ではリーダーセッションの様子をレポートする。
- 目次
- Jammin’2024 開催概要
- 越境を通じて自分を、自分たちを、知る、活かす
- 本当は「失われた30年」などなかったのではないか
- 日本文化は日本企業の思想・行動と密接に関係している
- 早くもお互いの共通点を探り、チームテーマを見つけ出そうとするチームもあった
Jammin’2024 開催概要
■ Jammin’とは?
VUCA時代に持続的に価値創出できる日本企業を増やすことを目指す、異業種・越境による共創リーダーシップ開発研修。参画企業から派遣された若手リーダーが異業種同士のチームを組み、約半年間かけてさまざまな社会課題を解決する新規事業案の検討・立案に取り組む。
■ 2024年度 開催期間
2024年9月6日(金)~2025年2月14日(金)
■ 2024年度 参加者数
247名(44社)
■ 2024年度 参画企業(五十音順※公表企業のみ)
株式会社IHI/味の素株式会社/伊藤忠商事株式会社/エーザイ株式会社/SMBC日興証券株式会社/エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社/花王株式会社/キヤノン株式会社/キリンホールディングス株式会社/株式会社埼玉りそな銀行/株式会社JERA/株式会社島津製作所/清水建設株式会社/全日本空輸株式会社/第一生命保険株式会社/大成建設株式会社/大同生命保険株式会社/大日本印刷株式会社/田辺三菱製薬株式会社/株式会社デンソー/西日本電信電話株式会社/日産自動車株式会社/株式会社日本政策金融公庫/野村證券株式会社/株式会社阪急阪神ビジネスアソシエイト/株式会社日立アカデミー/富士通株式会社/富士通Japan株式会社/富士通ネットワークソリューションズ株式会社/本田技研工業株式会社/株式会社本田技術研究所/株式会社みずほフィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行/三井不動産株式会社/三菱ケミカル株式会社/三菱重工業株式会社/三菱商事株式会社/明治安田生命保険相互会社/株式会社モバイルテクノ/株式会社りそな銀行 他
■ 取り組みの全体像
リーダー向けの「新価値創造セッション」(全15コース)と、オーナー(主にリーダーを派遣する企業の人事担当者)向けの「オーナーセッション」で構成。「Award」で全コースのなかから選ばれた優秀事業案を発表。
▽ Jammin’2024全体像
■多彩なコースと専門家
新価値創造セッションは、前回同様の全15コースを開講。それぞれが異なる社会課題をテーマにしている。各コースに参加するリーダーたちは、異業種同士でチームを組み、そのコースのテーマとなっている社会課題を解決する新規事業案を考える。各コースには、そのテーマの専門家が伴走し、事業案への助言やフィードバックを行っていく。
▽ 15のコースと専門家
越境を通じて自分を、自分たちを、知る、活かす
Jammin’2024も例年同様、第1回リーダーセッションはオンラインで行われた。進行役は、トレーナーの吉田達、毛利威之と企画責任者の井上功だ(いずれもリクルートマネジメントソリューションズ)。
新価値創造セッションの目的は、247名の参加者一人ひとりが、自己と組織を継続的に変革できる「共創リーダー」として成長していく支援だ。
※「新価値創造セッションの特長」と「これからの時代に求められるリーダー」の詳しい説明については2020年の開催レポートを参照
Jammin’の全体像と新価値創造セッションの説明の後は、「基調講演」の時間だ。今回も昨年・一昨年に続き、スイスに本拠をおき、世界に展開するビジネススクール・IMDの高津尚志氏(北東アジア代表)をゲストに迎えた。高津氏は記念すべき初回Jammin’2019の基調講演ゲストでもあり、Jammin’2021~2023ではJammin’ Awardの審査員も務めてもらってきた。昨年の基調講演、一昨年の基調講演も刺激的だったが、今年は時流に合わせてさらに進化した講演となった。タイトルは「越境を通じて自分を、自分たちを、知る、活かす」である。
ここでは、特に印象的だった2つの問いについて紹介したい。
▼IMD北東アジア代表 高津尚志氏
本当は「失われた30年」などなかったのではないか
1つ目は「失われた30年」論からの「越境」、つまり「この30年は、本当に失われた30年だったのか」という問いを考えることだ。「IMDでは毎年、『世界競争力ランキング』を発表しています。このランキングでは、日本の競争力はバブル期以来、30年以上にわたって長期的な低落傾向にあります。その中身を見ると、特にビジネスの『生産性と効率性』『経営慣行』『姿勢と価値観』の順位が67カ国中の50位~60位台と、極めて低くなっています」(図表1)
一方で高津氏は、ランキングの構成要素の一つである経営幹部サーベイのうち、『社会的責任感』『人材の獲得と維持』が世界的に見ても上位にあること(図表2)に着目し、「価値観」と「施策」の差異の存在、つまり、Knowing-Doing Gapが日本の課題ではないか、と問いかけた。「私は先日、このことをテーマに経済産業省の梶直弘・経済産業政策局産業構造課長と議論し、『ペシミズムを打破し、価値観と施策を一致させよう』『企業と政官の相互理解・信頼の欠如を乗り越えるべく、本音の議論・行動をしよう』といった見方で一致しました。悲観主義を脱し、失われた30年などと言わせないように、希望をつくり、行動を起こすことが必要ではないでしょうか」
高津氏は一例として、実は日本には世界競争力の高い材料や部品が多いことを挙げる。「米国の経営学者、ウリケ・シェーデさんは『シン・日本の経営』(日経プレミアシリーズ)で、『重要な原材料や部品に日本製が用いられている製品を使わない日はまずない』『ほぼすべての家電が「ジャパン・インサイド」となっている』と言っています。実際、日本企業発の材料や部品には、世界で大きなシェアを占めている製品がいくつもあるのです。こうやって少し見方を変えるだけで、日本の優位性や希望が見えてきます」
<図表1>IMD世界競争力ランキング2024(サブ因子毎の日本の順位)
<図表2>IMD世界競争力ランキング・経営幹部サーベイ、2014年と23年の比較
日本文化は日本企業の思想・行動と密接に関係している
2つ目は「西洋の知見の輸入」からの「越境」として、高津氏は日本独自の価値観からの学びについて問いかけた。「先ほどのウリケ・シェーデさんは、日本は『タイト』な文化で、静かに、着実に、マイペースに、社会が損害を受けないように、計画的かつ慎重に変革を進める特徴があると語ります。日本経済の成長鈍化は、安定性の代償だと言います。単純にシリコンバレーと比較して自虐に陥るのではなく、日本特有の『遅さ』と『深さ』の価値を見つめ直す必要もあるのではないでしょうか」
高津氏は、日本特有のビジネス変革の事例として、タクシー業界を持ち出した。「ご存じのとおり、アメリカではUberが既存のタクシー業を破壊しました。一方の日本はUberの上陸に極めて慎重に対応しました。現在は、日本独自のタクシーアプリ『GO』や『S.RIDE』などが、既存のタクシー会社をまとめる形でのサービスを展開しています。日本はこうやってレガシーを殺すより、活かしてきたのです。皆さんはこれからJammin’に越境するわけですが、その際、自分や自社の強みを活かすことをぜひ考えてみてください。そこに日本的な新価値創造の起こし方があるのではないでしょうか」
さらに、高津氏は日本文化への越境の大切さを説いた。「IMDには、世界中の経営幹部が共に学ぶExecutive MBAというコースがあります。そのカリキュラムの1つとして、世界各地を訪ねて学ぶ機会が設けられています。2023年と24年、日本にきた彼らに対して私は、企業訪問に加え、禅、生け花、合気道、日本酒などを体験する機会をプロデュースしました。彼らはこの経験を通じて、日本文化が言語知よりも身体知を優先すること、1回の取引よりも長期的な関係性を重視すること、自然・社会との共生を大事にすること、匠や道といった熟達に関するアプローチを持つことなどを体感しました。そして、こうした文化が、日本企業の思想・行動と密接に関係していることを理解したのです。日本に住む私たちも、時に自らの文化に立ち返ることが大切です。私自身も近年、生け花体験を通じた自己変革の旅に取り組みました。皆さんもこうした体験をしてみてはいかがでしょうか」
そのうえで高津氏は、JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)について、参加者たちに問いかけた。「いま日本が抱えている課題と機会は何でしょうか? 日本発祥の企業であることに意味があるとすれば、それは何でしょうか? 日本企業には、終身雇用・年功序列・企業内組合の三種の神器を超えた、もっと豊かで奥深い伝統や智慧はないのでしょうか? 『カンパニー』の語源は『仲間』ですが、この『仲間』の範囲をもっと広く捉えることはできないでしょうか? Jammin’のなかで、こうしたことを考えてみることもお薦めします」
こうした問いかけに、参加したリーダーからは「日本のランキングの低さにフォーカスした議論が多かったですが、そこがポイントではないことが明確になったのは霧が晴れるような感覚。日本の強みを自分なりに持ったうえで、未来をつくっていくという壮大でワクワクする内容となりそうで、今後のセッションも楽しみ」「イノベーションと聞くと、常にドラスティックな変化を要求する欧米的慣習を単一的な最適解と捉える社会的な傾向が強いと個人的に考えていた。また、それを達成できない環境に辟易することもあった。しかし、むしろ自分たちの強み・親和性を理解し、変化を起こすことが実現可能な越境なのだと感じた」といった前向きな感想が寄せられた。
早くもお互いの共通点を探り、チームテーマを見つけ出そうとするチームもあった
昼食後は、「自分にとってのJammin’を考える」時間だ。まず個人ワークとして、自分はJammin’をどういう機会にしたいのか、そのためにどんなことを意識して行動するのかを考え、事前課題「自分にとってのJammin’を考える」を加筆・修正した。次に「チーム内共有」へと進んだ。チームメンバー一人ひとりが「自分にとってのJammin’」を語り合い、自己紹介を行った。
全員参加の振り返りでは、多くの手が挙がった。「チーム内にいろんな人がいて、良い刺激を受けられそうだと感じました」など、早くも手ごたえを感じている参加者が多数見られた。実際、Jammin’には本業で新規事業開発に関わっている人もいれば、専門職として同じ業務を続けてきた人も参加している。参加動機も多種多様で、いまの自分に何ができるのかを見つめ直したい人もいれば、他企業の人たちとの関わりに興味を持って飛び込んだ人もいる。このような多様性が、Jammin’の可能性につながっている。
次に「事業検討ステップのレクチャー」を行った。新規事業案の要件、Jammin’ Awardなどの具体的な説明や、今後の指針となる「事業検討ハンドブック」の説明である。その後は、「社会課題の全体像共有」に入った。一人ひとりが事前に調べてきた「社会課題全体マップ」をチームで共有し合う時間だ。各チーム、ここから早速「不」に関する対話をスタートした。地方創生@中能登コースでは「目的が大事。七尾のため、という狭い範囲ではなく、もっと大きなインパクトを考えよう」「地方創生があるから復興できる、と考えたい。復興を入り口にしない」というやり取りから、早くもビジョンの共有が生まれていた。またエネルギーコースでは、他メンバーの調査に「その調査データの詳細を知りたいので出典を教えて」と働きかけるメンバーがいたり、「楽しいと思えるテーマにできると嬉しい」という意見が出たりするなど、仲間と共に学び合う第一歩を踏み出していた。
一日の最後は、「フィールドワークに向けて」の案内である。次回までの課題の紹介と、「『不』の構造化シート」をどのように活用すればよいか、フィールドワーク課題をどうやって進めればよいかの説明があった。その後はチームごとにどうやって進めるかを話し合った。
セッション1終了後には、アンケートに答えてもらった。「今回の学び・気づきのなかで、特に重要だと思うこと、今後活用したいと思うこと」という質問に対する、いくつかのコメントを紹介する。「高津さんが生け花を題材にして、脳内のイメージを形にする『作業』ではなく、目の前の素材を活かす『創造』が大切だ、という話をしてくれたのが印象的でした。Jammin’の時間、例えば新規事業案の検討などを作業にせず、創造にすることを意識したい」「リーダーには、悲観を超えて新しい希望をつくることが求められる。そのことを意識しながら働きたいと思った」「同じコース・チームに多様な知見があるのでそれをいかしきることが重要であると思いました」
こうして長い一日が終了したが、セッション1は最初の一歩に過ぎない。これから各チームとも、約6カ月間の長い道のりのなかで何度も話し合い、フィールドワークを一緒に進め、自分たちが解決したい「不」を見定めて新価値創造へ向かっていく。本連載はこれからJammin’2024をさまざまな角度から紹介していく。
▽並行して開催された第1回オーナーセッションの様子
※これまでのJammin’新価値創造セッションの様子についてはJammin’特設サイトでご紹介しています。併せてご覧ください。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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