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さあ、扉をひらこう。Jammin’2023 session report vol.1

Jammin’2023始動! 41社253名が早くも参加した意味を感じ始めている〈Jammin’2023リーダーセッション1〉

  • 公開日:2023/10/30
  • 更新日:2024/05/16
Jammin’2023始動! 41社253名が早くも参加した意味を感じ始めている〈Jammin’2023リーダーセッション1〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、5年目のJammin’2023がスタートした。 9月8日(金)にオンラインで開催された第1回リーダーセッションでは「41社253名」の次世代リーダーが一堂に会した。参加者たちは、これから約半年にわたって取り組む「事業案の立案」に向けて、基調講演やレクチャーを受け、チームビルディングを始めた。 またこの日、オーナー(リーダーを派遣する企業の人事担当者や上司)の皆さんも、次世代リーダーたちと共に基調講演に耳を傾け、オーナー同士の交流をスタートした。リーダーセッション・オーナーセッションの両方の様子をレポートする。  

Jammin’2023 開催概要
3つの「越境経験」と3つの「行動」を通じて知の創出に挑んでもらう
目を開こう。目に入るものを、深く理解しよう
私たちの世界と社会は「根本的な移行期」にある
越境を楽しみ、葛藤とモヤモヤを受け入れ、進化する自分を楽しんでほしい
ランチタイムにはオーナー同士の自己紹介と交流が行われた
チームメンバー全員が越境を楽しもうとしていた

Jammin’2023 開催概要

■ Jammin’とは?

VUCA時代に持続的に価値創出できる日本企業を増やすことを目指す、異業種参画型リーダー開発プラットフォーム。参画企業から派遣された若手リーダーが異業種同士のチームを組み、約半年間かけてさまざまな社会課題を解決する新規事業案の検討・立案に取り組む。

■ 2023年度 開催期間

2023年9月8日(金)~2024年2月16日(金)

■ 2023年度 参加者数

253名(41社)

■ 2023年度 参画企業(五十音順※公表企業のみ)

株式会社IHI/株式会社アイシン/味の素株式会社/伊藤忠商事株式会社/エーザイ株式会社/SMBC日興証券株式会社/エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社/花王株式会社/キリンホールディングス株式会社/株式会社埼玉りそな銀行/株式会社JERA/株式会社島津製作所/清水建設株式会社/第一生命保険株式会社/大成建設株式会社/大日本印刷株式会社/田辺三菱製薬株式会社/株式会社デンソー/東京海上日動火災保険株式会社/トヨタ自動車株式会社/株式会社トレードワルツ/株式会社ニコン/西日本電信電話株式会社/日産自動車株式会社/株式会社日本政策金融公庫/野村證券株式会社/株式会社阪急阪神ビジネスアソシエイト/株式会社日立アカデミー/富士通ネットワークソリューションズ株式会社/本田技研工業株式会社/株式会社本田技術研究所/株式会社みずほフィナンシャルグループ/三井不動産株式会社/三菱ケミカル株式会社/三菱重工業株式会社/三菱商事株式会社/株式会社リコー/株式会社りそな銀行/株式会社レゾナック・ホールディングス

■ 取り組みの全体像

リーダー向けの「新価値創造セッション」(全15コース)と、オーナー(リーダーを派遣する企業の人事担当者や上司)向けの「オーナーセッション」で構成。「アワード」で新規事業案のグランプリを決する。

▽ Jammin’2023全体像

▽ Jammin’2023全体像

■多彩なコースと専門家

新価値創造セッションは、前回同様の全15コースを開講。それぞれが異なる社会課題をテーマにしている。各コースに参加するリーダーたちは、異業種同士でチームを組み、そのコースのテーマとなっている社会課題を解決する新規事業案を考える。各コースには、そのテーマの専門家が伴走し、事業案への助言やフィードバックを行っていく。

▽ 15のコースと専門家

15のコースと専門家

3つの「越境経験」と3つの「行動」を通じて知の創出に挑んでもらう

Jammin’2023も、昨年同様にオンラインで始まった。進行役は、トレーナーの吉田達、毛利威之と企画責任者の井上功だ(いずれもリクルートマネジメントソリューションズ)。

新価値創造セッションの目的は、253名の参加者一人ひとりが、自己と組織を継続的に変革できる「共創リーダー」として成長していく支援だ。新価値創造セッションのゴールは3つある。参加者の皆さんは、今この瞬間、ゴールに向けて走り始めた。

< 新価値創造セッションのゴール >

● 世の中の「不」を基点に新価値を生み出すプロセスを学び、自社で実践できるようになること
● 多様な価値観を持つ人々の知恵やエネルギーを結集し、新しい価値を創造するための力を、経験を通して獲得すること
● リーダーとしての今後のありたい姿を描き、動き出すこと

※「新価値創造セッションの特長」と「これからの時代に求められるリーダー」の詳しい説明については一昨年の開催レポートを参照

Jammin’では、「異業種」「社会課題」「新規事業案」という日常業務から離れた3つの越境経験のなかで、「ひきつける」「いかしきる」「やってみる」というリーダーに求められる3つの行動を通じて、新たな知の創出に挑んでもらう。

▽ Jammin’で挑戦する3×3

Jammin’で挑戦する3×3

目を開こう。目に入るものを、深く理解しよう

Jammin’の全体像と新価値創造セッションの説明の後は、「基調講演」の時間だ。今回も昨年のJammin’2022に続き、高津尚志氏(IMD北東アジア代表)をゲストに迎えた。高津氏は記念すべき初回Jammin’2019の基調講演ゲストでもあり、Jammin’2021・2022ではJammin’アワード審査員も務めてもらった。昨年の基調講演も刺激的だったが、今年はさらに先を行っていた。タイトルは「激変する世界での越境するリーダーシップ」である。

高津氏は、ザ・ビートルズの名曲「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の歌詞の一節から始めた。「Living is easy, with eyes closed, misunderstanding all you see.(生きるのは、たやすい。目を閉じていれば。目に入るものすべてを誤解すれば)」。この歌詞のように生きてはいけない。目を開こう。目に入るものを、深く理解しよう。高津氏は最初に、253名のリーダーと、オーナーにそう呼びかけた。

「目に入るものを、深く理解しましょう。例えば、IMD世界競争力ランキングを見ると、日本の競争力が長期低落していることが分かります。特にビジネス面の下落が顕著です(図表1)。このランキングには、日本経済のインサイダーの自己評価が含まれています。つまり、日本の経済人は著しい自信喪失に陥っているのです。また、日本の経済人は社会的責任感が強く(2022年の世界ランキング4位)、人材が大事だと考えています(同4位)が、それにもかかわらず、企業の俊敏性やデジタルトランスフォーメーションなどの評価は最低レベルの63位です(図表2)。日本経済界は自信を失っているだけでなく、大事にしているはずの人材をビジネスに生かせておらず、社会的責任を果たせていません。知行不一致の状態にあるわけです」(高津氏)

<図表1>IMD世界競争力ランキング1997-2023

<図表1>IMD世界競争力ランキング1997-2023

<図表2>IMD世界競争力ランキング2014と2022の比較

<図表2>IMD世界競争力ランキング2014と2022の比較

私たちの世界と社会は「根本的な移行期」にある

以上を踏まえて、高津氏は、自分たち自身の俊敏性、起業家精神、行動力を問い直そう。越境を通じ、立て直そうと呼びかけた。

「私自身、越境を加速させてきました。2022年前半から、国内での越境を本格化し、2022年6月からは世界的な越境を再開しました。この1年ちょっとでスイスに3回、シンガポールに3回、オーストラリアに2回、タイに2回、インドネシアと韓国にも行きました。そのうちの3回は、IMDの経営幹部教育の旗艦プログラム『Orchestrating Winning Performance(OWP)』に参加しました。同時に、東京に外国人を何度も迎えました」(高津氏)

その結果、高津氏は、私たちの世界と社会が「根本的な移行期」にあることが分かったという。これまでの世界・社会・ビジネスのあり方や成り立ちが、根本から覆ろうとしているのだ。移行期には痛みも苦しみも伴うが、変化に目を開こう。高津氏はそう訴えた。移行期のポイントは、「グローバル化の変質」「生成AIの台頭」「持続可能性の危機」の3つである。

「グローバリゼーションが断片化し、終焉を迎えようとしています。保護主義や地域化が進み、モノのグローバル化は終わりつつあります。一方で、『テレイミグラント(遠隔移民)』が増えています。テレイミグラントとは、インターネットのバーチャル環境を利用して、遠隔地の仕事を請け負う人々を指します。テレイミグラントが増えれば、インドのような優秀人材の多い新興国に仕事が集中するでしょう。この傾向が続けば、世界の報酬格差は長期的に収斂します。そうなれば、私たちはいよいよ『ゼロサム経済』に突入するでしょう。世界全体では成長しない経済環境になるのです」(高津氏)

生成AIの台頭や持続可能性の危機も注視すべきだ、と高津氏は語る。「前回のOWPでは、AIに関するセッションが多数提供されました。今後、私たちが生成AIについて考えるべきことは山ほどあります。ただその前に、AIに親しむことも大切でしょう。持続可能性に関していえば、ヨーロッパの危機感は極めて高いです。地球沸騰化といわれるほど暑い夏を迎えているからです。彼らは壊滅的な環境破壊を危惧しており、持続可能性と成長の両立をどうしたら実現できるのかを真剣に話し合っています。前回のOWPでは、はじめて『脱成長』が議論され、私は衝撃を受けました。世界は今、持続可能性をそれほど強く危惧しているのです」(高津氏)

▽ リーダー・オーナーにエールを送る高津氏

リーダー・オーナーにエールを送る高津氏

越境を楽しみ、葛藤とモヤモヤを受け入れ、進化する自分を楽しんでほしい

脱成長とは、エネルギーや資源の使用を計画的に削減することで、不平等を減らし、人間の幸福を向上させる方法で、経済と生物界のバランスを取り戻すことを目的とする行為だ。ジェイソン・ヒッケルは『資本主義の次に来る世界』(東洋経済新報社)のなかで、高所得国の資源の大量消費を持続可能な水準に引き下げる必要があると述べている。

「実は、その脱成長をはからずも実現したのが、ほかならぬ日本でした。日本はこの30年もの間、1人当たりGDPは変わらず、物価は上がらず、収入も支出も低下してきたのです。だからといって、日本のウェルビーイングが低下したわけではありません。むしろ、2001年を境にウェルビーイングの水準は上昇しています。このことは、脱成長しても幸福を維持できる可能性を示唆するものです」(高津氏)

その背景には、幸福の概念が「自分の繁栄」から「他者に優しく調和して」にシフトしたことがある。他者の善意や利他性への信頼が高まり、コミュニティ志向になっているのだ。価値観次第では、経済が成長しなくても幸せになれるのである。「私たちは例えば、スローフード文化のようなものを大切にすべきです。隠岐諸島の海士町のように、コミュニティが生きているまちを参考にすべきです。生け花をするような時間を大事にすべきです。今や、世界のリーダーたちが日本の禅や生け花や合気道を学んでいます。日本の方法は、今を生きる私たちに代替的な道筋を提供しうるもの、意義を持ちうるものなのです。私たちも、観察・没入・対話・作業が醸すビジョンを慈しみましょう」(高津氏)

最後に、高津氏はこう呼びかけた。「社会課題・異業種協働・新価値創造への越境の場として、Jammin’を最大限に活用してください。越境を楽しみ、葛藤とモヤモヤを受け入れ、進化する自分を楽しんでください。また、オーナーの皆さんも越境し、受講者を支援することで自分を変えていってください。自らの姿勢・価値観・経営慣行の見直しの機会としてみてください。皆さんの活躍を楽しみにしています」

この高津氏の基調講演の間、チャットには感想や質問が飛び交った。例えば、こんな感想が寄せられた。「経済が成長しないこと=悪というイメージが強かったですが、脱成長の観点は目から鱗です」「仕事をしていると仮説検証に前のめりになって硬直しがちですが、一歩引いて、また歩き出すことが重要なのかなと思いました」。リーダーたちは早くも刺激を得て、思考を巡らし、意見を交わし合った。

ランチタイムにはオーナー同士の自己紹介と交流が行われた

基調講演の後は、昼食の時間だ。Jammin’では、その間に並行して「オーナーセッションキックオフ」を開講した。オーナーセッションとは、Jammin’参画企業の人材開発責任者・担当者(オーナー)向けのプログラムである。Jammin’の活動に賛同するオーナーたちも自ら学びながら、リーダーの成長を一緒になって応援していくのだ。

▽並行して開催されたオーナーセッションキックオフでの交流の様子

並行して開催されたオーナーセッションキックオフでの交流の様子

オーナーセッションキックオフは、オーナー同士の自己紹介と交流の場だ。ブレイクアウトルームでは、「今の高津さんの基調講演に共感できる社員を増やしたい」「Jammin’経験者が経験談を話す社内オンライン集会を開き、社員のJammin’参加を促している」「Jammin’終了後、職場に戻った社員を孤立させないことがポイントだ」「Jammin’参加者が劇的に変わるというのは期待しすぎではないか。長期視点で成長につながることが大事だと思う」など、各オーナーが自分の想いや工夫などを共有し合っていた。

チームメンバー全員が越境を楽しもうとしていた

昼食後は、「自分にとってのJammin’を考える」時間だ。まず個人ワークとして、自分はJammin’をどういう機会にしたいのか、そのためにどんなことを意識して行動するのかを考え、事前課題「自分にとってのJammin’を考える」を加筆・修正した。次に「チーム内共有」へと進んだ。チームメンバー一人ひとりが「自分にとってのJammin’」を語り合い、自己紹介を行った。

全員参加の振り返りでは、多くの手が挙がった。「それぞれ考え方が異なるメンバーが集まっていて、この短時間でも気づきを得られました。すでに参加した意味を感じています」「チームメンバー全員が越境を楽しもうとしていて、ワクワクしました」など、早くも手ごたえを感じている参加者が多数見られた。

次に「事業検討ステップのレクチャー」を行った。新規事業案の要件、アワードなどの具体的な説明や、今後の指針となる「事業検討ハンドブック」の説明である。その後は、「社会課題の全体像共有」に入った。一人ひとりが事前に調べてきた「社会課題全体マップ」をチームで共有し合う時間だ。各チーム、早速「不」に関する対話をスタートした。

終了後の振り返りでは、「チーム全員が、各自の意志や興味をもとにコースを選んだことがよく分かりました」「話が盛り上がって、時間が足りませんでした」といった声が上がった。各チームとも、初日から熱のこもった意見の交わし合いを行ったようだ。なお、グローバルチームは初日から、資料も対話もすべて英語を使っている。

一日の最後は、「フィールドワークに向けて」の案内である。次回までの課題の紹介と、「不の構造化シート」をどのように活用すればよいか、フィールドワーク課題をどうやって進めればよいかの説明があった。その後はチームごとにどうやって進めるかを話し合った。

セッション1終了後には、アンケートに答えてもらった。「今回の学び・気づきのなかで、特に重要だと思うこと、今後活用したいと思うこと」という質問に対する、いくつかのコメントを紹介する。「一番の気づき・驚きは、研修参加メンバーの熱量、積極性です。一人ひとりの熱量が他者の行動に刺激・影響を与えることを、身をもって経験しました。私も積極的でポジティブな言動を通じて、誰かの心に火をつけられたらと思いました」「普段の業務と離れたビジネス分野をフラットに捉え直すことで、自業務の分野もあらためて広い視点で見ることができる。たった1日の研修だけで、そう感じることができた」「考え込んでしまう前に、まずは今の手札を使って、最大限の一歩を。チームメンバーと共に、勇気を持って踏み出していきたい」

こうして長い一日が終了したが、セッション1は最初の一歩に過ぎない。これから各チームとも、約6カ月間の長い道のりのなかで何度も話し合い、フィールドワークを一緒に進め、自分たちが解決したい「不」を見定めて新価値創造へ向かっていく。本連載はこれからJammin’2023をさまざまな角度から紹介していく。

※これまでのJammin’新価値創造セッションの様子についてはJammin’特設サイトでご紹介しています。併せてご覧ください。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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