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THEME マネジメント/リーダーシップ

連載・コラム360度評価導入のポイントと効果的な活用方法

360度評価を活用したマネジャーの人材開発、昇進・昇格、異動・配置

360度評価を活用したマネジャーの人材開発、昇進・昇格、異動・配置

360度評価を導入する企業が増えている。この記事では、360度評価の導入が増えている背景、導入目的、商品選びのポイント、具体的な実施事例、実施時にぶつかる壁と対応策などを紹介する。360度評価に関する基本的な情報と活用方法を押さえることができる内容としたい。

360度評価の導入目的は「能力開発」「昇進・昇格」「異動・配置」

360度評価を導入する日本企業は、2007年は5.2%、2018年には11.8%だった(『労政時報』第3956号/18.8.10/8.24より)。2020年に弊社で実施した調査によると、31.4%となり(図表1)、今後、さらに増えていくことが予想される。



<図表1>360度評価の実施状況


<図表1>360度評価の実施状況



日本企業が360度評価を導入する主な理由は、「能力開発」「昇進・昇格」「異動・配置」の3つだ(図表2)。


<図表2>360度評価の実施目的を検討する際の視界


<図表2>360度評価の実施目的を検討する際の視界




360度評価を導入したきっかけとして最も多いのは、「他社と比較したときの自社の人材のレベルが分からないから」と「現在の評価(上司評価など)があてにならないと感じたから」であり、能力開発に向けて世のなか水準と比較した際の自社人材の課題の把握や、上司以外の同僚や部下からのフィードバックを行いたい、というニーズが窺える(図表3)。また、360度評価の主な活用方法は、「人事評価に反映させている」「昇進・昇格の判断基準として活用している」「昇進・昇格候補者を選定する基準として活用している」であり、能力開発だけでなく昇進・昇格や異動・配置といった人事・処遇施策への活用も進んでいる(図表4)。


<図表3>360度評価を導入したきっかけ


<図表3>3360度評価を導入したきっかけ




<図表4>360度評価の活用方法


<図表4>360度評価の活用方法



導入・活用のカギは「測定内容」「品質」「施策設計力・支援力」

360度評価のアセスメントツールを導入する際には、「測定内容」「品質」「施策設計力・支援力」という3つのポイントを押さえることが有効だ。

「測定内容」は、企業がアセスメントツールの導入にあたって迷うことの代表例だ。実際、実施準備時に最も多くの企業が悩んでいるのは「評価項目の選定」である(図表5)。検討しているアセスメントツールは、測りたいものを測れる内容なのか。対象層と評価項目のレベルはフィットしているのか。分析・検証したい結果が得られるのか。結果を見たときに対象者は納得するのか。こうした観点で測定内容を検討することが大切だ。


<図表5>360 度評価の導入にあたって困ったこと(実施準備時)


<図表5>360 度評価の導入にあたって困ったこと(実施準備時)


また、アセスメントツールの「品質」も重要である。例えば、複数の評価項目で同じようなことを聞いていないか、回答者が回答しにくい記述になっていないか、という評価項目に関する「品質」を確認すると良い。また、測定手法によっては回答結果が高ぶれしてしまい、人によって得点に差がつかない、という場合もあるため、測定手法に関する「品質」も要注意だ。

こうした評価項目や測定手法、そして結果が十分に検証され信頼できる内容であるかどうかなどの複数の観点からアセスメントツールの「品質」を見極めることが欠かせない。

それから、施策設計力・支援力も重要だ。360度評価の結果報告時に苦労していることは「結果の読み取り方が難しい」ということ(図表6)。対象者への返却時には、「犯人探し(低い回答をした評価者を特定すること)への懸念」や「結果が著しく低い対象者への対応」に困る企業が多い(図表6)。企業の目的や状況に合わせて、全体施策を設計する力があるのか。施策実行をサポートする力があるのか。アセスメントツール選定の際には、こうした点も踏まえる必要がある。



<図表6>360 度評価の導入にあたって困ったこと(結果報告時・対象者への返却時)


<図表6>360 度評価の導入にあたって困ったこと(結果報告時・対象者への返却時)

360 度評価の導入にあたって困ったこと(結果報告時・対象者への返却時)

事例A 導入・活用のカギの施策事例

では、弊社が実施してきた360度評価の施策事例を紹介していく。1つ目は「能力開発」の施策事例だ。A社では、激しい環境変化と社員の多様化にともない、ダイバーシティマネジメントを実現していくことが求められていた。そこで、マネジャーの能力開発のために360 度評価を実施することを決めた(図表7)。

この施策では、対象マネジャーには、360度評価の結果の読み取り方を学ぶ「フィードバックセッション」を行った後、上司と面談して職場行動計画を立案してもらう流れを取った。フィードバックセッションでは、グループワークを行い、対象マネジャーが評価結果の読み取り方や今後に向けた職場行動計画について相互にアドバイスし合った。これらにより、前向きに今後の能力開発に取り組む土台をつくることができた。

一方で、人事には、360度評価のデータを活用して、世のなかと比較した自社の特徴の分析結果を提供した。その分析を受けて、自社に適した階層別研修をともに検討していく流れを取った。分析の結果、A社は業界他社と比較して、得点の低い能力要素があることが判明した。これらの能力については、広い視点で環境変化を捉えることや、組織としての意思決定が不十分であるという、自社のマネジメント層における課題感とも合致していた。そのため、これらの能力を高められる階層別研修が必要だという結論につながった。

この事例のポイントは以下のとおりだ。

(1)測定内容:世のなか一般水準と比較できる測定内容であること

(2)品質:確からしい評価軸であること、測定の信頼性が担保されていること

(3)施策設計力・支援力:対象者と人事に切り分けて、双方から能力開発を支援できること



<図表7>能力開発の施策事例


<図表7>能力開発の施策事例

事例B 昇進・昇格の施策事例

2つ目は「昇進・昇格」の事例だ。B社は、従業員のエンゲージメント低下を問題視していた。エンゲージメントを改善するカギとなるのは、マネジメント層である。そこで、より良い人材をマネジャーに登用するために、360度評価を活用し、マネジメント層の優秀人材の活躍要件を明らかにすることになった(図表8)。

具体的には、最初に業績評価やエンゲージメントサーベイの結果など複数の観点から、優秀なマネジャーをピックアップしてその能力傾向を分析した。優秀なマネジャーの傾向として特徴的だったのは、環境変化を捉えて将来を見通す力の高さだった。今後のマネジャーの昇進・昇格時にはそれに関連する能力要素の得点を参考材料にするとよさそうだ、という結論にたどりついた。

この事例のポイントは以下のとおりだ。

(1)測定内容:マネジャーに求められる要件を多角的に測定できる内容であること

(2)品質:回答結果にきちんと差がつく測定手法を取っていること

(3)施策設計力・支援力:目的に照らし合わせて、事前準備から分析までの全体設計ができること



<図表8>昇進・昇格の施策事例


<図表8>昇進・昇格の施策事例

事例C 異動・配置の事例

3つ目は、「異動・配置」の施策事例だ。C社は、上司からの人事評価だけでなく、周囲の評価も踏まえたうえで一人ひとりが活躍できるような異動配置につなげるため、360度評価を実施することを決めた(図表9)。

具体的には、360度評価を実施したうえで、自己評価と他者評価の散布図を作成して、フォロー対象者を明らかにした。C社では、特に「自己評価は高いが他者評価は低いタイプ」と「自己評価も他者評価も低いタイプ」に絞り込んだ。次に、フォロー対象者への個別面談と現場情報収集をして、フォロー対象者の組織内でいったい何が起きているのかを調べた。そのうえで、必要に応じて配置換えなどを行った。

この事例のポイントは以下のとおりだ。

(1)測定内容:上司からメンバーまで回答しやすい回答項目であること

(2)品質:一定の基準と照らして、対象者のタイプが分かる結果算出方法であること

(3)施策設計力・支援力:参考データとして見るべき指標を明確化できること



<図表9>異動・配置の施策事例


<図表9>異動・配置の施策事例

事例D 求める要件に沿った能力開発と異動・配置の事例

4つ目に、「求める要件に沿った能力開発と異動・配置」の施策事例を紹介する(図表10)。D社は、ビジネス環境が激しく変化するなかで、変化にスピーディーに適応し、新しい価値を生み出すようなマネジメントが行える組織に変えていきたいと考えていた。しかし、そうしたマネジメントに対応できる人材が少なかった。そこで360度評価を活用し、変化の時代に即したマネジメントスキルの開発を促すと共に、今後求めたいマネジメントのあり方に適した人材の異動・配置を行いたい、と考えていたのだ(図表10)。

この事例では、今後求めたいマネジメント像をもとに360度評価の項目を設計し、対象者となるマネジャーに受けてもらった。そのうえで、対象者とその上司にフィードバックセッションを実施して、今後求めたいマネジメント像をインプットした。また、360度評価データを分析して、このようなマネジメントに適性のある人材を見つけ、異動・配置の検討の際に参考にした。



<図表10>求める要件に沿った能力開発と異動・配置の施策事例


<図表10>求める要件に沿った能力開発と登用・配置の施策事例


5つ目に、富士通様の具体的な取り組みを紹介する。以下のページに詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。

マネジメント変革を促進する統計分析の活用「Fujitsu Management Discovery」

360度評価の実施時にぶつかる壁と対応策

最後に、「360度評価の実施時にぶつかる壁と対応策」について触れる。ここでは、よく行われる対応策を4つ紹介する。実施準備時の「目的の周知」と「トライアル導入」、回答時の「適切な回答者・回答人数の設定」、結果返却時の「結果返却方法の工夫」である。

「目的の周知」でポイントとなるのは、対象者だけでなく、回答者にも施策目的の理解を深めてもらうことだ。そのためには、例えば図表11のように、回答者に対して施策の目的や自身が回答者になった理由、回答特定がないことなどを伝えておくと、率直な回答を引き出しやすい。



<図表11>回答者に向けた案内文例


<図表11>回答者に向けた案内文例


回答負荷などから現場の反発があった場合には、「トライアル導入」も1つの方法だ。ポイントとなるのは、トライアルの効果を定量的に測定する機会を設けることだ。具体的には、トライアル後に「実施後アンケート」を行い、360度評価の有用感を確認したり、運用課題をヒアリングしたりするのだ(図表12)。なお、トライアル導入は上層部を対象にすると、上層部の施策への理解が深まることが多く効果的だ。



<図表12>トライアル導入


<図表12>トライアル導入


実施に向けて準備をする際には、必ず「適切な回答者・回答人数の設定」を考えるタイミングが出てくる。そのときは、図表13を目安にしてもらうとよいだろう。360度評価を実施する際には回答者は6−8名以上が望ましい。ただ、これらは目安であり、「対象者との接点が多く、日常の職務行動を身近で見ている方」を回答者として設定することを推奨する。本人・上司間で回答者を検討することも有効だ。



<図表13>回答者人数の目安


<図表13>回答者人数の目安


結果返却時には、「結果返却方法の工夫」をした方がよい。主に3つの方法がある。最もシンプルなのが「上司からの返却」だ。上司からの返却が難しい場合やうまくいかない場合には、外部が実施する「フィードバックセッション」を活用するとよい。手順をもとに読み取ることで、正しい結果の理解につながることが利点だ。参加者同士がお互いの結果について客観的な意見を述べることで気づきを得る効果もある。もう1つ、能力要素を高めるための「推奨研修の提示」も有効な手段だ。結果が低い場合の推奨研修などを一覧化して結果と共に渡すことで、Off-JT機会を用いて対象者の自律的な能力開発につながりやすくするのだ。簡単なことだが、事後施策まで用意されていると、対象者は有用感を得やすい。

以上が、360度評価導入のポイントと効果的な活用方法だ。なお弊社では、360度評価システムサービスとして、階層別の「MOA-E(経営職層向け)」「MOA-M(管理職層向け)」「MOA-S(中堅社員層向け)」、経営人材に求められるリーダーシップを評価する「PRO-MOA」、自社のバリュー行動やコンピテンシーなどに合わせてカスタマイズする「MOA-オリジナル版」を用意している。

360度評価を活用したマネジャーの人材開発、昇進・昇格、異動・配置
360度評価の導入目的は「能力開発」「昇進・昇格」「異動・配置」
導入・活用のカギは「測定内容」「品質」「施策設計力・支援力」
事例A 導入・活用のカギの施策事例
事例B 昇進・昇格の施策事例
事例C 異動・配置の事例
事例D 求める要件に沿った能力開発と異動・配置の事例
360度評価の実施時にぶつかる壁と対応策
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