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導入事例

マネジメント変革を促進する統計分析の活用「Fujitsu Management Discovery」

富士通株式会社

マネジメント変革を促進する統計分析の活用「Fujitsu Management Discovery」
  • 公開日:2020/09/28
  • 更新日:2024/04/13

事例概要

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背景・課題

優れたマネジャー像について、統計分析による科学的根拠があれば、現場マネジャーに事実に基づいて分かりやすく示すことができ、マネジャーが自ら変わるための目標を作れるのではないかと考え、2019年度、エンジニアを中心とするマネジメントの「新しい事実」を科学的に発見するプロジェクト「Fujitsu Management Discovery」を実行。その最終目標は、富士通グループの全マネジャーが優れたマネジャーになって組織を牽引していくことです。

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検討プロセス・実行施策

統計分析の進め方は、リクルートマネジメントソリューションズの人事統計分析スペシャリストから多くのアドバイスをいただいたおかげで、社内にはない視点からも分析することができました。また、統計分析の結果を現場のマネジャーが理解しやすい言葉にする「言語化」や、実際にマネジャーが変わるための「ワークショップ」についても継続してサポートしていただきました。

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成果・今後の取り組み

統計分析と「5つのFACT」は、特にシステムエンジニアやハード開発部門の理系出身のマネジャーにとって共感しやすく、「優れたマネジャーの要素が具体的に分かった」という声が多く聞かれました。説得力があり伝わりやすい情報を提供することは、十分に成功したと捉えています。今後は、ワークショップを富士通グループ全体に展開したり、事例データを整理・蓄積したりすることを通じて、より精緻な「言語化」を進めていきます。

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背景・課題

最も説得力の高い「科学的なエビデンス」を用意したかった

最も説得力の高い「科学的なエビデンス」を用意したかった

「Fujitsu Management Discovery」のそもそものきっかけは、2017年度から取り組み始めた働き方改革です。働き方改革で生産性を向上させるためには、社員の自律性を高める必要がありました。プロジェクトを進めていくなかで、自律性を高める鍵となるのは「上司のマネジメント」だ、ということが分かってきました。そこで2018年度より、上司のマネジメント状況を知るために、一般社員が自身の上司のマネジメントについて答える「職場マネジメントアンケート」を開始しました。

そのアンケート結果は、マネジャーの気づきと育成を期し、コメントも含めてマネジャー本人とその上司にフィードバックしました。マネジャーたちからは「行動の振り返りができてよかった」という好評価を多くもらったのですが、一方で「自身の課題は分かったが、具体的にどう変わればよいのか。優れたマネジメントの手法が知りたい」という声もたくさん上がってきました。

実は、その時点で私たち人事部は「優れたマネジメントの手法」についてすでに考えていることがありました。部下にタスクを細かく指示し、管理する「上意下達型」ではなく、仕事を任せることで自ら考えさせ、力を引き出して育てる「コーチング型」のマネジメントが、自律性の高い部下を増やすのです。部下の個性をよく把握し、チームメンバーの考え・意見・気持ちを上手に引き出して、必要に応じて部下の背中を押せるようなマネジャーを増やしたい。それが私たちの想いでした。

問題は、私たちの考えをマネジャーにどう伝えるか、ということでした。というのは、通常のマネジメント研修を行ったり、人事の考えをそのまま伝えたりするだけでは、マネジメント・スタイルは簡単には変わらないと考えていたからです。私たちの最終目標は、「富士通グループの全マネジャーが部下の自律性を引き出すコーチング型のマネジメントを行う」こと。そのためにどうしたらよいのか、知恵を絞りました。

さまざまな他社事例を調べ、考え抜いて、たどり着いた結論は、「重要なのは現場に対する説得力だ」ということでした。マネジャーに自ら変わろうと思ってもらうためには、説得力の高い情報を用意する必要があるのです。そして、他社事例を見る限り、最も説得力が高いのは「科学的なエビデンス」を示すことでした。統計分析に基づいた科学的なエビデンスがあれば、優れたマネジャー像を、説得力をもって示すことができ、マネジャーが自ら変わるための目標を作れるのではないか。私たちはそう考えたのです。

そうして2019年度に取り組んだのが、「Fujitsu Management Discovery」でした。テクノロジーソリューション部門の約400名のマネジャーと、約2000名の社員のアンケートを分析し、すでに優れた結果を出しているマネジャーと、もっと努力してほしいマネジャーの差を明らかにして、富士通のマネジメントの「新しい事実」を科学的に発見するプロジェクトです。

検討プロセス・実行施策

人事統計分析の専門家の研究知見が必要だった

Fujitsu Management Discoveryを私たちだけでは立ち上げられないことは、初めから明らかでした。なぜなら、必要なのは説得力だからです。人事部だけで統計分析を行った場合、その分析がいくら正しかったとしても、マネジャーたちから客観的な信頼性には欠けると思われる可能性があります。私たちが最も必要としていたのは、社員たちが信頼するに足る「人事統計分析の専門家」の研究知見や経験・ノウハウでした。そこで、私たちが知る限り、それらを総合的に最も高いレベルで備えていたリクルートマネジメントソリューションズに依頼しました。

社外に出しても通用する客観的で伝わりやすい分析に

Fujitsu Management Discoveryの統計分析そのものは当社が行いましたが、統計分析の進め方については、リクルートマネジメントソリューションズの人事統計分析スペシャリストに全面的にアドバイスをもらいました。例えば今回は、約400名のマネジャーと約2000名の社員にあらためてアンケートを取ったのですが、そのアンケートの構造と質問項目は、リクルートマネジメントソリューションズの研究成果(「成果と部下の育成を両立しているマネジャーの行動」モデル※)を活用しました(図表1)。また、分析時に注意すべきこと、セグメント別分析の進め方なども細かく教えていただきました。

※2015年リクルートマネジメントソリューションズ実施 「マネジメント行動の多様性研究」調査より

図表1Fujitsu Management Discoveryのアンケート構造

分析時は試行錯誤の連続だったのですが、いつも粘り強く対応していただいたおかげで、社外に出しても通用する、客観的で伝わりやすい分析結果を出すことができました。以下に示すのが、そのタイプ分類です(図表2)。

図表2Fujitsu Management Discoveryのマネージャー層のタイプ分類

分析の過程では、「優れたマネジャーはコーチング型だ」という私たちの考えが間違っていたらどうしよう、という不安も感じていました。しかし、それは杞憂でした。分析結果は、おおむね私たちの考えたとおりでした。例えば、「優れたマネジャー」と「ストロング型」とでは、「チーム成果が長続きするかどうか」、という点で有意な差が出ました(「優れたマネジャー」は長続きし、「ストロング型」は長続きしない)。結果が分かったときは、私たちの考えが間違いではなかったことが証明されたと思い、嬉しく感じました。

マネジャー同士で考えるワークショップも実行

統計分析だけでなく、それをマネジャーたちに伝える場面でも、今度はインナーコミュニケーションのプロフェッショナルのサポートを受けました。統計分析結果を現場のマネジャーが受け取りやすい言葉に「言語化※」し、現場にダイレクトに伝える手段として、エンジニアを中心とした職場向けに、ポスターを制作しました。新たな事実として「5つのFACT」を紹介する内容です(図表3)。

※言語化
単に「言葉にする」ということではなく、発見されたFACTを「実践知」とするための探究という意味で使っています

図表3Fujitsu Management Discovery「5つのFACT」紹介ポスター

さらに、これらの「言語化」した情報を踏まえて、実際にマネジャー同士がどう変わっていけばよいのかを話し合う「ワークショップ」をスタートしました。ワークショップでは、まずマネジャーに自らのマネジメントについて大いに語ってもらいます。そのうえで、優れた点を参考にし合ったり、変えるべき点を指摘し合ったりしながら、各自がより優れたマネジャーになるにはどうしたらよいかを主体的に考えてもらっています。もちろん、その後で自分のチームで実践してもらうことも重視しています。

成果・今後の取り組み

エンジニアや理系社員にも好評価な取り組みとなった

エンジニアや理系社員にも好評価な取り組みとなった

統計分析と、そこから分かった5つのFACTは、総じて社員に好評です。社員の半分以上を占めるシステムエンジニアやハード開発部門の理系社員には特に好評で、「優れたマネジャーの要素が具体的に分かった」「納得感があった」「自分も優れたマネジャーになりたいと思った」という声をよく耳にします。また、統計学に詳しい社員も少なくないのですが、そういった社員からも不満の声を聞いたことがありません。質の高い分析を提供できた何よりの証拠だと自負しています。説得力のある情報を提供するという意味では、十分に成功したと捉えています。

また、今回の取り組みをきっかけに、データ分析を人事部門で推進するため、組織横断のプロジェクトWG(ワーキンググループ)を立ち上げました。自らの手挙げ方式でメンバーを募集していますが、人事部門の多くの若手社員が参画してくれ、うれしく思っています。今後、彼・彼女らが社内外の様々な場面でデータ分析を活用し、その開拓者となってくれることを期待しています。

全員が優れたマネジャーになること

ただ、この取り組みにおける私たち人事部の最終目標は、統計分析や5つのFACTを提供することではなく、あくまでも「富士通グループの全マネジャーが優れたマネジャーになること」です。優れたマネジャーが、社員の自律を促し、働き方を変えていきます。そして、最終的には、企業としての変化対応スピードが速まり競争優位性が強化される、というゴールを見据えています。そのためには、まず優秀なマネジャーの育成です。この取り組みにおいて重要なのは、「言語化」と「ワークショップ」であり、その2つに関しては今後さらに力を入れていきます。

ワークショップに関しては、すみやかに富士通グループ全体に展開していく予定です。ワークショップの完成度はすでに高いので、今後はこれを横展開する手法を考え、迅速に実行していきます。

また、アンケートやワークショップから集めた事例データを整理・蓄積し、より精緻な「言語化」を進めていきます。図表2の「空回り型」「ストロング型」「迎合型」は、それぞれ特徴が異なり、優れたマネジャーになるために必要な能力や、そのための実行施策も異なります。では、「優れたマネジャー」になるには、それぞれどのように変わっていけばよいのか。その道筋をできるだけ具体的に示そうとしているのです。そのほか、対人関係の傾向である「ソーシャル・スタイル」別の道筋も用意し始めています。最終的には、どのようなマネジャーでも「優れたマネジャー」を目指せるノウハウを網羅的に提供したい、と考えています。さらに、蓄積したデータから面白い分析結果が出てきたら、それを発表していくことも想定しています。

こうしたワークショップと「言語化」に関しても、引き続きリクルートマネジメントソリューションズに協力していただいています。今後も、パートナーとして一緒に歩んでいけたらと思っています。

取材日:2020/09/28

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企業紹介

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