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連載・コラム【特別座談会】SELF SHIFT ideas 〜学びは「自己」の時代へ〜

マインドフルネスとダイアローグはなぜ今、ビジネスパーソンに必要とされるのか

マインドフルネスとダイアローグはなぜ今、ビジネスパーソンに必要とされるのか

コロナ禍以降、人や物事との向き合い方が変化しています。そこで、「向き合う」ことを扱うプロフェッショナル・荻野淳也氏と中村一浩氏を迎え、オンライン対談を行いました。
荻野氏はマインドフルネス、中村氏はダイアローグのプロフェッショナルで、お二人ともリクルートマネジメントスクールで講師を務めています。リクルートマネジメントスクールのサービス開発プロデューサーである渡部数満も加わり、「マインドフルネスとダイアローグはなぜ今、ビジネスパーソンに必要とされるのか」について、お二人に伺いました。

対談メンバー
●荻野淳也氏(一般社団法人 マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事)
●中村一浩氏(株式会社Dialogue with 代表取締役)
●渡部数満(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部公開サービス開発リーダー)

マインドフルネスもダイアローグも「土を耕す」技術

渡部:私たちリクルートマネジメントスクールでは、今、一見するとビジネスとは距離のありそうなテーマを、積極的にコースラインナップとして取り入れています。マインドフルネスやダイアローグは、最近でこそビジネスに生かせるスキル、マインドセットとして認知されてきましたが、少し前までは、「なんでビジネス研修なのに、こんなことをするの?」というような空気もありました。そこでまず、私たちのサービスコンセプト「学びのテーマパーク」について、あらためて簡単にお話ししたいと思います(図表1)。

<図表1>学びのテーマパーク

<図表1>学びのテーマパーク

渡部:「学びのテーマパーク」について簡単に紹介すると、左下の「仕事×マネジメント」領域に、ビジネスの土台となるような既存の研修の多くが入ります。右下の「仕事×クリエイト」領域は、クリエイティブシンキングなど、答えの見えづらい不透明なVUCA時代に必要な学びを得るコースの集まりです。左上の「人生×マネジメント」領域は、ライフとワークがシームレスになっていくなかで必要とされる学びを扱い、右上の「人生×クリエイト」領域は、AI・テクノロジー時代に人生を自分で切り拓いていく際の指針となるリベラルアーツなどを学ぶ領域です。最後に、中央に全領域に共通する「コミュニケーション」領域を配置しました。各領域のコースをバランスよくラインナップすることにより、時代に求められ、かつワクワクするような学びを届けたい、そんな想いから事業プロデュース、商品企画を行っています。


荻野:なるほど。僕としては、マインドフルネスは全体の基盤を作る学び、というイメージです。

中村:まったく同じ感想です。僕や荻野さんは、学びのテーマパークの周囲に植えられた緑が生えている「土」を耕しているんですよ。

荻野:もう少し説明すると、マインドフルネスやダイアローグを学ぶと、個人の「あり方」が変わるので、マネジメントもクリエイトも仕事も遊びも人生も、すべてが変わります。マインドフルネスやダイアローグは、全体に影響を及ぼすのです。だから、全体の基盤を作る、土を耕すというイメージなんです。

渡部:面白いですね。「土を耕す」ってビジネスではなかなか出てこないワードですが、具体的にはどういうことですか?

荻野:僕たちはよく「氷山モデル」(図表2)を使って説明します。僕たちはこれまで、「目に見える部分」を中心にしてビジネスや社会生活を営んできました。学びのテーマパークで言えば、左下の「仕事×マネジメント」領域の研修が、目に見える部分に位置づけられます。こうした従来型のラーニングアプローチは、すでに完成しているのではないでしょうか。

<図表2>氷山モデル

図表2

「インサイド・アウト」になれば、内発的動機やワクワク感を高められる

渡部:マインドフルネスとダイアローグの技術について、もう少し詳しく教えてください。

荻野:マインドフルネスとは、ごく簡単に言えば、「今ここ」に注意を注いでいる状態であり、その状態を呼吸・瞑想などを通じてプラクティスしていきます。その際に大切なのは、自分の内側に立ち上がる評価や判断を保留して、ただあるがままを観察すること。習慣にしていくと、自分自身の思考、感情のパターンやその偏りやクセに気づいていきます。つまり、マインドフルネスを続けると、自分の認知パターンに気づけるようになるのです。自分が無意識でいかにいろんなことを思っているのか、どういう風に考える傾向があるのか、が見えてくる。氷山の「目に見えない部分」が理解できるようになってくるわけです。

中村:ダイアローグも基本的には同じです。ダイアローグとは、自分本来の思いや感情と相対しながら、自分・相手・物事を受け止め、受け入れていくプロセスです。自分が本当に思っていること、感じていることを相手に話すことが、ダイアローグの第一歩です。目に見えない部分に潜む本音を話さないと、相手に響く言葉にはなりません。本当に思っていることを分かち合わないと、お互いの違いは分からないんです。

荻野:自分の内側にある想いを起点にして考えたり、行動したりすることを「インサイド・アウト」といいます。対義語は、自分の外側にあるルール、常識などに従って考えたり、行動したりする「アウトサイド・イン」です。これまでの時代は、アウトサイド・インが強すぎて、自分の内側にあるものに気づかずに生きてきた人が多かったと思います。これからの時代は、一人ひとりがアウトサイド・インのみでなく、インサイド・アウトを発揮することが大切です。インサイド・アウトになれば、自らの内発的動機やワクワク感を追求して、高めていくことができます。最近、「パーパス」という言葉をよく耳にするようになりましたが、パーパスもインサイド・アウトで生み出すものです。

<図表3>アウトサイド・インとインサイド・アウト

図表3

「コロナ禍でアイデンティティの喪失の危機を迎えています」(渡部)

渡部:もしかしたら日本のビジネスパーソンは、内発的動機を仕事に生かそうと言われても、まだまだ苦手な人が多いかもしれません。どうしたら苦手意識を克服できるのでしょうか?

中村:身体に意識を向けることが大事ですね。例えば、今こうしてオンラインで対話していますが、本来、画面の向こうで静止しているのは不自然なことです。身体が揺れ動くのが自然で、静止している人は意識的に制御しているわけです。しかし、オンライン会議では多くの方が静止している。揺れ動いてみたらいいんです。それだけのことでも、自分の言葉づかいが変わってくるはずです。

渡部:身体性を制御してしまうと、アウトサイド・インになってしまい、外部のロジックや概念が優先されてしまう、ということですか?

中村:そのとおりです。

渡部:それは個人的に実感があります。最近、コロナ禍で完全テレワーク生活になりましたが、身ぶりや「何となく」が通じなくなりました。直感の活用も難しくなっている気もしています。おかげで論理化・言語化のスキルが上がり、仕事が効率的に進むようにはなりましたが、身体性や直感、ひらめきといったプリミティブな部分が欠けてきている気がしていて、自分としては危機感があります。

自分の話をもう少し続けると、仕事とは別に、音楽活動・創作活動にも力を入れているのですが、コロナ禍では自宅での作曲しかできなくて困っています。バンドメンバーと音をぶつけ合いながら、思わぬ化学反応によって自分が予期せぬ方向に曲が進化していくことを楽しんだり、ライブでのお客さんとの一期一会な場の共有感に包まれてシビれたりすることがなくなってしまいました。仕事でも音楽でも身体性を失ってしまったんですね。さらに、知らない街を歩いたり旅したりすることも難しくなって、予期せぬインプットがなくなり、知の源泉が枯渇していく恐怖感もあります。その意味で私は今、コロナ禍で、おおげさに言えばアイデンティティの喪失の危機を迎えているんです。

中村:それですよ! 今の話はすばらしい。

荻野:僕にも響きました。

中村:自分の内側から漏れ出てきたことだから、相手にしっかり届くんです。ダイアローグではそうやって自分の心の声を大切にします。今の感情や、身体が感じ取ったことや、価値観を話して、外に出してみる。その繰り返しがダイアローグです。対話の場にいる全員が、今のようにインサイド・アウトで対話できたら、意思決定がぐんと速くなり、クリエイティブなアイディアが生まれやすくなります。

荻野:今は、アウトサイド・インからインサイド・アウトへの過渡期で、世の中には、まだインサイド・アウトが分からない人がたくさんいます。何度もアウトプットして、直感を言語化する能力を鍛えることも大切です。中村さんの言うとおり、繰り返せば繰り返すほど、インサイド・アウトのスキルは上達します。それから、モヤモヤが湧いてきたときは、そのモヤモヤから気づきを得るチャンスでもあります。モヤモヤと向き合い、気づきを得る自分なりのプロセスを持つことも大切でしょう。例えば、中村さんの場合は森に行き(※中村氏は「森のリトリート@」を運営する「株式会社森へ」の代表取締役でもある)、僕の場合はトレイルを走りに行きます。

株式会社森へ

株式会社森へ

渡部:ところで、テレワーク下でも、マインドフルネスやダイアローグは問題なくできるのですか?

荻野:先ほど渡部さんがおっしゃっていたとおり、人によってはテレワークによって身体性が失われ、よりアウトサイド・インが強化される傾向はあるかもしれません。例えば、オンラインだと、仕事以外の話題をしにくくなりましたよね。相手の体調や雰囲気なども分かりにくくなりました。しかし、だからこそ、内側から湧いてくる言葉で話し合うことが大切です。意識しさえすれば、オンラインでも、マインドフルネスやダイアローグの実践は特に難しいものではありません。

例えば、僕は今、「朝のオンラインマインドフルネス」をほぼ毎日行っているのですが、オンラインで一緒に瞑想するだけでも、つながりを感じることができます。リアルなつながりの喪失を新たな創造につなげることも十分に可能です。何かが失われることが、100%悪いことではありません。

自燃型人材を増やしたいなら、自分自身が自燃型になることが先決

渡部:現代企業のガバナンスとコンプライアンスのなかで、インサイド・アウトを行うのは難しいのではないか、という印象があります。どのように思いますか?

荻野:最近よく感じることがあります。以前から、日本企業の皆さんからは、インサイド・アウトの「自燃型人材」を採用したい、育成したいという言葉をよく耳にしてきました。しかし、なかなかうまくいっていないようです。僕から見れば、理由は明らかです。企業の皆さん自身がまだまだアウトサイド・インだからです。厳しいことを言いますが、自燃型でない方々が、自燃型人材を採用したり育成したりするのは難しいのです。本当に自燃型人材を増やしたいなら、ご自身がインサイド・アウトになること、自燃型になることが先決です。

中村:「自燃させるマネジメント」という言葉をときどき耳にしますが、そもそも、自燃は「させる」ものではありません。大切なのは「自燃するマネジメント」をすることです。ただ、自燃するマネジメントに変えるのは時間がかかります。焦らずに継続していきましょう。

渡部:最後にあらためてお聞きします。読者の皆さんは、インサイド・アウトに変わるための第一歩をどう踏み出したらいいでしょうか?

荻野:VUCA時代では、組織が自分たちの外部環境に合わせて変化しようとする速度よりも速く外部環境が変化するといわれています。そこでは、自分たちの内側にある固定観念が問題になります。自分や誰かの固定観念が変化を拒み、組織を変革できず、結果として、会社を潰す可能性があるのです。では、いかに固定観念を変えていけばよいのか。固定観念に対するモヤモヤや違和感を覚えたら、思いきって境界を超え、固定観念を手放していくことです。日頃感じる些細なモヤモヤや違和感を大事にしてください。

中村:今、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(伊藤亜紗・光文社新書)という本を読んでいるんですが、こんなエピソードが出てきます。著者の伊藤さんと、目の見えない木下さんが大岡山を一緒に歩いていたとき、木下さんの「大岡山はやっぱり山で、今その斜面をおりているんですね」という言葉に、伊藤さんはビックリします。目が見える伊藤さんにとっては、そこは「山の斜面」ではなく、「坂道」でしかなかったからです。目が見えている人と見えていない人では、感じ方がずいぶん違うんです。試しに5分間、目を閉じて生活してみてください。それだけで、インプットが大きく変わります。先ほど、身体に意識を向けることが大事だと言いましたが、そうやって身体性の変容を感じてみるのも面白いと思います。

もっと簡単なのは、オフィスや家から出て外を歩くことです。四季の変化を感じながら散歩するだけで、身体が勝手にいろんなことを思い出しますから。チームの対話の質を変えたかったら、試しに月に一1度、チーム全員で「オンライン散歩ミーティング」をしてみてはいかがでしょう。対話の仕方や内容が、きっと自然と変わってくるはずです。


※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。


PROFILE

荻野淳也氏
Googleで生まれた脳科学とマインドフルネスのメソッド「SEARCH INSIDE YOURSELF(SIY)」の認定講師で、日本でSIYを初めて開催。リーダーシップ開発、組織開発の分野でコンサルティング、エグゼクティブコーチングに従事。外資系コンサルティング会社勤務後、スタートアップ企業のIPO担当や取締役を経て、現職。リクルートマネジメントスクールでは、「マインドフルネス入門 〜頭と心のコンディションを整え、集中力を高める〜」と「マインドフルネス実践 〜感情のマネジメントと共感力の向上によるエモーショナルインテリジェンス開発(EQ・感情知性)」「働く人のための幸福学入門 〜仕事のパフォーマンスを高めるWell-beingな働き方〜」を担当。

中村一浩氏
株式会社Project Design Office 代表取締役。株式会社Dialogue with 代表。しあわせホテル株式会社 代表取締役。株式会社森へ 代表取締役。ミスミ、リクルートなどを経て独立後、慶應SDMの博士課程でイノベーションと対話の研究をしつつ、数々の大手企業に対して、場づくりを通じた実践的な人材育成・組織開発の支援やイノベーション創出の支援をしている。著書に、『なぜ、「すぐに決めない」リーダーが結果を出し続けるのか?』『新人コンサルタントが入社時に叩き込まれる「問題解決」基礎講座』など。リクルートマネジメントスクールでは、「ダイアローグ・ジャーニー 〜創発と協働に効く!人・自己・課題と向き合い、探求する「対話の旅」〜」を担当。

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