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THEME マネジメント/リーダーシップ

連載・コラムマネジャー座談会「リモート時代のマネジャーの役割」 第3回

リモート時代のマネジメント課題を乗り越えるには

リモート時代のマネジメント課題を乗り越えるには
執筆者情報
HRD統括部
HRDサービス開発部
マネジャー
石橋 慶

プロフィール

第1回ではマネジャーがテレワーク環境下で経験している課題について、第2回ではテレワーク環境下でマネジャーの時間の使い方がどう変わったかを紹介してきた。
第3回となる本稿では、リモート時代にマネジャーが直面する課題を乗り越えていくための方法について、具体的な取り組みを紹介しながら考えていきたい。

(マネジャー座談会運営事務局:藤澤理恵、佐藤裕子、藤村直子、石橋慶)

リモート時代にマネジャーが直面する課題

第1回では、マネジャーがテレワーク環境下でどのような課題に直面しているかを紹介してきた。非集合・非対面の環境になっても、目の前の業務を遅滞なく進めると同時に中長期の戦略を推進をするための努力を行っており、併せてメンバー育成も諦めない様子がうかがえた。環境が変われど、マネジャーが追求している成果は変わらないと実感させられる。

弊社ではマネジメントを、「組織資源を効果的・効率的に活用すること、特に人を生かすことを通じて、所属する組織が目指す目的の短期的・中長期的実現に貢献すること」と定義している。要は組織の持続的成長を実現することだといえるが、それを実現するうえでマネジャーに求められる成果は大きく分けて4つあると考えている(図表1)。

<図表1>マネジャーに求められる成果

<図表1>マネジャーに求められる成果

 
この観点に則ると、第1回で出たマネジャーの悩みは以下のように整理できる(図表2)

<図表2>テレワーク環境下におけるマネジャーの悩み

<図表2>テレワーク環境下におけるマネジャーの悩み

 
整理してみると、マネジャーはテレワーク環境下においても4つの成果それぞれの実現を志向しており、実現に向けたテレワーク環境下特有の悩みを抱いていることが分かる。
マネジャーの悩みは多岐にわたるわけだが、すべてをモグラたたきのように解決していくだけの余力はないのが現状だろう。第2回でも紹介したように、時間の使い方を変えるのは難しいという声も多いなかで、どこから手をつけていけばいいのだろうか。

リモート時代の課題を乗り越え、4つの成果を併せて実現する方法

多忙なマネジャーが、テレワーク環境下に特有の課題を解決していくために注力すべきことは大きく2つあると考えられる。1つはメンバーの「自律性」向上、もう1つは「協働」促進である。

非集合のテレワーク環境はマネジャーの対面かつリアルタイムなメンバーへの関わりを阻害するため、メンバーの業務コントロールは「他律的」ではなく「自律的」になされる必要がある。また、マネジャーが直接的な起点となってメンバー各自をサポートすることには限界があるため、メンバー同士が互いに助け合う「協働」関係をつくれるかどうかも、組織のパフォーマンスを左右する。

「自律性」向上と「協働」促進は、先ほどの4つの成果の観点から説明するなら、「人の側面」の成果である「メンバーの成長」「メンバーの協働」の成果をねらうアクションだといえるが、注目すべき点はさらに他の成果にも寄与する波及効果をもたせることができることだ。一見、難度が高いようにも思えるが、座談会では既に複数のマネジャーが実践をしていた。このような一石二鳥の発想は、多忙なマネジャーにとっては非常に実践的かつ有益なアイディアといえる。
以降で、実際にマネジャーが行っている試みを紹介したい。
1.メンバーの「自律性」向上を基点に複数の成果を実現する試みメンバーの職務遂行における自律性を高めるうえでは、まず職務をアサインする立場の人間が、仕事のゴールや遂行条件を明確にしておかなければならない。さらに、職務内容に関してメンバー本人が意欲を高めるためには、仕事のゴールとメンバー本人のキャリア目標や働きがいがつながっている必要がある。
テレワーク環境になる以前からこのセオリーは変わらないが、人と人とのつながりでモチベーションを保つことが困難になっている今、仕事と人のつながりをデザインすることの重要性が増している。
座談会では、まさにそこがマネジャーの勝負どころだという話が共有されていた。


【実践例:メンバーをビジョン策定に巻き込む】


Why、What、Howを明確にすることが大事です。何で働くんですかっていうところと、どのジョブをアサインしていますかというところと、あと、そのジョブを進めるにあたっての課題は何ですか、課題はどういうふうに解決できますかという。これがメンバー本人に見えていると、多分、モチベーションなり、自律性につながるんじゃないかなと。〜中略〜 自分ができることは、OKRとかMBOの設定ですよね。特にOKRの設定は、最初のつくり込むプロセスからメンバーを巻き込んじゃいます。チーム全員で、腑に落ちるまでやっている。(教育・人材サービス/事業開発)
 

 
この実践では「組織で実現したいこと(OKR:Objectives and Key Results)」と「本人の働く理由」とをつなげることを意図して行っている。多少時間がかかっても、節目では丁寧に本人のキャリア、取り組みたい仕事、高めたい力をすり合わせておくことが、自律的な職務遂行につながり、結果として組織のパフォーマンスを高めるといえる。
また、この実践のもう1つのポイントは、OKRをメンバーを巻き込んで作成している点だ。ビジョン策定にメンバーを参画させることは、アウトプットの妥当性や納得感を高めるだけでなく、参画しているメンバーの視座を高めることも期待できる。さらに、ビジョンを策定する過程で組織の方向性や価値観への理解・共感が促進され、メンバー同士の自発的な関わり合いや問題提起にもつながる。
図表3では4つの成果の観点でこの取り組みを整理しているが、1つの取り組みが、複数の成果の実現につながっているといえる。

<図表3>4つの成果を併せて実現する実践例(1)

<図表3>4つの成果を併せて実現する実践例(1)

 
メンバーをビジョン策定に巻き込み、メンバーの「自律的な職務遂行」をねらった実践を紹介したが、次にメンバーの「自律的な学習」をねらった実践についても紹介したい。

テレワーク環境下では、メンバーの仕事ぶりをそばで見ながらマネジャーが指導をするという育成手法は取りづらくなっている。座談会でも、育成機会を確保できるのか?というマネジャーの不安の声は多かった。
もちろん直接観察しないと指導が成立しない業務もあるが、今後はOJTにこだわりすぎず、メンバー自らの学ぶ姿勢を引き出す働きかけが重要になるだろう。

マネジャーの座談会では、オンライン環境を利用することで拠点や部門を超えた勉強会を企画するという取り組みが共有されていた。


【実践例:オンライン環境を利用した拠点や部門を超えた勉強会の実施】


少し前に始めていた社内のオンライン勉強会の参加者が、テレワークになって一気に増えた。テーマは各自でエントリー、心理的安全性を大事にして全員平等のニックネーム形式で、夜に非公式でやっている。スーパー営業担当の話を研究員が聞いたり、技術系の話に別の部署の人が気軽に参加したりできて、視野の広がる学びの機会になっている。(食品/事業開発)
 

 
メンバー個別に「教える」だけではなく、「学ぶ場をデザインする」ことで複数のメンバーに同時にはたらきかけることをこの実践では意図していた。相互に学ぶ場をつくることは学びへの前向きな姿勢(学びの自律性)を引き出す上で効果的であり、勉強会の内容を少し工夫すれば、拠点や部門を超えた交流を通じてネットワーキングも実現できるだろう。
図表4に整理しているが、「拠点や部門を超えた勉強会の実施」というアクションは、主にメンバーの「成長」と「協働」を実現しており、さらにそれらは仕事のクオリティ向上や改善行動にも波及することが期待できる。

<図表4>4つの成果を併せて実現する実践例(2)

<図表4>4つの成果を併せて実現する実践例(2)

 
2.メンバーの「協働」促進を基点に複数の成果を実現する試みテレワーク環境に移行したことでメンバーの状況を対面・リアルタイムで把握できなくなり、多くのマネジャーが「面談(1on1)の回数」を増やしている。なかには、「半期に1回」から「毎週1回」に頻度を大幅に増やしたマネジャーもいた。接点を増やすことで、リモートにともなう問題の多くを解決できると考えるのは自然な発想だろう。
ただし、接点を増やしたマネジャーから聞こえてくるのは「ずっとこれを続けていると体がもたない」「時間が足りない」という声だ。面談に充てる時間が毎週4〜5時間増えたというマネジャーもいる。こうなるとマネジャーの他の業務が進まなくなり、第2回でも話題にあがった「方針づくり」などに割く時間はどんどん削られていくだろう。
マネジャーが1対1でメンバーと関わることはマネジメントを機能させるための基盤だが、職場メンバーも含めた、「多対多」の関係をどうつくるか?という発想が必要になると考えられる。
座談会では協働関係を生み出すための取り組みとしてチャットの活用が紹介されていた。


【実践例:チャットを使って疑似フリースペースをつくる】


上司との1on1以外で、部下が悩んでる仕事のフォローをする場をどうやってつくっていくのかに苦慮してたんですが、ここ1カ月ぐらい「みんなここに集合」というチャットをつくっていまして、私と部下の1on1であっても別の部下がログインしてもいいっていうふうにしています。毎日出社していた頃は、フリースペースで打ち合わせをしていたので、後ろで聞いている社員が、後からそれにアドバイスしてくれる場になっていました。そういうことに若手のメンバーが励まされることもある。それがオンラインでもできるような感じになってきて、カットインしてくれたり、チャットでコメントしてくれたりとか、そういうことができ始めてきたので、ちょっと手応えがある。孤独をいかに乗り越えて業績を同時に上げていくかのチャレンジだなと。(情報サービス/営業・サービス)
 

昼に雑談タイムを入れて仕事以外の話をする時間とした。予め各メンバーの強みを示した適性検査結果を共有して、なんでも言える環境をつくったりしている。もともとお互いの特徴が分かっていると話しやすい。(教育・人材サービス/事業開発)
 

 
マネジャー1人がメンバーの業務進捗を把握する状況だとマネジャーがサポートするしかないが、SNSツールや進捗管理ツールを活用してメンバーの業務状況をチーム内に開示する状況をつくれれば、メンバーからのサポートを得られる可能性が高まる。

図表5に整理しているが、1on1に閉じずに、他のメンバーに開放した場をつくることが複数の成果に結びつけていくためのポイントだといえる。紹介した取り組みでは、メンバーの業務支援目的のチャットをオープンにすることで、メンバー同士の協働が生まれ、相互支援に発展している。
また、チャットのオープン化からは「ちょっとした会話」「雑談」も生まれる。一見、無駄にも思えるが、職場で交わされる雑談を聞いていると「そうそう、これ困りますよね! 何とかなりませんかねえ……」「〜〜があったらいいですね」など、改善につながるヒントが見つかる可能性がある。また雑談自体がテレワーク特有の孤独感を解消することにもつながることも見逃せない効果だ。
責任感の強いマネジャーほど自ら抱え込む傾向があるが、全員で全員を支えるという組織文化に変えていく工夫が、結果的にマネジャーを助けることになるはずだ。

<図表5>4つの成果を併せて実現する実践例(3)

<図表5>4つの成果を併せて実現する実践例(3)

リモート時代の課題を乗り越えるためにマネジャーに求められるアンラーニング

ここまで、テレワーク環境におけるメンバーの「自律」と「協働」を促進するマネジャーの実践例について紹介してきた。また、それぞれの実践を4つの成果の観点で整理してみたが、少し工夫をすることにより、1つの取り組みで複数の成果を実現できることもご理解いただけたのではないだろうか。

テレワーク環境特有の課題を解決するために注力すべきことは以下2つであると前述したが、
1.メンバーの「自律性」向上
2.メンバーの「協働」促進
これらを実現するための施策は、今回紹介したもの以外にも各企業・各現場で今後さらに探求されていくだろう。ただし、施策を柔軟に発想するうえでは、リモート時代以前からマネジャー自身に染みついている考え方の癖を一部、アンラーニングする必要がある。
■メンバーの「自律性」向上に向けて ・・・「HowからWhyへ」「自律」には複数の意味があるが、特に職務遂行・学習を自律的に行うことをマネジャーは求めている。バンデューラは、主体的に行動する人のイメージを、「長期的な目標を念頭に日々の行動を決め(先の見通し)、環境に合わせて自分を動機づけたり律したりして(自己反応性)、目標に向けて行動していく(意図性)人」としている(「先行研究に見るその効用と限界 人が自律的に働くということ」)。

<図表6>主体的に行動するとは:行為主体性の4つの要素(バンデューラ)

<図表6>主体的に行動するとは:行為主体性の4つの要素(バンデューラ)

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2020)「先行研究に見るその効用と限界 人が自律的に働くということ」図表1より再掲

図表6にあるように、自律は、メンバーに目指したい目標があることが条件となる。第一歩としては、自らが関わる業務・ビジネスの全体像・意義を理解することから始まるだろう。前述した取り組みにもあったが、メンバーのキャリア上の目標について対話し、取り組む仕事を意義づけること、自組織のビジョンと本人の志向との一致点を探ることが重要だといえる。
仕事を所与のものとして「どのように進めるか?(How)」を示すこと以上に、「なぜその仕事をやるべきなのか?(Why)」をメンバーと共に認識することにマネジャーは注力すべきだといえよう。

第2回では多くのマネジャーが「方針づくり」の時間を増やしたいと感じていたことを紹介したが、そのマネジャーの実感はリモート時代において正しいといえる。組織のビジョンに加え、メンバー自身の(キャリア)ビジョンを考える時間をつくることは、現状「プレイング」に多くの時間を使っているマネジャーにとってはやや骨が折れるかもしれないが、結果的にはメンバーのパフォーマンス向上をもたらすだろう。

■メンバーの「協働」促進に向けて ・・・「直接から間接へ」メンバーが自律的に自身の業務を遂行するだけでなく、メンバー同士が相互サポートを行ったり、マネジャーだけでは乗り越えられない課題に対して共に知恵を絞るという「協働」を実現できるかどうかは、組織の生産性と成長に大きな影響を及ぼす。

以下は、弊社の組織行動研究所の調査結果を踏まえたモデルだが、マネジャーが協働のハブ(結節点)となるマネジメントに依存する体制のまま、そこに非対面・非集合の働き方が加わると、負荷が増大し、組織も硬直化してしまうことを示している。前述したような、面談(1on1)の回数を増やし、マネジャー自らがメンバー相互の関係性を取りもっているような状態が図表7のモデルにあてはまるだろう。

<図表7>テレワークで懸念される、負荷増大と組織硬直化のサイクル

<図表7>テレワークで懸念される、負荷増大と組織硬直化のサイクル

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2020)「一般社員2040名、管理職618名に聞く テレワーク緊急実態調査【後編】:テレワークがあぶりだすマネジャー依存の限界と、自律・協働志向組織への転換」図表8より再掲

この構造からも分かるように、テレワーク環境下においても協働による成果を生み出し続けていくためには、これまでの成功体験でもあった「直接アプローチ」型のマネジメントへの依存度を意図的に下げ、「間接アプローチ」型に転換することが必要である。
マネジャーがハブとならなくてもネットワーク型のつながりで協働が進むように、間接的リーダーシップを発揮し、仕組みや文化の醸成を進めていくことが必要だろう。先ほど紹介したチャットを活用した疑似フリースペースづくりなどはまさに仕組みづくりと文化醸成を行う好例だといえる。

さいごに

ここまで、テレワーク環境におけるマネジャーの取り組みと、求められるアンラーニングについて述べてきたが、これらを実践するとマネジャーの負荷はさらに高まってしまうようにも思える。ただ、俯瞰して考えると、テレワーク環境に対応したマネジメントスタイルへの転換は、メンバーにセルフマネジメントと協働志向のコミュニケーションを意識づける良い機会となり、むしろマネジャーの負荷軽減につながるのではないだろうか。またこれを機会にマネジャーがマネジメントの幅を広げることは、マネジャー自身の成長につながり、キャリアの幅を広げることにもなる。

メンバーの自律的な協働が、組織のあちらこちらで生まれるようになれば、テレワーク環境になる以前の組織を上回るパフォーマンスを発揮できる可能性もあるだろう。新しいマネジメントを創造する機会が訪れたとポジティブに捉えたい。

今回のレポートでは、第1回第2回で紹介したマネジャーの課題や実態を踏まえて、リモート時代にマネジャーが成果を出していくうえでのヒントを提示した。弊社ではさらにリモート時代におけるマネジャーの役割について考察を深めると共に、効果的なマネジメントの方法論を検討していきたい。

マネジメントスタイルの変革についてはこちらの特集で詳しくご紹介しています。

バックナンバー第1回 リモート時代にマネジャーが直面している課題とは
第2回 リモート時代にマネジャーの時間の使い方はどう変わったのか

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