連載・コラム
マネジャー座談会「リモート時代のマネジャーの役割」 第2回
リモート時代にマネジャーの時間の使い方はどう変わったのか
- 公開日:2020/11/30
- 更新日:2024/06/03
第1回レポートでは、マネジャーがテレワーク環境下で経験している課題について紹介した。業務マネジメント、部下マネジメントのそれぞれの場面で、さまざまな問題に直面していることが座談会で語られた。
第2回となる本稿では、座談会の後半で意見交換した現在の時間の使い方と、テレワークへの移行による時間の使い方の変化について紹介していきたい。
(マネジャー座談会運営事務局:藤澤理恵、佐藤裕子、藤村直子、石橋慶)
- 目次
- 時間の使い方から見えるマネジャー業務のリアル
- 参加者の半数が増え、今後も増やしたいという「方針づくり」の時間
- 「部下マネジメント」は、約7割が増えたという実感
- 部下の自律性・主体性についての意見交換
- 本来の役割に集中するために、時間の使い方を変えるのはなかなか難しい
時間の使い方から見えるマネジャー業務のリアル
まず、時間配分の現状について確認しよう。今回、参加者には事前にアンケートに協力してもらった。マネジャーの主な役割といえる5種類の仕事に、それぞれどれくらいの時間を使っているかという質問に対する回答結果の平均値が図表1である。
<図表1>マネジャーの時間配分 平均値
5種類の仕事の分類には、先に弊社で実施した定量調査と同じ項目を使用している(「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査:時間配分の5タイプに見る管理職の役割変革 鍵となる組織サポート」)。
(1)業務マネジメント:業務の計画、割り当て、進捗管理、トラブル対応、問題解決など
(2)方針づくり:組織の方向性やビジョンを考え・提示する、戦略や戦術の決定や修正など
(3)部下マネジメント:方針や業務分担の意味を伝える、意欲や能力を高める、相談に乗るなど
(4)対外的活動:社内外のネットワーキング、情報収集、対外発信など
(5)プレイヤー業務
実態調査で601名が回答した結果の平均値はそれぞれ28.3%、16.5%、20.3%、12.3%、22.6%だった。傾向としては大きく異なっていないようだ。
ただし今回はあくまで16名のデータなので、ここからは、一人ひとり個別に見ていきたい。16名の回答を一覧にしたものが図表2である。時間配分はさまざまで、どの仕事に相対的に多くの時間を使っているかによって、5タイプに分類したものがグラフの左端に記したカテゴリである。
<図表2>マネジャーの時間配分 一覧
座談会当日、具体的な仕事内容を聞いたところ、このような時間配分になっている実情がよく分かった。簡単に仕事の内容を紹介しよう。
「(1)業務マネジメント」の割合が高かったのは、A(情報サービス/営業・サービス)、B(情報サービス/事業企画)、C(コンサルティング/コンサルタント)の3名である。Aさんは外資系勤務で各国に部下がいて、手続きの標準化などを行っている。Bさんは、部付企画部門のスタッフ業務で、専門性の高い部下が多いので、「(3)部下マネジメント」に使う時間は少ない。Cさんは、コンサルタントで日常的にプロジェクトベースで仕事をしている。
「(2)方針づくり」の割合が高かったのは、D(運輸/生産・物流企画)、E(通信・情報処理/商品企画)、F(教育・人材サービス/システム開発)、G(情報サービス/人材開発)の4名である。Dさんは専門性の高いメンバーと共に企画業務を進めている。Eさんは、着任して間もないため、方針を打ち出して思いを伝えながら関係構築をしているところだという。Fさんは新規事業の推進中、Gさんは新組織の立ち上げ途上とのことだ。
「(3)部下マネジメント」の割合が高かったのは、H(通信・情報処理/システム開発)、I(情報サービス/営業・サービス)、J(情報サービス/営業・サービス)の3名である。Hさんは自社、協力会社を合わせると70名くらいの組織をマネジメントしていて、「(1)業務マネジメント」も同率で高い。メンバーの心身の健康管理やコンディションのケアが大変とのこと。Iさんは着任したばかりで営業組織の職場づくりに注力、Jさんは若手が多い営業組織のためプレイングも含めた部下のバックアップが必要ということだった。
「(4)対外的活動」の割合が最も多かったのはK(素材/生産・物流企画)1名のみだった。Kさんは配下にチームを束ねるメンバーが数名いるため、実務上の専門領域はそのメンバーと部下たちに任せながら、職場内で各チームが自走する環境づくりや他部署との調整業務を行っている。
「(5)プレイヤー業務」の割合が高かったのは、L(コンサルティング/コンサルタント)、M(情報サービス/事業開発)、N(食品/事業開発)、O(機械/営業・サービス)、P(教育・人材サービス/事業開発)の5名だった。Lさんは顧客企業に常駐してのコンサルティング業務、Oさんは技術営業のプレイングマネジャーで、Mさん、Nさん、Pさんはいずれも新規事業開発をリードする立場である。
参加者の半数が増え、今後も増やしたいという「方針づくり」の時間
座談会の事前アンケートでは、新型コロナウイルス感染症拡大前と比較した時間配分の変化と、今後の希望についても聞いた(図表3)。
<図表3>マネジャーの時間配分 変化と今後の希望
以下、座談会当日に話された具体的なエピソードを交えながら、時間の使い方の変化と今後の希望について見ていきたい。
まず、「(1)業務マネジメント」の時間については、半数が増えていて、多くは今後も今のままでよいとの回答だった。テレワーク化にともなって業務フローの見直しや変更が発生したり、業務量が増加したりしたケースもあった。また、仕事相手が海外の会社である場合に、国によって好まれる通信手段が異なるなかで、コロナ禍で従来どおりのコミュニケーションができないことによる業務マネジメント難度の上昇などの話も聞かれた。今後の希望については特に明言されていなかったが、テレワークへの移行期における一過性の時間増だったり、業務遂行上は減らすことが難しかったりすることが推察される。
業務フローを変更しなくてはならない
例えば、作業は必ず2人でチェックするというルールを在宅勤務でどう行うのか、セキュリティの考え方をどうするのかなど、急いで決めていく必要があった。大変だったが、何とか在宅勤務を始めるまでに間に合わせることができた。その対応も終わり、現状では、会社に出社していたときと比べて時間の使い方は大きく変わっていない。(H:通信・情報処理/システム開発)
海外の会社に対する業務マネジメント難度が上昇した
海外の会社と仕事をしていくときに現状把握や信頼関係構築が難しいところで非常に苦労している。それぞれの国の状況があって、今までだと月に1回、最低でも3カ月に1回現地に行って膝を突き合わせて話をしていた。電話だとなかなか心を開いてくれない場合でも、現地で会うと教えてくれたりもするので、今は厳しい状況にある。(E:通信・情報処理/商品企画)
生産、販売とも海外の現地の会社に委託しているなかで、対面で会わないと交渉が進まない国とのビジネスなので、エリア拡大が遅くなっている。生産の質を高めるためにITを活用して工場の見える化を進めたり、新しい連携先を見つけたりしている。(N:食品/事業開発)
「(2)方針づくり」については、半数が以前と比べ増えた、今後も増やしたいということだった。新規事業、新組織立ち上げにあたって方針づくりの重要性をテレワーク下でいつも以上に感じ、すでに時間を割いている人もおり、また、これから注力していきたいという声もあった。方針づくりに時間を使えていない背景としては、コロナ禍で個別に判断することが増えたという業務マネジメントの増加や、同僚や上位者との方針・戦略に関する非公式な対話機会の減少などのエピソードが語られていた。
新規事業、新組織のため方針づくりの重要性を感じている
(新組織であり、新メンバーとの間で)価値観を合わせることが難しいので、方針づくりを非常に重視して時間を割いている。この作業はこういう方針でいつまでにこういうアウトプット、できればプラスアルファでここまでいきたいというのを情熱をもってメンバーには説明するようにしている。普段だと自分の上司との打ち合わせに一緒に行って、上司からの期待などの温度感もよく分かるが、今は伝わらないので。(E:通信・情報処理/商品企画)
新規事業なので、プロダクトのバリューを定めていったり、ミッション・ビジョンを決めていったりするところの議論のしづらさが、リモートになって出てきている。(P:教育・人材サービス/事業開発)
方針づくりの時間を一番増やしたい。部下にも入ってもらって、一緒に方針をつくりたい。部下が自分の意見を言って決めていく。それと同時に、部署の方向性に照らして自分もこういう方向性でいこうというのを大事にしながらやっていくことが、部下の自律にもつながると思う。(G:情報サービス/人材開発)
個別に判断することが増え、方針づくりに時間を使えていない
コロナ禍において、課長判断ということがすごく多い。出社するかどうか、リアルなアポイントに行くかどうか。例えばメンバーがリアルなアポイントは行きたくないと言ったときに、どう判断するのか、顧客の健康状態などの様子をちゃんと見ることができているのか。細かい判断を日々しなくてはいけないというところもコロナ禍によって余計増えたなという感じもしていて、自分がちゃんと戦略を考えて、それを実行していくということに時間をかけられていない自覚がある。(I:情報サービス/営業・サービス)
同僚や上位者と非公式な方針・戦略の話がしづらくなった
オンラインで働くようになってから、マネジャー同士やマネジャー以上のメンバーと、方針、戦略の話をカジュアルにする場がどんどん少なくなっていて。あまり納得のいく議論が最近できてないなと思っているのが、変えたいところ。出社していると、ちょっとしたときに話したりできるが、今だとかしこまって、議論したい場合はわざわざ言わないとできない。そうなるとハードルも高くなり、「まあ、いいか」「別に必須でもないし、まずは目の前の仕事があるし」という気持ちになってしまうので、結構、課題かなと思う。(C:コンサルティング/コンサルタント)
新規事業を担っているマネジャーからは、「(2)方針づくり」に加えて、「(4)対外的活動」についても共通したエピソードが複数聞かれた。平時以上に新規事業の立ち上げに際して、社内の既存事業との間の調整業務が増えてきているということだ。社内調整の時間を減らして、もっと顧客やマーケットの声に耳を傾けたいということだった。
新規事業と既存事業間での社内調整が増えている
この段階での新規事業は本来的には水面下でやっていくというのが定石だと思うが、コロナ禍のために社内で注目を集めてしまい、既存事業の人たちとの間に軋轢が生じている。それを聞いたメンバーのモチベーションも下がっている。社内調整をしていくのが大変だし、同時にメンバーのモチベーションの管理に時間を費やすため、顧客のインサイトに向き合う時間に使いたいところが相対的に減ってしまっている。(P:教育・人材サービス/事業開発)
コロナの影響で予算が縮小すると新規事業は矢面に立たされるので、それをいかに防ぐか。営業も思うように売れない、訪問できないとなると、プロダクトに対する圧力も増えてくる。顧客の声からのインサイトを発見しながらというよりは、目先の話だけで売りづらい、売れない、お客さんはこう言っているといった、パワープレーのようなものが少し始まってきている。下期以降、どういう体制で、どこに選択と集中をしてというように、リーダーシップを発揮しなければいけないというフェーズ。(F:教育・人材サービス/システム開発)
また、コロナ禍で「(5)プレイヤー業務」が増加したというエピソードもあった。
プレイヤーとして業務が増加した
コロナ禍で営業から顧客への電話が1.5~2倍になっているのにともない、自分たちサポート部門への顧客からの問い合わせが増加して、日常業務が増えている。また、海外メンバーと話をするとき、今まではオフィスで仕事をしていたので、「連絡が取れなくても仕方ない」と諦めていたが、今は家から夜中でも話をすることができてしまう。生活と仕事の時間の区別がしにくくなっている。(A:情報サービス/営業・サービス)
コンサルティングのデリバリーだけでなくセールスを拡大することや、人事担当ではないが新しいコンサルタントの採用も、どんどん社に貢献する業務としてやっていきたい。実際は、プレイヤー業務に多くの時間を割いていて難しい。(L:コンサルティング/コンサルタント)
「部下マネジメント」は、約7割が増えたという実感
そして、16名のうち約7割にあたる11名は「(3)部下マネジメント」の時間が増えたと回答していた。時間が増加した感覚は、実際に部下のために使う物理的な時間が増えたということに加えて、目の前にいないことでいつも何かと気にかけていたり、部下の心身の健康に気を使ったりする心理的なものも反映されているようだ。
第1回レポートでも、テレワーク環境下における部下マネジメント上の課題について紹介したが、部下のコンディションの把握のしづらさ、背中を見せながらのOJTを実施することの難しさ、新規参入者の育成のケアなど、さまざまな不安・懸念事項が話されていた。そして、それらの課題を背景に、1on1などの対話機会を増やしたという声も複数聞かれた。リモートになったことで対話の時間が取れるようになったというエピソードもあった。また、物理的な会議室の制約がなくなったことによって、大人数での部会・朝会などの方針伝達、情報共有・交換する場をつくることができたというエピソードもあった。その半面、ちょっとした声掛けができないため、わざわざ会議設定をしなくてはいけないこともあり、部下との会議が隙間なく入ってしまって会議時間が増えたという話も複数名から聞かれた。
対話機会を増やした
もともと1on1という形で、隔週でメンバーと20分から30分ぐらい話をしていたが、4月、5月は意識的に増やして毎週に変えた。不安な部分を常にヒアリングしていた。(F:教育・人材サービス/システム開発)
1on1が月1設定だったのを、個別にメンバーと話し合って、それぞれの必要な頻度でやるようにしている。平均年齢が20代後半で若手が多いため、後方支援だけをするというのが、ほぼ不可能な状況。空気を読むことや、機微を読み取ることがほぼできなくなったので、本当に相談がしづらい。対個人のコミュニケーションに神経を使うことが必要になってきている。(J:情報サービス/営業・サービス)
技術営業で専門性が高い。部下本人はそれでいいと思ってることが、顧客に響かなかったりすることがある。今までは、お互い全国に出張していたので、プレゼンテーションの前に頻繁に打ち合わせをすることができなかったが、リモートツールにも慣れてきて、今までできなかったコミュニケーションが取れるようになっている。資料の共有やプレゼンテーションのリハーサルなど、そういったことに時間を使えている。(O:機械/営業・サービス)
直接の対話の機会を大切にしながら、それ以外の場でも、どうやって部下の悩みを解決するのかについても、意見交換された。部下同士のコミュニケーションで解決していく方法や、自主勉強会のようなお互い学び合う環境づくりなど、試行錯誤のプロセスについて共有があった。
部下の自律性・主体性についての意見交換
テレワーク環境下での部下マネジメントということでは、部下自身にもセルフマネジメントや自律的な職務遂行が求められる。弊社調査「テレワーク緊急実態調査【後編】:テレワークがあぶりだすマネジャー依存の限界と、自律・協働志向組織への転換」でも、自律支援型マネジメントが管理職の負担軽減、さらには自律・協働型組織への移行の鍵になることを明らかにしている。
座談会でも、部下の自律性・主体性について日頃どう感じているか、それをどう促していくかについて、マネジャーの皆さんの生の声を聞いてみたいと考えた。当日意見交換されたなかから、いくつかエピソードを紹介したい。
リモートでプロセスを把握しづらいと、任せ方が難しい
気づいたら仕事を抱えすぎてたり、アウトプットだけを聞いて大丈夫だと思っていたら、相手の部署の上司から呼ばれたり、実は相手側には任せっきりでボールだけを投げていたということが起きていたり、難しいなと思う。どこまで任せるのかというこの線引きは難しい。(D:運輸/生産・物流企画)
これまでだと部下が他部署とやり取りしているのが聞こえてきて、だいぶ調整できるようになってきた、相手を納得させている、などと感じられたが、リモートになったらその過程がまったく見えずに、アウトプットでしか判断できない。コミュニケーションの取り方は仕事の肝でもあるので、そこが育成できないのは悩みとしてある。失敗させないと成長もしないし自律性も身に付かないが、リモートで見えないなかで、どうしたらいいのかなと思う。(K:素材/生産・物流企画)
自律的でモチベーションも高いが、チャレンジングな仕事の機会が減っているのが難しい
結構モチベーション高く、自律的に働いてくれる人がとても多くて、どちらかというと、やりすぎてしまってオーバーヒートしてしまうのを調整しないといけないくらいだったが、そのモチベーションを維持するのが難しくなってきているというのを、コロナ禍で感じている。自分はこういうことがやりたいとか、こういう人とやりたいとか、そういう願いがあったとしても、それを叶えてあげられるだけのプロジェクトがあまりなかったり、種類がなかったり。景気がいいときはそんなことないけれど。チャレンジングな課題がいつもあるといいが、難しい。(C:コンサルティング/コンサルタント)
自律と管理のバランスが悩ましい
部下が怠けてしまうのではないかというところがリモートだと見えない。管理しようがないことを頑張って管理した方がいいのか、ある程度メンバーに任せるようにして、アウトプットだけを見るようにした方がいいのかというのは日々考えていた。結局管理できないのでアウトプットで見ることを自分のなかで半ば強制的に選択していたわけだが。(G:情報サービス/人材開発)
自律的な組織とルール、その辺のバランスにすごく悩んでいる。現在のリモート下で進めている新規事業とは異なり、以前の職場では職務定義や評価制度もはっきりしてるし、メンバーをモチベートする施策も会社として準備されている組織だったので、マネジャーとメンバーでちゃんと向き合って、チームの戦略を決めていけば大きく外すことはないというように、ある程度決められたガードレールのなかでマネジメントしてたところがあった。鶏と卵感が結構あって、戦略が立たないからメンバーが育たないのか、メンバーが育っていかないから戦略を考える時間がないのか、ちょっと禅問答みたいな感じに陥っているのが現状。(M:情報サービス/事業開発)
スキルや能力がともなった上での自律性・主体性なのではないか
既存のメンバーは自主性をもって頑張ってくれているが、新しいメンバーや、ゼロイチで始めるという人たちが来たときに、どうやってそのサイクルにもっていくかというところには、いまだに解がない。対面だったら結構細かく指示してあげたり、何かをするときにそれはこうやるんだよというのを、機を見て言ってあげたりできたが、焦ってますと本人が言わない限りは分からない。対面でないと難しい思う。(J:情報サービス/営業・サービス)
仕事というのはすべて問題解決だと思っているので、現状把握から問題解決までの一連のプロセスにおけるやり方がそもそも分かっているのか分かっていないかというのを、こちら側が把握する必要がある。分からないのであれば主体性を求めても無理だという話なので、そのときには背中を見せるしかない。(B:情報サービス/事業企画)
本来の役割に集中するために、時間の使い方を変えるのはなかなか難しい
時間配分の希望について聞いてきたわけだが、どうしたら時間配分を変えていくことができるのか。それについても、いくつか意見が交わされた。上でも述べた、部下同士のコミュニケーションによる解決や部下の自律性などに加えて、そもそもマネジャーに求められていることは何かを上層部とすり合わせることが必要、制度や風土が変わらないと難しい、会社としても適正な採用・配置をしてほしいというような意見もあった。
経営からの期待とのすり合わせも必要。自分の意思だけで変えられるものではない
何を変えたいかということを定義できていないなというのが正直なところ。「ミドルマネジメントに求められてることはそもそも何なのか」という、上層部と現場側とのすり合わせを言語化できているのかということが、問われているように思う。経営が期待していることとのすり合わせができていないのが現状。望むリソースや制約がすべてクリアになるということは未来永劫あり得ないという前提に立ったときに、何を捨てるかという判断をどこまでミドルマネジメントの責任下においてできるのか。5つの仕事について、柔軟に自らの意思で変えるということ自体が実は結構難しいんじゃないかなと思う。(B:情報サービス/事業企画)
会社として適正な採用・配置を検討してほしい
部下の指導・育成は大事な仕事だと思うが、コロナ禍でグローバルビジネスが難しく、コミュニケーションに制約がある環境で成果をあげなければいけないなか、育成をやっていくっていうのは非常に難しい。部下のことは大切だが、極端な例で言うと、英語をまったく話せない人が今の仕事でいいのかと。教育のために入れるにしても、現状のコミュニケーションスタイルのなかで本当に適材適所なのか。配置を組織として相談したい。(E:通信・情報処理/商品企画)
生き方とか、働き方に対する価値観に真剣に向き合いきれない人は、モチベーションを自分でドライブするのが難しいことが結構多かったりする。やっぱりWillみたいなものは本来、確認してから採用してほしい。チームで結果を出していくとか、プロダクト開発になってくると、チーム内に1人でもモチベーションが低い人がいると、それが全体に波及して悪い方向に行ってしまう。(P:教育・人材サービス/事業開発)
この話をきっかけに、「パフォーマンスを出すために部下を育成をする、というのはどこまでがマネジャーの役割なのか」という悩みが共有された。「上司になったからなんとかしてと言われても結構困ることがある」という話や、外資系企業でのジョブ型雇用との違いにも触れながら、意見交換がされた。それに対して、「部下のスキル自体を自分に与えられたリソースだと捉えたときに、部下の何を伸ばすかという方向性と成長の角度について、上層部と合意を取り付けることがスタート。業務遂行に必要な力まで早く引き上げる、自分より優秀な人材を早くつくるという視点で考えておくのが育成なのではないか」というような考えも紹介されて、問題提起してくれた方からも、「育成と一言で言ってもいろいろあって、現場では短期、即戦力でないことに困っているのに、中長期の育成目標を問われることに疑問を感じていたので、自分の悩みがクリアになった」というような感想が交わされた。
座談会では、マネジャー同士が日頃思っていても口にできない悩みを共有でき、お互いに自分だったらこう考える、こうしているというような創発的な対話が多くなされていた。座談会に参加した感想としても、「マネジャーはできてあたり前という感じで、迷っていることやできていないことを話せる機会があまりなかった。内省して気づきが得られたよい機会になった」「自分が見えている範囲のなかでうまくやっているように思っていたが、いろいろな違った立場の人の話を聞いて、視点を変えることができた」「自分は論理的なゴール設定に偏っていたかもしれない。メンバーへの配慮や納得感などに今後はもう少し重きを置きたい」「目の前の対応に追われていたが、メンバーや事業の成長について考えていこうと思った」などと語っていただいた。
次回のレポートでは、第1回、第2回で紹介したマネジャーの課題感や実態の話をふまえて、リモート時代にマネジャーが役割遂行していく上での解決の糸口を提示していけたらと思っている。
執筆者
技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子
人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)、リクルートにて人事アセスメントの研究・開発、新規事業企画等に従事した後、人材紹介サービス会社での経営人材キャリア開発支援等を経て、2007年より現職。経験学習と持論形成、中高年のキャリア等に関する調査・研究や、機関誌RMS Messageの企画・編集・調査を行う。
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