「経営人材育成」を考えるときに、知っておきたい4つのこと 第4話 それで結局、どんな研修がいいのか?

執筆者情報
ソリューション統括部
コンサルティング部
マネジャー
岩下 広武

もし……あなたがある日突然、社長から「我が社でも、将来の経営者を計画的に育てるべし」と言われたらどうしますか? 何から手をつけますか?

そんな状況に直面した、ある人事部長と課長のショートストーリーを交えながら、経営人材育成を考える際に最初に押さえておくべきポイントをまとめました。 

経営人材育成は一朝一夕にできるものではありません。中長期的に、継続して取り組む必要があります。本シリーズでは、その取り組みを4つのステップに分けてご紹介します。

【STEP1】人材要件を設定する
【STEP2】人材を把握し、候補者を選ぶ
【STEP3】候補者を評価しプールし育成計画を立てる
【STEP4】候補者に成長機会を与える


登場人物紹介

もっと実践的なメニューが必要だよ

木下 「人材開発委員会の開催が決まりましたね!」

山口 「そうだな。お疲れさま」

木下 「じゃあ、次はいよいよ次世代リーダー育成研修ですね」

山口 「そうだな」

木下 「やった、反対されなかった!」

山口 「研修の内容はもう考えているのか?」

木下 「経営に必要な知識を教えて、社長の講話をたっぷりと……」

山口 「それだけ?」

木下 「他に何をするんですか?」

山口 「単に一方的に話を聞くだけでは意味ないんじゃないか? もっと実践的なメニューが必要だよ」

木下 「分かりました。ちょっと考えます……」

山口 「あと、やっぱり大事なのは仕事経験だ」

木下 「あ、前にコンサルタントの岩下さんに聞いたことがあります。確か……“一皮むけた経験”でしたっけ」

山口 「そうそう。“修羅場経験”が人を育てる、とよくいわれるが、リーダーとして腹をくくり、一回り大きくなってもらうためには、いまの彼らにとっては少し分不相応と思うような大きな仕事にチャレンジしてもらうのがいいのではないかと思う」

木下 「それが成長につながりますものね」

山口 「ただ、一口に“修羅場”といっても、いろいろあるよな」

木下 「そうでしょうね。リストラとか、海外でのマネジメントとか……」

山口 「誰にいつどんな経験をしてもらうのがいいんだろうね?」

木下 「それを考えるのは、人材開発委員会にお任せしては?」

山口 「まあ、そうなんだけど、委員会の皆さんも、何かしらヒントがあった方が話しやすいんじゃないかな」

木下 「そうかもしれません。でも、何があればヒントになるんでしょうね……」

「8つの経験」を踏まえた仕事や
アクションラーニング型研修を提供することで
成長の機会を用意しましょう
 

仕事経験がリーダーを育てる

候補者にとっての成長機会には、大きく分けて2種類あります。1つは「仕事経験」、もう1つは「研修」です。

なかでも仕事経験は重要です。学習機会を考える際は「70:20:10フレームワーク」が参考になります。アメリカのロミンガー社の調査によると、リーダーの学習の70%は「実際の仕事経験」によって、20%は「他者との社会的なかかわり」によって、10%は「公的な学習機会」によって起こることが分かっています。仕事経験を通じた学習を意図的にもたらすために、配置や異動が重要となってきます。

特に欠かせないのが、いわゆる「修羅場経験」です。未知の場や居心地のよくない環境でチャレンジングな任務を与えることで、候補者の大きな成長を促します。この点は、各企業がさまざまな取り組みを行っています。国を超えて優秀な人材を必要なポジションにどんどん登用している企業もありますし、各候補者にいま必要な業務を一から創り出していく企業もあります。経営人材を育てる上では事業をゼロから立ち上げる「新規事業創出経験」も有効です。日本企業において多くの既存事業が成熟期にさしかかっていることもあり、そうした経験を積極的に積ませようとする企業も増えてきました。

特に大企業では、機能別に組織が分かれていることも多く、単一機能でずっと育ってきたことで視野が狭い人材しか育っていないという悩みをよく聞きます。その場合は、小さくても1つの事業や企業を任せる、バリューチェーン全体を視野に入れて戦略を立て、意思決定し、損益責任を負う経験を早期に積ませることも重要でしょう。

弊社では、調査研究やさまざまな企業の支援を通じて「リーダーの成長を促す8つの経験」を抽出しました。この8つの経験をもとに、各社における「成長経験」を明らかにして社内で共有することは、各候補者の成長ストーリーを考える上で大きなヒントとなるでしょう。

アクションラーニング型研修で「痛みを伴った照合」を起こす

リーダーの学習のうち10%しかないといわれていますが、それでも「研修」には重要な役割があります。日々の業務からの学びを促進する呼び水となったり、日常業務だけでは学びきれないものを補完したりする役割です。特に最近、一般的になってきているのが「アクションラーニング型研修」です(図表1)。

経営人材に必要な知識を教えたり、経営者が講話したりする従来どおりの研修も行われていますが、そうした研修に限界を感じて、アクションラーニング型研修を取り入れる企業が増えています。

アクションラーニング型研修とは、前半にインプットをした後、後半で自分なりのアウトプットを考えるというかたちの研修です。アウトプットとしては、経営者に対する「事業の成長戦略の提案」や「新規事業提案」になるケースが多いです。その際、次世代リーダーの候補者には、単に「こうすべし」と評論家的に述べるのではなく、自ら事業のありたい姿を描き、そのために「自分はこうしたい、こう取り組みたい」と、当事者意識を持って提案することを求めるべきでしょう。

こうした研修のねらいも、先ほどの仕事経験と同じで、候補者に「修羅場経験」や「困難な経験」をしてもらうことです。元ミスミグループ本社代表取締役社長の三枝匡氏は、『戦略プロフェッショナル』(日本経済新聞出版社)のなかで、経営に必要なスキルを自分のモノにするためには「痛みを伴った照合」が重要だと言っています。

「すでに勉強を済ませている人は、ドジを踏んだときに、『この失敗は、以前に自分が座学で学んだことと同じではないか』と気づいて愕然とします。自分の経営リテラシーと経験の間で『痛みを伴った照合』が起きているからです。この時点で過去の学びはようやく、身に染みた自戒と因果律データベースに変わるのです」。アクションラーニング型研修も、痛みを伴った照合を起こす試みといえます。そして、“痛い”経験や失敗から学び、次にその学びを応用する力も、候補者に求められる重要な要件の1つでしょう。

研修のよい点は、実際の仕事とは異なる、さまざまな状況をつくりやすく、また「非日常」の経験をさせやすいことです。例えば、現在関心が高まっている経験の1つに、「越境経験」があります。これまで扱ったことのないテーマに取り組んだり、他社の優秀な人材と交流したりすることは、視野を広げたり、新たなものの見方を獲得するきっかけとなります。また、新興国にチームを組ませて1カ月間派遣したり、海外支社で自らビジネスプランを考えさせたり、研修の一環として海外でナップサック旅行をさせたりしている企業がありますが、これらも、異文化という慣れ親しんだ環境ではない状況で結果を出すというチャレンジをつくり出している例でしょう。

こうした研修は、知識習得以上に「自己理解」を深める上で役立っています(図表2) 。

自己理解は成長の原動力の1つですから、やはり研修には一定の効果があるといえるでしょう。また、経営者や人事部は、研修を「人材理解」の場としても活用すべきです。なぜなら、研修の場では、普段接点のない候補者についても、彼/彼女の特徴や強み・弱みを捉えることができるからです。

欧米の企業経営者は、自らにコーチをつけることで、他者からのフィードバックをもとに自己認識を向上し課題を明確にする一助としています。さらに自己理解を深め、個人ごとに異なる成長課題に取り組んでもらうための支援として、専門のプロコーチをつけて、1対1でのコーチングを提供することも効果的です。

バックナンバー


第1話 経営人材育成、まず何から始める?

第2話 誰を選んで、どう評価する?

第3話 候補者たちの育成を考えるのは誰?

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なぜ経営人材育成は行き詰まってしまうのか

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