用語集
インバスケットとは? 実践で学ぶ思考法と効果
- 公開日:2014/04/18
- 更新日:2025/07/16
多忙な状況でも的確に判断し、優先順位を見極めて行動できる力は、ビジネスの現場でますます求められています。そうしたスキルを養う手法として注目されているのが「インバスケット」です。実践的な思考力を鍛える場として多くの企業が導入しており、管理職候補の評価にも活用されています。一体どのような手法で、なぜこれほど注目されているのでしょうか。
インバスケットとは

インバスケットは、インバスケット研究所の登録商標です。同社のホームページによると、インバスケットとは「次位職に求められる能力やスキルを“模擬体験”しながら、これまでの経験やスキルが実際に発揮できているかを多面的に“評価・測定”するビジネスシミュレーションツール」と定義されています。
もともとは、決裁を待つ書類を一時的に保管する「未決箱(In-Basket)」が語源とされており、これを発展させたインバスケット方式は、実践的な判断力や課題対応力を養うトレーニングとして広く知られています。
同様の手法はアセスメント研修のなかで採用されていることが多く、弊社が提供するアセスメント研修でも、限られた条件下での思考・判断・行動を観察し、受講者の強みや改善点を可視化する手法の1つとして活用しています。管理職昇格時や次世代リーダーの育成・選抜の場面において、実践力を見極める有効なアプローチとされています。
インバスケットで評価できる10のマネジメント能力
インバスケットでは、管理職に求められる10のマネジメント能力を総合的に測定・育成することが可能です。短時間で多様な案件を処理するプロセスを通じて、リーダーに不可欠な力がどの程度備わっているかを客観的に把握することができます。
優先順位判断力
限られたリソースや時間のなかで、どの業務から取り組むべきかを見極める力です。業務の緊急度や重要度を適切に判断し、効率的に処理を進める能力が求められます。
生産性向上力
限られた時間内で最大限の成果を出す力です。タスクの処理スピードと精度のバランスを取りながら、業務を効率的に推進する姿勢が問われます。
対人対応力(ヒューマンスキル)
部下や関係者とのやり取りにおいて、相手の立場を尊重しながら適切に対応できる能力です。チームマネジメントや対人関係構築に欠かせないスキルといえます。
責任感(当事者意識)
課題を「自分ごと」として捉え、主体的に行動する力です。状況に応じた判断と積極的な対応を通じて、リーダーシップを発揮する姿勢が評価されます。
問題発見力
表面化していない課題やリスクを早期に察知する力です。複雑な状況下でも本質的な問題を捉え、必要なアクションに結びつける視点が求められます。
分析・整理力(問題分析力)
与えられた情報を適切に分類・整理し、問題の構造を把握する力です。複数の要素を関係づけながら、論理的に分析できるかがポイントになります。
発想力(創造力)
既存の枠にとらわれず、新たな視点や解決策を考案する力です。想定外の問題に対して柔軟に対応する創造的思考が試されます。
洞察力
表面的な事象の背後にある原因や意図を読み取る力です。相手の本音や背景事情を的確に捉え、より深い対応策を導き出す能力が問われます。
判断力(意思決定)
曖昧な情報や制約のある状況下でも、リスクを踏まえながら素早く意思決定し、確実に行動へ移す力が求められます。
計画・組織力
業務を効率よく遂行するために、適切な計画を立て、資源や人員を効果的に配分する力です。中長期的な視点でのマネジメント能力が試されます。
インバスケットが持つ独自の特徴
インバスケットは、知識を学ぶだけの研修とは異なり、実践力と考える力を養うための手法です。ここでは、その独自の特性に触れていきます。
特徴①限られた時間での判断
インバスケットの問題設定では、あえて全案件を時間内に処理しきれないように設計されています。このため、受講者は限られた時間のなかで、案件ごとの優先順位を見極め、効率的に対応していく必要があります。取り組み方や時間配分のクセを通じて、判断力やタイムマネジメント力が浮き彫りになります。
特徴②実践重視のトレーニング
知識の蓄積だけでなく、実際に行動に移せるかどうかを重視するのがインバスケットの大きな特長です。理論を知っているだけでは不十分で、現場で即応できるスキルが求められます。実務に直結する力をアウトプット型で養成する実践的な教育ツールといえます。
特徴③正解が1つではない
インバスケットでは、単純な正解・不正解ではなく、課題へのアプローチや判断に至るプロセスが評価対象となります。多様な解釈が許されるなかで、受講者の考え方やリーダーシップの質を見極めることができるため、管理職登用や組織課題の把握にも有効な手法です。
インバスケット試験の種類
インバスケット試験は「記述型」「選択型 」「複合型」の3つに分かれ、それぞれ求められる能力や取り組み方に違いがあります。

記述型インバスケット
記述型インバスケットは、受験者が案件ごとの判断や対応策を自由記述で回答する形式です。思考プロセスを文章化するため、判断力や行動内容だけでなく、表現力や論理性、コミュニケーション能力もあわせて評価できます。自身の考えを整理し、的確に伝える力が問われるため、管理職登用やリーダー育成などにも活用されています。
選択型インバスケット
選択型 インバスケットは、あらかじめ用意された選択肢から最適な対応を選ぶ形式です。記述型と比較すると作業負荷は軽いものの、問題解決の考え方を正しく理解していなければ適切な回答ができません。まず記述型で思考力を養ったうえで、選択回答式で応用力を高めていくトレーニングが推奨されています。
複合型インバスケット
複合型インバスケットは、インバスケット方式に他の適性検査や診断ツールを組み合わせた形式です。状況判断テストや性格診断などと併用することで、受験者の問題解決力だけでなく、性格特性やチーム適応力まで幅広く把握することが可能になります。ただし、インバスケット本来の評価基準である「思考と判断の質」は一貫して重視されます。
インバスケットが重視されている理由
現代のビジネス環境では、変化に迅速に対応できる実践的な判断力が求められています。インバスケットは、優先順位付けや状況判断といった実務に直結するスキルを短時間で鍛えられる手法として、注目を集めています。
深刻化する採用競争と育成へのシフト
人材確保がますます困難になるなか、即戦力の獲得だけに頼るのではなく、採用後にいかに人材を育成するかが企業の競争力に直結する時代になっています。特に、複雑で予測困難な状況に対応できる人材が求められており、与えられた情報から優先順位を判断し、自ら考え行動できる力が重要視されています。インバスケットは、こうした「実務対応力」の基礎を短期間で測り、育成できる手法として採用現場でも注目を集めています。
生産性向上を支える人材育成の重要性が高まっている
限られたリソースで成果を最大化することが求められるなか、個々の社員の判断力やタスク遂行力が組織全体の生産性に直結するようになっています。インバスケットでは、複数のタスクを前にしたときに、緊急性と重要性のバランスを取りながら適切に行動できるかが問われます。こうしたトレーニングを通じて、現場で即戦力となる思考力・行動力を持つ人材の育成が進み、生産性向上につながると期待されています。
まとめ
ビジネス環境が複雑化し、迅速な判断と実行が求められる現代において、インバスケットは実践的な思考力を鍛える有効な手法として注目されています。単なる知識の習得ではなく、優先順位付けや判断のプロセスを重視する点に特徴があり、管理職候補の育成や組織全体の生産性向上にも直結します。
インバスケットを通じて、日々の業務に不可欠な10のマネジメント能力を測定・育成できるほか、記述型・選択型 ・複合型といった多様な形式により、さまざまな目的に応じた活用が可能です。
実践を重ねるなかで思考の質を高め、組織に貢献できるリーダーを目指していきましょう。
本用語集では、一般的なビジネス用語の解説として「インバスケット」を取り上げており、特定のサービス・商品を示すものではありません。
商標に関する表記・表現については、著作権・商標権を尊重し、必要に応じて修正・対応いたします。
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