導入事例
行動変化を起こす「30歳前後キャリアデザインワークショップ」をグループ2社共同で実施
三菱ケミカル株式会社/田辺三菱製薬株式会社
- 公開日:2024/05/07
- 更新日:2024/07/16
事例概要
背景・課題
三菱ケミカルグループの事業会社である三菱ケミカル株式会社・田辺三菱製薬株式会社の2社は、2023年から共同で「30歳前後キャリアデザインワークショップ(キャリアアクションプログラム)」を始めました。三菱ケミカルで重視している「主体的なキャリア形成」には、従業員一人ひとりに内的キャリアやライフキャリアを考える機会を提供することが欠かせなかったからです。田辺三菱製薬は同様のキャリア研修を既に行っており、共同開催はスムーズに実施できました。
検討プロセス・実行施策
実施前はキャリアのバックグラウンドが異なる2社の従業員で話が合うのかと心配していましたが、当初の想定以上に場は活性化していました。成功要因の1つは、トレーナーのクラス全体での学習を促進する場づくりが、実に巧みだったことです。また、研修サポートツール「Learning Pit」のおかげで、システムを統合することなく、2社の情報を一括管理できました。共同開催にふさわしいツールで、事務局の負担も大きく減りました。
成果・今後の取り組み
30歳前後の多くの従業員に、キャリアについて言語化し、これまでとこれからを整理する体験をしてもらえました。私たちは「行動変化」を重視しており、アンケートに「早速、自分から上司にキャリア相談をしてみました」「社内公募制を使って異動しました」といったコメントが既にいくつか書かれていたのは重要な成果と捉えています。中長期的な行動変化を期待して、今後も長期的な視野をもって継続していきます。
背景・課題
30代から主体的にキャリアを考える機会を提供したかった
相馬:三菱ケミカルグループでは、現在さまざまな面で一体運営を進めています。その一環として、2023年から、事業会社である三菱ケミカル・田辺三菱製薬の2社共同で「30歳前後キャリアデザインワークショップ(キャリアアクションプログラム)」を始めました。ワークショップという言葉を使ったのは、何かを教える場というより、参加者同士の対話を通じて自分自身で考えていくことを表現したかったからです。
三菱ケミカルは、2020年頃から段階的に「主体的なキャリア形成」を後押しする制度や仕組みを導入し、個人がキャリアや人生にオーナーシップを持てる環境整備を進めています。キャリア支援を行う背景としては、働く期間が長くなることが予想され、また、環境変化が激しい中では、一人ひとりが自分らしい働き方・生き方を考えることが、豊かな人生につながることがあげられます。
「主体的なキャリア形成」では、個人の志向がポイントになりますので、従業員一人ひとりが、自分自身が働くうえで大事にしたい価値観や動機、働きがいなどの「内的キャリア」の部分や、仕事以外の役割も含めた広義のキャリアである「ライフキャリア」を考える機会を提供することが欠かせません。
三菱ケミカルでは、これまで40代・50代のキャリアデザインワークショップを実施していましたが、若手向けは行っていませんでした。キャリアには連続性がありますので、節目ごとに考えてもらう機会が必要と考え、30歳前後キャリアデザインワークショップの導入を決めました。個別に実施しているキャリア相談の場でも、キャリアを体系的に考える機会を求める声が増えていたことも導入の後押しをしました。
辻󠄀:田辺三菱製薬も、従業員一人ひとりが、より早く、自律的、継続的に成長し、働きがいを持ち、よりよい人生を形成していけるよう、キャリアを支援する制度や施策を整えてきました。 実は2013年頃にキャリアを育成体系の中核に据え、30代・40代・50代向けのキャリア研修をスタートしていました。私たちは30歳前後のキャリア研修をすでに行っていたのです。主体的なキャリアデザインを早期に始めてもらいたかったからです。三菱ケミカルとはもともとキャリア支援に関する考え方が近いこともあり、共同開催はスムーズに実施できました。
私たちは、キャリア研修を以前からリクルートマネジメントソリューションズにお願いしており、安心感があったので、継続的に依頼することにしました。研修サポートツール「Learning Pit」を活用して、事務局業務の効率化を図れる点も魅力的でした。
相馬:プログラムや、その背景にある考え方に共感し合えたのも決め手でした。例えば、キャリアを考える際に使われるフレームワークに「will・can・must」がありますが、Willを言語化することが難しいと感じる社員もいます。そういった悩みに対しては、未来のありたい姿からの逆算(バックキャスティング)だけではなく、今ある資源を組み合わせたり、バージョンアップさせたりすることで、ひとつレベルアップする (フォアキャスティング)という考え方も取り入れて、二つの棚卸し方法に基づいたワークショップの構成を、タイムリーに提供してくれました。そして、なによりも「行動変化を重視する」というリクルートマネジメントソリューションズの考えに共感したのがポイントでした。
検討プロセス・実行施策
ワークショップの場では活発な交流が行われた
相馬:三菱ケミカルでは、若手向けは初めての開催だったこともあり、40代向け・50代向けと比べて席が早く埋まりました。ワークショップの場での発言を聴いていると、若手・中堅社員のキャリアに対する興味・関心は確実に高まっていると感じましたし、次のステップや行動にどうつなげていくかを模索している様子が見えました。
辻󠄀:田辺三菱製薬も、最終的には枠を広げるほどの応募がありました。30代にキャリアを考えたいというニーズがあることは間違いありません。
相馬:私たちはさまざまな施策で協業を進めている最中ですが、とはいえ、現状は事業も社風も人事制度も異なっており、各種システムなどもまだ統合していません。キャリアのバックグラウンドが異なるため、正直なところ、実施前は話が合うのだろうかと心配していました。しかし、実際にやってみると、むしろ相手の話を聴く姿勢や伝えたいことを伝える能力の共通性を感じました。成功要因の1つは講師であるトレーナーの質の高さがあります。トレーナーのクラス全体での学習を促進する場づくりが、実に巧みでした。
辻󠄀:30歳前後の従業員は、同じようなライフイベントに多くが直面し、同じような悩みを抱えています。ワークショップでは、受講者の1人が全体の場で悩みを吐露した際には、トレーナーの問いかけによって具体化しながら、参加者全員が共感できるテーマに広げてくれていました。そうやって1人のキャリアに関する問題意識を、トレーナーが全体の学びの材料に変えていたのです。こうした場づくりの工夫が効果を上げていました。
相馬:研修サポートツール「Learning Pit」は、いろんな意味でありがたかったです。Learning Pitのおかげで、システムを統合することなく、最初から2社の情報を一括管理でき、共同開催にふさわしいツールでした。また、Learning Pitによって参加者に送付するメールの確認作業や個別フォローなどが必要なくなり、事務局作業の負担も大きく減りました。
辻󠄀:Learning Pitは使い勝手もよく、受講者からの操作に関する質問はほとんどありませんでした。それから、Learning Pitは同じ研修を受けた他の受講者の行動計画など、アンケートの一部が互いに共有されているので、参考にしている受講者も少なくありません。
成果・今後の取り組み
自分から上司にキャリア相談するような行動変化がすでに起きている
辻󠄀:2023年度は、30歳前後キャリアデザインワークショップを10~11月に計5回実施しました。受講者アンケートが既に返ってきていますが、「言語化できた」「頭を整理できた」というコメントが多く見られました。30歳前後の多くの従業員に、キャリアについて言語化し、頭を整理する体験を積んでもらえました。
相馬:アンケートを見る限り、言語化できている人は全体的に質の高い気づきを得られたようです。また、「話を聞いてもらえるのは、こんなに嬉しいことだったんだ」といったコメントも目につきました。マネジャーとして活躍する前段階で、部下・後輩の話を傾聴することの大切さを実感してもらえたことにも大きな意味があります。対話の価値を知ってもらえたことも、ワークショップの成果の1つだと考えています。
さらに大事なのは「行動変化」です。私たちは30歳前後キャリアデザインワークショップによって、受講者の行動変化を起こしたいと考えていました。その意味で、アンケートに「早速、自分から上司にキャリア相談をしてみました」「社内公募制を使って異動しました」といったコメントがすでにいくつか書かれていたのは重要な成果と捉えています。また、新しい学びや社内のネットワーク作りをスタートした方もいました。チャレンジというと、異動や昇格だけをイメージする方もいますが、私たちは、まずは日常の中での小さな変化を自ら起こすことを勧めています。小さな変化が習慣化されると、その後の働き方・生き方は大きく変わると考えています。目に見えなくても、心のありようを変えるのも変化の一つです。他のキャリア施策も同様ですが、私たちが社員個人に伴走できる機会や期間は限られています。今回のワークショップを通じて改めて感じたのは、考えるフレームと良質な対話の場があれば、自然と内省が深まるといった点でした。
辻󠄀:キャリア施策は、すぐに大きな効果が出る取り組みではありません。受講者一人ひとりに小さな変化や気づきがあれば、それで十分だと思っています。例えば、現在の業務の中で新たな取り組みを提案したとか、受講後に自分から主体的に上司にキャリア相談をして、上司に受け止めてもらえた、といった第一歩を踏み出してもらえばよいのです。なぜなら、それがいずれ大きな変化につながっていくからです。参加した1年後に、「異動しました」と連絡が来ることがあるのですが、まさにそうした中長期的な行動変化を期待しているのです。また、部下が変わることで、上司にも変化や気づきが波及することを期待しています。30歳前後キャリアデザインワークショップは、今後も長期的な視野を持って継続していきたいと考えています。
ソリューションプランナーの声
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
研究員 市橋直樹
従業員の主体的かつ自律的なキャリア形成を期待した、企業からのメッセージ発信ならびに機会の提供・拡充が進んでいます。加えて、自己申告制度、社内異動公募制度や選択式研修制度などを整え、個人の選択・行動を促し支援する企業も増えています。
三菱ケミカル様、田辺三菱製薬様の施策では、「ポジティブな変化を起こすために、自ら動いてみるきっかけづくり」や「自分らしく充実したキャリアを目指す行動の変化」につなげることを大事にしました。
多くの中堅社員の実情として、「キャリアのために何か行動したいという思いは持ちつつも、日々忙しいなかでは、ゆっくりと検討し、機会に目を向ける余裕がなかなかない」という声をよくお伺いします。そのため、今回の取り組みのように、受講者同士の対話を中心とした相互学習を通じて、新たな気づきや発見をしていただきつつ、具体的な行動につながる機会を提供していくことが重要だと考えております。
取材日:2024/01/19
企業紹介
三菱ケミカル株式会社/田辺三菱製薬株式会社
三菱ケミカルグループは、化学を基盤とした革新的なソリューションで、人、社会、そして地球の心地よさが続いていくKAITEKIの実現をリードするスペシャリティマテリアルグループ。世界で約7万人の従業員が、「Science. Value. Life.」のスローガンのもと、モビリティ、デジタル、メディカル、食品などの成長市場で活躍している。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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